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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

クロスボーダー

EUのプラスチック規制は新たな段階へ:SUP指令の2026年目標とPPWR(包装規則)の具体化に伴う法務対応

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2025年、欧州連合(EU)の「特定のプラスチック製品の環境への影響の低減に関する指令」(以下「SUP指令」といいます。)は、飲料ボトルに対する再生プラスチック含有率規制の開始や、最初の実施報告書の公表など、大きな転換期を迎えました。

2026年現在、この規制は「運用の本格化」から「目標期限の到達と市場監視(エンフォースメント)の強化」、そして包括的な「包装・包装廃棄物規則(PPWR)」の具体化へと、さらなる進化を遂げています。SUP指令は2019年の発効以来、使い捨てプラスチック規制の中核として、各国の制度設計や企業活動に大きな影響を与えてきました。2026年は、定められた主要目標の期限が相次いで到来する、実務上の極めて重要な局面です。

SUP指令の目的は、深刻化する海洋ごみ問題に対応するとともに、循環経済(サーキュラー・エコノミー)への移行を加速させることにあります。日本企業にとっても、これまでの上市禁止措置への対応にとどまらず、定着した再生材の使用義務や分別回収目標、さらに2025年から順次適用が進む「包装・包装廃棄物規則(PPWR)」との整合を踏まえた高度な対応が求められます。

本記事では、日本企業が押さえておくべき最新動向を中心に、SUP指令のポイントを整理します。

SUP指令の背景と現在の位置づけ

EUでSUP指令が導入された背景には、深刻化する海洋プラスチックごみ問題と、循環経済への移行を進める政策的要請があります。

海洋環境保護と循環経済への要請

EUの海岸で見つかる海洋ごみのうち、個数ベースで約80%から85%がプラスチックであり、その半分を使い捨てプラスチック製品(SUP)が占めています。これらの製品は一度使用されると廃棄されることが多く、リサイクルも容易ではないため、環境や経済に大きな影響を与えてきました。

SUP指令は、2030年までにEU域内のすべてのプラスチック包装を再利用または容易にリサイクル可能にするという「欧州プラスチック戦略」を具体化するための制度として位置づけられています。

SUP指令は、段階的に規制が導入される仕組みとなっています。2021年の上市禁止措置に続き、2025年には再生プラスチックの使用義務や分別回収目標(第9条第1項)が本格的に適用されました。

欧州委員会が公表した加盟国における指令の立法化・運用状況に関する最初の報告書は、各国の制度運用の差異や実効性を評価するものであり、2027年7月に予定されている指令全体の評価・見直しに向けた基礎資料となります。

指令から規則へ広がる重層的な規制体系

SUP指令は、加盟国の国内法を通じて適用される「指令」です。これに加え、より広範な包装材を対象とする「包装・包装廃棄物規則(PPWR)」が2025年2月から順次適用されています。PPWRは「規則」として加盟国に直接適用され、SUP指令の目標を補完・強化する役割を担います。企業としては、SUP指令という特定分野の規制と、PPWRという包括的な包装規制の双方を、コンプライアンス対象として一体的に把握する必要があります。

SUPの内容と最新動向

SUPの内容

SUP指令では、製品設計や素材構成、回収体制などについて段階的な義務が課されており、特に2025年以降は実務レベルでの厳格な運用が求められています。

製品要件と再生プラスチック義務

飲料ボトル等の設計および素材構成に関する義務は、以下の通り厳格に運用されています。

  • 再生プラスチックの含有義務:ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする飲料ボトルは、加盟国の上市平均で少なくとも25%の再生プラスチックを含有しなければなりません。さらに2030年からは、すべての飲料ボトルにおいて再生プラスチック含有率を30%以上に引き上げることが義務付けられています。
  • キャップの脱落防止義務(テザードキャップ):3リットルまでの飲料容器は、使用中にプラスチック製のキャップまたは蓋が容器から外れない構造でなければ上市できません。2024年7月からの適用開始以降、猶予期間を経て欧州市場で流通する対象製品の標準仕様として完全に定着しており、不適合製品に対する市場監視当局の取り締まりも本格化しています。

2025年・2029年の分別回収目標

加盟国は、3リットルまでの飲料容器について、リサイクルのための分別回収率を重量ベースで引き上げる義務があります。2025年までに77%、2029年までに90%の回収を達成しなければなりません。

この目標を達成するため、多くの加盟国ではデポジット制度(飲料容器の預り金制度)の導入や拡充が進められており、供給事業者にも制度への参加が求められています。

2026年目標:消費削減の到達と加盟国の独自規制

飲料用カップ(蓋を含む)および即席で消費される食品容器については、2022年比で「2026年までに定量的かつ大幅な消費削減を達成すること」が加盟国に義務付けられていました。 目標期限を迎えた現在、各加盟国ではプラスチック課税の導入や、店内飲食における再利用可能(リユーサブル)容器の強制化など、国内法による独自の削減措置が一段と具体化・激化しています。

拡大生産者責任(EPR)の全面展開

生産者が廃棄物処理費用や清掃費用を負担するEPR制度は、2024年末までにすべての対象製品で確立されました。食品容器、飲料ボトル、たばこ、ウェットティッシュなどの生産者が、各加盟国のEPRスキームに基づく拠出金の支払義務を負う実務が定着しています。

2026年の最重要トピック:PPWRとの連動と「デジタル対応」

現在、SUP指令単体だけでなく、PPWRの本格化に伴う以下のトピックが実務上の最大の焦点となっています。

  • デジタル製品パスポート(DPP)との連携:再生プラスチックの含有率(PET25%以上)やリサイクル性を証明するため、QRコード等を介したデータ追跡・トレーサビリティ体制の構築が求められ始めています。
  • グリーンウォッシング対策との連動:「再生材〇%使用」「環境に配慮された包装」といったラベル表示について、明確な科学的根拠を求めるEUの環境主張(グリーンウォッシング)規制との兼ね合いが重要視されています。

2027年の見直しと将来的な規制拡大

欧州委員会は2027年7月までに本指令の評価を行い、必要に応じて対象製品のリスト(附属書)の改訂や、2030年以降のさらなる削減目標の設定を検討します。 また、現在対象外となっている金属製飲料容器のプラスチック製キャップやバイオプラスチックについても、海洋環境における生分解性基準の科学的評価を踏まえ、将来的に規制対象となる可能性が高まっています。特に単に「バイオプラに代替する」だけではSUP指令の規制を回避できないケースが多く、注意が必要です。

日本企業として求められる対応

日本企業として求められる対応

EU市場で事業を行う企業には、これらの規制に対応するための具体的かつデータに裏付けられた実務対応が求められます。

再生プラスチックのサプライチェーン確保とデータ立証

PETボトル25%含有義務将来的なPPWRによる包装全体への再生材使用義務に対応するため、企業は高品質な再生材を安定的に調達する体制を整える必要があります。 欧州では再生材の需要が急増しており、リサイクル業者との長期的な協力関係の構築や、素材の組成情報の透明性確保が不可欠です。また、食品接触材として再生プラスチックを使用する場合には、再生プラスチック食品接触材規則(EU規則2022/1616)の要件を遵守することに加え、それらをデジタル上で立証できるデータの準備が進められています。

「生産者」としての登録と認定代理人の任命

Eコマースなどを通じて日本からEUの消費者に直接販売する場合、その企業は「生産者」に該当します。 生産者に該当する日本企業は、販売先の加盟国内に「認定代理人(authorised representative)」を任命し、EPR制度への登録や拠出金の支払いを行う法的義務があります。加盟国による取り締まりが厳格化する中、これを怠った場合、多額の罰金(ドイツでは最大10万ユーロ等)が科されるリスクが高まっています。

PPWRおよび表示規制と統合したコンプライアンス体制の構築

現在は、SUP指令だけでなくPPWR(包装・包装廃棄物規則)への対応を一体で進める必要があります。 たとえばPPWRでは、2030年からプラスチック食品接触包装全体に再生材含有義務が課される予定であり、SUP指令の飲料ボトル規制よりも対象が広がります。企業としては、加盟国ごとの国内法(SUP指令の国内実施)とEU共通の規則(PPWR)の双方を確認しながら、製品設計、過剰包装の回避(空隙率規制)、表示(グリーンウォッシング対策)のロードマップをアップデートする必要があります。

まとめ:SUP指令等の海外環境規制への対応は専門家に相談を

SUP指令は、単なるプラスチックごみ削減から、リサイクル材の使用強制やデータ追跡(DPP)を通じた循環経済への本格移行へと段階が進んでいます。2027年に予定されている指令全体の評価・見直しに向け、規制対応は「法改正への準備」から「厳格な運用とデータ立証」のフェーズへと変わっています。

バイオプラスチックや生分解性プラスチックについても、安易な回避策とはならず、より厳格な基準が適用される見込みです。プラスチック汚染対策は、もはや一過性の環境政策ではなく、EU市場における事業継続の前提条件です。

日本企業としては、最新の法動向を継続的に把握し、規制を先取りした製品設計や、透明性の高いサプライチェーン管理を進めていくことが重要になります。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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