弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

AIの誤情報(AIO・ハルシネーション)は修正・削除できる?法的根拠と請求の流れを解説

風評被害対策

Googleの「AIによる概要(AI Overviews)」やAIモード、ChatGPTなどの生成AIは、検索や調べものの入口として急速に普及しています。一方で、生成AIは事実と異なる内容をもっともらしく回答してしまうことがあり、これは「ハルシネーション」と呼ばれています。

実際に、関係のない訴訟や事故が自社に結び付けられて表示される、AIを使った審査ツールで誤った判定が出る、本人が公開していない家族の情報が表示される、といったご相談がモノリス法律事務所にも寄せられています。AIの回答は検索結果の最上部に表示されることが多く、誤った内容であっても、利用者には事実として受け止められやすいという特徴があります。

本記事では、AIの誤情報が問題となる場面、修正・削除を求める法的根拠、誰に対してどのように請求するのか、そしてモノリス法律事務所の対応事例について解説します。

この記事の目次

AIの誤情報(ハルシネーション)による風評被害が起きる3つの場面

AIの誤情報による被害は、大きく次の3つの場面で生じています。

  1. 検索エンジンのAI回答(GoogleのAIによる概要・AIモードなど)
  2. 対話型の生成AIサービス(ChatGPT、Gemini、Claudeなど)
  3. AIを搭載した審査・チェックツール(反社チェック、与信審査、採用スクリーニングなど)

Googleの「AIによる概要」・AIモードに誤情報が表示されるケース

企業名や人名で検索した際に、検索結果の最上部にAIが生成した要約が表示されるケースです。たとえば、自社とはまったく関係のない訴訟の記事が、名称の似た別の法人の情報や報道と混ざり合い、「○○クリニックが患者から提訴された」といった形で表示されることがあります。

また、誤りではないものの、本人が公開を望まない私生活上の情報(配偶者の氏名など)が、ごく一部のウェブサイトの記載をもとに要約されて表示されるケースもあります。検索結果の通常のリンクとは異なり、AIの回答は情報源を確認しないまま読まれやすいため、影響が大きくなりがちです。

ChatGPT・Gemini等の生成AIが事実無根の経歴や不祥事を回答するケース

ChatGPTなどの対話型AIに企業名や人名を入力すると、実在しない不祥事や経歴が回答されることがあります。取引先や求職者、投資家が事前調査にAIを使うことも増えており、誤った回答が商談の中止や採用辞退につながるおそれがあります。

AIを搭載した審査・チェックツールで誤判定されるケース

見落とされがちなのが、企業間で利用される審査ツールです。AIを使った反社会的勢力チェックで、実際には該当しないにもかかわらず「該当の可能性あり」と判定された場合、取引の拒否や口座開設の謝絶といった直接的な不利益につながります。

この場合、誤った判定は利用企業の画面にしか表示されないため、判定された本人は誤判定に気付きにくく、気付いたときには取引の機会を失っていることも少なくありません。

AIの誤情報の修正・削除を請求できる法的根拠

AIの誤情報を修正・削除させる法的根拠

AIの回答だからといって、法的な責任の外にあるわけではありません。AIの回答の修正・削除を求める場合、主に次のような権利侵害を根拠とします。

名誉毀損・信用毀損を理由とする削除請求

「訴訟を起こされた」「事故を起こした」「反社会的勢力に該当する」といった回答は、企業や個人の社会的評価を低下させるものです。このような内容が事実でない場合、名誉権の侵害や信用の毀損にあたる可能性があります。

名誉権は人格権の一つであり、人格権の侵害に対しては、損害賠償だけでなく、侵害行為の差止め(表示の停止・削除)を求めることができると考えられています。

第709条(不法行為による損害賠償)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法 第七百九条

なお、名誉毀損の成否は、AIが自ら文章を生成したという点では従来のウェブ記事と異なりますが、一般の利用者がその回答をどのように受け止めるかという基準で判断される点は変わらないと考えられます。

プライバシー侵害を理由とする削除請求

回答の内容が事実であっても、配偶者や家族の氏名、病歴、住所など、本人が公開を望まない私生活上の情報であれば、プライバシーの侵害が問題となります。

検索結果の削除について、最高裁判所は、その事実を公表されない法的利益が、検索結果を提供する理由に優越することが明らかな場合には削除を求めることができる、という判断基準を示しています(最決平成29年1月31日)。AIによる概要は検索結果の一部として表示されるため、この判断枠組みが参考になると考えられます。

個人情報保護法に基づく保有個人データの訂正等の請求

AIを搭載した審査ツールのように、事業者が個人を識別できる形でデータベースを保有している場合には、個人情報保護法に基づく請求も考えられます。

第34条(訂正等)

本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないときは、当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(以下この条において「訂正等」という。)を請求することができる。

個人情報の保護に関する法律 第三十四条第一項

この請求は、個人(本人)が行うものです。法人そのものの誤判定については、名誉権・信用の侵害を根拠に、ツール提供事業者に対して修正を求めることになります。

AIの誤情報は誰に削除請求するのか?請求先の3類型

AIの誤情報への対応では、「誰に請求するか」の見極めが重要です。請求の相手方は、主に次の3つです。

GoogleなどAIサービス提供事業者への削除・修正請求

GoogleのAIによる概要やAIモードについては、Googleに対して表示の修正・削除を求めます。Googleは、法的な問題があるコンテンツについての報告窓口(Google 法的ヘルプ)を設けており、AIによる概要に関する報告もここから行うことができます。

もっとも、申請をすれば必ず削除されるわけではありません。どの権利がどのように侵害されているのか、なぜその内容が事実と異なるのかを、法的な観点から具体的に説明することが求められます。

AI審査ツール提供事業者への誤判定データの修正請求

AIを搭載した審査ツールの誤判定については、ツールを提供する事業者に対し、判定の根拠となった情報の確認と、判定の修正・削除を求めます。ツールを利用した取引先に誤判定を伝えるだけでは、他の利用企業の画面には誤った判定が残り続けるため、提供事業者のデータベースそのものを修正させることが重要です。

AIの情報源となったウェブサイト記事の削除請求

AIは、ウェブ上の記事や掲示板の書き込みなどを情報源として回答を生成しています。AIの回答だけを修正させても、情報源となった記事が残っていれば、時間がたって再び同じ内容が表示されるおそれがあります。根本的な解決のためには、情報源の記事の削除もあわせて検討すべきです。

情報源のサイトの運営者が不明で、サーバーが海外にある場合には、海外の手続を利用することもあります。たとえば、米国の事業者がサーバーを管理している場合には、米国の裁判所の手続(ディスカバリー)を利用して、サーバー管理会社から運営者の情報の開示を受け、そのうえで運営者に削除を求める、という流れになります。

AIの誤情報の削除・修正を請求する5つの手順

AIの誤情報の修正・削除請求の流れ

修正・削除請求は、一般的に次のような流れで進めます。

  1. 証拠の保全
  2. 情報源の特定
  3. 裁判外での修正・削除請求
  4. 裁判手続(仮処分・訴訟)
  5. 再表示の監視

手順1:AIの回答のスクリーンショットによる証拠保全

AIの回答は、検索する人や時間、端末によって内容が変わることがあります。同じ検索語でも、ある端末では誤った内容が表示され、別の端末では表示されない、ということも珍しくありません。

そのため、検索語と回答の全体が写ったスクリーンショットを、日時が分かる形で保存しておくことが重要です。申請の際に問題の回答を確認できないと、事業者から「報告された回答が見つからなかった」として対応を見送られることがあります。

手順2:AIが参照した誤情報の情報源の特定

AIの回答に表示されるリンクなどから、誤情報の元になった記事を特定します。名称の似た別の法人の記事が混同されているのか、特定のサイトの記載がそのまま要約されているのかによって、取るべき対策が変わります。

手順3:裁判外での削除請求(窓口申請・弁護士名義の通知書)

まずは、AIサービスの提供事業者やツール提供事業者に対し、窓口からの申請や弁護士名義の通知書により、修正・削除を求めます。費用や時間を抑えられるため、多くのケースではこの方法から始めます。

手順4:削除仮処分の申立て・訴訟提起

裁判外の請求に応じない場合には、裁判所に対して削除を命じる仮処分を申し立てたり、訴訟を提起したりすることを検討します。AIの回答に対する裁判手続は、まだ実例の蓄積が少ない分野であるため、権利侵害の内容と証拠を丁寧に組み立てる必要があります。

手順5:削除後の再表示の監視とサジェスト対策

AIの回答は随時更新されるため、一度消えても再び表示されることがあります。削除後もしばらくは定期的に確認し、再び表示された場合には速やかに再申請することが大切です。あわせて、検索窓に表示されるサジェストや関連キーワードに「訴訟」などのネガティブな語句が出ている場合には、その対策も検討するとよいでしょう。

AIの誤情報の削除に成功したモノリス法律事務所の解決事例

モノリス法律事務所では、違法性のあるAIの回答について、修正・削除を実現した実績があります。ここでは、案件を特定できない範囲でご紹介します。

事例1:医療機関が無関係の訴訟と結び付けられたケース

ある医療機関の名称と「訴訟」を組み合わせて検索すると、AIによる概要に、その医療機関が患者から提訴されたかのような内容が表示されていました。実際には、その医療機関は訴訟の当事者ではなく、問題となっていた施術も行っていませんでした。

当事務所は、Googleの法的な報告窓口から、無関係の訴訟と結び付けた表示が権利を侵害している旨を説明して申請しました。初回の申請では「報告された回答が見つからなかった」との回答でしたが、表示の変化を追いながら再申請を重ねた結果、Googleからポリシー違反のコンテンツとして削除する旨の回答を得て、表示は削除されました。その後も一時的な再表示がないかを監視し、完全に表示されなくなったことを確認して対応を終えています。

事例2:介護施設で事故があったとする誤った回答のケース

ある介護施設について、実際には起きていない事故があったかのようなAIの回答が表示されていたケースでも、修正を実現しています。介護施設にとって、事故に関する誤情報は利用者やご家族の信頼に直結するため、早期の対応が重要でした。

AIの誤情報の削除請求を成功させる4つのポイント

これらの事例から、AIの誤情報への対応では、次の点が重要であると考えられます。

  • 問題の回答を、検索語とあわせて継続的に記録する
  • 「事実と異なる」と訴えるだけでなく、どの権利がどのように侵害されているのかを具体的に説明する
  • 一度で諦めず、表示の変化に応じて再申請を行う
  • 削除後も一定期間は再表示を監視する

現在もモノリス法律事務所には、AIを搭載した審査ツールの誤判定や、検索AIによる家族の情報の表示など、さまざまなご相談が寄せられています。

まとめ:AIの誤情報の修正・削除はITに強い弁護士に相談を

AIの回答は、検索や調べものの入口として多くの人の目に触れます。誤った内容が表示され続ければ、取引の中止や信用の低下など、企業や個人に深刻な影響を与えかねません。

AIの誤情報への対応では、名誉権・信用・プライバシーといった権利侵害を法的に整理したうえで、AIサービスの提供事業者、ツール提供事業者、情報源のサイトのどこに、どのような請求をするかを見極める必要があります。AIの仕組みや表示の特性を踏まえた対応が求められるため、ITとインターネットの法律に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に豊富な経験を有する法律事務所です。当事務所では、Googleの「AIによる概要」やChatGPT等の生成AIによる誤った回答、AIを搭載した審査ツールの誤判定などについて、修正・削除の請求や、情報源となっている記事の削除、サジェスト対策などのサポートを行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る