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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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インドにおける非公開会社のコンプライアンス緩和:スタートアップ向け優遇措置

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インドにおける非公開会社のコンプライアンス緩和:スタートアップ向け優遇措置

巨大な市場規模と高い経済成長率を背景にインドへの進出を検討する日系企業が急増しています。インドでビジネスを展開するにあたり現地での法人設立は最も一般的な手法ですが、その法務手続きや運用には現地の法令に対する深い理解が不可欠です。インド会社法は企業に広範なガバナンス・コンプライアンス義務を課していますが、特定の要件を満たす非公開会社やスタートアップには規制緩和措置を設けています。

本記事では、インド会社法における非公開会社を対象としたコンプライアンス免除の具体的な要件を詳述するとともに、インド政府のスタートアップ認定制度を通じて享受できるエンジェル税の課税終了や事業所得の100パーセント控除といった強力なインセンティブについて解説します。初期の法人運営において不要なコストを最小限に抑え、事業成長に資源を集中させるための最新の法務ノウハウを提供します。

インド会社法下における非公開会社の法的位置づけとガバナンス

インドにおいて外国企業が現地法人を設立する場合、その圧倒的多数が非公開会社(Private Company)という会社形態を選択します。インド会社法における非公開会社とは、定款によって株式の譲渡権が制限され、株主数が原則として200名以下に制限されている会社を指します。日本の会社法における譲渡制限会社(非公開会社)と類似した枠組みですが、両国の法令が企業に求めるコンプライアンスの性質には根本的な違いが存在します。

日本の会社法は企業の自治を広く認め、定款自治の範囲内で機関設計や資金運用の自由度を高く設定しています。これに対し、インド会社法は過去の企業不祥事やプロモーター(創業者や支配株主)による資金流用を防ぐという歴史的背景から、非公開会社であっても強行法規的な規制を定めています。違反の類型によっては取締役個人に禁錮刑を含む刑事罰が科されうる一方(例:取締役等への違法な貸付を定める第185条第4項)、個別の罰則規定が置かれていない手続違反については2020年改正により禁錮刑を伴わない過料へ改められており、コンプライアンス違反に対するペナルティは依然重いものの、その性質は違反類型ごとに異なります。

しかし、インド政府は外資誘致や「Ease of Doing Business(ビジネスのしやすさ)」を推進する国家戦略の一環として、2015年に公布されたインド企業省(MCA)特例通知(G.S.R. 464(E))をはじめとする一連の通達により、非公開会社に対する大幅なコンプライアンス義務の免除または緩和を実施しました。これにより、日本企業がインドで子会社を設立・運営する際の法務および管理部門の負担が劇的に軽減される法的基盤が整えられました。

参考:MCA(インド企業省/Ministry of Corporate Affairs)|官報告示 G.S.R. 464(E)(Gazette of India, Extraordinary, Part II, Section 3, Sub-section (i), 2015年6月5日発行)

インドの非公開会社に対するコンプライアンス要件の免除と緩和

インドの非公開会社に対するコンプライアンス要件の免除と緩和

インド会社法の原則的な規定に従えば、企業は多岐にわたるガバナンス要件を満たす必要がありますが、特例通知を適用することで非公開会社は以下のような重要なコンプライアンス要件の免除を享受することができます。これらの優遇措置は項目ごとに適用条件が異なり、なかには定款に定めを置くことではじめて適用されるものもあります。また2017年6月13日付の改正通知(G.S.R. 583(E))により、財務諸表(第137条)または年次報告(第92条)の登記官への提出を怠っていないことが、表に掲げるすべての優遇措置に共通する前提条件として追加されました。したがって法人設立時の定款設計と、設立後の期限内提出の徹底がいずれも重要となります。

監査委員会の設置義務免除と財務報告規制の緩和

企業の財務的な透明性を担保するため、インド会社法第177条は一定の要件を満たす公開会社に対して独立取締役を過半数とする監査委員会(Audit Committee)の設置を義務付けています。日本の会社法においても監査役会設置会社や監査等委員会設置会社といった機関設計が存在しますが、インドでは監査委員会の設置義務が上場会社および一定規模の公開会社に限定されており、非公開会社はそもそもこの義務の対象外とされています。事業規模が拡大し売上高が増加した場合であっても、非公開会社の形態を維持する限りにおいて、独立社外取締役の招聘や複雑な委員会運営にかかるコストを回避することが可能です。

さらに、財務報告に関連する内部財務統制(Internal Financial Controls:IFC)に関する監査人報告の義務についても、一人会社もしくは小会社であるか、直近の監査済財務諸表における売上高が5億ルピー未満であるか、または当該事業年度中のいずれかの時点における銀行・金融機関・法人からの借入残高の合計が2億5,000万ルピー未満である非公開会社であれば適用されません。インドの内部財務統制報告は、日本の金融商品取引法における内部統制報告制度(J-SOX)に類似した制度であり、財務報告の信頼性を確保するための社内体制が有効に機能しているかを外部監査人が評価し報告するものです。この制度は企業にとって多大な監査報酬と社内リソースの投下を要求しますが、上記の免除はインド企業省による2017年の追加通知(G.S.R. 583(E))で設けられたもので、金額の基準は以下の表のとおりです。

免除の判定基準非公開会社に適用される免除要件の上限値
売上高基準直近の監査済み財務諸表に基づく売上高が5億ルピー未満であること
借入金基準銀行や金融機関、法人からの借入金残高が会計年度中のいかなる時点においても2億5,000万ルピー未満であること

この特例により、進出初期の段階では内部統制の構築と外部監査にかかる法務・会計コストを抑えられます。

取締役等への貸付制限と日系子会社が使える例外

インド会社法において日系企業が最も留意すべき独自規制の一つが、第185条に規定される取締役等に対する貸付の禁止です。日本の会社法では、取締役と会社間の利益相反取引に該当する貸付であっても、取締役会や株主総会の承認を得ることで適法に実施することが可能です。しかしインドでは、会社資金の私的流用を厳格に防ぐため、取締役本人やその親族、これらの者が組合員である組合に対する貸付や保証の提供が原則として禁止されています。2018年の改正以降、取締役が利害関係を有する法人に対する貸付等は、株主総会の特別決議を経たうえで借入側の主たる事業活動に充当することを条件に認められています。完全子会社への貸付や、完全子会社の借入に対する親会社の保証は当初から適用除外とされている一方、インド子会社からグループ会社側へ資金を融通する場合には特別決議等の手続きを要するため、この規制はグループ企業間での機動的な資金移動を制約する要因となっていました。

これに対し、2015年6月5日付の特例通知(G.S.R. 464(E))は、一定の要件をすべて満たす非公開会社について第185条を適用しないと定めています。その要件とは、当該非公開会社の株式資本に他の法人が一切出資していないこと、銀行、金融機関または法人からの借入金が払込済株式資本の2倍または5億ルピーのいずれか低い金額を下回ること、そして当該貸付等を行う時点で借入金の返済に関する債務不履行が継続していないことの三点です。ただし、要件の第一が「株式資本に他の法人が一切出資していないこと」である点には注意が必要です。会社法第2条(11)の「法人(body corporate)」はインド国外で設立された会社を含むため、日本の親会社が出資するインド子会社はこの特例通知の対象になりません。日系企業の場合は、完全子会社への貸付や完全子会社の借入に対する保証について第185条(3)の適用除外を用いる(同項但書により、当該貸付が子会社の主たる事業活動に充当されることが条件です)か、取締役が利害関係を有する法人への貸付として株主総会の特別決議を経る(第185条(2))ことが実務上の選択肢となります。

企業の社会的責任(CSR)に関する特定義務の緩和

インドは世界で初めて企業の社会的責任(CSR)活動への支出を法律で義務付けた国として知られています。インド会社法第135条によれば、直前の事業年度において純資産が50億ルピー以上、売上高が100億ルピー以上、または純利益が5,000万ルピー以上のいずれかの要件を満たす企業は、過去3年間の平均純利益の少なくとも2パーセントをCSR活動に支出しなければなりません。日本においてはCSR活動は企業の自主的な取り組みに委ねられており、法令上の支出義務は存在しないため、この規定は日系企業にとって大きな驚きをもって受け止められます。

非公開会社であっても上記の財務基準に該当した場合はCSR支出義務の対象となりますが、コンプライアンスの運用面では特例的な緩和措置が設けられています。通常、CSR対象企業は3名以上の取締役(うち1名は独立取締役)で構成されるCSR委員会を設置する義務を負います。しかし、非公開会社にはそもそも独立取締役の選任義務がないため、CSR委員会を構成する際にも独立取締役を含める必要はなく、2名の取締役のみで適法に委員会を構成することが認められています。さらに近年の法改正により、企業が支出すべきCSR義務額が500万ルピー以下である場合には、CSR委員会そのものの設置義務が免除され、取締役会が直接CSR関連の決定を行うことができるようになり、社内機関の簡素化が図られています。

インドのスタートアップ認定制度の概要と最新の認定要件

インド政府はイノベーションの促進と雇用創出を国家戦略の柱と位置づけ、「Startup India(スタートアップ・インディア)」というイニシアチブを推進しています。この一環として、インド商工省産業国内貿易促進局(DPIIT)を通じたスタートアップ認定制度が運用されています。このDPIIT認定を受けた企業は、非公開会社としての一般的なコンプライアンス緩和に加えて、エンジェル税の課税終了や事業所得の100パーセント控除、環境法の自己認証など、多岐にわたる強力な優遇措置を享受することができます。

2026年2月4日に公布された最新の官報通知(G.S.R. 108(E))により、スタートアップとして認定されるための要件が新たに定義されました。日本企業のインド子会社であっても、以下の要件を満たす新規事業会社であれば認定を取得できます。

参考:DPIIT(インド商工省産業国内貿易促進局/Department for Promotion of Industry and Internal Trade)|官報告示 G.S.R. 108(E)(Gazette of India, Extraordinary, Part II, Section 3, Sub-section (i), 2026年2月4日発行)

認定基準の項目一般的なスタートアップの認定要件ディープテック・スタートアップの特例要件
法人形態インド国内で設立された非公開会社、登録パートナーシップ、有限責任事業組合(LLP)、多州協同組合、または州・連邦直轄領の協同組合法に基づいて登録された協同組合であること同左
存続期間設立または登録の日から10年以内であること設立または登録の日から20年以内であること
売上高上限設立以降のいかなる会計年度においても売上高が20億ルピーを超えていないこと設立以降のいかなる会計年度においても売上高が30億ルピーを超えていないこと
事業内容製品、プロセス、サービスの革新、開発、改善に取り組んでいること、または高い雇用創出・富の創出の可能性を持つスケーラブルな事業モデルを有すること左記に加えて、科学的・工学的な新規知見に基づく解決策の開発に取り組んでいること、収益または調達額に対する研究開発費の比率が高いこと、重要かつ新規の知的財産を保有または創出中でありその事業化に向けた取り組みを行っていること、開発期間が長期にわたり多額の資本と設備を要し技術的・科学的な不確実性が大きいことのすべてを満たすこと
再編の禁止既存事業の分割や再編によって設立された法人ではないこと同左

最新の法令は先端技術を扱う「ディープテック・スタートアップ」を別枠で定義し、収益化までに長期間を要する研究開発型企業であっても、最長20年間にわたりスタートアップとしての法的地位を維持できるようにしています。

インド政府認定のスタートアップに対する規制緩和と税制優遇措置

インド政府認定のスタートアップに対する規制緩和と税制優遇措置

DPIITの認定を取得したスタートアップ企業は、創業期の資金繰りや事業運営を支援する規制緩和と税制優遇の対象となります。特に資金調達時の不合理な課税リスクの排除や、事業活動から生じる利益に対する100パーセントの所得控除は、インド市場における事業の存続と成長を左右する極めて重要な要素です。

エンジェル税の課税終了と判例の動向

インドにおいて長らくスタートアップ企業と投資家を悩ませてきた最大の障壁が、「エンジェル税」と呼ばれる未上場株式のプレミアム発行に対する課税制度でした。かつての所得税法1961年第56条第2項(viib)号に関わるこの規定は、非公開会社が公正市場価格(FMV)を超える価格で株式を発行し資金調達を行った場合、その超過額を会社の「その他の所得」とみなし、当該会社に適用される法人税率(国内会社の場合、売上高に応じて25パーセントまたは30パーセント)で課税するものでした。本来はペーパーカンパニーを用いたマネーロンダリングや不正な資金還流を防ぐための規定でしたが、実績がなくとも将来の成長性を高く評価されて高いバリュエーションで資金調達を行う健全なスタートアップに対しても、税務当局が独自の保守的な評価を用いて巨額の課税を行う事態が多発していました。

この問題の深刻さと、評価手法を巡る法的見解の相違を象徴する重要な判例として、デリー高等裁判所における2021年3月1日の判決(Pr. Commissioner Of Income Tax-2 v. Cinestaan Entertainment Pvt. Ltd.)が存在します。この事件において、スタートアップである同社は将来予測に基づくディスカウンテッド・キャッシュ・フロー(DCF)法を用いて適法に株式価値を算定し資金調達を行いました。しかし管轄の税務当局は、会社の実際の事業成績が事前の将来予測を大きく下回ったという事後的な事実を理由にDCF法による評価を否認しました。その際、税務当局は自ら代替となる評価額を示すことなく株式の公正市場価格をゼロとして扱い、受領したプレミアム約9億955万ルピーの全額を所得に加算して課税しました。

これに対し裁判所は、所得税規則が納税者に評価手法の選択権を与えている以上、規則所定の手法の一つを用いた納税者の評価を、税務当局が代替の評価額も示さないまま後知恵で否認することは根拠を欠き不合理であると述べました。事業者の商業的判断に税務当局が立ち入ることは許されないという法理も、高裁が是認した所得税不服審判所(ITAT)の判断が最高裁判例に依拠して示したものです。デリー高等裁判所は、評価を巡る争いは事実認定の問題であって本件では法律問題を生じないとして税務当局の控訴を棄却し、この判決はスタートアップ側の勝利として画期的な意義を持ちました。もっとも、税務当局との見解の相違による恒常的な税務訴訟の発生は、企業にとって致命的な時間的・資金的コストとなっていました。

このような実態と投資家からの強い懸念を受け、インド政府は2024年財政法(第2号)第23条により、2025年4月1日以降(評価年度2025-26以降)は同号を適用しない旨の但書を追加し、エンジェル税の課税を終了させる歴史的な決断を下しました。これにより、DPIIT認定の有無や投資家の国籍を問わず、すべての非公開会社が将来性を見込んだプレミアム価格で株式を発行しても、そのプレミアム部分を発行会社の所得とみなす課税を受けることはなくなりました。ただし、株式発行に伴う税務上の立証責任まで消えたわけではありません。所得税法2025年第102条(3)は、公衆が実質的に利害を有する会社を除く会社(非公開会社を含みます)の帳簿に株式申込金・株式資本・株式プレミアムとして計上された金額について、居住者である名義人自身が資金の性質と出所を説明し、それが税務当局に是認されない限り説明は不十分とみなすと定めており、説明できない場合は当該金額の全額が所得として課税されます(同法第195条により税率30パーセント)。資金の出所を裏づける証跡の整備は引き続き必要です。この課税終了措置は、革新的なビジネスプランを武器に資金調達を行う日系スタートアップにとって、インド市場への投資判断を後押しする規制緩和です。

参考:ITD(インド所得税局/Income Tax Department, Ministry of Finance)|所得税法・規則および通達の公式ポータル

所得税法2025年第140条に基づく事業所得の100パーセント控除

エンジェル税の課税終了により資金調達時のペナルティが排除されたことに加え、DPIIT認定スタートアップには事業活動から生じる利益に対する直接的な所得控除が用意されています。所得税法2025年第140条の特例に基づき、省庁間認定委員会(Inter-Ministerial Board)にForm-1と呼ばれる所定の申請書を提出し適格ビジネスの証明書を取得したスタートアップは、設立から10年間のうち任意の連続する3年間において、当該事業から生じる利益の100パーセントが所得から控除されます。

日本の税制においても創業支援目的の税額控除等は存在しますが、特定の事業から生じる利益の全額を一定期間にわたり課税所得から控除する制度は極めて限定的です。インドのこの措置により、製品やサービスの市場適合性が確認され利益が出始めた段階で、初期利益をそのままマーケティングや研究開発への再投資に振り向けられます。なお、この特例を享受するためには、2030年3月31日までに設立された法人が対象となるため、進出のタイミングを見極めることが重要です。

欠損金の繰越控除に関する要件緩和

事業の立ち上げ初期における計画的な赤字の繰越控除に関しても、スタートアップ向けに大幅な要件緩和が適用されます。通常、インドの所得税法2025年第119条第3項では、公衆が実質的に利害を有する会社を除く会社について、損失を計上した事業年度末に議決権の51パーセント以上を保有していた株主が当該課税年度末にも51パーセント以上を保有していない場合、過去に計上した欠損金の繰越控除が認められなくなります。日本の法人税法でも支配関係の変更等に伴う欠損金利用制限が存在しますが、インドの規制は特にベンチャーキャピタル等から複数回のラウンドに分けて資金調達を行う企業にとっては致命的な制約となっていました。

しかし、省庁間認定委員会から適格事業証明書を取得した適格スタートアップに対しては、この第119条第3項の規定が緩和されています。具体的には、外部からの大規模な資金調達に伴い既存株主の持分比率が51パーセント未満に低下した場合であっても、損失が発生した会計年度の末日に議決権を保有していたすべての株主が引き続き現在の会計年度末においても株式を保有し続けており、かつその損失が設立の年から10年以内に生じたものであれば、例外的に損失の繰越控除が認められます。これにより、経営陣は持分比率の希薄化にともなう繰越控除の打ち切りを懸念することなく、資金調達による成長戦略を進められます。

労働法および環境法の自己認証制度による行政負担の削減

インドでの事業運営において、現地特有の複雑で多岐にわたる労働法令や環境法令への対応は、日本企業にとって最も頭を悩ませるコンプライアンスリスクの一つです。特に各種監督官庁の検査官による頻繁で予測困難な立ち入り検査は、日常業務の阻害要因となっていました。政府はこの問題に対処するため、2016年のスタートアップ・インディア行動計画により、スタートアップに対して特定の労働法や環境法に基づくコンプライアンス要件を自己認証(Self-certification)ベースで満たすことを認める制度を導入しました。ただし、対象とされた労働法は2025年11月21日に施行された労働四法典によりいずれも廃止されており、法典およびその中央規則には、スタートアップ向けの自己認証や検査免除に関する特則は置かれていません。

具体的には、政府が提供する「Shram Suvidha Portal」等の専用ウェブポータルを通じて、以下の表に示すような法令に対する遵守状況を自ら申告する仕組みが設けられていました。ただし同ポータルは労働四法典に合わせて改修中であり、規則の確定後に運用が開始される予定とされています。

分野自己認証の対象となる主要法令の例
労働法分野建築その他の建設労働者法、州間移住労働者法、退職金支払法、契約労働法、従業員プロビデントファンド法、従業員国家保険法の6法令(商工省産業国内貿易促進局のポータルは、これに労働争議法、労働組合法、産業雇用(就業規則)法を加えた9法令とする)。いずれも労働四法典により廃止済み
環境法分野水質汚染防止法、水質汚染防止賦課金(改正)法、大気汚染防止法の3法令(中央汚染管理委員会がホワイトカテゴリーとして定める36業種に該当する場合に限定)

特筆すべきは、労働法に関しては自己認証を行うことで、設立から3年間にわたり原則として検査官による立ち入り検査が行われないとされていた点です。その後この期間を5年へ延長する方針が示され、商工省産業国内貿易促進局のポータルは3年から5年と記載し、労働雇用省は州政府に対し5年への延長を助言したとしているため、実際に適用されていた期間は州によって異なります。重大な違反に関する信頼でき検証可能な苦情が書面で提出され、かつ検査官より1段階以上上級の管理職による承認が得られたという極めて例外的な場合にのみ検査が行われるという運用が定められていました。環境法に関しても、中央汚染管理委員会が実質的に無公害と位置づけるホワイトカテゴリーの36業種(空調機や自転車の組立、太陽光モジュールの製造など)に該当するスタートアップであれば、操業同意(Consent to Operate)を取得する必要がなく、州の汚染管理委員会への届出と自己認証によって操業が認められます。ただし無作為の抽出検査は行われます。環境法分野の自己認証により、企業は報告業務や査察対応の負担を抑え、製品開発と市場開拓に人的・資金的リソースを振り向けられます。

まとめ

インドにおけるビジネス展開において非公開会社を設立することは、監査委員会の設置義務の対象外となることや、一定の規模要件を満たせば内部財務統制に関する監査人報告が不要となることなど、コンプライアンスコストの面で合理的な選択です。さらに、インド政府が国を挙げて推進するスタートアップ認定制度を積極的に活用することで、エンジェル税の課税終了による機動的な資金調達や、適格事業から生じる利益に対する100パーセントの所得控除による内部留保の最大化といったメリットを享受することができます。労働法・環境法の自己認証制度については、環境法分野では引き続き活用の余地がある一方、労働法分野は労働四法典の施行に伴い制度の再構成を待つ状況にあります。これらの規制緩和は、インド市場での事業の立ち上げと持続的な成長を法制度の面から支えます。

一方で、こうした数々の優遇措置を確実に享受し事業リスクを最小化するためには、現地特有の要件を満たす定款の設計から、DPIITや省庁間認定委員会への申請手続き、そして変動する現地税制や労働法の動向を継続的に追うことが欠かせません。

モノリス法律事務所は、特にIT関連ビジネスに深い専門性を有する法律事務所として、インドの有力な現地法律事務所と強固な提携関係を築いています。現地の商慣習や複雑な法令手続きに精通したグローバルな法務サポート体制を通じて、貴社のインド子会社設立からスタートアップ認定の取得、そして日々のガバナンス運用に至るまで、コストを最小限に抑えつつ迅速かつ安全な法人運営を実現するための全面的な支援を提供いたします。インドという世界最大の成長市場で確固たる事業基盤を築き、ビジネスの最大化を図るための戦略的法務パートナーとして、ぜひモノリス法律事務所の専門的な知見をご活用ください。

モノリス法律事務所は、インド法務に関する調査および情報提供を目的として、現地法律事務所Quest IP Attorneysと非独占的な提携関係(Associate Firm / Correspondent Firm)にあります。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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