国際法務・台湾
モノリス法律事務所には、台湾弁護士資格を有する海外弁護士も所属しており、台湾法務に積極的な対応を行っています。
異なる法制度や商慣習への対応は、事業成功の鍵を握る重要な要素です。
日本の企業による台湾でのビジネス展開を、法的側面でサポート致します。
台湾は、地理的近接性、経済的発展、そして民主的な政治体制と安定した法制度により、日本企業にとって魅力的な市場となっています。特にIT・ハイテク産業が盛んであり、IT分野での新たなビジネスチャンスが豊富に存在すると言えるでしょう。
台湾は、1980年代から1990年代にかけて民主化を達成し、競争的な選挙を通じて行政権に対する有効な抑制が機能する民主政体として分類されています。台湾の安定した民主的政治体制と独立した司法は、外国企業にとって予見可能性の高いビジネス環境を提供します。法の支配が機能し、恣意的な政策変更や不当な介入が少ないことは、企業が安心して投資できる基盤となるからです。
ただ、その法制度には、日本と異なる規律も少なからず存在します。台湾法を熟知した、台湾弁護士資格保有の外国人弁護士が所属する法律事務所として、モノリス法律事務所は、日本企業の台湾進出などをサポート致します。
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台湾法務に対応するチームと国際的なネットワーク

特にITなど先端分野に関わる国際法務には、専門性の高いチームによるサポートが必要不可欠です。モノリス法律事務所は、ITに強い弁護士や台湾の弁護士資格を有する外国語話者、現役エンジニアを含むITコンサルタント等による組織を組成し、また、台湾の各専門家を含む国際的なネットワークを活用して、知見の共有や蓄積を行う体制を整備しています。
当事務所の台湾法務サポート
会社設立支援
台湾では原則として100%外国資本の法人設立が可能です。ビジネスモデルと目的に応じて、会社法に基づき設立される「子会社」、または「支社」「事務所」といった形態の中から最適な選択と、外国人投資許可申請(FIA)、資本金送金、登記申請など、一連の複雑なプロセスを全面的にサポートいたします。
契約締結支援
民法をはじめとする関連法規に基づき、合弁契約、販売代理店契約、ライセンス契約、雇用契約など、多岐にわたる契約書の作成、レビュー、交渉を支援します。また、事業運営における日常的な法務相談、法令改正の監視と対応、コンプライアンス体制の維持・強化など、進出後の継続的な法的サポートも提供いたします。
M&Aと法務DD
外国人投資条例、投資法などの関連法令に基づき、対象企業の設立経緯、組織体制、株式構成、既存契約、知的財産権、財務状況、係争中の訴訟・紛争、コンプライアンス体制といった各分野について、詳細かつ網羅的な法務調査を実施します。
海事や国際運輸
貿易法、船舶法、航空法など、国際運輸関連法規を理解し、クライアントのビジネスが台湾の法令に完全に準拠するよう、輸出入規制の遵守、船舶の登録・運航、航空輸送に関する法的アドバイスを提供することで、国際的な物流における法的リスクを抑えます。
台湾におけるビジネス法務
台湾の法制度は、中華民国憲法とその増修条文を基礎とし、法律、命令の三層構造で成り立っています。法律の名称は「法」「律」「条例」「通則」の4種類に分類されます 。裁判制度は、一般民事および刑事事件を管轄する普通法院が三審制(地方法院、高等法院、最高法院)を採用しています。台湾の法制度は、明確な階層構造と独立した司法制度を持っており、日本企業が台湾でビジネスを行う上で、安定した法制度は、大きな安心材料となるでしょう。
会社法・投資法
外国企業が台湾で設立できる形態は、主に「子会社」「支社」「事務所」の3つに大別されます。子会社は、台湾の法律に基づいて組織登記される営利目的の会社で、支社は、外国の法律に基づいて組織登記された会社の営利目的の拠点、事務所は、営業活動を行わず、代表者が業務上の法律行為を行う場合です。
設立プロセスは、会社名と営業項目の仮登録、外国人投資許可申請(FIA)、資本金送金用口座開設、資本金送金と審査、登記申請と統一編號の取得、国税局面談と税務登録、就労ビザと居留証の申請といった複数のステップから構成されます 。外国法人や外国人取締役であっても、台湾では100%外国資本の法人設立が可能です。
投資規制に関しては、原則として「華僑・外国人投資ネガティブリスト」に属する一部の業種を除いて投資が可能です。禁止項目と制限項目があり、特に制限項目は各業界別の規定が複雑です。
会社の最低払込資本金規定はありませんが、会社登記の際に公認会計士の監査報告が必要であり、中小企業の場合、50万台湾ドル以上が一般的です。知的財産法
台湾で商標権を主張するためには、台湾の経済部知的財産局への商標登録出願が必要です。登録後の有効期限は10年で、更新が可能です。特に、台湾税関は、商標権者が登録商標情報を税関に提示することで、模倣品の輸出入を水際で阻止する「提示保護」制度を設けています。税関は、明らかに商標権を侵害する恐れのある貨物を確認した場合、商標権者に通知し、仮差止措置を執行し、司法機関に移送することができます。
著作権について、台湾は「創作保護主義」を採用しており、著作物は完成した時点で自動的に著作権法の保護を受け、登録手続きは不要です(製版権の登録を除く)。ただし、将来の紛争に備え、公証人による認証や特定の機関への供託、内容証明郵便の利用などにより、著作の存在と作成時期を証明する手段を用いることが推奨されます。外国人の著作も、国際条約の「相互原則」および「国民待遇原則」により、自国民の著作と同様に保護されます。労働法
台湾の労働法は、労働者の権利保護に重点を置いており、雇用契約の終了、労働時間、解雇手当、大量解雇などに関して詳細な規定があります。
試用期間が14日を超える労働契約を終了させる場合、勤続期間に応じて10日~30日前の予告期間が必要です。解雇手当は、勤続1年につき平均月賃金の0.5カ月分(旧制度では1カ月分)が支給され、上限は6カ月分です。労働者の責めに帰すべき事由による即時解雇の場合は、予告や手当の支払い義務はありません。
また、大量労働者解雇保護法により、6カ月以内に一定人数の労働者を解雇しようとする場合、解雇計画書の作成や主務官庁への届け出が必要となり、より長時間の解雇手続きが求められます。そして、解雇禁止期間として、女性労働者の産前産後休業期間や労災休業期間中は、原則として解雇が禁止されています。
これらの規定により、企業が人員整理や組織再編を行う際には、日本とは異なる厳格な手続きとコストが発生する可能性があります。紛争解決
台湾における紛争解決の主要な手段として、仲裁と訴訟があります。
当事者間の書面による合意があれば、現在または将来の紛争を仲裁に付託することができます。仲裁判断は裁判所の確定判決と同等の効力を持ち、別途「執行裁定」を申し立てることで強制執行が可能です。仲裁手続には上訴制度がないため、迅速な解決が期待できますが、判断内容が不当と感じても取消規定以外に救済手段はありません。
台湾は「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)」の締約国ではありません。しかし、中華民国仲裁法に外国仲裁判断の承認・執行に関する規定(第7章)があり、ニューヨーク条約の要件とほぼ同じであるため、日本で下された仲裁判断も台湾で承認・執行が可能です。
日本は台湾を独立国家として承認していないため、日本の裁判所で得られた判決は、台湾において承認・執行が困難となるおそれがあります。特に、公示送達によって開始された日本の裁判の判決は、台湾では承認・執行要件を満たさないとされています。従って、契約交渉で日本の裁判管轄条項を勝ち取っても、実効性が失われる可能性があります。台湾企業との契約においては、紛争解決条項として日本の裁判管轄ではなく、JCAA仲裁を定めることは、日本企業にとって紛争解決の実効性を確保するための重要な選択肢になります。個人情報保護
台湾では、日本と同様に「個人情報保護法」(台湾個人情報保護法)によって企業による個人情報の取り扱いが規律されています。
同法は、自然人の氏名、生年月日、台湾人身分証番号、旅券番号、特徴、指紋、婚姻、家族、学歴、職業、病歴、治療、遺伝子、性生活、健康診断、犯罪歴、連絡先、財務状況、社会活動など、直接的または間接的に個人を識別し得る広範な情報を対象としており、利用制限、国際転送の制限などの規制が行われることになります。
また、台湾個人情報保護法に違反して個人情報を不法に収集、処理、利用し、またはデータ主体の権利を侵害した場合、企業は損害賠償責任を負います。重大な違反の場合、15万~1500万台湾ドルの過料が科され、企業の代表者も、防止義務を果たしたことを証明できない限り、企業と同額の過料が科される可能性があります。また、政府の情報収集活動への協力義務を課す制度も存在します。
台湾のビジネス関連主要法規
法分野 | 概要 | 当事務所の支援領域 |
---|---|---|
外国投資法規 | 「外国人投資条例」に基づき許可が必要。ネガティブリスト方式で一部業種は禁止・制限。中国企業には別途厳格な規制。研究開発投資減税あり。 | FIA申請支援、ネガティブリスト調査、出資比率・資本金要件コンサル、投資奨励策活用支援、法務DD |
法人設立 | 子会社、支社、事務所の形態を選択可能。100%外国資本設立可。会社名仮登録、FIA、資本金送金、登記、税務登録、就労ビザ申請等のプロセス。 | 最適な法人形態選択、定款作成、設立登記手続き代行、資本金・監査報告支援、ガバナンス構築助言 |
労働法 | 労働者の権利保護重視。解雇予告(勤続期間に応じ10~30日前)、解雇手当(勤続1年につき平均月賃金の0.5カ月分、上限6カ月分)。「大量労働者解雇保護法」適用あり。 | 雇用契約・就業規則作成・レビュー、解雇手続き・手当計算アドバイス、労働紛争対応、外国人就労ビザ・許可申請支援 |
知的財産権法 | 著作権は「創作保護主義」で登録不要。商標権は「登録主義」で登録必要(10年更新可)。税関での「提示保護」制度あり。 | 商標出願・登録代行、著作権アドバイス、侵害対応、税関提示保護申請、ライセンス契約作成・レビュー |
個人情報保護法 | 「個人情報保護法」で広範な個人情報を保護。収集目的外利用原則禁止。国際転送制限あり。違反には高額過料(15万~1500万台湾ドル)や代表者責任。 | プライバシーポリシー・規程作成、コンプライアンス体制構築、国際データ転送アドバイス、データ侵害対応 |
不動産関連法規 | 土地は国民全体に属し、外国人は「利用権」のみ(所有権不可)。特定用途に限る。取得・譲渡・保有時に多様な税金。借主保護の特別法なし。 | 土地利用権取得・賃貸借契約アドバイス、不動産取得(利用権)契約書作成・レビュー、不動産関連税制コンサル、不動産DD |
貿易法規 | 原則「ネガティブリスト」方式で自由な輸出入。国防、治安、環境保護等の理由で制限あり。戦略性ハイテク物品は輸出許可必要。 | 輸出入規制品目調査、輸出入許可申請支援、貿易関連契約書作成・レビュー、通関・関税問題対応、国際経済制裁・貿易紛争対応 |
消費者保護法 | 「消費者保護法」に基づき、通信販売・訪問販売に7日間のクーリングオフ制度あり。商品使用後も検査目的や消費者帰責事由なしの破損ならクーリングオフ可能。 | 消費者保護法遵守に関するアドバイス、利用規約・販売規約の作成・レビュー、クーリングオフ制度対応支援、消費者トラブル・紛争対応 |
台湾法務のトータルサポート
海外事業の展開は、日本のビジネスマンや起業家にとって、必ずしも簡単ではありません。国際的なネットワークを保有する日本の法律事務所によるサポートは、進出前の検討・進出時に必要な会社設立等やビザ・労働法間系の問題の処理、進出時の契約等まで、全ての場面において、非常に有益です。書面や契約書等を現地言語で、現地法に準拠して作成する必要があるため、日本の法律事務所がハブとなって、現地の事務所等と連携しながら行うサポートが、非常に重要となります。

台湾における会社設立やその運用は、台湾法のレギュレーションに服し、
台湾でのビジネス展開は台湾の民法・会社法や行政法規等に、
その雇用関係は台湾の労働法に服します。
これらには、日本におけるレギュレーションと異なる規律が多数存在します。
海外事業をサポートするソリューション
当事務所は、リーガルリサーチや契約書作成、契約締結交渉などの一般的な弁護士業務に加えて、
国内企業の海外進出をサポートするための様々なソリューションを提供しております。

法務デューデリジェンス(DD)への対応
企業買収などの場面において、対象会社の設立・会社組織・株式、株主・関係会社・M&A、不動産・動産その他の資産、知的財産権、ファイナンス、契約、訴訟・紛争、コンプライアンスといった各分野について、特に重大な法的問題の有無を確認する法務調査である、いわゆる法務デューデリジェンス(DD)は、法律事務所側に組織力の求められる業務です。当事務所は、弁護士22名の所属する組織であり、台湾国内企業を対象とした法務DDや、DDレポートの作成を迅速に行う体制を整備しています。
※DDレポート作成を行う場合、概ね弁護士の稼働時間が30時間(弁護士費用100万円強)以上となります。
法務デューデリジェンス(DD)の実施例
法務デューデリジェンスにおいては、企業や事業運営の前提条件となる事項や、企業活動に重要な影響を及ぼす事項を、そのスコープとすることが基本となります。
具体的には、まず、会社機関やガバナンスの観点から当該企業や事業が存続し得るか、当該事業を推進するために必要な法令・許認可は何であり、その許認可は維持が可能か、といった点です。また、事業活動において重要な資産や負債の状況はどのようなものか、重要な各種契約(労務や関連当事者間取引等を含む)に欠缺はないか、有利な条件での継続が可能か、現段階では顕在化していないリスクが発生した場合の影響はどの程度か、といった点も問題となります。
これらを基本としながら、例えば下記のように、企業や事業の性質に応じたポイントを加えてスコープを決定し、法務デューデリジェンスを実施することとなります。
ゲーム開発
ゲームコンテンツの著作権帰属や利用許諾に関する著作権法(著作權法)上の問題、ユーザーデータの個人情報保護法に基づく適正な管理体制を調査。ゲーム内課金システムが電子決済機構管理条例に準拠しているか、未成年者保護に関する消費者保護法や関連法規の遵守状況を確認。
フィンテック企業
仮想通貨(暗号資産)が法定通貨ではない台湾において、マネーロンダリング防止法(洗錢防制法)に基づく登録義務や内部統制システムの構築状況を調査。セキュリティートークン(STO)を発行している場合は、証券取引法(證券交易法)および関連規制への準拠性を確認。
AI開発
AIモデルの学習データに関する著作権法上の適法性(利用許諾の有無など)を精査。また、AI技術が貿易法(貿易法)に基づく「戦略性ハイテク物品」に該当し、輸出管理規制の対象となる可能性がないか、貿易法第11条や関連規定に基づき調査。
食品製造・販売
食品が食品安全衛生管理法(食品安全衛生管理法)に準拠しているか、特に表示、宣伝、広告における不実・誇張・医療効能表示の禁止規定を重点的に確認。輸入食品を扱う場合は、貿易法に基づく輸入規制や検疫要件の遵守状況も調査。
国際物流
海上輸送事業の場合は船舶法(船舶法)に基づく船舶の登録、検査、航行要件の遵守状況、航空輸送事業の場合は航空法(民用航空法)に基づく各規制の遵守状況を確認。貨物の輸出入につき、貿易法に基づく輸出入規制や関税法(關稅法)の遵守状況も精査。
モノリス法律事務所は、クロスボーダー化・グローバル化の進むIT領域において、日本をリードする法律事務所を目指し、国内企業や事業体による台湾事業のサポートを、その重要な使命の一つと位置付けています。