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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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オンラインカジノで遊ぶと逮捕される?弁護士が違法性を解説

オンラインカジノ

日本国内において、カジノでお金を賭けて賭博をすることは刑法上の賭博罪に該当し禁止されています。

また、インターネットを通じて行われるオンラインカジノについても、利用が法律上問題となる可能性があり、特に利用者や運営者が処罰の対象となるケースが増えています。

本記事では、関連する法律、判例、警察の取り締まり状況、具体的な事件をもとに、オンラインカジノの違法性と注意点を詳しく解説します。

オンラインカジノとは

オンラインカジノとは、インターネットを通じてプレイできるカジノのことです。従来のカジノ(ランドカジノ)のように、スロット、ブラックジャック、ルーレット、バカラ、ポーカーなどのゲームが楽しめます。世界中のユーザーがアクセスでき、PCやスマートフォンからプレイできるため、近年人気が高まっています。

参考:消費者庁「日本国内ではオンラインカジノに接続して賭博を行うことは犯罪です!」

オンラインカジノの仕組み

まず、オンラインカジノはどのように運営されているのか、その仕組みを紹介します。

基本的な運営方式

オンラインカジノは、主に以下のような方式で運営されています。  

  • ライブカジノ方式:実際のディーラーがリアルタイムでゲームを進行し、プレイヤーがオンラインで参加する方式
  • RNG(ランダム・ナンバー・ジェネレーター)方式:コンピュータが乱数を用いて公平な結果を生成する方式。

カジノの運営会社は、ゲームソフトウェアプロバイダー(例:Microgaming、NetEnt、Playtech)と提携し、ゲームを提供しています。

資金の入出金 

オンラインカジノは、実際のカジノと同様に、お金をかけて遊ぶことができます。主な入出金方法は以下の通りです。

  • 入金方法:クレジットカード、電子マネー(PayPal、ecoPayzなど)、仮想通貨(ビットコインなど)が利用される 
  • 出金方法:銀行送金、電子ウォレット、仮想通貨などを通じて行われるが、遅延や制限があることもある。

オンラインカジノの違法性

オンラインカジノの違法性

オンラインカジノの処罰根拠

日本の刑法第185条および第186条では、賭博および賭博場の開帳を禁止しています。

そして、オンラインカジノでお金を賭けて遊戯を行った場合、賭博罪や常習賭博罪に該当し、違法であると考えられています。

参考:警察庁「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!」

賭博罪とは?

日本では刑法において、「単純賭博罪」(刑法185条)と「常習賭博罪」(同法186条1項)の2つを定め、禁止しています。  

  • 単純賭博罪:1回や数回程度の賭博をした場合に適用され、50万円以下の罰金または科料が科されます
  • 常習賭博罪:何度も繰り返し賭博を行っていると認められると適用され、3年以下の懲役というより重い刑罰が科されます

「常習」とは、単に賭博を繰り返すだけでなく、賭博をすることが習慣になっている状態を指します。常習賭博に該当するかどうかは、以下の点を総合的に判断されます。 

  • どのような賭博をしていたか(種類)  
  • どれくらいの金額を賭けていたか(規模)  
  • どのくらいの期間・回数にわたって行われたか(頻度)  
  • 過去に賭博で処罰されたことがあるか(前科の有無)  

これらの要素を考慮して、裁判所が「常習性がある」と判断すると、刑罰が大幅に重くなる可能性があります。

時効によって罪に問われないケースもある

賭博罪等には「時効」が定められています。そのため、オンラインカジノを利用したことがあっても、すべての人が違法として処罰されるわけではありません。日本における賭博罪の時効は、刑法第250条に基づき、以下のように定められています。  

一般の賭博罪(刑法第185条)

時効期間:3年

単純賭博(一般の賭博行為)を行った場合は、「3年」の公訴時効が適用されます。  

常習賭博罪(刑法第186条第1項)

時効期間:5年

常習的に賭博を行った場合は、より重い罪とされ、「5年」の公訴時効が適用されます。  

賭博場開帳図利罪(刑法第186条第2項)

時効期間:7年

賭博場を開き、利益を得る目的で運営した場合は、さらに重い罪となり、「7年」の公訴時効が適用されます。  

組織犯罪処罰法が適用される場合

オンラインカジノなどの違法賭博が組織的に運営されている場合、組織犯罪処罰法が適用されることがあります。その場合、より重い刑罰が科され、公訴時効の期間が延長される可能性があります。  

参考:衆議院「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」

時効の起算点 

公訴時効のカウントは、犯罪行為が終了した時点から開始されます。例えば、単発の賭博行為であればその日から、常習賭博であれば最後に賭博を行った日から時効が進行します。  

一方で、時効が停止・中断されるケースもあります。

捜査機関が関与し、特定の行為(例えば、被疑者の逮捕や起訴)があった場合、時効が一時的に停止・中断される可能性があります。  

もっとも、オンラインカジノの利用者や運営者が摘発された事例を考えると、警察の捜査が進めば時効が成立する前に逮捕・起訴される可能性が高いため、「時効だから安心」と考えるのは危険です。

国外のゲームであっても違法になる?

属地主義の観点から、日本国内で行われる賭博行為は、海外のサーバーを利用していても日本の法律が適用されます。つまり、日本国内からオンラインカジノにアクセスし、賭けを行った場合、たとえ運営者が海外に拠点を置いていても、日本の刑法に基づき処罰される可能性があります。

参考:国民生活センター「オンラインカジノの違法性について」

一方、属人主義の観点からも、日本国民が国外で違法な賭博行為に関与した場合、場合によっては日本の法律で処罰の対象となる可能性があります。これは、日本人が国外で違法行為を行った場合にも、一定の条件下で日本の法律が適用されることを意味します。

判例によるオンラインカジノの違法性

2016年、福岡地方裁判所は海外のオンラインカジノを利用した日本人に対し、賭博罪で有罪判決を言い渡しました。この判決では、「海外にサーバーがある場合でも、日本国内でインターネットを通じて賭けを行うことは賭博に該当する」とされました。

参考:警察政策学会「オンラインカジノをめぐる法的諸問題」

この判例により、「海外のオンラインカジノだから安全」という認識は誤りであることが明らかになりました。たとえ海外の合法カジノであっても、日本国内で利用すれば違法となる可能性が高いのです。

行政と警察の取り締まり強化

警察庁は、近年オンラインカジノの取り締まりを強化しており、特に以下の点に注力しています。

  • 日本国内からのアクセスでも賭博罪が適用される可能性があるため、捜査の対象となる
  • 違法オンラインカジノへの資金決済を遮断するため、クレジットカード会社や銀行との連携を強化している
  • 違法運営者に対する摘発を推進し、違法サイトの排除を図っている
  • 違法ギャンブル依存症対策として、国民への啓発活動を強化している

こうした措置により、単なる利用者だけでなく、運営者や協力者も摘発の対象となっています。

実際の事件

日本におけるオンラインカジノの利用は、刑法第185条および第186条に基づき違法とされています。近年、オンラインカジノに関連する逮捕事例が増加しており、以下に主な事例を紹介します。

吉本興業所属芸人の事情聴取(2025年2月)

2025年2月5日、双子のお笑いコンビ「ダイタク」の吉本大氏と「9番街レトロ」のなかむら★しゅん氏が、オンラインカジノの利用に関して警視庁から任意の事情聴取を受けました。所属事務所である吉本興業は、公式サイトを通じてコンプライアンス違反の可能性を指摘し、外部弁護士と協力して事実関係を調査中であると発表しました。また、調査が完了するまでの間、該当タレントの活動を自粛することも明らかにしています。

組織犯罪処罰法違反による逮捕(2025年2月)

2025年2月4日、組織犯罪処罰法違反の疑いで3名が逮捕されました。詳細な情報は公開されていませんが、オンラインカジノに関連する組織的な犯罪活動が疑われています。

SNSを通じた勧誘と常習賭博容疑(2025年1月)

2025年1月30日、SNSを利用してオンラインカジノへの勧誘を行っていた男女4名が、常習賭博の容疑で逮捕されました。彼らはSNS上で勧誘活動を行い、多くの利用者をオンラインカジノに誘導していたとされています。

卓球選手の書類送検(2025年1月)

2025年1月29日、卓球選手の丹羽孝希氏がオンラインカジノを利用したとして、賭博罪の疑いで書類送検されました。プロスポーツ選手による違法賭博行為として、大きな注目を集めました。

大阪でのオンラインカジノ店摘発(2025年1月)

2025年1月20日、大阪市内でオンラインカジノを運営していた5店舗が摘発され、計41名が逮捕されました。これらの店舗は違法にオンラインカジノを運営し、多額の利益を上げていたとされています。

リバトン事件(2025年1月)

2025年1月20日、オンラインカジノ関連のマネーロンダリンググループ「リバトン」のメンバー11名が、組織的常習賭博罪で書類送検されました。このグループは、オンラインカジノを利用した資金洗浄活動を行っていたとされています。

一般利用者の書類送検(2024年11月)

2024年11月、オンラインカジノを利用していた一般の利用者57名が、賭博罪の疑いで書類送検されました。これらの事例は、オンラインカジノの利用が一般の個人にとっても法的リスクを伴うことを示しています。

オンラインカジノ利用者の注意点

オンラインカジノ利用者の注意点

上の記事で紹介した事例から、日本国内でオンラインカジノを利用することは、たとえ海外で合法的に運営されているものであっても、日本の法律に違反し、逮捕や書類送検といった法的処分の対象となる可能性が高いことがわかります。

これらの事件により、単なる「娯楽目的」であっても法的責任を問われる可能性があることが示されました。オンラインカジノの利用を検討している方は、リスクを十分に理解し、慎重な判断が求められます。

参考:政府広報オンライン「オンラインカジノによる賭博は犯罪です!」

また、法律違反のリスクに加えて、以下のようなリスクがあることにも注意が必要です。

資金トラブルのリスク

違法サイトでは、勝ち金の未払い、口座凍結のリスクが高く、またかけ金が犯罪資金に流用される恐れがあります。

セキュリティの危険性

個人情報やクレジットカード情報が不正利用される可能性があります。個人のスマホではなく、業務用のスマートフォン、PCを使用した場合などは、利用者個人のみならず勤務先の会社の情報が盗難されたり、ウイルスに感染する危険性もあり、注意が必要です。

依存症のリスク

オンラインカジノは手軽にアクセスできるため、ギャンブル依存症のリスクが高いと言えます。

参考:消費者庁「ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ」

オンラインカジノ運営側の注意点

運営業者も、日本の法律に違反すれば厳しい処罰を受ける可能性があります。以下の点に特に注意が必要です。

日本国内向けの宣伝は禁止

2019年に、警視庁が海外に拠点を持つオンラインカジノの日本人運営業者を、賭博開帳図利罪で逮捕しました。日本国内の利用者を対象に宣伝活動を行い、多額の利益を上げることが問題視されていることがわかります。

このように、日本国内の利用者をターゲットにした広告は違法とされる可能性があり注意が必要です。

支払い処理の問題

日本の金融機関は違法なオンラインカジノへの送金を制限しており、資金の流れが遮断される可能性があります。

参考:SBIレミット「よくあるご質問 (海外への送金)」

サーバーの設置場所の問題

日本国内にサーバーを置いてオンラインカジノの運営を行った場合、賭博場開帳図利罪に該当し、明確に違法となります。

法律改正への対応

昨今の違法賭博の横行への対策として、日本政府はギャンブル規制を強化しており、今後さらなる法改正が行われる可能性があります。

今後の法律改正の動向にも注意が必要です。

まとめ:オンラインであっても賭博は違法

日本では賭博は原則違法ですが、公営ギャンブルのみ特例として認められています。オンラインカジノは海外のサービスであっても、日本国内から利用すると法律違反となる可能性が高いため注意が必要です。  

違法賭博には、逮捕のリスクだけでなく、詐欺被害やギャンブル依存症の危険も伴います。「少しなら大丈夫」と安易に考えず、法律を正しく理解し、適切な判断をすることが大切です。

また、自社で提供しているゲームやサービスが意図せず「賭博」と判断されてしまう可能性もあります。新たなゲームやサービスを提供する際には、弁護士に適法性をチェックしてもらうのがよいでしょう。

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モノリス法律事務所の取扱分野:デジタルタトゥー

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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