カザフスタンの法人税制を弁護士が解説

中央アジア最大の経済規模と豊富な天然資源を誇るカザフスタン共和国(以下、カザフスタン)は、近年、エネルギー資源への依存からの脱却と産業の多角化を国家戦略として掲げ、IT産業の育成や外国投資の誘致を強力に推進しています。日本企業にとっても、ユーラシア市場への重要なゲートウェイとしてカザフスタンの戦略的価値は高まっています。現地でのビジネス展開や現地法人の設立を検討する日本企業の経営者および法務部員にとって、カザフスタンの税制を正確に理解することは、コンプライアンスの遵守のみならず、グループ全体での事業計画の策定や投資収益の最大化において不可欠な要素です。
第一に、カザフスタンの標準法人税率は原則として20パーセントであり、日本の法定実効税率と比較してフラットかつ比較的低率な構造を有しています。
第二に、2026年1月施行の新税法典により、付加価値税(VAT)の基本税率が12パーセントから16パーセントへ引き上げられたほか、高額な自動車や不動産などを対象とする贅沢税が新たに導入され、消費および資産保有に対する課税が強化されました。
第三に、非居住者に対する源泉徴収税については、利息に対する税率が原則10パーセントに引き下げられ、配当についても出資比率等の一定要件下で5パーセントの軽減税率が適用されるなど、越境取引に直接影響を与える変更が行われています。
第四に、アスタナ・ハブ(Astana Hub)をはじめとする特別経済区(SEZ)では、特定の要件を満たすIT関連企業に対して法人税を100パーセント免除するという極めて強力な優遇措置が維持されていますが、これらの適用には税法典の明文に基づく厳格な実態要件の具備が求められます。
第五に、移転価格税制の強化や行政手続訴訟法典(APPC)を通じた新たな税務争訟制度の運用が進んでおり、最高裁判所の近年の判例からも、税務当局との紛争リスクに対する事前の法的備えが企業防衛上極めて重要であると言える構造となっています。
本記事では、2026年1月より施行された新税法典を中心に、カザフスタンの法人税制について、日本の法律や税制との異同を交えながら詳細に解説します。
この記事の目次
カザフスタンの基本的な税制の概要と日本法との比較
法人税の基本構造と実効税率の違い
カザフスタンにおける標準的な法人税率(CIT)は原則として20パーセントであり、居住者法人およびカザフスタン国内で活動する外国法人の支店に対して適用されます。日本の法人税制においては、国税である法人税に加えて、地方法人税、法人住民税、事業税などが複雑に組み合わさり、法定実効税率が約29パーセントから30パーセント程度となるのが一般的です。これに対し、カザフスタンの法人税制は地方税による上乗せがない単一の税率で構成されるフラットな構造であり、計算構造が比較的シンプルであるという特徴を持っています。課税ベースに関して、居住者法人は全世界所得に対して課税される一方、カザフスタンに恒久的施設(PE)を有する非居住者は、当該PEに帰属するカザフスタン国内源泉所得のみが課税対象となります。
しかしながら、すべての産業に対して一律に20パーセントが適用されるわけではありません。2025年7月に採択され2026年1月に施行された新税法典(New Tax Code)では、特定の産業に対する課税の強化と緩和が明確に打ち出されています。以下の表は、カザフスタンにおける主要な産業別の法人税率をまとめたものです。
| 産業・業種 | 適用される法人税率(2026年以降) |
| 一般企業(標準税率) | 20% |
| 銀行・ギャンブル産業(カジノ等) | 25% |
| 社会インフラ分野で活動する法人 | 5%(2026年)、10%(2027年以降) |
| 農業協同組合 | 6% |
| 農業・水産養殖業の生産者 | 3% |
銀行(ただし企業向け貸出から生じる所得を除く)やカジノ、ブックメーカーなどのギャンブル産業に対しては、税率が25パーセントへと引き上げられました。この政策から、高収益を上げる金融セクターや娯楽産業からより多くの税収を確保し、それを農業や社会セクターの減税に振り向けるという国家の財政意図があるということが言えるでしょう。
付加価値税(VAT)の税率引き上げと登録閾値の変更
カザフスタンにおける付加価値税(VAT)は、日本の消費税に相当する多段階の付加価値に対する間接税です。長らく基本税率が12パーセントに設定されていましたが、2026年1月1日施行の新税法典により、標準税率が16パーセントへと大幅に引き上げられました。日本の消費税が現在10パーセント(軽減税率8パーセント)であることと比較すると、カザフスタンにおける商品販売やサービス提供時の税負担はより重いものとなったと言えます。
また、税率の引き上げ以上に企業の実務に影響を与えるのが、VATの強制登録義務が生じる売上基準額(登録閾値)の引き下げです。新税法典では、この閾値が従来の20,000月算定指数(MCI)から10,000MCIへと半減されました。2025年時点の換算で約3,930万テンゲという低い水準に設定されたことにより、これまで免税事業者として活動していた多くの中小企業が新たに課税事業者としてVATの申告および納付義務を負うことになります。この政策変更から、カザフスタン政府がビジネスの不当な分割による租税回避を封じ込め、地下経済を縮小させることで税収の透明性を高めようとしていることが言えるでしょう。
なお、医薬品や医療機器の販売、医療サービスの提供については、2026年は5パーセント、2027年以降は10パーセントへと段階的に引き上げられるものの、標準税率よりも低い軽減税率が適用され、社会的に重要な分野への配慮がなされています。
非居住者向けの源泉徴収税(WHT)と配当課税
日本企業がカザフスタンの企業とクロスボーダー取引を行う際、あるいは現地に子会社を設立して配当を受け取る際に極めて重要となるのが、非居住者に対する源泉徴収税(WHT)です。恒久的施設(PE)を持たない非居住者がカザフスタン国内を源泉とする所得を得る場合、所得の支払時に支払者(カザフスタン居住者)によって税額が源泉徴収されます。
2026年施行の新税法典では、国際取引に関する源泉徴収税のルールにいくつかの重要な変更が加えられました。以下の表に新税法典に基づく主要な源泉徴収税率を整理します。
| 所得の種類(非居住者向け) | 源泉徴収税率(国内法に基づく基本税率) |
| 配当(カザフスタン法人の資本の25%未満を保有する場合) | 15% |
| 配当(資本の25%以上を保有し、230,000MCI以下の場合) | 5% |
| 配当(資本の25%以上を保有し、230,000MCIを超える部分) | 15% |
| 利息・貸付金利息 | 10% |
| ロイヤルティ(使用料) | 15% |
| サービス提供による所得(経営指導、コンサルティング等) | 20% |
| タックスヘイブン(優遇税制国)の居住者に対する支払い | 20% |
注目すべき変更点のひとつは、海外の貸付人に対する利息の支払いに関する源泉徴収税率が、新税法典第682条に基づき、従来の15パーセントから10パーセントへと引き下げられたことです。この10パーセントという税率は、カザフスタンが締結している多くの租税条約における制限税率と同等です。このことから、外国資本による現地の資金調達を円滑にし、条約適用のための煩雑な手続きを介さずとも低い税率を享受できるようにすることで、対内投資を促進しようとしていることが言えるでしょう。
配当については、原則として15パーセントが課されますが、配当を支払う法人の資本の25パーセント以上を直接的または間接的に保有する非居住者に対しては、230,000MCI(約9億5,400万テンゲ)以下の配当額について5パーセントの軽減税率が適用され、これを超える超過額について15パーセントが課されるという累進的なハイブリッド構造が導入されました。これに伴い、特定の条件下で認められていたキャピタルゲインや配当に対する「3年ルール(株式を3年以上保有した場合の免税措置)」は撤廃されています。
また、コンサルティング、法務、マーケティング、エンジニアリングなどのサービス提供による所得については、実際にサービスが提供された場所(日本国内で行われたか等)に関わらず、カザフスタン国内源泉所得とみなされ、20パーセントという高率の源泉徴収税が課される点に日本企業は強い注意を払う必要があります。さらに、支払い先がタックスヘイブン(優遇税制国)に所在する場合は、国内法や租税条約の軽減税率に関わらず一律20パーセントが適用されます。
カザフスタン新税法典(2026年施行)における重要な改正点

贅沢税の導入と企業活動への影響
カザフスタンでは、旧ソ連圏の法体系に特有の傾向として、数年から十数年に一度、税法典(Tax Code)という巨大な法典そのものを全面的に置き換える抜本的な法改正が行われます。2025年7月に採択され2026年1月より施行された新税法典における最も象徴的な改正のひとつが、「贅沢税(Luxury Tax)」の導入です。
これは、特定の高額な資産の購入や保有に対して重い物品税を課す仕組みです。具体的には、7,500万テンゲを超える自動車、1億テンゲを超えるヨットおよび自家用飛行機に対して10パーセントの税が課されます。また、4億5,000万テンゲを超える不動産に対しても、その資産価値の2パーセントが課税されます。
日本においては、過去に自動車取得税や物品税といった類似の制度が存在し、現在でも環境性能割などが課されますが、特定の高額資産そのものの価格に着目し、富裕層に対する富の再分配を直接的に意図した単独の国税レベルの贅沢税は存在しません。カザフスタンに進出する日本企業が、役員用の社用車として基準額を超える高級車を購入する場合や、大規模な不動産を取得する場合には、この贅沢税が直接的なコスト増加の要因となるため、事前の資金計画に織り込む必要があります。
カザフスタン新税法典の特別経済区とアスタナ・ハブの優遇税制
100パーセントの法人税免除と厳格な実態要件
カザフスタン政府は、エネルギー資源への依存から脱却し、産業の多角化とテクノロジー分野のイノベーションを推進するため、国内に複数の特別経済区(SEZ)を設けています。その中でも、首都アスタナに設立されたIT分野に特化した国際テクノロジーパーク「アスタナ・ハブ(Astana Hub)」は、日本企業のITベンチャーやシステム開発会社にとって極めて魅力的な進出先となっています。
2026年施行の新税法典においても、アスタナ・ハブの参加要件を満たす企業に対する強力な優遇税制が再編されつつ維持されています。日本の租税特別措置法に基づく研究開発税制や賃上げ促進税制などが、算出された法人税額の一定割合(上限あり)を税額控除する制度に留まるのに対し、アスタナ・ハブの優遇措置は、対象となる適格所得に対する法人税を「100パーセント免除(実質無税)」するという極めて強力な内容となっています。
カザフスタン共和国税法典の第739条は、アスタナ・ハブ参加者の法人税減免に関する包括的な基本枠組みを定めています。この枠組みの下で、対象となる所得は大きく以下の3つのカテゴリーに分類され、それぞれ異なる条文によって厳格に規制されています。
- 知的財産(IP)オブジェクトからの所得(税法典第740条適用)
- 特定の情報技術サービスの提供からの所得(税法典第741条適用)
- 上記以外のその他の所得
この優遇税制を享受するためには、単に「IT関連の事業を行っている」と名乗るだけでは不十分であり、各条文が要求する法的・経済的な実態要件を完全に満たさなければなりません。
第740条が適用される「知的財産からの所得」については、対象となるソフトウェア等の知的財産に対して、アスタナ・ハブの参加企業自身が排他的な財産権(Exclusive Proprietary Rights)を有していることが絶対条件となります。日本企業が現地に子会社を設立してソフトウェアの開発を委託する場合、その知的財産権が日本の親会社に帰属する契約となっていると、カザフスタンの子会社は第740条に基づく法人税免除の恩恵を受けることができません。
一方、第741条が適用される「情報技術サービス(受託開発など)からの所得」については、自社で知的財産権を保有していなくとも対象となりますが、その代わりに、サービスを提供する従業員の数、その資格や職務経験、サービス提供に直接要した経費に関する詳細な証明がデジタル発展省の規則によって要求されます。これらの規定から、カザフスタンの税務当局が、単なるペーパーカンパニーを用いた租税回避(いわゆる利益移転)を防止し、自国内で実体を伴う技術開発と雇用創出を行う企業に対してのみ優遇措置を適用するという確固たる方針を持っていることが言えるでしょう。
関連するカザフスタン共和国税法典の公式規定については、同国の法的情報システムで確認することができます。
カザフスタンにおける移転価格税制の強化と国際課税への対応

移転価格法の改正と実質優先の原則
カザフスタンにおける移転価格税制は、経済協力開発機構(OECD)の移転価格ガイドラインに大枠で準拠しつつも、同国独自の極めて厳格な規制が敷かれています。2024年9月1日に施行された移転価格法の改正(Law on Transfer Pricing)では、新たに第1-1条が追加され、移転価格規制の目的、課題、そして「適法性、公正性、透明性」といった基本原則が明文化されました。
この法改正で最も注目すべきは、独立企業間原則(Arm’s Length Principle)の適用において、契約書の形式的な文言よりも、取引の経済的実質を重んじる「実質優先の原則(Substance over Form)」が明確に導入された点です。日本においても移転価格税制は厳格に運用されていますが、カザフスタンの特異な点は、関連者間取引だけでなく、クロスボーダー取引であれば独立第三者間取引であっても移転価格税制の監視対象となる場合があることです。
さらに、移転価格調査によって取引価格が否認され、所得の更正(一次調整)が行われた場合、その隠蔽された利益の移転額は新税法典の下で「みなし配当(Constructive Dividends)」として扱われます。このみなし配当に対しても前述の15パーセントの源泉徴収税が課されるため、日本企業にとっては法人税の追徴に加えて源泉徴収税の追徴という二重のペナルティが生じるリスクを孕んでいます。また、多国籍企業グループに対しては、マスターファイルや国別報告書(CbCR)に加えて、2025年3月より新たな移転価格通知フォーム(TP Notification Form)を電子的に提出することが義務付けられるなど、文書化要件が著しく強化されています。
グローバル最低課税(第2の柱)の導入準備
OECDが主導するBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト「第2の柱(Pillar Two)」に関する動きも、進出企業にとっては重大な論点です。これは、全世界の連結売上高が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業に対し、各進出先国で最低15パーセントの実効税率(ETR)を課す仕組みです。
カザフスタンは、このルールの実施を促進するための多国間条約に署名する政府決議案を公表しており、国内法制化に向けた準備を進めています。日本企業がカザフスタンにおいてアスタナ・ハブのような100パーセントの法人税免除を享受し、同国での実効税率が15パーセントを下回った場合、新制度の下では日本の親会社側で差額のトップアップ税(Top-up Tax)を納付する義務が生じる可能性があります。したがって、局所的なカザフスタン国内の免税メリットにとらわれることなく、グループ全体での包括的な税務シミュレーションと情報収集が不可欠となります。
日・カザフスタン租税条約の適用と日本企業の実務
日・カザフスタン租税条約による源泉地国課税の制限
日本とカザフスタンの間には、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とカザフスタンとの間の条約」(日・カザフスタン租税条約)が締結されており、2009年に発効しています。この条約は、両国間の投資や経済交流を促進するため、投資所得に対する源泉地国での課税を制限する役割を果たしています。
同条約に基づき、配当に対する限度税率は、日本の親会社がカザフスタンの子会社の議決権の10パーセント以上を保有している場合には5パーセント、その他の場合は15パーセントに制限されています。利息については10パーセント、使用料(ロイヤルティ)についても10パーセント(議定書により実質的に5パーセントとなる場合あり)を上限とする取り決めが存在します。
日本の国内法における外国子会社配当益金不算入制度により、カザフスタン子会社から日本親会社への配当は原則として日本側で95パーセント相当額が益金不算入(非課税)となります。そのため、カザフスタン側で課される源泉徴収税をいかに低く抑えるかが、グループ全体のキャッシュフローにおいて極めて重要になります。新税法典に基づく国内法上の配当源泉税率は、前述の通り特定の条件下で5パーセントに引き下げられましたが、租税条約に基づく軽減税率を確実に適用するためには、受領者(日本の親会社)がカザフスタン国内の権限ある税務当局に対して所定の居住者証明書等を事前に提出する厳格な手続きが求められます。
租税条約に関する公式なプレスリリースおよび条約文の詳細は、日本の財務省の公式ウェブサイトで確認することができます。
カザフスタンの司法審査と税務紛争解決メカニズム

行政手続訴訟法典(APPC)と前置主義
カザフスタンにおいて、税務調査の結果として課税当局との間で見解の相違が生じ、税務紛争に発展した場合、日本とは異なる紛争解決手続きを辿ることになります。2021年7月1日に施行された行政手続訴訟法典(APPC)により、行政事件を専門に取り扱う行政裁判所が新設され、税務紛争を含む行政訴訟の枠組みが抜本的に刷新されました。
APPCの最大の特徴は、行政庁側に対する「信頼性の推定(Presumption of Reliability)」の原則が導入されたことです。これは、納税者が提出した資料や情報は、行政庁側がその虚偽を立証しない限り真実として扱われるというものであり、納税者に過度な立証責任を強いていた従来の旧ソ連型の手続きからの大きな転換を意味します。また、APPC第129条により、訴訟において行政機関側が原処分の根拠とした理由以外の新たな主張や根拠を事後的に追加することが禁止されています。2024年12月には最高裁判所がAPPCに関する初の規範的決議(Normative Resolution)を発出しており、司法審査における裁判所の権限や判断基準がより明確化されています。
しかしながら、司法手続きに入る前に注意すべき重要な点があります。税務当局の決定を裁判所で争う前に、まずは財務省の不服審査委員会(Appeal Commission of the Ministry of Finance)に対して行政不服申し立てを行うことが義務付けられているケース(前置主義)が多く存在します。この前置手続きにおける期限の徒過や書面の不備は、その後の司法審査への道を閉ざす致命的なエラーとなるため、厳格な手続きの遵守が求められます。
最高裁判所における移転価格および税務調査の重要判例
カザフスタンの裁判所において、税務当局の裁量権の逸脱や手続きの適法性が争われ、納税者側の主張が認められた事例は近年増加傾向にあります。
代表的な事例として、カザフスタン共和国最高裁判所(Supreme Court of the Republic of Kazakhstan)における、2022年の税務調査対象の選定を巡る適法性が争われた判例が挙げられます。この事案では、財務省の2022年5月6日付命令第480号に基づき、ある企業がリスク評価システムによって「高リスク」と判定され、包括的税務調査のスケジュールに組み込まれたことに対して、納税者が処分の取り消しを求めて提訴しました。第一審および控訴審では当初、納税者の請求が棄却されましたが、最高裁判所の破棄差戻しを経た後の新たな控訴審において、国家歳入委員会がリスク評価基準の計算において対象となる課税期間を誤って設定していたことが明確に認定されました。最終的に最高裁判所は、行政庁側の計算プロセスにおける重大な瑕疵を認定し、納税者の主張を認める判決を確定させました。
また、2023年1月25日に下された「KOR Oil Company」と国家歳入委員会(税務当局)との間の移転価格に関する最高裁判決では、多年度にわたる移転価格税制の監査において、課税当局による比較対象取引の選定方法や価格調整の妥当性が厳格に審査されました。この判決において最高裁判所は、税務当局による市場価格の算定アプローチに問題があるとして、下級審の判断を覆す法的解釈を示しました。
これらの判例から、税務当局による不利益処分であっても、その根拠となる計算基準や適正な法的プロセスを欠く場合には、司法の場において処分が覆される可能性が十分にあるということが言えるでしょう。進出企業としては、不当な課税処分や税務調査に対しては、APPCに基づく司法救済のメカニズムを積極的に活用し、自社の正当な権利を防衛する姿勢が重要となります。
まとめ
カザフスタンの法人税制は、原則20パーセントという単一の標準税率を基礎としながらも、2026年施行の新税法典によって付加価値税(VAT)の16パーセントへの引き上げや、登録閾値の10,000MCIへの引き下げ、さらには新たな贅沢税の導入が行われるなど、国家財政の基盤強化に向けた大きな転換期を迎えています。同時に、非居住者向けの利息に対する源泉徴収税率が10パーセントへと引き下げられたほか、アスタナ・ハブに代表される特別経済区における強力な法人税免除措置が維持されており、法令が求める厳格な要件を満たすIT分野等の企業にとっては、多大なメリットを享受できる投資環境が整っています。
しかしながら、これらの優遇措置の適用には税法典の条文に基づいた正確な実態要件のクリアが必要であり、さらには実質優先の原則を掲げる移転価格税制の規制強化や、みなし配当に関する規定の厳格化、グローバル最低課税(第2の柱)への対応など、国際課税の複雑なルールにも適応しなければなりません。現地の行政手続訴訟法典(APPC)や最高裁判所の判例が示す通り、税務当局との見解の相違による紛争リスクは常に存在するため、法令に基づいた正確な解釈と、事前の強固なコンプライアンス体制の構築が、カザフスタンでのビジネスを成功に導くための鍵となります。
モノリス法律事務所では、海外進出に伴う複雑な法的課題の整理や、現地法令に基づく税制要件の法的分析など、日本企業がカザフスタンにおいて安全かつ円滑に事業を展開し、法的リスクを最小限に抑えられるよう包括的にサポートいたします。
































