事務所の活動

【海外事務所来訪】ベルギーの法律事務所「Baumbauer」Andries Hofkens弁護士をお迎えして——AI規制・GDPR・日EUの法制度のギャップをめぐり意見交換 

事務所の活動

【海外事務所来訪】ベルギーの法律事務所「Baumbauer」Andries Hofkens弁護士をお迎えして——AI規制・GDPR・日EUの法制度のギャップをめぐり意見交換 

2026年10月、ベルギー・ブリュッセルを拠点にメディアやIT・データ保護法務を手がける法律事務所「Baumbauer bv」より、代表のAndries Hofkens弁護士をお迎えしました。

当事務所の代表・河瀬季弁護士、李徳君弁護士、Evgeniia Saveleva弁護士が同席し、日本と欧州におけるAI・データ保護法制の違いや、グローバル展開を見据える企業が直面するサプライチェーン上の法的課題について、ディスカッションを行いました。

1通のメッセージから始まった、 国境を越えた繋がり

今回の来訪のきっかけは、約7か月前に届いた1通のLinkedInメッセージでした。送り主はHofkens弁護士。日本語を熱心に勉強されている同氏から、代表の河瀬弁護士宛てに「秋に日本を訪れる予定がある」と、日本語を交えた丁寧なご連絡をいただいたことが始まりでした。

その後、数カ月にわたってメッセージを交わすなかで、互いの専門領域や問題意識に対する理解が深まり、今回の東京オフィスでの対面ミーティングが実現しました。親日家でもあるHofkens弁護士は、今回の滞在中も各地を巡りながら、日本の文化やビジネスのあり方に強い関心を寄せていらっしゃいました。

なぜ今、モノリス法律事務所がベルギーの法律事務所と向き合うのか 

EU(欧州連合)の主要機関が集中する首都ブリュッセルを擁するベルギー。人口約1,100万人の小国でありながら、実質的には欧州全体の政治・法規制の中心地であり、世界の巨大テック企業や先進スタートアップがEU市場へアクセスするための重要拠点です。

同時に、200社以上の日本企業が進出しているなど、日本経済とも深い結びつきを持っています。さらに、低地諸国で最古の歴史を誇るルーヴェン・カトリック大学などを背景に、世界中から高度なIT・リーガル人材が集積する知の拠点でもあります。

モノリス法律事務所がベルギーの法律実務家との連携を重視する理由は、極めて明確です。

現在、欧州では包括的な「EU AI Act(AI法)」やデジタル市場関連の法規制が急速に進んでいます。日本のテック企業が海外展開を目指す際、あるいはサプライチェーンを通じてグローバル企業と協業する際、「日本国内の事業者だからEUのルールは無関係」という前提は成り立ちません。

規制の震源地であるベルギーの現場とダイレクトに繋がり、GDPRの運用実態やAI規制の域外適用リスクを一次情報として掴んでおくこと。国境を越えて挑戦するクライアントに対し、技術とビジネスの実態に即したリーガルサポートを提供し続けるために、こうした欧州フロントランナーとの対話が不可欠なのです。

日本とEUの間に横たわる、AI規制とデータ活用の「ギャップ」 

ミーティングでは、互いの専門領域である先端テクノロジーと法規制を巡り、踏み込んだ意見交換が行われました。

1. AI学習データと著作権構造の違い

日本は著作権法上、AIのモデル学習に対して比較的柔軟な法制度を持っています。一方のEUでは、デジタル単一市場における著作権指令に基づくテキスト&データマイニングの例外規定はあるものの、出力や利用の場面におけるバイアス・差別防止など、包括的な規制(EU AI Act)が課されます。日本国内で合法的に開発されたAIモデルであっても、欧州市場へ進出する際には想定外の法的リスクに直面しかねません。国境を越える際のローカライズや、二国間のルールの相違にどう備えるべきかが議論の俎上に載りました。

2. サプライチェーンを通じた「域外適用」の波及

GDPRやAI Actの影響は、グローバルな大企業だけに留まりません。そうした大企業にサービスやシステムを提供するサプライチェーン上のパートナー——たとえ直接EU展開をしていない中小のテック企業やスタートアップであっても、取引先経由で同水準のコンプライアンス対応を求められる現実があります。「自社には直接関係がない」と思い込みがちな中小企業に対し、実務上どのような法的助言やガバナンス設計を提供していくべきか、日欧双方の現場感を交えて話し合いました。

3. AIと弁護士実務——「左脳」と「右脳」の役割分担

AI技術を法律実務にどう組み込んでいくべきかという点について、Hofkens弁護士からは非常に興味深い視点が共有されました。

「AIは高度な分析やロジック構築といった『左脳』の仕事においては非常に優秀ですが、文脈の理解や人間関係の洞察、全体を俯瞰した倫理的判断といった『右脳』の領域を代替することは決してできません」

モデルの精度が上がるにつれて人間側がチェックを怠ってしまう「監督の喪失」というリスクに触れつつ、高度なテクノロジーが浸透した時代だからこそ、法律のプロフェッショナルとして人間が担うべき本質的な役割について、双方で強く認識を共有する時間となりました。

国境を越えて挑むフロントランナーのために 

ミーティングの終盤、Hofkens弁護士からは「ITと法を切り離さず一体のものとして扱うモノリスのアプローチは、テクノロジーが社会の前提となった現代において不可欠な視点だ」という言葉をいただきました。

法制度のあり方は国や地域によって異なりますが、テクノロジーの進化がもたらす課題と、それに向き合う企業の熱量は世界共通です。モノリス法律事務所では、今後も各国の第一線で活躍する専門家との対話を重ねながら、国境を越えて挑むクライアントの事業実態に寄り添ったリーガルサービスを追求していきます。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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