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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

特定デジタルプラットフォーム透明化法とは?実務対応と最新評価から読む留意点

プラットフォーム上でビジネスを行う企業にとって、手数料の引き上げや取引条件の変更は避けて通れない問題です。しかし、その変更が十分な説明がないまま一方的に行われた場合、事業計画に大きな影響を及ぼしかねません。また、デジタル広告の分野においても、広告の掲載可否や配信条件が明確な基準を示されないまま変更されることで、想定していた成果が得られなくなるケースがあります。とりわけ、審査基準やアルゴリズムの影響が不透明な場合、広告主にとっては改善の打ち手を見出すことが難しくなります。

近年、デジタルプラットフォームは生活や経済活動に不可欠な社会インフラとなる一方で、提供者と利用事業者の間には、情報格差や交渉力の差が顕著に存在しています。これを受け、取引の透明性と公正性を確保するために制定されたのが「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」です。

本記事では、企業が押さえるべき本法の全体像と、経済産業省が公表した最新の評価結果に基づく実務上の対応ポイントを解説いたします。

特定デジタルプラットフォーム透明化法とは

透明化法の背景

特定デジタルプラットフォーム透明化法とは、大規模なオンラインモールやアプリストアなどの巨大IT事業者に対し、取引条件の開示や苦情処理体制の整備などを義務付け、出品業者や消費者との取引の透明性と公正性を向上させるために定められた法律です。

参考:経済産業省|デジタルプラットフォーム取引透明化法

巨大IT企業による急激な市場の独占・集中が進む中、一方的な規約変更や検索順位の不透明さなど、出店者側との取引における「力の差」が課題となりました。強い規制で縛るのではなく、企業側に自主的な情報開示や対応窓口の設置を促し、公平で透明な取引環境を作るために導入された法制度です。

こうした力の差の問題が生じる背景には、デジタルプラットフォーム特有の市場構造があります。デジタルプラットフォームには、利用者が増えるほど利便性が高まる「ネットワーク効果」が働きます。この特性により、特定のプラットフォームに利用者や取引が集中しやすく、結果として市場の寡占化が進みます。一度こうした構造が形成されると、利用事業者にとっては当該プラットフォームへの依存度が高まり、他の手段への切り替えが難しくなります。その結果、デジタルプラットフォーム提供者と利用事業者の間には、実質的な交渉力の格差が生じやすくなります。

本法は、このような構造的な課題に対応するため、従来のような一律の直接規制ではなく、事業者の自主的な取組みを前提とした「共同規制(コーレギュレーション)」という手法を採用しています。具体的には、国が一定のルールを定めつつ、DPF提供者による情報開示や体制整備を促し、その実施状況を評価・公表することで、市場メカニズムを通じた改善を図るものです。

なお、本法は内外の事業者を問わず適用されるため、海外の主要プラットフォーム事業者も対象に含まれます。近年では、なりすまし広告や詐欺的コンテンツといった新たな課題も顕在化しており、デジタルプラットフォーム提供者には日本国内の実情を踏まえた対応と、関係者との継続的な対話が求められています。

特定デジタルプラットフォーム透明化法の仕組みと規制の全体像

透明化法は、特定の規模以上のデジタルプラットフォーム提供者を指定し、情報の開示や体制の整備を義務付ける枠組みとなっています。

特定デジタルプラットフォーム透明化法の規制対象の指定と範囲

経済産業大臣は、政令で定める事業区分ごとに、売上額等の規模が一定基準以上の事業者を「特定デジタルプラットフォーム提供者」として指定します。

現在、総合オンラインモール、デジタル広告、アプリストアの3分野が指定されています。現在、総合オンラインモール、デジタル広告、アプリストアの3分野が指定されています。なお、アプリストア分野等については、2025年12月に「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律(スマホ法)」が施行されたことにより、独占禁止法の補完的観点からの事前規制も強化されています。企業としては、透明化法による取引透明化の規律と、スマホ法による競争促進規制の双方を視野に入れて対応する必要があります。

提供条件等の情報の開示義務

特定デジタルプラットフォーム提供者は、利用者に対して取引条件等の情報を開示しなければなりません。商品等提供利用者に対する主な開示事項としては、サービスの提供を拒絶する場合の判断基準(アカウント停止等の基準)、自己の指定する商品・役務の購入・利用を要請する場合の内容及び理由(広告や物流サービスの利用要請など)、検索順位を決定するために用いられる主要な事項(アルゴリズムの主要因や広告費の影響)、データの取得・使用に関する条件(利用者の販売データの活用範囲や取得可否)、苦情の申出や協議の申入れを行うための方法(不服がある場合の連絡窓口)が挙げられます。

また、規約変更を行う場合には原則として事前に、サービスの提供拒絶等を行う場合には措置を講じた後遅滞なく、その内容や理由を開示しなければなりません。

自主的な手続・体制の整備

単なる情報の開示に留まらず、取引の公正さを確保するための実効的な体制整備も求められます。具体的には、苦情・紛争処理体制(利用事業者からの苦情を適切かつ迅速に解決する仕組み)、国内管理人の選任(海外事業者が国内の関係者と緊密に連絡を取るための責任者の設置)が挙げられます。

最新の評価では、AmazonやAppleにおける国内管理人の権限や組織内連携の実効性が精査されました。さらに、相互理解促進の措置として利用事業者の意見を聴取し、事情を十分に考慮するための仕組みづくりを行うことが求められます。

モニタリング・レビュー

特定デジタルプラットフォーム提供者は、毎年度、実施した措置の概要に自己評価を付した報告書を提出する義務があります。経済産業大臣はこれを評価し、その結果を公表します。このプロセスでは利用事業者アンケートや相談窓口に寄せられた声も活用され、官民一体となったレビューが行われます。

行政措置と独占禁止法との連携

義務違反に対しては、経済産業大臣による勧告・公表や措置命令が可能であり、命令違反には罰則も規定されています。また、独占禁止法違反の疑いがある場合は、公正取引委員会に対処を要請できます。

特定デジタルプラットフォーム透明化法において企業に求められる対応

企業として求められる対応

本法の運用が深まる中で、特定デジタルプラットフォーム提供者側、およびそれを利用する企業側の双方において、実務上の対応が重要となっています。

特定デジタルプラットフォーム提供者側の対応

開示情報の具体化と実効性の担保として、法第5条に基づく開示においては、形式的な記載ではなく、利用事業者が予見可能性を持てるよう具体的な説明が求められます。最新の評価では、Appleに対してアプリ却下理由の具体化や日本語でのコミュニケーション充実が求められ、楽天に対しても、違反点数制度に伴う措置理由の具体性を向上させるよう指摘がなされています。

国内管理人の実権確保としては、海外事業者の場合、国内管理人が単なる連絡窓口に留まらず、本社の事業部門に対して是正や調整を行える実質的な権限を持つことが重要です。Amazonが国内管理人の機能を法務部へ移管し、組織的な連携体制を構築した事例は、他社にとっても一つの指針となります。

経済産業省が透明化法に基づいて実施した定期評価において、LINEヤフーに対し、「苦情」を単なるクレームに限定せず、利用事業者の不満や改善要望も含めて幅広く収集・分析し、運営改善につなげる仕組みの構築が求められています。

利用事業者(出品者・広告主等)側の対応

利用事業者は、法第5条に基づき開示された情報を確認し、不合理な措置を受けた場合には、法第7条に基づく苦情処理手続を積極的に活用すべきです。利用事業者は、デジタルプラットフォーム側との交渉においてこれらの法的根拠を背景に、対等なパートナーシップを求めることができます。 

行政への申出制度の利用について、デジタルプラットフォーム提供者が本法を遵守していないと判断される場合、経済産業大臣に対してその事実を申し出ることができます。この申出を理由とした不利益な取扱いは禁止されており、自社の権利を守るための有効な手段となります。

変化する規制環境への注視

本法は、施行後5年を目途とした検討規定に基づき、絶えず見直しが行われています。アプリストアのスマホ法への移行のように、法域自体が動的に変化するため、企業は常に最新の動静をウォッチしておく必要があります。

また、毎年度公表される大臣評価を読み解くことで、当局が現在どの取引慣行を問題視しているかという規制の温度感を把握することができ、予防法務の観点から極めて有効です。

まとめ:特定デジタルプラットフォーム透明化法対応については弁護士に相談を

特定デジタルプラットフォーム透明化法は、提供者と利用者の対話を促進し、自主的な改善を通じて市場の健全性を保つという、新しい時代の法体系です。今回の「透明性及び公正性についての評価」の取りまとめは、デジタルプラットフォーム提供者にとってはガバナンス向上のための、利用事業者にとっては公正な競争を確保するための重要な指針となります。

企業には、単なる条文の形式的遵守に留まらず、本法が目指す「透明性と公正性の向上」という本質を理解した上での実務対応が期待されています。このような内容にあたっては、法律だけでなくプラットフォームの実態にも精通した弁護士の利用が推奨されます。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、カスハラ防止法対策に関するガバナンスに注目が集まっています。当事務所では労務問題に対するソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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