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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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薬機法に関連するサプリメントの定義と広告表現の注意点

日常生活で不足しがちな栄養を補うためにサプリメントを利用する人も多いでしょう。サプリメントは、ドラッグストアなどで見かけるほか、通販番組や雑誌広告などでも取り扱われており、日常生活で目にする機会も増えています。

サプリメントを販売する際の広告においては、法規制の観点から、サプリメントが医薬品なのか食品なのかという点がとても重要です。知らないまま広告を出していると、気づかないうちに違法行為となり、課徴金が課される等、事業に大きな損失が発生してしまう可能性もあります。

この記事では、サプリメントの性質や広告で気を付けるべき表現のポイントなどを解説します。

薬機法とは

薬機法とは

薬機法は、医薬品・医療機器・医薬部外品・化粧品などを対象とした法律で、その品質・有効性・安全性の確保や、保健衛生上の危害の発生・拡大の防止のための規制を行うなどの必要な措置を講ずることで、保健衛生の向上を図ることを目的としています(薬機法第1条)。

医薬品は利用者の身体に影響を及ぼす可能性が高いものであることから、製造や販売、広告といったさまざまな行為について薬機法上で規制が定められています。

サプリメントの定義

サプリメントには、実は行政的な定義はなく、一般的に「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」と考えられています。

しかし、人が経口的に服用する飲食物は、「食品」と「医薬品等」に分けられるとされており(食品安全基本法第2条第1項、食品衛生法第4条第1項参照)、「医薬品等」に該当するかどうかは薬機法第2条第1項を基準に判断されるところ、サプリメントは医薬品等の定義には該当しないため、あくまで食品として扱われます。

したがって、サプリメントの販売や広告などについては、原則として薬機法の規制は及ばず、景品表示法や健康増進法などの法律による規制を受けることになります。

もっとも、サプリメントは、その形状が錠剤やカプセルのようになっており、医薬品のような外観を有するものもあります。そのような場合には、後述するように医薬品とみなされて薬機法の規制対象となることがあります。

サプリメントと健康食品の違い

サプリメントと同様に、健康食品にも行政的な定義はなく、一般的には、健康食品とは「健康の保持増進に資する食品全般」と考えられています。また、分類上は「食品」に該当するという点も、サプリメントと同様です。

もっとも、健康食品の中には、広告等に成分の機能の表示が可能となる「保健機能食品制度」が利用されているものがあります。サプリメントは、「保健機能食品制度」が利用されていない、いわゆる「健康食品」と呼ばれるものに分類されることになります。

健康食品の性質や、健康食品における広告表示については、別の記事で解説しておりますので、ご参照ください。

関連記事:薬機法の広告規制とは?適法な表現で広告を作成するポイントを解説

サプリメントと医薬品の違い

前述のとおり、「医薬品」に該当するかどうかは、薬機法第2条第1項を基準に判断されるため、サプリメントと医薬品は明確な区別がなされているといえます。

しかし、商品の形状や広告の表示によっては、食品であっても医薬品とみなされる可能性があり、サプリメントも医薬品とみなされるおそれがあります。

医薬品であれば製造や販売に際して厚生労働大臣等の承認や許可が必要となるにもかかわらず、医薬品とみなされた食品はこれらの承認を得ずに製造や販売がなされてしまうことから、「無承認無許可医薬品」と呼ばれます。

適切な承認や許可を受けずに医薬品を製造・販売した場合には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられるおそれがあるため、サプリメントの製造・販売を行う際には、医薬品とみなされることのないように細心の注意を払わなければなりません。

薬機法でサプリメントを取り締まる理由

薬機法でサプリメントを取り締まる理由

サプリメントが医薬品と同様の成分を含むことや、医薬品と誤解されるような効能効果を広告で記載することが許されると、医薬品の承認や許可制度を潜脱して無承認・無許可で医薬品と同等の商品を販売することが可能となってしまいます。

そうなると、人の身体に対してさまざまな悪影響を及ぼし、健康被害を生じさせるおそれがあります。医薬品と同様の成分を含む商品や、医薬品と誤解されるような効能効果を広告で記載した商品などは、「医薬品」とみなされ、承認や許可なく製造・販売等を行うことは前述のような厳罰に処されるとされています。

厚生労働省のホームページでは、無承認無許可医薬品情報を掲載している箇所について、以下のような注意を記載しています。

無承認無許可医薬品は、日本の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づく品質・有効性・安全性の確認がなされていません。

検出された医薬品成分の含有量は、必ずしも均一でなく、いちどに摂取すると健康被害を生じるおそれがある量が含まれている場合があります。

また、不衛生な場所や方法で製造されたものであるおそれがあり、有害な不純物等が含まれている可能性が否定できません。報告されている健康被害については、検出された医薬品成分のみによるものとは限らず、そうした不純物等が関係している可能性もあります。

(出典:無承認無許可医薬品情報|厚生労働省

サプリメントの薬機法に関する広告規制の対象

サプリメントを広告・紹介する際は、媒体や立場にかかわらず薬機法の規制対象となる可能性があります。薬機法では「一般消費者向けのすべての広告媒体」が対象とされており、SNS、ブログ、ダイレクトメールなど掲載場所や手段に制限はありません。

発信者が企業だけでなくインフルエンサーやアフィリエイターであっても、内容によっては規制の対象です。

また、薬機法上の広告と判断されるかは、厚生労働省の通知に基づく3要件のすべてを満たすかどうかで決まります。

・顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること

・特定医薬品等の商品名が明らかにされていること

・一般人が認知できる状態であること

(出典:薬事法における医薬品等の広告の該当性について|厚生労働省)

この3要件は一見シンプルに見えるものの、実際の運用では慎重な判断が求められます。

商品の紹介が目的でなくても、購入を促すような表現が含まれていれば「顧客誘引の意図あり」と判断されるおそれがあります。

また、商品名を直接記載していない場合であっても、後からチラシや資料が提供されるような場合は「商品名の明示」とされる可能性は高いです。

さらに、IDやパスワードの入力が必要なWebサイトでも、誰でも登録できる形式であれば「一般人が認知できる状態」に該当するため広告と判断されることがあります。

サプリメントの薬機法に関する広告表現の注意点

サプリメントの薬機法に関する広告表現の注意点

サプリメント等の商品が医薬品とみなされるか否かの解釈のポイントとしては、

  •  効能効果、形状及び用法用量の如何にかかわらず、判断基準の1.(※物の成分本質(原材料)が、専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)であると判断された場合)に該当する成分本質(原材料)(専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リストに記載されているもの)が配合又は含有されている場合は、原則として医薬品の範囲とする。
  •  判断基準の1.に該当しない成分本質(原材料)が配合又は含有されている場合であって、以下の①から③に示すいずれかに該当するものにあっては、原則として医薬品とみなすものとする。

① 医薬品的な効能効果を標ぼうするもの

② アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの

③ 用法用量が医薬品的であるもの

(出典:「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」|厚生労働省)

が挙げられます。単に医薬品に使用されるような成分が含まれているかどうかだけではなく、商品の形状や用法用量の表記などからも医薬品とみなされるおそれがあるため、注意が必要です。

加えて、上記厚生労働省が示す資料では、医薬品的と判断される広告表現の具体例も挙げられています。

【医薬品的な効能効果と判断される広告表現の例】

分類説明表現例
疾病の治療・予防病気の治療または予防を目的とする効能効果・糖尿病、高血圧の人に
・胃潰瘍の予防
・ガンがよくなる
・肝臓障害を治す
身体機能の増強・増進単なる栄養補給ではなく、身体機能を強化する内容・疲労回復
・強精・強壮
・食欲増進
・若返り
・病気に対する自然治癒力を高める
効能効果の暗示直接的な記述がなくても、連想させる表現・「延命◯◯」「◯◯の精」などの名称
・製法・成分説明で効果をほのめかす
・学者・医師の談話を引用し効果を示唆

また、無承認無許可医薬品は医薬品とみなされる以上、薬機法上の広告規制を受けることになります。薬機法第68条では、承認前の医薬品の名称や製造方法、効能効果、性能に関する広告が禁止されており、これに違反した場合には2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科せられるおそれや、広告の中止命令や再発防止命令などの措置命令を受ける可能性があります。

措置命令については、別記事で解説しておりますので、ご参照ください。

関連記事:薬機法の課徴金制度とは?対象となる行為や減免されるケースを解説

薬機法に違反した場合の法的リスク

薬機法に違反した場合には、以下3つの処分に直面するリスクがあります。

  • 行政処分
  • 課徴金納付命令
  • 刑事罰

行政処分は、薬機法違反の疑いが生じ、行政からの指摘を放置するなど初動対応が遅れた場合、より重い処分につながるため速やかな対応が不可欠です。

厚生労働省や都道府県による調査が入り、必要と判断されれば行政指導が行われ、改善がない場合には措置命令などの処分が下されます。

措置命令では、違反広告の中止や再発防止策の実施、違反事実の公表などが命じられ、違反内容が広く知られることで企業の信頼が著しく損なわれるおそれもあります。

課徴金納付命令は、虚偽や誇大な広告を行った事業者に対し、厚生労働大臣が当該違反広告による売上額の4.5%に相当する課徴金の納付を命じる措置です(薬機法第75条の5の2)。

なお、同じ広告が景品表示法にも違反している場合は、重複課徴を避けるために調整が行われ、景品表示法の課徴金命令が先行した場合は薬機法の課徴金が1.5%分に減額されます(薬機法第75条の5の3)。

また、違反を厚生労働大臣に自主的に報告した場合には、課徴金が50%減額される規定もあります(同法第75条の5の4)。

薬機法に違反する広告行為には、内容に応じて懲役や罰金などの刑事罰が科される可能性があります。

「誇大広告等」に該当する場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、またはその両方が科されます(薬機法第85条第4号)。「未承認医薬品等に関する広告」についても、同様の罰則が適用されます(薬機法第85条第5号)。

一方、「特定疾病用の医薬品等に関する広告制限違反」に対しては、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科が定められています(薬機法第86条第1項第17号)。

薬機法違反が疑われる場合は、薬機法に詳しい弁護士などの専門家と連携し、事実関係を整理したうえで適切な対応方針を検討することが重要です。

まとめ:サプリメントの広告には弁護士のリーガルチェックを

このように、サプリメントのつもりで製造・販売したとしても、使用している成分や商品の形状、広告の表示などを理由に「医薬品」とみなされてしまう可能性があります。そうなれば、製造の中止や広告規制違反による課徴金の徴収など、事業に多大な損失を生み出すことにもつながります。

サプリメントの製造・販売や、広告を作成する際に少しでも不安なことがあれば、薬機法に詳しい弁護士に相談してみましょう。

サプリメントなどの広告のリーガルチェックや書き換え表現の提案は、非常に専門性の高い領域です。モノリス法律事務所は、薬機法法務チームを組成し、サプリメントから医薬品まで、さまざまな商材の記事チェック等に対応しています。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に豊富な経験を有する法律事務所です。当事務所では、メディア運営事業者・レビューサイト運営事業者・広告代理店・サプリメントといったD2Cや化粧品メーカー・クリニック・ASP事業者などに対し、記事やLPのリーガルチェック、ガイドライン作成やサンプリングチェックなどのサービスを提供しています。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取り扱い分野:記事・LPの薬機法等チェック

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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