国際法務・台湾
モノリス法律事務所には、台湾弁護士資格を有する海外弁護士も所属しており、台湾法務に積極的な対応を行っています。
異なる法制度や商慣習への対応は、事業成功の鍵を握る重要な要素です。
日本の企業による台湾でのビジネス展開を、法的側面でサポート致します。
台湾は、地理的近接性、経済的発展、そして民主的な政治体制と安定した法制度により、日本企業にとって魅力的な市場となっています。特にIT・ハイテク産業が盛んであり、IT分野での新たなビジネスチャンスが豊富に存在すると言えるでしょう。
台湾は、1980年代から1990年代にかけて民主化を達成し、競争的な選挙を通じて行政権に対する有効な抑制が機能する民主政体として分類されています。台湾の安定した民主的政治体制と独立した司法は、外国企業にとって予見可能性の高いビジネス環境を提供します。法の支配が機能し、恣意的な政策変更や不当な介入が少ないことは、企業が安心して投資できる基盤となるからです。
ただ、その法制度には、日本と異なる規律も少なからず存在します。台湾法を熟知した、台湾弁護士資格保有の外国人弁護士が所属する法律事務所として、モノリス法律事務所は、日本企業の台湾進出などをサポート致します。
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台湾法務に対応するチームと国際的なネットワーク

特にITなど先端分野に関わる国際法務には、専門性の高いチームによるサポートが必要不可欠です。モノリス法律事務所は、ITに強い弁護士や台湾の弁護士資格を有する外国語話者、現役エンジニアを含むITコンサルタント等による組織を組成し、また、台湾の各専門家を含む国際的なネットワークを活用して、知見の共有や蓄積を行う体制を整備しています。
当事務所の台湾法務サポート
会社設立支援

台湾では原則として100%外国資本の法人設立が可能です。ビジネスモデルと目的に応じて、会社法に基づき設立される「子会社」、または「支社」「事務所」といった形態の中から最適な選択を行い、外国人投資許可申請(FIA)、資本金送金、登記申請など、一連のプロセスを全面的にサポートいたします。形態の選択は、設立時の手続の簡便さだけでなく、将来の増資や撤退の場面での取り回しまで見据えて判断すべき事項です。台湾では資本の出所についても確認が求められるため、早期のご相談をお勧めしております。
契約締結支援

民法をはじめとする関連法規に基づき、合弁契約、販売代理店契約、ライセンス契約、雇用契約など、多岐にわたる契約書の作成、レビュー、交渉を支援します。日本法を前提として作成された契約書をそのまま翻訳して用いると、台湾法の下では意図したとおりに機能しない条項が残ることがあります。契約の骨格と商業条件を日本側で設計したうえで、台湾法の観点から検証する進め方を標準としております。あわせて、進出後の日常的な法務相談や法令改正への対応も、継続的にサポートいたします。
M&Aと法務DD

対象企業の設立経緯、組織体制、株式構成、既存契約、知的財産権、係争中の訴訟・紛争、コンプライアンス体制といった各分野について、詳細かつ網羅的な法務調査を実施します。台湾の法務デューデリジェンスでは、会社法上の決議手続が適法に経られているか、外国投資の許可が維持されているか、就業規則が主管官庁の審査を経ているかといった、台湾固有の論点が中心となります。調査の範囲と想定稼働時間を事前にお示ししたうえで着手いたします。
フランチャイズ展開

台湾には、フランチャイズ本部に対し、加盟希望者への事前の書面による情報開示を求める枠組みが存在します。公平交易法および公平交易委員会の処理原則により、開業前後の各種費用、知的財産権の使用範囲と制限、経営指導の内容、営業区域における同一チェーンの出店計画、購入先や規格の指定といった営業上の制限、契約の変更・終了・解除の条件などを、契約締結の一定期間前までに開示することが求められます。当事務所は、台湾版の加盟契約書と法定開示書面の作成を手がけております。

当事務所の台湾弁護士資格保有者
シニアアソシエイト外国法事務弁護士の李 徳君 (Li, Te Chun)は、台湾の法律事務所で約5年間にわたり、国際貿易や海事案件に従事し、多数の国の法律や国際条約に関する専門知識と、複雑な国際紛争を解決する上で不可欠な応用力を培ってきました。この実務経験を通じて、法的な知識だけでなく、国際貿易の実務や船舶機械といった非法律分野の横断的な知識も習得しており、技術革新が絶えず進むITやデジタルコンテンツ、特にYouTuberやVTuberといった新しい産業の法務にも柔軟に対応できる能力を備えています。また、台湾国立台湾大学法学部を卒業後、早稲田大学大学院法学研究科で日本の知的財産権法を深く学びました。国際貿易案件で知的財産権に関する問題に直面するケースが増えていることを痛感したことが、日本での専門的な学習の動機となっています。
これまでの実務経験で培った専門知識と、日本での学びを活かし、言語や文化、法制度の違いを超えて、皆様のビジネスの成功を力強く支えてまいります。
海事・国際運輸に関する法務
台湾は、四方を海に囲まれ、東アジアの海上輸送路の要衝に位置しています。日本企業にとって、台湾は製品の仕向地であると同時に、中国本土や東南アジアとを結ぶ輸送経路上の結節点でもあります。このため、台湾が関わる取引では、売買契約の問題として始まったものが、運送や貨物の損害の問題として現れることが少なくありません。
前項のとおり、当事務所のシニアアソシエイト外国法事務弁護士である李 徳君は、台湾の法律事務所において国際貿易および海事案件に従事してきました。船舶機械や国際貿易の実務といった非法律分野の知識を含め、この領域に対応できる体制を備えています。日本企業が台湾の海事・国際運輸に関して直面しやすい論点は、下記のとおりです。
運送人の責任と免責特約の限界
台湾の海商法は、貨物の滅失・毀損・遅延についての運送人の責任を定めており、運送人の過失による責任を軽減し、または免除する契約条項の効力を否定する規定を置いています。したがって、運送契約や船荷証券に免責条項を置いても、それだけで責任を回避できるとは限りません。あわせて、責任の上限額、免責事由、出訴期間についても、日本法とは異なる規律が設けられています。日本の国際海上物品運送法を前提とした理解のままでは、見通しを誤る可能性があります。
裁判管轄と紛争解決地の選択
国際的な運送契約では、準拠法と裁判管轄を外国法・外国裁判所と定めることが一般的です。しかし台湾の海商法には、台湾の港を積地または揚地とする運送について、当事者間の合意にかかわらず台湾の裁判所に訴えを提起する余地を認める規律があるとされています。契約書で管轄を定めたからといって、台湾での訴訟リスクが排除されるとは限らないということです。仲裁条項の設計とあわせ、紛争が生じ得る場所を前提とした検討が必要になります。
運送事業・船舶に関する規制
台湾で運送事業を営む場合や、船舶を保有・運航する場合には、船舶法および航業法に基づく登録・許可の枠組みが適用されます。外国企業が台湾で運送関連の事業を行う場合、そもそもどの形態であれば事業を行えるのかという点から確認が必要です。会社設立の形態の選択とあわせて検討すべき論点です。
輸出入規制と貨物の性質
貿易法に基づく輸出入の規制に加えて、貨物の性質によっては個別の規制が適用されます。とりわけ、軍事転用の可能性がある物品や、仕向地によって扱いが変わる物品については、輸送の手配を進める前に該当性を確認しておかなければ、通関の段階で初めて問題が顕在化します。台湾を経由する三国間取引においては、台湾法と、仕出地・仕向地の法令の双方を確認する必要があります。
貨物事故への初動対応
貨物の損害が生じた場合、責任の所在を確定する前に、損害の範囲を保全し、出訴期間を徒過しないよう手当てすることが先決となります。荷主、運送人、フォワーダー、保険者のいずれの立場に立つかによって、採るべき初動は異なります。当事務所は、技術的な事実関係の把握を含めて、台湾法の観点から初動を設計いたします。
台湾におけるビジネス法務
台湾の法制度は、中華民国憲法とその増修条文を基礎とし、法律、命令の三層構造で成り立っています。法律の名称は「法」「律」「条例」「通則」の4種類に分類されます 。裁判制度は、一般民事および刑事事件を管轄する普通法院が三審制(地方法院、高等法院、最高法院)を採用しています。台湾の法制度は、明確な階層構造と独立した司法制度を持っており、日本企業が台湾でビジネスを行う上で、安定した法制度は、大きな安心材料となるでしょう。
会社法・投資法
外国企業が台湾で設立できる形態は、主に「子会社」「支社」「事務所」の3つに大別されます。子会社は、台湾の法律に基づいて組織登記される営利目的の会社で、支社は、外国の法律に基づいて組織登記された会社の営利目的の拠点、事務所は、営業活動を行わず、代表者が業務上の法律行為を行う場合です。
設立プロセスは、会社名と営業項目の仮登録、外国人投資許可申請(FIA)、資本金送金用口座開設、資本金送金と審査、登記申請と統一編號の取得、国税局面談と税務登録、就労ビザと居留証の申請といった複数のステップから構成されます 。外国法人や外国人取締役であっても、台湾では100%外国資本の法人設立が可能です。
投資規制に関しては、原則として「華僑・外国人投資ネガティブリスト」に属する一部の業種を除いて投資が可能です。禁止項目と制限項目があり、特に制限項目は各業界別の規定が複雑です。
会社の最低払込資本金規定はありませんが、会社登記の際に公認会計士の監査報告が必要であり、中小企業の場合、50万台湾ドル以上が一般的です。知的財産法
台湾で商標権を主張するためには、台湾の経済部知的財産局への商標登録出願が必要です。登録後の有効期限は10年で、更新が可能です。特に、台湾税関は、商標権者が登録商標情報を税関に提示することで、模倣品の輸出入を水際で阻止する「提示保護」制度を設けています。税関は、明らかに商標権を侵害する恐れのある貨物を確認した場合、商標権者に通知し、仮差止措置を執行し、司法機関に移送することができます。
著作権について、台湾は「創作保護主義」を採用しており、著作物は完成した時点で自動的に著作権法の保護を受け、登録手続きは不要です(製版権の登録を除く)。ただし、将来の紛争に備え、公証人による認証や特定の機関への供託、内容証明郵便の利用などにより、著作の存在と作成時期を証明する手段を用いることが推奨されます。外国人の著作も、国際条約の「相互原則」および「国民待遇原則」により、自国民の著作と同様に保護されます。労働法
台湾の労働法は、労働者の権利保護に重点を置いており、雇用契約の終了、労働時間、解雇手当、大量解雇などに関して詳細な規定があります。
試用期間が14日を超える労働契約を終了させる場合、勤続期間に応じて10日~30日前の予告期間が必要です。解雇手当は、勤続1年につき平均月賃金の0.5カ月分(旧制度では1カ月分)が支給され、上限は6カ月分です。労働者の責めに帰すべき事由による即時解雇の場合は、予告や手当の支払い義務はありません。
また、大量労働者解雇保護法により、6カ月以内に一定人数の労働者を解雇しようとする場合、解雇計画書の作成や主務官庁への届け出が必要となり、より長時間の解雇手続きが求められます。そして、解雇禁止期間として、女性労働者の産前産後休業期間や労災休業期間中は、原則として解雇が禁止されています。
これらの規定により、企業が人員整理や組織再編を行う際には、日本とは異なる厳格な手続きとコストが発生する可能性があります。紛争解決
台湾における紛争解決の主要な手段として、仲裁と訴訟があります。
当事者間の書面による合意があれば、現在または将来の紛争を仲裁に付託することができます。仲裁判断は裁判所の確定判決と同等の効力を持ち、別途「執行裁定」を申し立てることで強制執行が可能です。仲裁手続には上訴制度がないため、迅速な解決が期待できますが、判断内容が不当と感じても取消規定以外に救済手段はありません。
台湾は「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)」の締約国ではありません。しかし、中華民国仲裁法に外国仲裁判断の承認・執行に関する規定(第7章)があり、ニューヨーク条約の要件とほぼ同じであるため、日本で下された仲裁判断も台湾で承認・執行が可能です。
日本は台湾を独立国家として承認していないため、日本の裁判所で得られた判決は、台湾において承認・執行が困難となるおそれがあります。特に、公示送達によって開始された日本の裁判の判決は、台湾では承認・執行要件を満たさないとされています。従って、契約交渉で日本の裁判管轄条項を勝ち取っても、実効性が失われる可能性があります。台湾企業との契約においては、紛争解決条項として日本の裁判管轄ではなく、JCAA仲裁を定めることは、日本企業にとって紛争解決の実効性を確保するための重要な選択肢になります。個人情報保護
台湾では、日本と同様に「個人情報保護法」(台湾個人情報保護法)によって企業による個人情報の取り扱いが規律されています。
同法は、自然人の氏名、生年月日、台湾人身分証番号、旅券番号、特徴、指紋、婚姻、家族、学歴、職業、病歴、治療、遺伝子、性生活、健康診断、犯罪歴、連絡先、財務状況、社会活動など、直接的または間接的に個人を識別し得る広範な情報を対象としており、利用制限、国際転送の制限などの規制が行われることになります。
また、台湾個人情報保護法に違反して個人情報を不法に収集、処理、利用し、またはデータ主体の権利を侵害した場合、企業は損害賠償責任を負います。重大な違反の場合、15万~1500万台湾ドルの過料が科され、企業の代表者も、防止義務を果たしたことを証明できない限り、企業と同額の過料が科される可能性があります。また、政府の情報収集活動への協力義務を課す制度も存在します。
台湾のビジネス関連主要法規
| 法分野 | 概要 | 当事務所の支援領域 |
|---|---|---|
| 外国投資法規 | 「外国人投資条例」に基づき許可が必要。ネガティブリスト方式で一部業種は禁止・制限。中国企業には別途厳格な規制。研究開発投資減税あり。 | FIA申請支援、ネガティブリスト調査、出資比率・資本金要件コンサル、投資奨励策活用支援、法務DD |
| 法人設立 | 子会社、支社、事務所の形態を選択可能。100%外国資本設立可。会社名仮登録、FIA、資本金送金、登記、税務登録、就労ビザ申請等のプロセス。 | 最適な法人形態選択、定款作成、設立登記手続き代行、資本金・監査報告支援、ガバナンス構築助言 |
| 労働法 | 労働者の権利保護重視。解雇予告(勤続期間に応じ10~30日前)、解雇手当(勤続1年につき平均月賃金の0.5カ月分、上限6カ月分)。「大量労働者解雇保護法」適用あり。 | 雇用契約・就業規則作成・レビュー、解雇手続き・手当計算アドバイス、労働紛争対応、外国人就労ビザ・許可申請支援 |
| 知的財産権法 | 著作権は「創作保護主義」で登録不要。商標権は「登録主義」で登録必要(10年更新可)。税関での「提示保護」制度あり。 | 商標出願・登録代行、著作権アドバイス、侵害対応、税関提示保護申請、ライセンス契約作成・レビュー |
| 個人情報保護法 | 「個人情報保護法」で広範な個人情報を保護。収集目的外利用原則禁止。国際転送制限あり。違反には高額過料(15万~1500万台湾ドル)や代表者責任。 | プライバシーポリシー・規程作成、コンプライアンス体制構築、国際データ転送アドバイス、データ侵害対応 |
| 不動産関連法規 | 土地は国民全体に属し、外国人は「利用権」のみ(所有権不可)。特定用途に限る。取得・譲渡・保有時に多様な税金。借主保護の特別法なし。 | 土地利用権取得・賃貸借契約アドバイス、不動産取得(利用権)契約書作成・レビュー、不動産関連税制コンサル、不動産DD |
| 貿易法規 | 原則「ネガティブリスト」方式で自由な輸出入。国防、治安、環境保護等の理由で制限あり。戦略性ハイテク物品は輸出許可必要。 | 輸出入規制品目調査、輸出入許可申請支援、貿易関連契約書作成・レビュー、通関・関税問題対応、国際経済制裁・貿易紛争対応 |
| 消費者保護法 | 「消費者保護法」に基づき、通信販売・訪問販売に7日間のクーリングオフ制度あり。商品使用後も検査目的や消費者帰責事由なしの破損ならクーリングオフ可能。 | 消費者保護法遵守に関するアドバイス、利用規約・販売規約の作成・レビュー、クーリングオフ制度対応支援、消費者トラブル・紛争対応 |
台湾法務のトータルサポート
海外事業の展開は、日本のビジネスマンや起業家にとって、必ずしも簡単ではありません。国際的なネットワークを保有する日本の法律事務所によるサポートは、進出前の検討・進出時に必要な会社設立等やビザ・労働法間系の問題の処理、進出時の契約等まで、全ての場面において、非常に有益です。書面や契約書等を現地言語で、現地法に準拠して作成する必要があるため、日本の法律事務所がハブとなって、現地の事務所等と連携しながら行うサポートが、非常に重要となります。

台湾における会社設立やその運用は、台湾法のレギュレーションに服し、
台湾でのビジネス展開は台湾の民法・会社法や行政法規等に、
その雇用関係は台湾の労働法に服します。
これらには、日本におけるレギュレーションと異なる規律が多数存在します。

台湾の法律事務所との提携
モノリス法律事務所は、台湾を拠点に、企業法務・商取引・国際案件を中心とした法務サービスを提供する椽智商務科技法律事務所と提携を結んでいます。台湾進出時の会社設立、登記手続、進出スキーム検討に関する法的支援や、台湾現地法人の運営に伴う日常的な法務相談および顧問対応、台湾法を踏まえた契約書の作成・レビューおよび多言語対応、台湾における労務管理、雇用契約、労働法対応に関する支援など、台湾進出を行う日本企業に対してトータルサポートを行う体制を構築しております。
海外事業をサポートするソリューション
当事務所は、リーガルリサーチや契約書作成、契約締結交渉などの一般的な弁護士業務に加えて、
国内企業の海外進出をサポートするための様々なソリューションを提供しております。

法務デューデリジェンス(DD)への対応
企業買収などの場面において、対象会社の設立・会社組織・株式、株主・関係会社・M&A、不動産・動産その他の資産、知的財産権、ファイナンス、契約、訴訟・紛争、コンプライアンスといった各分野について、特に重大な法的問題の有無を確認する法務調査である、いわゆる法務デューデリジェンス(DD)は、法律事務所側に組織力の求められる業務です。当事務所は、弁護士30名の所属する組織であり、台湾国内企業を対象とした法務DDや、DDレポートの作成を迅速に行う体制を整備しています。
※DDレポート作成を行う場合、概ね弁護士の稼働時間が30時間(弁護士費用100万円強)以上となります。
法務デューデリジェンス(DD)の実施例
法務デューデリジェンスにおいては、企業や事業運営の前提条件となる事項や、企業活動に重要な影響を及ぼす事項を、そのスコープとすることが基本となります。
具体的には、まず、会社機関やガバナンスの観点から当該企業や事業が存続し得るか、当該事業を推進するために必要な法令・許認可は何であり、その許認可は維持が可能か、といった点です。また、事業活動において重要な資産や負債の状況はどのようなものか、重要な各種契約(労務や関連当事者間取引等を含む)に欠缺はないか、有利な条件での継続が可能か、現段階では顕在化していないリスクが発生した場合の影響はどの程度か、といった点も問題となります。
これらを基本としながら、台湾においては、同地に固有の制度を踏まえた調査項目を加えることになります。下記は、想定される調査項目の例です。
会社法上の手続と登記
会社法に基づく株主会・董事会の決議事項、議事録の作成と保管、登記事項の届出が、適切に行われているかを確認します。台湾の会社法は、機関の権限配分や決議を要する事項について日本法と異なる定めを置いているため、日本の実務感覚で「取締役会決議で足りる」と考えていた事項が、台湾では株主会の決議を要する場合があります。過去の重要な意思決定について、必要な手続を経ているかを遡って検証します。
外国投資の許可と資本の出所
対象会社が外国人投資の許可を適法に取得し、その後の増資や株式譲渡についても必要な手続を経ているかを確認します。台湾においてとりわけ重要なのが、資本の出所に関する規制です。台湾では、中国大陸の資本による投資について、一般の外国投資とは異なる許可の枠組みが適用されます。買主側の株主構成によっては、日本企業であっても取引の実行可能性そのものに影響が及ぶため、買収の検討に入る前の段階で確認すべき項目です。
労務と就業規則の届出状況
台湾では、一定数以上の労働者を雇用する事業主に対し、就業規則(工作規則)を作成して主管官庁に届け出る義務が課されています。この届出は、内容の審査を伴う「核備」の手続であり、日本の労働基準監督署への届出とは性質が異なります。核備を経ていない就業規則は効力を生じないと解されているため、作成の有無だけでなく、核備の完了と、その後の改訂についての届出まで確認する必要があります。あわせて、労働時間、割増賃金、退職金の積立状況についても精査します。
不動産の権原と取得制限
事業用地・建物の権原に瑕疵がないか、担保や未解決の紛争がないかを確認します。あわせて、外国人および外国法人による不動産の取得には制限があり、相手国との関係によって取扱いが異なる点にも注意を要します。対象会社が保有する不動産について、将来の処分や担保設定に制約が生じないかを、買収後の事業計画と照らして検証します。
個人データと営業秘密
個人資料保護法に基づく取扱いの適正性、安全管理の体制、越境移転の状況を確認します。同法は近年改正が進められており、監督機関の整備など運用面の変化が続いているため、現時点の遵守状況に加えて、今後の体制整備の要否もあわせて評価します。また、技術情報や顧客情報については、営業秘密として保護されるための要件を満たす管理がなされているかを確認します。従業員との間の秘密保持契約および競業避止の定めも、あわせて検証の対象となります。

社内規程の整備
海外に拠点を持つ企業にとって、日本本社で整備した社内規程を各国拠点にどう展開するかは、継続的な課題です。当事務所は、本社の規程が各国の法令に適合しているかを検証し、修正すべき箇所を特定する業務を担当しています。
この業務の要点は、規程の展開は翻訳ではないという点にあります。調整が必要となる理由は2つです。第一に、日本法を前提とした条項が、現地法の下では無効となる、あるいは違法となる場合があること。第二に、現地法が求める事項が、日本の規程には初めから存在しない場合があることです。前者は削除や修正で対応できますが、後者は、そもそも問題の所在に気づかなければ見落とされます。
台湾について特徴的なのは、就業規則の届出が、内容の審査を伴う手続であるという点です。台湾では、一定数以上の労働者を雇用する事業主に対し、就業規則(工作規則)を作成して主管官庁に届け出る義務が課されていますが、この届出は「核備」と呼ばれ、主管官庁が内容を審査し、必要に応じて修正を求めます。核備を経ていない就業規則は、効力を生じないと解されています。
日本では、作成して届け出れば足りるという運用が一般的ですが、台湾では、審査を通過して初めて規程が機能することになります。翻訳して提出すれば済む話ではなく、審査を前提とした内容の設計が必要です。当事務所は、本社の規程を現地法の観点からレビューし、修正すべき箇所を特定したうえで、本社側で横断的に反映できる形に整理してお届けします。
社内規程整備の実施例
社内規程の現地法適合性のレビューにおいては、規程の種類ごとに、確認すべき論点が異なります。日本法を前提とした条項がそのままでは機能しない箇所と、現地法が求めているにもかかわらず日本の規程には存在しない箇所の、双方を洗い出すことになります。
下記は、台湾を対象とする場合の調査項目の例です。
就業規則(工作規則)
前述のとおり、台湾では就業規則の届出が内容の審査を伴う手続であり、核備を経なければ効力を生じないと解されています。したがって、作成・提出・公告・従業員への配布という一連の手続が完了しているか、改訂のたびに届出がなされているかを確認します。また、就業規則を労働者に不利益に変更する場合には、実務上、労働者全員の同意書または労使会議の同意を示す資料の提出を求められることが多いとされています。日本の「合理性があれば不利益変更も可能」という枠組みを前提とした規程では、この手続を想定していないことがあります。
ハラスメント防止に関する規程
台湾では、職場における性的嫌がらせの防止について、近年、事業主の義務が大きく強化されました。従業員数に応じて、相談窓口の設置と職場での掲示、防止措置・申立処理・懲戒に関する規程の策定が義務づけられています。違反した場合には過料に加えて企業名の公表が行われ得る点も、実務上の重みを増しています。日本のハラスメント防止規程を翻訳するだけでは、掲示や相談窓口の設置といった規程の外で実施すべき事項が漏れるため、規程と運用の双方を確認します。
賃金・労働時間に関する規程
労働時間の上限、割増賃金の計算方法、休日・休暇の付与については、台湾の労働基準法が日本法とは異なる定めを置いています。とりわけ、日本企業が持ち込みがちな固定残業代の仕組みについては、台湾の枠組みの下で有効に機能するかを個別に検証する必要があります。あわせて、労働紛争における使用者側の立証責任が重く設計されていることを踏まえ、労働時間の記録をどのように残す運用とするかまで、規程に落とし込んでおくことが実務上の要点となります。
個人データの取扱いに関する規程
個人資料保護法に基づく取得時の告知事項、本人の権利行使への対応、安全管理措置、越境移転の取扱いを確認します。日本の個人情報保護法を前提とした規程では、本人に告知すべき事項の範囲が異なります。同法は改正が進められており、監督機関の整備など運用面の変化が続いているため、改正後を見据えた体制整備の要否もあわせて検討します。
営業秘密・競業避止に関する規程
技術情報や顧客情報を営業秘密として保護するためには、秘密として管理されていることが前提となります。アクセス権限の設定、表示、持出しの制限といった管理の実態が、規程と一致しているかを確認します。あわせて、従業員との競業避止の定めについては、台湾法の下で有効と認められるための要件を満たしているかを検証します。日本の規程をそのまま用いると、要件を欠いて効力が認められない可能性があります。
モノリス法律事務所は、クロスボーダー化・グローバル化の進むIT領域において、日本をリードする法律事務所を目指し、国内企業や事業体による台湾事業のサポートを、その重要な使命の一つと位置付けています。


















