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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

海外進出に必要な国際法務とは?必要なスキルや業務内容について解説

戦略会議

企業が海外進出を検討する際には、国際法務の理解と適切な対応が求められます。海外進出を視野に入れている企業の法務担当者にとっては、国際法務の具体的な業務や必要なスキルについて理解を深めることは、効果的な進出戦略を実現する一助となるはずです。

本記事では、国際法務の基本的な内容やその役割、担当者に求められる能力について解説します。また、アウトソーシングを検討する際のポイントにも触れ、国際法務のプロフェッショナルと連携する利点についても考察します。

国際(海外)法務とは何を意味するのか?

国際(海外)法務とは、国際的な法的事項や紛争に関与する法律の分野を意味します。企業の海外進出においては、異なる国々の法律や規制を理解し遵守することが重要です。

国際法務の専門家は、企業がグローバルな環境で事業展開する際の法的リスクを最小限に抑え、事業を推進できるようにサポートします。具体的な業務としては、以下のような活動を行います。

業務主な内容
コンプライアンスそれぞれの国の法律や規制に従い、企業が合法的かつ適切に機能するためのガイダンスを提供する。
契約の検討と起草国際的なビジネス取引における複雑で多様な契約条件を検討し、起草する際に法的な側面を考慮に入れる。
紛争解決異なる国の企業の間で起こる紛争解決のために交渉や仲裁、訴訟の手続きをサポートする。
知的財産権の保護国によって規制の異なる知的財産権について、企業が特許・商標・著作権を適切に保護できるように助言する。
地域ごとの法的調査異なる国の法律環境を調査し、企業に対して最適な進出戦略を提案する。

国際法務の業務は多岐にわたり、グローバルな事業環境における法的な問題の解決が求められます。

国際(海外)法務の担当者に求められる能力

求められる能力

国際(海外)法務の担当者に求められる能力には下記のものがあります。

  • 交渉に必要な語学力
  • 社内外における連携力および調整力
  • 国内および国外の法律知識

これらは、企業が国際法務を担当する人材に求める重要なスキルです。以下でそれぞれについて詳しく解説します。

交渉に必要な語学力

国際法務の担当者にとって、語学力は極めて重要です。海外とのやりとりをすることから一定の語学力が求められます。

特に、異なる国々との交渉や契約締結においては、正確で専門的な表現が不可欠です。交渉の際には現地における法的な文脈や用語を理解し、円滑なコミュニケーションを図るための高い語学スキルが役に立ちます。

社内外における連携力および調整力

社内での連携力と調整力があれば、法的な課題に対して組織一体となった対応が可能になります。なぜなら、国際法務の仕事では異なる部門や国のステークホルダーと連携し、法的事項に関する情報を円滑に共有する必要があるからです。

また、国際法務の担当者は、社内で他部署とのやりとりが多くなり、社外でもさまざまな関係者との関わりが多くなります。

これらは法的なリスクを最小限に抑え、ビジネス戦略を策定するために必要な取り組みです。

国内および国外の法律知識

国内および国外のビジネスに関する法律知識は、国際法務の担当者にとって必要なものです。異なる国の法律制度や規制、取引慣行に詳しいことは、コンプライアンスやリスク評価を行う上で不可欠です。

担当者は国内外の法律に関する知識を適切に活用し、企業の海外進出において法的な問題を的確に解決することが期待されます。

国際(海外)法務の仕事内容の大別

女性弁護士

国際法務の仕事内容は、大まかに社外と社内の2つの側面に分けられます。

業務の領域概要具体的な例
社外業務企業が他国で事業を展開する際の法的な課題に対処する。異なる国の法律や規制に関する助言、国際契約の交渉と起草、取引先との法的な紛争の解決など
社内業務組織内での法的な課題に対処する。他の部門との連携を通じた法的リスク管理、法令遵守プログラムの立案など

社外業務では、国際市場での法的なリスクを最小限に抑え、企業が円滑に事業を遂行できるように努めることが第一です。また、知的財産権の保護や、海外での企業合併や買収における法的な手続きも担当します。

社内業務では、企業全体が法的なスタンダードに適合し、コンプライアンスを確保するために効果的な法的サポートを提供するのが主な仕事です。また、従業員教育やトレーニング、法的な相談に対応する場合もあります。

社外と社内の業務を連携させ、企業が国際的な環境で成功裏に事業を展開できるように尽力することも大切です。

国際(海外)法務の社外向け業務について

世界地図

国際(海外)法務の社外向け業務には、下記の2つがあります。

  • 契約や取引に関する法務
  • 紛争や訴訟などの対応

契約や取引に関しては、企業が国際的なビジネスを行う際の契約書の作成や締結、取引に関する法律問題の解決などが主な業務です。

一方、紛争や訴訟などの対応においては、法的な問題が発生した場合の解決策の提案や、法廷での代理人としての役割を果たすこともあります。

これらの業務について、以下で詳しく説明します。

契約や取引に関する法務

国際法務における契約や取引に関する業務は、企業が海外で事業を展開する上での基盤を築く鍵となります。

国際的なビジネス環境では、異なる法体系や商慣行などが絡むため、契約の交渉や起草には高度な法的知識と交渉スキルが必要です。担当者は企業の利益を最大化し、法的なリスクを最小限に抑えるために、契約条件や取引条件を慎重に検討します。

具体例としては、商品の納入期限や知的財産権など、ビジネス活動に直接影響を与える重要な事項を明確にし、法的な紛争を未然に防ぐための取り決めを行います。

関連記事:増加する国を超えた取引 国際取引に必要な国際契約の準拠法と国内契約との違い

紛争や訴訟などの対応

紛争や訴訟などの対応は、国際法務の担当者にとって重要な側面を持ちます。異なる法域での法的な争いに対処するためには、国際的な法的知識や地域特有の法律を理解する必要があります。

紛争が発生した際には、まず交渉や仲裁を通じて解決を試み、訴訟が避けられない場合には適切な法的戦略を展開しましょう。

訴訟は時間とコストがかかるため、企業の利益を最大限に守りつつ、効果的かつ迅速な解決を模索することが求められます。また、法廷外での解決手段やリスク管理策の提案も、紛争の対応において重視すべきことです。

国際(海外)法務の社内向け業務について

会話シーン

国際(海外)法務の社内向け業務は、主に下記の3つです。

  • ガバナンス関連
  • コンプライアンスなどの社内における法令遵守
  • 法改正に伴う制度の改変対応

いずれも組織の統治構造を適切に維持し、すべての業務活動が現行の法律と規則に準拠するための働きかけが求められます。

それぞれの詳しい内容は、以下で説明します。

ガバナンス関連

社内向けの法務業務の中で、ガバナンス関連業務は企業の健全な経営を確保するために不可欠です。

担当者は企業の意思決定が法的に妥当かつ適法であるかを確認し、取締役会や重要な意思決定において、法的リスクが最小限に抑えられるようサポートします。

例えば、新規プロジェクトの開始や合併・買収のような、重要な意思決定の前に法的なアドバイスの提供が役割の一つとなります。

ガバナンス関連業務は組織の透明性と責任を担保し、法的な安全性を維持するために大切です。

コンプライアンスなどの社内における法令遵守

企業が法令遵守を実現するために、国際法務の担当者は社内におけるコンプライアンスに重点を置きます。現地の法律だけでなく倫理的な観点にも基づいて、企業の活動が法的・倫理的に適切であるかどうかを確認することも欠かせません。

また、担当者は内部調査や教育プログラムを通じて、従業員に法令遵守の重要性を啓発し、社内の法的リスクを最小化します。

これらの取り組みは、企業の信頼性や社会的な評価を向上させ、持続可能な成長を行うために必要です。

法改正に伴う制度の改変対応

国際法務担当者は現地での法改正や規制の変更に迅速に対応し、企業が最新の法的要件に適合するよう助言します。

例えば、新しい法律が施行されたときはその内容を分析し、企業のビジネスに与える影響を評価します。また、法令に適合するために必要な手続きや、ポリシーの変更を提案する場合もあります。

これにより、企業は法的な変化に適応し、リスクを最小化しながらビジネスを運営できるようになります。

海外進出を希望する企業の国際(海外)法務に対する対応策

専門家たち

海外進出を計画する企業の国際(海外)法務に対する対応策として、下記が挙げられます。

  • 国際法務の経験者を社外から採用する
  • 国際法務に関する業務の一部を外注委託する

いずれの方法も、外部のノウハウを社内で活かすことが可能です。それぞれの方法やメリットについて以下で解説します。

国際法務の経験者を社外から採用する

企業が国際法務の経験者を社外から採用することは、グローバルな事業展開において重要な手段です。

このときに求められるのは、異なる法体系や国際法務の専門知識を有する人材です。これにより、企業は海外進出に伴う法的リスクを的確に評価し、対応策を講じることが可能となります。

専門性や実務経験を有する人材は、さまざまな法務関連の課題解決において企業をサポートし、迅速かつ適切に対処してくれるでしょう。

経験豊富な人を中途採用することにより、企業は国際的な展開における法的な専門性を強化し、競争力の向上を目指すことができます。

国際法務に関する業務の一部を外注委託する

国際法務の一部を外部の専門家や法律事務所に委託することは、効率的な手段の一つです。特定の案件やプロジェクトにアサインすることで、関連する法的な業務をスムーズに運用できます。

自社のノウハウだけでは難しい業務を外部委託することで、企業はリソースを適切に配分し、コストを最適化できます。

また、国際法務のプロフェッショナルが有するネットワークを活用することで、企業は変動する国際法務の環境に適応しやすくなります。

まとめ:国際法務は社外からサポートを受けるのも一つの手段

サポートする女性

企業の海外進出には、国際法務の理解と適切な対応が必要です。国際法務の仕事は社外・社内業務に大別でき、最も重要な契約面をはじめ、企業のガバナンス関連や法令遵守など多岐にわたります。

これらに対応できる英語力や法律知識を持つ人材は、外部からの採用や業務委託によってアサインすることが可能です。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に豊富な経験を有する法律事務所です。近年、グローバルビジネスはますます拡大しており、専門家によるリーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所では国際法務に関するソリューション提供を行っております。

モノリス法律事務所の取扱分野:国際法務・海外事業

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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