英語を用いる弁護士業務はどの程度存在するか:河瀬季(代表弁護士)
一言で言えば、我々が関わる「IT」は「情報」であり、その海外展開にコンテナや貨物船は必要がなく、今後の情勢変化等の中で、英語案件(や海外案件)は確実に増加することが予測され、こうした業務に関心のある弁護士の方にも、是非入所頂きたいと考えています。
順を追って、説明します。
まず「現在」についてですが、「特定の分野等において、そうした仕事が一定程度存在する」というのが実態に即した回答です。ただ我々は、ITやインターネット法務を手がける当事務所にとって、英語に関わる案件は、今後増えていく・増えなければならないと考えています。
基本的な構造としては、
- 当事務所の専門性は、一言で言えば「IT(やベンチャー)」であり、例えば「渉外」ではないため、英語の関わらない分野や案件等のみを希望すれば、それは当然に可能です。
- ただ、「IT(やベンチャー)」の一部分野には、英語が関わります。英語を使った仕事を行いたい方や、英語を使う能力がある方には、そうした分野を(も)担当して頂きたいと考えています。
- 特に今後の情勢等を考えた場合、クロスボーダーやグローバルの案件は、増えていくと考えています。
となります。
「英語」が関わる分野は、大きく、3個です。
- 海外法人相手のインターネット法務(訴訟等)
- 類型的に「英語」との結びつきが強い分野、特にブロックチェーン・Web3関連法務
- その他のIT・ネット関連ビジネスであり、特に今後、クロスボーダー化・グローバル化が進行していくと思われる分野
順に解説します。
この記事の目次
海外法人相手のインターネット法務
まずは、ある意味で「伝統的に」英語が関わる法分野としての、インターネット法務です。インターネット空間はそもそもグローバルであるため、インターネット上での紛争等が、海外法人相手の紛争となることは、珍しくありません。例えば、日本人が日本国内で日常的に利用しているGoogleやTwitterも、海外法人だからです。
いわゆる風評被害対策や、不正アクセス対策など、インターネット関連の紛争性のある案件では、
- 海外法人相手に訴訟等を行うため、裁判所用の書類として、日本語書面と併せて英語書面を作成する必要がある
- 海外法人相手に裁判外での照会等を行うため、英語書面を作成する必要がある
といった場面が発生し得ます。こうした業務は、前者は「翻訳」の側面が強く、後者は(弁護士業務の中では)一定程度類型性があるものではありますが、ただ、インターネット法務に携わる以上、必要不可欠となってくるものです。
ブロックチェーン・Web3関連法務
次に、「IT法務」の全領域の中で、その性質上、「英語」や「海外」との結びつきが類型的に強い分野である、ブロックチェーンやWeb3関連の案件です。
ブロックチェーン・Web3関連のビジネスの中には、法制度や税制上の問題から、「日本人が日本国内の法人で日本人を相手にビジネスを行う」というスキームではなく、法人の所在地・ビジネスの対象を海外とするものも多数存在します。
こうしたビジネスを弁護士としてサポートするためには、いかなる意味でも、英語が必要となります。
当事務所は、ITに専門性を有する法律事務所として、Web3法務チームの組成も行っています。そして、そうした案件は、少なくとも一部分以上において英語を必要とするケースが非常に多いと言えます。
その他のIT・ネット関連ビジネス
特に今後の日本に関する予測として、「IT」や「インターネット」と、「クロスボーダー」「グローバル」は、これまで以上に強い繋がりを持つことになると、当事務所は考えています。
例えば、インターネット広告を例として挙げましょう。日本のインターネット広告代理店は、基本的に、日本語の広告を取り扱ってきました。しかし、国内事業者によるインバウンド需要への期待が高まるのであれば、「海外の検索エンジンへの、現地語の広告の出稿」といったニーズもまた、高まることになるはずです。そしてその時、その国内事業者やインターネット広告代理店の弁護士である我々は、当該国の広告規制等に関心を持たざるを得なくなる、ということになります。
こうした意味での「クロスボーダー化」「グローバル化」は、特に「IT(やベンチャー)」の周辺で、様々な変化をもたらすことになるはずです。ほんの一例を挙げれば
- 日本のベンチャー企業が、海外の巨大IT資本等から第三者割当増資などの形で投資を受ける。
- マーケティングやブランディングに長けた日本のサプリメント関連企業が、早期に中国市場などに進出する。
- 海外のITベンダーがIP等を保有するソフトウェアについて、国内企業が代理店契約等を締結した上で、国内で拡販を行う。または、その逆。
- 国内のVTuber関連企業が外語語話者を「中の人」としたVTuberをプロデュースし、海外市場への展開を狙う。(奇妙な例に思われるかもしれませんが、「情報産業」であるIT業界にとって、「海外展開」が非常に行いやすいものであること、つまり、そのためにコンテナや貨物船は一切必要がないこと、という「例」として挙げさせて頂きます。)
といったケースです。
そして、「IT」をキーワードとする当事務所は、こうした案件に対応することになりますし、また、対応しなければなりません。
今後の展望など
最初に記載したとおり、当事務所の専門性は、一言で言えば「IT」であり、「英語」は、必要条件ではありません。ただ、英語を用いることになる業務は、現在も一定程度は存在しますし、「IT」(や「ベンチャー」)といったキーワードを掲げる当事務所にとって、そうした業務は、今後中期的に増えていくことが想定されますし、また、増やしていかなければならないと考えています。
「英語は必須条件等では決してないが、そうした志向や適性、能力等を持っている方『にも』入所して頂きたい」というのが、当事務所の考えです。
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