
国際法務・モンゴル国
モノリス法律事務所は、日本企業によるモンゴル共和国でのビジネス展開に際し、法務面からの実践的な支援を行っております。
モンゴル市場は、鉱業・インフラ開発・エネルギー・建設・ITサービスなど、多岐にわたる分野において注目を集めていますが、
その法制度や商習慣は日本と大きく異なるため、進出にあたっては的確な法的リスクの把握と現地法務への対応が不可欠です。
モンゴルは、議会制民主主義体制を採用する国であり、1992年に新憲法を制定して以降、市場経済体制への移行を進めてきました。立法府である国家大会議(State Great Khural)を通じて制定される法律により、外国投資や企業活動が広く規律されています。
会社法や外国投資法をはじめとする主要なビジネス関連法令は整備されているものの、法改正の頻度が高く、運用においては政治的・行政的な裁量が影響する場面も少なくありません。また、裁判制度や契約執行力に関しても先進国とは異なる事情があるため、進出前からの綿密な調査と戦略的対応が求められます。
モノリス法律事務所は、海外展開を志向する日本企業のビジネスを多面的に支援しており、モンゴルについても、現地子会社の労務デューデリジェンス、資源の輸出入スキームの適法性調査、日本拠点の形態の検討、周辺国への展開可否の調査といった案件を手がけてまいりました。本ページでは、これらの案件を通じて得られた実務上の注意点についても、守秘義務の範囲内でご紹介しています。
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モンゴル法務に対応するチームと国際的なネットワーク

特にITなど先端分野に関わる国際法務には、専門性の高いチームによるサポートが必要不可欠です。モノリス法律事務所は、ITに強い弁護士や海外弁護士資格を有する外国語話者、現役エンジニアを含むITコンサルタント等による組織を組成し、また、モンゴルの各専門家を含む国際的なネットワークを活用して、知見の共有や蓄積を行う体制を整備しています。
モンゴル法務のサポート内容
会社設立支援

モンゴルでの店舗やフランチャイズビジネス展開のため、現地法人(外国投資企業)設立を支援しています。外国投資企業の最低出資金は10万USドルと規定されており 、法人登録局での社名登録から外国投資貿易庁での証明書発行、税務署での納税登録まで、多岐にわたる手続きを、現地法律事務所と連携してスムーズに進行することが可能です。
契約締結支援

日本企業がモンゴル国内の大手企業と商品を販売する契約を締結する際、当事務所はモンゴルの投資法や民法に基づき、契約書の作成、レビュー、交渉を包括的にサポートしています。外国投資家は土地の所有権ではなく利用権のみが付与されるなど、モンゴル特有の法的制約を考慮し、貴社のビジネスモデルに合致した最適な契約条件を構築します。
M&Aと法務DD

日本企業がモンゴル国内企業をM&Aする際、法務デューデリジェンス等の一連の業務に対応可能です。モンゴルの会社法、投資法などの関連法令に基づき、対象企業の法的リスクを詳細に評価。特に、外国投資規制(特定分野での許可要件など)や土地利用権の制約を深く掘り下げ、潜在的な問題点を洗い出します。貴社が安心して投資判断を行えるよう、法的な分析とアドバイスを提供します。
労務問題対応

モンゴル国内企業で発生する労務問題に対し、法的観点から対応をサポートします。外国人の就労には複数の機関からの許可が必要となるなど、モンゴルの労働法規は複雑で、日本法と異なるレギュレーションの下にあります。当事務所は、労働契約、就労許可、紛争解決など、多岐にわたる労務課題に対応し、貴社の事業運営における法的安定性を確保します。
モンゴル案件の取扱事例
当事務所が実際に取り扱ったモンゴル案件から、4つをご紹介します。案件の特定を避けるため、当事者・対象会社・取引対象等は抽象化しています。
現地子会社の労務DD

日本企業のモンゴル現地子会社について、労務デューデリジェンスを実施した案件です。現地法律事務所と協働し、調査用の質問票と、対象会社に準備いただく必要書類のリストの作成から着手しました。現地調査では、従業員数が10名未満であれば全員、10名以上であれば各役職・部門から1名ずつを対象とし、1名あたり30分程度の面談を実施する設計としています。報告書は現地事務所がモンゴル語と英語で作成し、当事務所が内容を確認したうえで日本語版を作成して納品しました。着手から納品まで6〜8週間を要しています。
資源の輸出入スキーム

モンゴル産の資源を、第三国を経由して日本へ輸送するスキームについて、適法性を調査した案件です。モンゴル法と当該第三国の法の双方が関わるため、調査事項を切り分けて、それぞれの国の法律事務所へ照会する設計としました。モンゴル側には、輸出規制上の品目分類と必要なライセンス、サプライヤーの登記情報・株主構成・実質的支配者(UBO)、両国間の特別経済区域の利用可否を。第三国側には、同国の関連規制の該当性、港湾運営会社・フォワーダー・船会社の調査、陸上輸送の可否を照会しています。
日本拠点の形態の検討

モンゴル法人が日本国内で販売先を開拓するにあたり、日本法人を新設するか、モンゴル法人の日本支店を設置するかをご相談いただいた案件です。ご相談の前提には「日本法人があれば日本からモンゴルへの送金が容易になる」というお考えがありましたが、別法人であっても送金原因と根拠資料が明確であれば送金は可能であり、逆に同一法人の本店・支店間であっても根拠なく自由に送金できるわけではないことをご説明しました。結果として、現段階では拠点の新設を見送り、事業規模が拡大して多額の資金移動が生じる段階で、国際税務の観点から改めて検討する方針となっています。
周辺国への展開可否の調査

モンゴルに現地法人を持つ日本企業から、周辺国への展開可否についてご相談いただいた案件です。対象国ごとに現地法律事務所を起用して一律に調査すれば、費用が際限なく膨らみます。そこで、三段階のリーガルスクリーニングをご提案しました。第一段階では、外国法人による事業保有の可否、輸入規制、商品登録義務、利益送金の可否といったレッドフラグを確認し、進出の可否を判定します。第二段階では、これを通過した法域について、当事務所内で予備的な法務レビューを実施します。第三段階として、なお商業的な魅力が高い法域についてのみ、現地法律事務所による確認を取得します。
モンゴルにおけるビジネス法務
投資法と外国投資規制
モンゴルの投資環境は、2013年11月1日に施行された「投資法」によって大きく規定されています。この法律の目的は、モンゴル国へ投資する投資家の法的権利・利益を保護し、投資に対する一般的な法的保証を与え、投資を支援し、税務環境を安定させることにあります。
「投資法」の重要な特徴は、国内外の投資家を同等に扱う方針が図られた点です。これにより、従来の外国投資家向けの特別な優遇措置はなくなりました。一方で、過去に多数の外国企業が実態を伴わない会社設立を行った経緯から、外国投資企業の最低出資金が10万USドルに引き上げられています。
特定の分野においては、外国政府が発行済株式の33%以上を所有する法人による投資には許可が必要です。これには鉱業、銀行・金融業、マスコミ・通信業が含まれます。また、5000億トゥグルグ以上の大規模投資を行う法人に対しては、政府と投資契約を締結することで、税率・規模を一定期間安定させる保証を得られる「保持証書」が発行される制度も存在します。会社設立と法人形態
モンゴルにおいて外国企業がビジネス業務を行う事業拠点としては、投資法により「外国投資企業(現地法人)」あるいは「駐在員事務所」のいずれかの形態をとることが規定されています。駐在員事務所は外国法人の代理事務所であり、モンゴルで営業業務を実施する権利がないため、例えば製造工場を設立する場合には現地法人を設立する必要があります。外国投資企業は、モンゴルで設立・登記された企業で、その株式の少なくとも25%を外国人投資家が保有し、外国投資家の最低株式払込額は1人あたり10万USドルと規定されています。
会社設立手続きは多岐にわたり、法人登録局での社名登録、外国投資貿易庁(FIFTA)での外資系会社の証明書発行、法人登録局での法人登録証明書発行、会社印鑑の発行、所轄税務署での納税法人登録、FIFTAでの投資者カードの発行など、複数の機関とのやり取りが必要です。提出書類も、申請書、取引銀行からの証明書、個人の身分証明書の写し、会社名称の許可、投資者契約書、定款、事業計画など、広範にわたります。会社運営とガバナンス
モンゴルの会社法の特徴として、定款自治が大幅に認められている点が挙げられます。また、日本の「代表取締役」に相当する明確な規定はなく、執行役が会社を代表するとされています。
株主総会は毎年開催される必要があり、取締役会の決議に基づいて代表取締役が招集します。上場会社においては、独立取締役が過半数を占めることが義務付けられています。取締役会は取締役の中から取締役会会長を選任・解任する権限を持ち、その報酬を決定します。また、従業員規模や株式保有状況に応じて、従業員代表の取締役への登用が義務付けられる場合もあります。企業は、会社状況、業績予想、R&D、重要事項などを含む経営報告書や、コーポレートガバナンス報告書を作成する必要があります。これらの規定は、モンゴルが国際的な企業統治の原則を取り入れつつあることによるものですが、外国投資家にとっては、モンゴル会社法の詳細な理解と現地の実務に合わせたガバナンス体制の構築が求められます。民法と不動産関連法務
モンゴルの民法において特徴的なのは、不動産に関する規定でしょう。モンゴルの全ての土地は国家のものと憲法が規定した上で、国家は土地を私的所有のためにモンゴル国民に配分できることが認められていますが、外国投資家や外国投資企業に与えられるのは利用権のみであり、所有権は認められていません。さらに、モンゴル国民は自ら所有する土地の区画を外国市民に譲渡することは禁止されています。この土地所有権の制限は、モンゴルで事業を行う外国企業にとって重要な制約であり、不動産戦略を策定する上で不可欠な考慮事項となります。
紛争解決と仲裁
モンゴルでは、民事訴訟法、裁判所判決執行法、調停法、仲裁法が制定されています。民事訴訟においては三審制が採用されており、第一審は区民事初級裁判所、第二審は民事控訴審裁判所、第三審は最高裁判所が管轄します。
調停制度については、JICAの法整備支援も受けながら「調停法」が制定されており、2024年現在、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約(シンガポール条約)に適合するよう、調停法の改正作業が進められています。
国際仲裁に関しては、モンゴルは1994年10月24日に外国仲裁判断の承認と執行に関するニューヨーク条約を批准しており、これにより外国仲裁判断のモンゴル国内での執行が法的に保障されています。モンゴル商工会議所には国際仲裁センター(MNCCI)も設置されており、投資家は政府機関と締結した契約から生じる紛争を、双方の協議により国内外の仲裁人を任命して解決する権利を有しています。
モンゴルにおける外国投資規制の概要
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 管轄法 | 投資法(2013年11月1日施行) | 2002年外国投資法を破棄し、国内外投資家の公平化を図る |
| 最低出資金 | 外国投資企業につき10万USドル以上 | 過去の規制緩和による乱立を是正 |
| 規制業種 | 外国政府所有法人(株式33%以上保有)の場合に許可が必要な分野:鉱業、銀行・金融業、マスコミ・通信 | |
| 法人形態 | 現地法人(外国投資企業)または駐在員事務所のみ | 支店は営業業務不可(建設業の一部例外あり) |
| 土地所有権 | 外国投資家・外国投資企業は利用権のみ | 土地は国家所有で、国民による外国市民への譲渡は禁止 |
| 税務安定化 | 投資法(2013年11月1日施行) | 大規模投資(5000億MNT以上)は保持証書・投資契約により税率・規模を安定化可能 |
| 紛争解決 | 国内外の仲裁人による仲裁が可能 | モンゴルはニューヨーク条約批准済み |
現地法律事務所との協働における実務上の注意点
モンゴル案件は、ほぼ例外なく現地法律事務所との協働になります。そして、日本の法律事務所がハブとなることの意義は、単に窓口を一本化することにあるのではありません。
現地法律事務所は、現地のクライアントのために、現地の法令と商慣行を前提とした業務を日々行っています。その水準は高く、現地法に関する分析は正確です。しかし、現地で標準的とされる業務の進め方と、日本企業が求める業務の進め方との間には、どうしてもズレが生じます。法制度が違えば、何を書面に明記すべきかの感覚も、何を確認すれば足りるとするかの基準も異なるためです。
このズレは、どちらかが誤っているから生じるものではありません。前提としている制度と実務慣行が違うことから、必然的に生じるものです。当事務所の役割は、このズレを事前に把握し、双方にとって無理のない形に調整したうえで案件を進行させることにあります。実際の案件で調整を要した点を、4つご紹介します。
委任契約書の条件
現地事務所から提示される委任契約書は、現地の商慣行に沿った標準的な書式であることがほとんどです。一方、日本企業は、社内の稟議と経理処理の都合上、報酬が税込か税抜か、どこまでが報酬に含まれどこからが実費かといった点を、書面上明確にしておく必要があります。遅延損害金の水準についても、現地の商慣行では一般的な定めが、日本企業の社内基準には馴染まないことがあります。当事務所は、契約条件を日本企業の社内手続に乗る形に整理したうえで、その必要性を現地事務所にご説明し、修正をお願いする役割を担っています。現地事務所にとっても、支払や精算をめぐる後日の行き違いを避けられるという意味があります。
調査の深度と期待値
現地事務所が作成する報告書は、現地法に照らした結論としては完結しています。しかし日本企業が知りたいのは、多くの場合、「現地法上適法か」だけでなく「日本の本社の基準に照らして問題がないか」です。たとえば労務の分野では、日本では賃金の不払いが刑事責任を生じ得る重大な問題とされるため、同じ労務デューデリジェンスであっても、関心の所在が現地とは異なります。当事務所は、日本側が何を知りたいのかを具体化したうえで、追加の確認事項として現地事務所にお伝えします。問いの立て方を翻訳する作業であり、これを日本側で行っておくことで、現地事務所の作業も手戻りなく進みます。
用語と役職名の扱い
現地事務所は、現地法の用語を用いて正確に記述しています。これを日本語にする段階で、日本の会社法の用語や、クライアント社内で用いられている役職名に置き換えたくなる場面が生じます。しかし、「独立取締役」や「COO」といった名称は、単なる呼称ではなく法的な地位を意味するものであり、安易な置き換えは報告書の正確性を損ないかねません。当事務所は、日本側の意図を確認したうえで、その理由を付して現地事務所に照会するという手順を採っています。現地事務所も専門家として作成したものである以上、理由の説明があって初めて、適切な修正の可否を判断できるためです。
費用と進行の見通し
現地事務所の報酬は時間単価によることが多く、日本企業が前提とする予算確定のプロセスとは組み立てが異なります。当事務所は、作業範囲が確定した段階で費用上限(fee cap)を設定していただくなど、日本側が予算を確定できる形への調整をお願いしています。また、報告書の修正が現地語版・英語版にまで及ぶ場合には、現地事務所への追加の依頼と見積りが必要になるという構造を、あらかじめ日本側にご説明しています。修正の範囲を早い段階で確定させることが、双方の手戻りを減らし、費用と時間の両方を抑えることにつながります。
モンゴル法務のトータルサポート
海外事業の展開は、特に現地の言語をまだ話せない、又は読めないビジネスマンや起業家にとって、必ずしも簡単ではありません。国際的なネットワークを保有する日本の法律事務所によるサポートは、進出前の検討・進出時に必要な会社設立等やビザ・労働法間系の問題の処理、進出時の契約等まで、全ての場面において、非常に有益です。書面や契約書等を現地言語で、現地法に準拠して作成する必要があるため、日本の法律事務所がハブとなって、現地の事務所等と連携しながら行うサポートが、非常に重要となります。

モンゴルにおける会社設立やその運用は、モンゴル法のレギュレーションに服し、
モンゴルでのビジネス展開はモンゴルの民法・会社法や行政法規等に、
その雇用関係はモンゴルの労働法に服します。
これらには、日本におけるレギュレーションと異なる規律が多数存在します。
モンゴル国の法制度の詳細
モンゴル国の法制度は、1992年の民主化以降、議会制民主主義に基づいた法体系へと移行しました。憲法を頂点とする法体系が整備され、民法、商法、刑法など、様々な分野で法律が制定・施行されています。
法整備の過程で、英米法(コモンロー)と大陸法(シビルロー)の考え方が混在した法体系を採用しており、法執行機関の能力や腐敗の問題などが課題として指摘されているという側面もあります。
海外事業をサポートするソリューション
当事務所は、リーガルリサーチや契約書作成、契約締結交渉などの一般的な弁護士業務に加えて、
国内企業の海外進出をサポートするための様々なソリューションを提供しております。

法務デューデリジェンス(DD)への対応
企業買収などの場面において、対象会社の設立・会社組織・株式、株主・関係会社・M&A、不動産・動産その他の資産、知的財産権、ファイナンス、契約、訴訟・紛争、コンプライアンスといった各分野について、特に重大な法的問題の有無を確認する法務調査である、いわゆる法務デューデリジェンス(DD)は、法律事務所側に組織力の求められる業務です。当事務所は、弁護士30名の所属する組織であり、モンゴル国内企業を対象とした法務DDや、DDレポートの作成を迅速に行う体制を整備しています。
モンゴルにおける法務DDは、日本国内のDDと同じ枠組みでは進みません。対象会社の資料が現地語で作成されていること、現地での従業員面談を伴うこと、そして成果物が複数言語で作成されることが、進行上の前提となるためです。実際に当事務所が担当した案件では、現地事務所がモンゴル語と英語で報告書を作成し、当事務所が内容を確認したうえで日本語版を作成して納品する形を採りました。着手から納品までは6〜8週間を要しています。
※DDレポート作成を行う場合、概ね弁護士の稼働時間が30時間(弁護士費用100万円強)以上となります。
法務デューデリジェンス(DD)の実施例
法務デューデリジェンスにおいては、企業や事業運営の前提条件となる事項や、企業活動に重要な影響を及ぼす事項を、そのスコープとすることが基本となります。
具体的には、まず、会社機関やガバナンスの観点から当該企業や事業が存続し得るか、当該事業を推進するために必要な法令・許認可は何であり、その許認可は維持が可能か、といった点です。また、事業活動において重要な資産や負債の状況はどのようなものか、重要な各種契約(労務や関連当事者間取引等を含む)に欠缺はないか、有利な条件での継続が可能か、現段階では顕在化していないリスクが発生した場合の影響はどの程度か、といった点も問題となります。
これらを基本としながら、モンゴルにおいては、同国に固有の制度を踏まえた調査項目を加えることになります。下記は、当事務所が実際に担当した案件および想定される論点に基づく、調査項目の例です。
労務
労働契約の有無と記載事項、就業規則および内部労働規則の整備状況、労働時間の管理方法と時間外労働の実態、賃金・残業代の支払状況、税金および社会保険料の納付状況を調査します。あわせて、モンゴル労働法に規定される「物的責任」——従業員が業務遂行中に会社に生じさせた損害について責任を負う制度——に対応する契約(Full Material Liability Agreement)の有無や、秘密保持契約の有無も確認します。これらは日本の雇用契約には存在しない類型であり、現地では多くの企業で締結が求められるものです。
外国投資規制
対象会社が外国投資企業に該当するか、外国投資家の最低出資額(1人あたり10万USドル)の要件を満たしているかを確認します。あわせて、外国政府が発行済株式の33%以上を所有する法人による投資に許可が必要とされる分野(鉱業、銀行・金融業、マスコミ・通信業)に該当しないかを検証します。
土地利用権
モンゴルでは外国投資家および外国投資企業に土地の所有権が認められず、利用権のみが付与されます。事業用地の権原が利用権として適法に取得・維持されているか、その残存期間と更新の可能性、および土地上の建物等との権利関係を確認します。
許認可
鉱業、金融、通信など許認可を要する分野においては、許可の有効性、更新状況、許可条件の充足状況を確認します。あわせて、株主の変動が許認可に影響しないかを検証します。M&Aの場面では、この点が取引の実行可能性そのものを左右します。
会社機関とガバナンス
モンゴル会社法は定款自治を広く認めており、また、日本の「代表取締役」に相当する明確な規定がなく、執行役が会社を代表するとされています。定款の記載と実際の意思決定の運用が整合しているか、株主総会および取締役会が適法に開催されているか、上場会社においては独立取締役が過半数を占めているかを確認します。

社内規程の整備
海外に拠点を持つ企業にとって、日本本社で整備した社内規程を各国拠点にどう展開するかは、継続的な課題です。当事務所は、現地法律事務所と協働し、本社の規程が各国の法令に適合しているかを検証し、修正すべき箇所を特定する業務を担当しています。
この業務の要点は、規程の展開は翻訳ではないという点にあります。調整が必要となる理由は2つです。第一に、日本法を前提とした条項が、現地法の下では無効となる、あるいは違法となる場合があること。第二に、現地法が求める事項が、日本の規程には初めから存在しない場合があることです。前者は削除や修正で対応できますが、後者は、そもそも問題の所在に気づかなければ見落とされます。
モンゴルについて注意を要するのは、制度の枠組みが日本に近いことです。モンゴルの労働法は、使用者が内部労働規則を定めることを前提とした規定を置いており、賃金の支払日などを内部労働規則または雇用契約で定めるものとしています。使用者からの解雇に正当な理由を要する点も、日本の実務に近いといえます。
しかし、枠組みが近いことは、そのまま使えることを意味しません。解雇の予告期間、賃金からの控除の上限、休暇の日数といった具体的な水準は、日本法とは異なります。枠組みが異なる法域では「違う」という前提で確認作業が行われますが、近い法域では、かえって見落としが生じやすくなります。当事務所は、本社の規程を現地法の観点からレビューし、修正すべき箇所を対比表の形で特定したうえで、本社側で横断的に反映できる形に整理してお届けするという進め方を標準としています。
社内規程整備の実施例
社内規程の現地法適合性のレビューにおいては、規程の種類ごとに、確認すべき論点が異なります。日本法を前提とした条項がそのままでは機能しない箇所と、現地法が求めているにもかかわらず日本の規程には存在しない箇所の、双方を洗い出すことになります。
下記は、モンゴルを対象とする場合の調査項目の例です。
就業・人事関連規程
モンゴルの労働法は、使用者が内部労働規則を定めることを前提とした規定を置いています。日本の就業規則に相当する枠組みがある点では日本に近いものの、内容面の水準は異なります。解雇については、使用者からの解雇に正当な理由(重大な非行、職務上の義務違反の繰り返し、組織変更に伴う人員削減等)が必要とされる一方、予告期間は勤続年数に応じて定められており、日本の30日前予告とは建て付けが異なります。また、解散や人員削減に伴って契約を終了させる場面では、労働者の代表に対する事前の通告と、その後の交渉が求められる場合があります。日本の就業規則には存在しない手続です。労働法は2021年に大きく改正され、有期契約の利用制限、非標準的な雇用形態の保護、集団解雇に関する規定、退職金の水準など、多岐にわたる変更が加えられているため、改正前の情報に基づく規程になっていないかを確認することも、重要な作業です。
賃金・懲戒に関する規程
モンゴルの労働法は、賃金からの控除について、1回あたりの上限と、複数の控除を行う場合の合計の上限を定めています。日本の労働基準法が定める減給の制裁の上限とは、計算の仕方も水準も異なるため、日本の規程をそのまま翻訳すると、現地法が認める上限を超える控除を許容する内容になりかねません。また、賃金の支払日を内部労働規則または雇用契約で定めることが求められている点も、規程に反映すべき事項です。
ハラスメント防止・差別禁止に関する規程
日本では、ハラスメントの防止措置が事業主の義務とされており、多くの企業が防止規程を整備しています。モンゴルの労働法も、職場における性別に基づく差別、暴力、性的ハラスメントを明確に禁止しており、この点では共通します。もっとも、モンゴルの労働法は、直接的な差別のみならず間接的な差別も禁止し、同一価値労働同一賃金の原則を明文で定めています。日本の防止規程は、ハラスメントの類型ごとの防止措置を中心に構成されていることが多く、差別の禁止という観点からの記載が手薄になりがちです。また、在宅勤務等の形態で就労する場合についても、差別・ハラスメント・暴力のない労働条件を提供する使用者の義務が定められているため、勤務形態ごとの適用関係も確認します。
労働安全衛生に関する規程
モンゴルでは、労働安全衛生に関する法令が、使用者の義務を具体的に列挙しています。リスクアセスメントの実施、安全対策の実施と管理、個人用保護具の無償提供、機械・設備の安全性の確保、応急処置設備の提供、事故および職業病の調査、安全衛生に関する記録の保持などです。労働監督官がこれらの遵守を監視し、違反に対して罰則を課す権限を有しています。日本企業の安全衛生規程は、製造業など特定の業種では詳細に整備されている一方、事務部門が中心の拠点では簡素なものにとどまっていることがあります。拠点の業態にかかわらず使用者の義務が課される点に注意が必要です。なお、2021年の労働法改正に対応する形で、労働安全衛生に関する法令の改正に向けた議論が進められていると報じられており、動向の確認も必要です。
個人データの取扱いに関する規程
モンゴルでは、個人情報の保護に関する包括的な法令が2022年に施行されており、公的部門・民間部門の双方に適用されます。日本の個人情報保護法を前提とした規程では、本人の同意の取り方、取得時に通知すべき事項、越境移転の取扱いといった点で、求められる対応が異なる可能性があります。施行から日が浅く、運用の蓄積も限られるため、現地事務所への確認が特に有用な領域です。
外国人の雇用に関する規程
モンゴルでは、外国人を雇用する場合に、複数の機関からの許可を要します。日本から駐在員を派遣する場合、就労に必要な許可の取得・維持・更新の手続を、社内の規程や運用に落とし込んでおく必要があります。これは、現地法が求めているにもかかわらず、日本の規程には初めから存在しない項目の典型です。本社の規程を翻訳するだけでは、この種の論点は決して現れません。
モノリス法律事務所は、クロスボーダー化・グローバル化の進むIT領域において、日本をリードする法律事務所を目指し、国内企業や事業体によるモンゴル事業のサポートを、その重要な使命の一つと位置付けています。
























