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薬機法違反の行政処分一覧|業務停止命令・措置命令・課徴金の種類と近年の事例を弁護士が解説

薬機法違反の行政処分一覧|業務停止命令・措置命令・課徴金の種類と近年の事例を弁護士が解説

薬機法に違反すると、刑事罰や課徴金とは別に、厚生労働大臣や都道府県知事から業務改善命令や業務停止命令などの行政処分を受けることがあります。近年は後発医薬品メーカーの製造不正で長期の業務停止が続き、2025年には厚生労働省が広告違反に対する措置命令を初めて使いました。

薬機法違反で受ける行政処分の種類を根拠条文つきで整理し、2015年以降に厚生労働省や都道府県が公表した処分事例を一覧にまとめました。すでに行政指導や処分の予告を受けている方は、意見を述べる手続と対応をまとめた章からお読みください。

薬機法違反の行政処分とは

薬機法違反の行政処分とは、薬機法に違反した事業者に対して、厚生労働大臣または都道府県知事が業務の改善や停止などを命じる処分のことです。行政手続法では不利益処分と呼ばれます。刑事罰や課徴金と異なり、事業者の業務そのものに直接働きかける点に特徴があります。

薬機法は、保健衛生上の危害の発生と拡大を防ぐことを目的としています(薬機法1条)。そのために、行政庁へ改善命令、業務停止命令、措置命令、課徴金納付命令などの権限を与えています。8種類の処分と根拠条文は、次の章の表で整理します。

実務で先に押さえるべきなのは、同じ違反行為に対して行政処分と刑事罰、課徴金が別々に科されることがあるという点です。

行政処分と行政指導の違い

行政指導とは、行政機関が一定の作為や不作為を求める指導、勧告、助言のうち、処分に当たらないものをいいます(行政手続法2条6号)。相手方の任意の協力によってのみ実現され、従わなかったことを理由に不利益な取扱いをすることは禁じられています(同法32条)。

これに対して行政処分は、法令に基づいて特定の事業者に義務を課し、または権利を制限する行為です(同法2条4号)。薬機法では、立入検査(薬機法69条1項)で違反が見つかっても行政指導で終わる事案が多く、違反が重いときや改善されないときに処分へ進みます。行政指導を受けた時点で組織的に対応を始めることが処分を避ける近道です。指導を受けたら、指摘された表現や行為、根拠条文、求められている是正と期限、担当者名を記録します。口頭の指導であれば、書面での交付を求めることができます(同法35条3項)。指導に従わなかったこと自体は処分の理由になりませんが、違反状態が続けば処分の要件として評価されます。

課徴金と刑事罰との関係

薬機法違反に対する制裁は、業務の改善や停止を命じる行政処分、虚偽または誇大な広告で得た売上の一部を納付させる課徴金、罰金や拘禁刑などの刑事罰の三つです。行政処分と課徴金は行政上の措置で、受けても前科にはなりません。刑事罰は裁判所の判決を経て科され、罰金刑でも前科になります。三つの制裁はどれか一つしか受けないというものではなく、広告違反では措置命令に加えて課徴金納付命令が出ることがあり、課徴金は厚生労働大臣が命じます。

薬機法違反の行政処分とは

薬機法違反の行政処分の種類と根拠条文

薬機法の行政処分は、誰が、どの条文を根拠に、何を命じるかが処分ごとに決まっています。医薬品を市場に出す責任を負う製造販売業者と、工場で作る製造業者への処分は、法律上は厚生労働大臣の権限です。ただし多くの品目では、政令で都道府県知事が行うこととされており(81条、薬機法施行令80条2項)、厚生労働大臣が自ら処分することもあります。薬局や店頭で売る販売業者の処分は都道府県知事(75条)が行うのが基本です。薬局の所在地が保健所を設置する市や特別区にあるときは、市長や区長が処分庁になります(4条1項)。広告違反の措置命令は、厚生労働大臣と都道府県知事の両方に権限があります。

▼ 薬機法違反の行政処分の種類と根拠条文

処分の種類処分庁根拠条文命じられる内容典型的な違反
改善命令厚生労働大臣・都道府県知事72条1項〜3項製造販売業者の品質管理・製造販売後安全管理の方法(1項)、製造業者の製造管理・品質管理の方法(2項)、構造設備(3項)の改善。改善までの業務停止を伴うことがあるGQP省令・GVP省令の基準不適合、副作用や不具合の報告体制の不備
法令遵守体制の改善命令厚生労働大臣・都道府県知事72条の2の2法令遵守のための体制整備に必要な措置責任役員の監督不足、不正を検知できない社内体制
業務運営の改善命令厚生労働大臣・都道府県知事72条の4第1項業務運営の改善に必要な措置。報道発表では業務改善命令や改善措置命令と表記されることが多い承認書と異なる製造、記録の不備など法令違反全般
措置命令厚生労働大臣・都道府県知事72条の5第1項違反広告の中止、再発防止に必要な事項、公示虚偽または誇大な広告(66条1項)、承認前の広告(68条)
責任者の変更命令厚生労働大臣・都道府県知事73条総括製造販売責任者、製造管理者、薬局の管理者などの変更責任者が違反行為に関与、または監督を怠った
業務停止命令・許可の取消し厚生労働大臣・都道府県知事75条1項期間を定めた業務の全部または一部の停止、許可の取消し法令や処分への違反、欠格事由への該当
廃棄・回収などの命令厚生労働大臣・都道府県知事70条不良品や無承認品の廃棄、回収その他の措置承認を受けていない医薬品の販売、基準に合わない製品の流通
課徴金納付命令厚生労働大臣75条の5の2第1項対価合計額の4.5%の課徴金の納付虚偽または誇大な広告(66条1項)

参考:e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年8月10日法律第145号)

表の用語を補足します。承認書は国が承認した製造方法や規格を記した書面、総括製造販売責任者は製造販売業者が置く品質管理と安全管理の総責任者です。GQP省令とGVP省令は品質管理と製造販売後安全管理の基準を定めた省令、欠格事由は許可を受けられない事情を指します。

見落とされやすいのは、措置命令が違反行為の終わった後でも出せることです。72条の5第1項は、違反行為が既になくなっている場合でも、違反をした者や事業を承継した法人に命令できると定めています。

もう一つは、処分に従わないこと自体が犯罪になる点です。措置命令や業務停止命令に違反した者は、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方の対象になります(85条6号・7号)。行政処分を無視すると、違反行為そのものとは別の犯罪が成立することになります。

薬機法違反の行政処分の種類と根拠条文

薬機法違反の行政処分一覧【2015年以降の主な事例】

厚生労働省と都道府県が公表した処分のうち、処分の内容まで確認できた主な事例を年月日順に整理しました。網羅した一覧ではなく、2026年9月時点で官公庁の発表資料から確認できたものに限っています。

▼ 薬機法違反による行政処分の主な事例

処分日事業者処分庁処分の種類と根拠条文違反の概要
2015年9月1日ファイザー株式会社厚生労働省業務改善命令(72条の4第1項)抗がん剤など11製品について、把握していた212例の副作用を期限内に報告しなかった(68条の10)
2017年3月13日医薬品卸売販売業者6社(東京都5社・大阪府1社)東京都・大阪府改善措置命令(72条の4第1項)C型肝炎治療薬ハーボニー配合錠の偽造品が流通した事案で、卸売段階の管理体制に不備
2017年3月7日・3月16日株式会社関西メディコ奈良県業務改善措置命令(72条の4第1項)、業務停止命令5日間(75条1項)、管理者変更命令(73条)偽造品を仕入れて他店舗に貯蔵させ、管理者による管理と試験検査を行わせなかった(55条2項・7条2項・9条1項)
2021年2月9日小林化工株式会社福井県業務停止命令116日間(清間工場は60日間)、業務改善命令抗真菌剤への睡眠導入剤の混入、承認内容と異なる製造、二重帳簿、試験結果の捏造。同年4月28日に厚生労働省が12品目の承認取消しと業務改善命令
2021年3月5日日医工株式会社富山県業務停止命令品質試験に不適合の製品を承認書と異なる方法で適合品として処理し、販売した
2023年12月13日小城製薬株式会社京都府業務停止命令40日間、業務改善命令承認書と異なる方法での製造、一部試験の未実施、製造・試験記録の一部捏造、行政の調査への虚偽報告
2023年12月22日沢井製薬株式会社厚生労働省・大阪府・福岡県総括製造販売責任者の変更命令(73条・厚生労働省)、業務改善命令(72条の2の2・72条の4・大阪府・福岡県)テプレノンカプセルの溶出性試験を承認書と異なる方法で実施。責任者が不正を検知する体制を構築していなかった
2023年12月22日カイゲンファーマ株式会社大阪府・北海道業務停止命令、業務改善命令承認書に記載のない添加物の追加、一部試験の未実施、虚偽の試験記録、行政の調査への虚偽報告
2024年11月8日日本メドトロニック株式会社厚生労働省業務改善命令(72条1項・72条の2の2)インスリンポンプ注入セットの外国での不具合症例1,783件を期限内に報告しなかった(68条の10第1項)
2025年3月27日長生堂製薬株式会社徳島県業務停止命令32日間(川内工場)、業務改善命令(72条2項・72条の2の2・72条の4第1項・75条1項)承認書と製造実態の不一致、必要な薬事手続の未実施、2021年の改善計画の未実施
2025年11月7日インプレッション株式会社厚生労働省措置命令(72条の5第1項)家庭用電位治療器について、認証された効能を超えて糖尿病や高血圧に効くかのような虚偽または誇大な広告(66条1項)
2026年2月24日株式会社晃進大阪市薬局の業務停止命令9日間(75条1項)処方箋の交付を受けていない者に処方箋医薬品を販売した(49条1項)

参考:厚生労働省 医薬局監視指導・麻薬対策課「医薬品の品質確保に向けた取組みについて」(令和5年12月27日公表)

参考:厚生労働省 報道発表資料「医薬品医療機器等法に基づく行政処分を行いました」(インプレッション株式会社)(令和7年11月)

参考:徳島県 報道提供資料「県内製薬業者に対する行政処分について」(令和7年3月27日公表)

参考:大阪市 報道発表資料「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律違反者に対する行政処分を行いました」(令和8年2月24日公表)

製造と品質管理の違反による業務停止命令

2021年以降の業務停止命令は、後発医薬品メーカーの製造不正に集中しています。厚生労働省の資料によれば、2021年から2023年の3年間だけで18社が業務停止または業務改善の命令を受けました。違反の中身は、承認書と異なる方法での製造、必要な試験の省略、立入検査に備えた虚偽の記録の作成で共通しています。

小林化工の事案では、抗真菌剤に睡眠導入剤が混入して245人に健康被害が出ました。福井県の116日間の業務停止命令は、処分当時、過去最長とされました。処分の理由として挙げられたのは、混入そのものよりも、経営層が法令違反を把握しながら改善策を講じなかった点でした。処分の重さを決めるのは違反の結果だけではなく、組織として不正を見過ごしていたかどうかです。長生堂製薬が2025年に再び業務停止を命じられた理由の一つも、2021年の改善計画を実施していなかったことでした。

参考:厚生労働省・PMDA「小林化工(株)による睡眠導入剤混入事案概要」(令和3年)

広告違反に対する措置命令

措置命令は、令和元年(2019年)12月4日に公布された改正薬機法で新設され、2021年8月1日に施行された制度です。厚生労働大臣または都道府県知事が、虚偽または誇大な広告(66条1項)や承認前の広告(68条)をした者に、行為の中止、再発防止に必要な事項、公示などを命じます(72条の5第1項)。

施行から4年余りを経た2025年11月、厚生労働省がこの措置命令を初めて使ったとされています。対象は家庭用電位治療器の販売業者です。認証された効能は頭痛、肩こり、不眠症、慢性便秘の緩解に限られていたのに、体験会場で糖尿病や高血圧が治るかのような説明をしていたことが、66条1項の虚偽または誇大な広告に当たるとされました。命令の内容は、体制整備と役職員への教育、虚偽または誇大な表示の禁止、1か月以内の改善計画の提出です。

対象が製造販売業者ではなく販売業者で、媒体が対面の説明だった点は見逃せません。66条1項は「何人も」と定めているので、広告の制作や表示内容の決定に関与した広告代理店、メディア、インフルエンサーも、関与の程度によっては違反の主体になる可能性があります。掲載枠を提供しただけの媒体社まで含まれるかは、見解が分かれます。広告を作る側も載せる側も、措置命令の名あて人になる可能性があるという前提で表現を管理する必要があります。

参考:厚生労働省「医薬品等の広告規制について」(課徴金制度の導入の項に令和元年12月4日公布の改正で導入と記載)

副作用や不具合の報告義務違反による業務改善命令

製造販売業者は、自社製品の副作用や不具合を知ったときに、定められた期限内に厚生労働大臣へ報告する義務を負います(68条の10第1項)。この報告が遅れた事案では、業務改善命令が選ばれています。ファイザーの事案では、命令の内容は安全管理業務手順書の改定、社員への教育訓練、改善計画の提出でした。

日本メドトロニックの事案では、外国で発生した不具合症例の報告遅れを理由に、72条1項と72条の2の2に基づく業務改善命令が出されました。命令は、責任役員を含めた責任の所在の明確化と、海外製造元から情報を確実に入手するシステムの改修を求めています。報告の遅れは現場の怠慢ではなく、情報を集めて判断する仕組みの問題として処分されるという点で、二つの事案は共通しています。

参考:厚生労働省 報道発表資料「医薬品医療機器等法に基づく行政処分を行いました」(日本メドトロニック株式会社)(令和6年11月8日公表)

参考:厚生労働省 平成30年度第3回医薬品医療機器制度部会 資料1「テーマ②に関する現状について」(平成30年6月7日・31ページ)

参考:日本経済新聞「ファイザーに業務改善命令 副作用212人分を未報告」(2015年9月1日)

薬局と販売業者に対する都道府県の処分

薬局や医薬品の販売業者を監督するのは都道府県知事です(75条1項)。処分は各自治体が発表するため、厚生労働省の資料には載りません。2017年のC型肝炎治療薬ハーボニー配合錠の偽造品事案では、偽造品を仕入れて他の店舗に貯蔵させた薬局が、奈良県から改善措置命令、業務停止命令、管理者変更命令を受けました。東京都と大阪府も、卸売販売業者6社に改善措置命令を出しています。2026年2月には、大阪市が処方箋なしで処方箋医薬品を販売した薬局に9日間の業務停止を命じました(75条1項・49条1項違反)。

参考:厚生労働省 報道発表資料「医薬品医療機器等法違反業者に対する自治体による行政処分について(第2報)」(平成29年3月13日公表)

薬機法の課徴金制度と行政処分の関係

薬機法の課徴金制度と行政処分の関係

課徴金納付命令は、虚偽または誇大な広告(66条1項)をした者に対して、厚生労働大臣が課徴金の納付を命じる制度です(75条の5の2第1項)。課徴金の額は、課徴金対象期間に取引した医薬品等の対価の額の合計に4.5%を乗じた額で、上限はありません。

課徴金は刑罰ではありません。罰金は刑法上の刑罰で前科になりますが、課徴金は行政上の措置で、納付命令を受けても前科にはなりません。導入の理由は、66条1項違反の罰金の上限が200万円で、違反広告の売上に比べて抑止力に欠けていたことです。措置命令と同じ令和元年の改正で導入され、2021年8月1日に施行されました。

▼ 薬機法の課徴金納付命令の仕組み

項目内容根拠条文
対象行為虚偽または誇大な広告(66条1項違反)に限られる。承認前広告(68条)は対象外75条の5の2第1項
課徴金の額課徴金対象期間に取引した医薬品等の対価の額の合計に4.5%を乗じた額75条の5の2第1項
対象期間違反行為をしていた期間。やめた後6か月以内の取引期間を加え、最長3年間75条の5の2第2項
命じないことができる場合業務運営の改善命令や措置命令をする場合で保健衛生上の危害への影響が軽微なとき、許可取消しや業務停止をするとき75条の5の2第3項
命じられない場合計算した課徴金の額が225万円未満のとき。対価合計額に換算すると約5,000万円未満75条の5の2第4項
景品表示法との調整同じ行為に景品表示法8条1項の課徴金納付命令があるときは、対価合計額の3%を減額75条の5の3
自主報告による減額調査を予知する前に違反の事実を報告したときは50%を減額75条の5の4
端数1万円未満は切り捨て75条の5の5第2項

参考:厚生労働省 医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課「課徴金制度の導入について」(令和元年12月4日公布・令和3年8月1日施行の改正法の説明資料)

課徴金納付命令は行政処分の代わりではなく、原則として併せて出される仕組みです。厚生労働大臣は、違反があれば納付を命じなければなりません(75条の5の2第1項)。命じないことができるのは、改善命令や措置命令で足りるほど保健衛生上の影響が軽微なときか、許可取消しや業務停止という重い処分をするときに限られます(同条3項)。措置命令を受けた事業者は、売上規模が大きければ課徴金納付命令も受けると考えて対応する必要があります。2026年9月時点で、厚生労働省が課徴金納付命令を出した事例の公表は確認できていません。

行政処分と刑事罰の違い

行政処分と刑事罰は、科す主体、手続、効果のすべてが異なります。行政処分は厚生労働大臣や都道府県知事が行政手続法の手続を経て行い、刑事罰は捜査と起訴を経て裁判所が判決で科します。

▼ 行政処分・課徴金・刑事罰の比較

行政処分課徴金納付命令刑事罰
科す主体厚生労働大臣・都道府県知事厚生労働大臣裁判所
手続行政手続法に基づく聴聞(口頭で意見を述べる手続)または弁明の機会の付与(書面で意見を出す手続)薬機法75条の5の6以下に基づく弁明の機会の付与捜査、起訴、公判
内容業務改善命令、業務停止命令、措置命令、許可取消しなど対価合計額の4.5%の納付拘禁刑、罰金、法人への罰金
前科ならないならないなる
公表処分庁が報道発表で公表公表されうる捜査機関の発表や報道
従わない場合命令違反が刑事罰の対象(85条6号・7号)国税滞納処分の例による徴収—

薬機法の刑事罰は違反の類型ごとに段階があります。無許可製造や無承認医薬品の販売などは、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその両方です(84条)。虚偽または誇大な広告と承認前広告は、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金またはその両方です(85条4号・5号)。措置命令や業務停止命令に従わなかったときも85条の対象になり(同条6号・7号)、立入検査での報告拒否や虚偽報告は50万円以下の罰金です(87条13号)。従業員が業務に関して違反したときは法人も罰金刑を受け(90条)、84条の一部の違反では法人に1億円以下の罰金が科されます。

2025年6月1日の刑法改正で拘禁刑が導入されており、改正前の刑の名前で書かれた古い解説記事は現行法と一致しません。逮捕される場合の要件や公訴時効については、次の記事で詳しく解説しています。

参考:法務省「拘禁刑の創設」(令和7年6月1日施行)

薬機法違反が発覚してから行政処分までの流れ

違反の発覚から処分までには、発覚と立入検査、行政指導、報告徴収、意見陳述の手続、処分と公表という段階があります。各段階で処分庁と事業者がすることを順に見ていきます。

薬機法違反が発覚してから行政処分までの流れ

次が行政指導です。検査で見つかった不備が指摘事項書として交付され、事業者は改善報告書を提出します。改善が不十分と判断されると、法律に基づいて正式に報告を求める報告徴収の通知が出され(69条1項)、処分庁は厚生労働省と対応を協議します。沢井製薬の事案について福岡県が発表した経過では、6月に情報を探知し、7月に立入検査、8月に改善報告書の受理と不適合の通知がありました。9月に報告徴収、12月に処分という流れです。発覚から処分までは半年前後かかり、その間の改善報告の中身が処分の重さを左右することが読み取れます。

参考:厚生労働省 報道発表資料「医薬品医療機器等法に基づく行政処分を行いました」(沢井製薬株式会社)参考資料:大阪府・福岡県 報道発表資料(令和5年12月22日公表)

処分の直前には、行政手続法が定める意見陳述の手続があります。許可を取り消す処分や責任者の解任を命じる処分では聴聞が必要で、それ以外の不利益処分では弁明の機会が付与されます(行政手続法13条1項)。聴聞では当事者が期日に出頭して意見を述べ、証拠書類を提出でき(同法15条)、弁明の機会では期限までに弁明書と証拠書類を提出します(同法29条・30条)。公益上緊急に処分をする必要があるときなどは、この手続が省かれます(同法13条2項)。

最後が処分と公表です。命令書が交付され、処分庁は報道発表で事業者名、違反の内容、処分の内容を公表します。

薬機法違反の行政処分はどこで公表されるか

行政処分の情報は、処分庁ごとに別々の場所で公表されます。厚生労働省の処分は、報道発表資料の一覧に「医薬品医療機器等法に基づく行政処分を行いました」という表題で個別に掲載され、事業者名や製品名は本文と別紙のPDFに書かれています。処分をまとめた一覧ページはなく、製造不正の処分だけは審議会資料「医薬品の品質確保に向けた取組みについて」に事例一覧があります。

都道府県知事や政令指定都市の処分は、それぞれの自治体の報道発表資料に掲載され、薬務課や生活衛生課のページに置かれます。医薬品の回収情報は独立行政法人医薬品医療機器総合機構が公表していますが、自主回収は行政処分ではないので、回収情報と処分は分けて読む必要があります。

民間のデータベースや業界紙にも一覧がありますが、承認や自主回収、行政指導まで処分と同じ一覧に並べているものがあり、件数だけを見ると規模を誤ります。最終的な確認は、処分庁の報道発表資料と別紙に戻って、根拠条文と処分内容を読むのが確実です。

薬機法違反で行政処分を受けたときの対応

薬機法違反で行政処分を受けたときの対応

処分の予告や行政指導を受けた段階で企業がすべきことは、事実関係の確定、意見を述べる期限の把握、処分後を見据えた改善計画の準備です。この進め方によって、処分の内容と公表後の影響は変わります。

弁明の機会と聴聞で主張できること

処分庁から届く通知書には、予定される処分の内容と根拠となる法令の条項、処分の原因となる事実、弁明書の提出期限または聴聞の期日が書かれています(行政手続法15条1項・30条)。まず、原因となる事実として書かれた内容を、社内で確認した事実と一つずつ突き合わせます。

主張の柱は三つあります。事実の認定の誤り、違反の程度や健康被害の有無についての評価の行き過ぎ、そして既に実施した是正措置と再発防止策です。弁明書には証拠書類を添えることができ(同法29条2項)、聴聞では出頭に代えて陳述書と証拠書類を提出することもできます(同法15条2項1号)。聴聞でも弁明の機会でも代理人を選任できます(同法16条1項・31条)。弁明書の提出期限は短く、事実確認と証拠の整理を期限内に終えるには、通知を受けた当日に着手する必要があります。沢井製薬の事案では、弁明の機会の付与から処分まで17日でした。争うかどうかの判断基準は三つに整理できます。事実認定に誤りがあれば、争点として弁明します。表現の評価の当否だけであれば、弁明しつつ是正を先行させます。事実に争いがなければ、是正措置と再発防止を中心に書き、処分の内容を軽くする方向を目指します。

参考:e-Gov法令検索 行政手続法(平成5年11月12日法律第88号)

改善計画と再発防止策の作り方

業務改善命令と措置命令では、期限を定めて改善計画の提出を求めることが多くあります。日本メドトロニック(2024年11月)とインプレッション(2025年11月)への厚生労働省の命令は、どちらも処分の日から1か月以内の提出を命じました。命令の別紙を読むと、求められている改善計画の骨格は共通しています。

一つ目は、違反事項ごとに、責任役員や総括製造販売責任者など誰の責任かを特定することです。二つ目は、違反を検知して組織として判断する仕組みです。担当者の判断に任せず、責任役員を含めて協議し、行政へ報告する体制を整えることが求められています。三つ目は、役員と従業員への継続的な教育訓練で、命令の文言には法令遵守を優先する企業風土の醸成まで入っています。

同じ骨格は、行政指導の段階で提出する改善報告書にも求められます。改善報告が不十分だと判断されたことが、そのまま処分の理由の一つになるため、経営層の関与を文書で示せる形にしておく必要があります。

参考:厚生労働省 報道発表資料 別紙(インプレッション株式会社に対する措置命令の内容)(令和7年11月)

公表された処分と取引先や風評への対応

処分庁による報道発表は、処分そのものではなく、それに付随する事実上の行為です。法令上の公表期限はなく、事業者の求めに応じて取り下げられることは通常ありません。掲載期間は処分庁ごとの運用によります。一方、措置命令で公示を命じられた場合、その公示は事業者自身に義務付けられる行政処分の内容そのものです(72条の5第1項)。取引先への説明は、報道発表と同じ日に、処分の内容、原因、改善計画の骨子を自社の言葉で伝えるのが基本です。行政指導の段階では事業者名が公表されないのが通常なので、広く告知する必要はありません。ただし、指摘された表現を掲載している媒体や代理店には掲載停止と差し替えを速やかに依頼し、公表を伴う処分に進む見込みが出た時点で主要な取引先に事前に説明します。

報道発表の後には、まとめサイトやSNSでの二次的な拡散が起きます。行政の発表内容をそのまま伝える記事に対してできることは限られます。一方、事実と異なる内容や、処分と無関係の事柄まで違反であるかのように書く記事は、名誉権や信用の侵害として削除請求や損害賠償請求の対象になる可能性があります。

処分に納得できないときの審査請求と取消訴訟

処分に不服がある場合、処分書に記載された教示(行政事件訴訟法46条)に従って争います。不服申し立てとして選べるのは、処分を知った日から3か月以内の審査請求か、6か月以内の取消訴訟です(行政不服審査法18条1項・行政事件訴訟法14条1項)。ただし、訴えを起こしても処分の効力は止まりません(行政事件訴訟法25条1項)。業務停止を止めるには、処分の効力を裁判所に一時止めてもらう執行停止を申し立て、重大な損害を避けるため緊急性があると認めてもらう必要があります(同条2項)。停止期間が短い処分では決定が間に合わないことや、期間の満了で争う利益が失われることもあります(同法9条1項)。また、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは認められません(同法25条4項)。このため、保健衛生上の危害を理由とする処分で執行停止が認められる余地は狭いと解されます。訴訟を検討するのは、事実認定そのものに誤りがあり、公示による取引停止など継続的な損害が見込まれる場合に限られます。表現の評価の当否だけを争う場合や、既に是正を終えている場合は、是正と改善計画の履行を優先するのが通常です。弁明の段階での主張が、実質的な最後の機会になることが多いと解されます。

参考:e-Gov法令検索 行政事件訴訟法(昭和37年5月16日法律第139号)

薬機法に違反しないための対策

処分の事実は公表され、取引先や消費者の信用に直接響きます。処分を受けない体制を先に作ることが、最も費用の少ない対策です。

自社のガイドラインを策定する

対策の一つは自社ガイドラインの策定です。どのような行為が薬機法違反になるかは、条文のほかに厚生労働省の通知を読まなければ分かりません。広告については、医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日 薬生発0929第4号)とその解説が判断の基準になります。自社の業務に関わる部分を社内ガイドラインとして共有すれば、従業員一人一人に薬機法違反への注意を促すことができます。

広告代理店や記事を載せるメディアも66条1項の「何人も」に含まれます。取引先に守ってもらう事項をガイドラインに書き、契約で確認しておくことで、委託先が違反表現を作ってしまうリスクを低減できます。ただし、委託して出した広告は広告主自身の広告として扱われるので、名あて人になる責任そのものは契約で免れないと解されます。事後の損害の分担は、契約上の責任条項で手当てします。前章で述べた改善計画の骨格を処分前に社内ガイドラインとして整えておくことが、行政指導の段階で処分を回避する材料になります。

参考:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(薬生発0929第4号 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)(平成29年9月29日公表)

弁護士へ相談する

ガイドラインの制定にあたって、参照すべき情報の取捨選択や、制定した内容が十分かに不安があるときは、薬機法に詳しい弁護士に相談する選択があります。薬機法の規制が及ぶ行為かどうかは断定しにくい場面が多いものの、過去の事案を踏まえた法的な視点からの助言が期待できます。行政指導や処分の通知を受けた後の弁明や改善計画の作成も、相談の対象になります。

薬機法違反の行政処分に関するよくある質問

薬機法違反の行政処分に関するよくある質問

行政処分を受けると前科になりますか

なりません。業務改善命令や業務停止命令、措置命令は行政上の処分で、刑事罰ではないからです。課徴金納付命令も同じです。ただし、同じ違反について捜査機関が捜査・起訴すれば、行政処分とは別に刑事罰を受ける可能性があります。

広告代理店やインフルエンサーも処分の対象になりますか

対象になる可能性があります。虚偽または誇大な広告を禁じる66条1項は「何人も」と定めており、広告主に限っていません。措置命令の名あて人は66条1項に違反した者です(72条の5第1項)。広告の制作や表示内容の決定に関与した代理店や、報酬を受けて効能をうたう投稿をした個人も、関与の程度によっては命令を受けうると解されます。掲載枠を提供しただけの媒体社まで含まれるかは見解が分かれます。

課徴金と罰金は両方かかりますか

両方かかる可能性があります。課徴金は行政上の措置、罰金は刑事罰で、別の制度だからです。景品表示法の課徴金納付命令があるときに3%を減額する調整(75条の5の3)はありますが、罰金との間で額を調整する規定はありません。

行政処分の記録はいつまで公表されますか

薬機法には公表の期限を定めた規定はなく、処分庁ごとの運用に委ねられています。処分を受けた事業者の側から公表の取り下げを求めることはできないと解されるため、公表を前提に取引先への説明を準備することになります。

行政指導を受けた段階でも公表されますか

通常は公表されません。行政指導は処分ではないため、事業者名を報道発表する対象にならないのが一般的です。ただし、改善に応じず処分に進めば報道発表の対象になります。自治体によって運用が異なるため、指導を受けた際に担当課へ確認してください。

まとめ:薬機法の行政処分への対応は弁護士へご相談を

薬機法違反の行政処分には、改善命令、業務停止命令、措置命令、許可の取消しなどの種類があり、刑事罰や課徴金とは別に科されます。近年の処分は後発医薬品メーカーの製造不正に集中していましたが、2025年には厚生労働省が広告違反への措置命令を初めて使いました。処分の前には弁明の機会や聴聞で意見を述べる場面があり、通知から期限までの時間は短いので、事実の確認と改善計画の準備を同時に進める必要があります。今後の広告が薬機法に抵触していないか気になる場合や、行政指導や処分の通知を受けた場合には、当事務所へご相談ください。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に豊富な経験を有する法律事務所です。当事務所では、メディア運営事業者、レビューサイト運営事業者、広告代理店、サプリメントなどのD2Cや化粧品メーカー、クリニック、ASP事業者などに対し、記事やLPのリーガルチェック、ガイドライン作成、サンプリングチェックなどのサービスを提供しています。行政指導や行政処分の通知を受けた際の初動対応についてもご相談を受け付けています。下記ページにて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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