スクショは著作権の侵害?投稿者特定と削除方法についても解説
スクショ(スクリーンショット)は手軽に情報や画像を保存できる便利なツールですが、気を付けなければならないのが、著作権法に抵触する可能性です。違法なコンテンツと知らずにスクショして利用した場合や、引用の範囲内で著作権を侵害せずに利用できるケースがあるなど、判断が難しいケースも存在します。
本記事では、スクショと著作権の関係、違法となるスクショの基準、違法にならないための注意点、そして万が一著作権侵害に遭遇した場合の対処法まで詳しく解説します。最後までご覧いただき、著作権侵害の被害を受けた際に活かしてください。
この記事の目次
スクショ(スクリーンショット)と著作権の侵害
令和3年(2021年)に著作権法が改正されたことにより、スクショも著作権法の適用対象になりました。スクショと著作権の侵害について解説します。
スクショも著作権法の適用になる
スマートフォンやパソコンで簡単にできるスクショは、著作権法の適用となり、使い方によっては違法になってしまう場合があります。違法にアップロードされたコンテンツ(海賊版サイトや違法動画など)であることを知りながら、スクショをしてしまうと、著作権法に抵触します。
たとえ個人的な利用であっても、違法なコンテンツだと認識して利用いる場合は、著作権侵害となるため、注意が必要です。違法なスクショをしてしまうと、著作権者から損害賠償請求をされる可能性があります。また、悪質な場合は刑事罰が科される可能性もあるため、気を付けなければなりません。
違法なコンテンツだと知らずにスクショをしてしまった場合は、違法にならないケースもあります。しかし、違法なコンテンツをスクショして保存したり、他人に共有したりするのは避けるべきです。
令和3年(2021年)公布の著作権法の改正
令和3年(2021年)に公布された著作権法の改正は、平成30年(2018年)に社会問題となった漫画村事件がきっかけの一つとなりました。漫画村は、マンガなどの著作物を違法にアップロードし、無料で閲覧できる海賊版サイトです。
被害額は3,000億円にものぼるとも言われ、著作権者の権利を侵害し、日本のコンテンツ産業に深刻な打撃を与えました。事件を契機に、違法ダウンロードの規制強化を求める声が高まり、令和3年(2021年)の著作権法改正へとつながったのです。
ダウンロード規制の対象拡大は音楽と映像のみの対象から、マンガ、論文、小説、写真など、著作物全般に拡大されます。リーチサイト規制は違法コンテンツへのリンクを掲載するだけのリーチサイトも、著作権侵害を助長する行為として規制対象となります。
法改正により、海賊版などの違法コンテンツに対する取り締まりが強化され、著作権者の権利保護が図られました。しかし、改正後も違法コンテンツの流通は根絶されておらず、さらなる対策が求められています。詳しくは以下の資料もご覧ください。
参考:文化庁|侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A(基本的な考え方)
スクショが著作権侵害かどうかの基準と事例
スクショが違法かそうでないかの基準を判断するのは難しいところです。適法と違法の基準と例について解説します。
違法にはならないスクショ
スクショは著作権法に抵触する可能性がある行為です。しかし、適法にアップロードされたコンテンツをスクショする場合や、適法なコンテンツをスクショしようとした際は別です。ただし、違法アップロードされた画像が意図せず写り込んでしまった場合は、違法になりません。
例えば、好きなアーティストの公式SNSの投稿や、購入した電子書籍の一部のスクショなどは、個人的な利用の範囲内であれば問題ありません。
また、X(旧Twitter)で友人のツイートをスクショした際に、違法な画像をアイコンに設定している他のユーザーのアイコンが写り込んでしまった場合なども別です。違法とはならないため、安心してください。
ただし、スクショした画像をSNSに投稿したり、ブログに掲載したりする場合は、著作権者の許諾が必要になる場合もあります。
違法になってしまうスクショ
スクショで特に注意が必要なのは、違法にアップロードされた画像だと知りながらスクショをする行為です。
海賊版サイト、公式の許可を得ていない個人ブログや匿名掲示板などに掲載されている画像は、著作権者の許可なくアップロードされた違法なコンテンツである可能性が高いものです。このようなコンテンツだと知りながらスクショをしてしまうと、著作権侵害となり、損害賠償請求などの民事責任を問われる可能性があります。
さらに、著作権法第119条第3項によると、有償で提供されているコンテンツ(雑誌や漫画など)を繰り返しスクショ(ダウンロード)する行為は、悪質な著作権侵害となり、刑事罰(2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその併科)が科される可能性もあります。
ただし、違法にアップロードされた画像だと知らずにスクショした場合や、適法なコンテンツをスクショする際に違法な画像が意図せず写り込んでしまった場合は、違法にはなりません。
X(旧Twitter)の引用ツイートに関する著作権の扱い
X(旧Twitter)には、他のユーザーのツイートを引用する機能として引用ツイートが備わっています。この機能はX(旧Twitter)が公式に提供しているため、正しく使用すれば著作権侵害にはなりません。しかし、スクショ画像を用いた引用については、最近の裁判所の判決は、著作権侵害を構成する可能性を示しています。
裁判所は、X(旧Twitter)の規約で定められた引用ツイート機能を使わずにスクショ画像を添付する行為は、公正な慣行に合致せず、著作権法上の引用には当たらないと判断しました。判決は、スクショ引用がX(旧Twitter)上で日常的に行われている慣習だと考えると、大きな影響を与える可能性があります。ただし、裁判所の判断には異論もあり、今後の判例や法改正によって状況が変わる可能性も残されています。
現時点では、X(旧Twitter)での引用は、公式の引用ツイート機能を使うのが安全な方法です。 スクロールキャプチャによる引用は、著作権侵害のリスクを避けるため、慎重に行う必要があります。詳しくは以下の記事もご覧ください。
関連記事:X(旧Twitter)のスクショ引用は著作権侵害になる?令和5年判決を解説
スクショでも違法性が問題にならない例外
違法にアップロードされたコンテンツのスクショは、原則として著作権侵害と判断されますが、例外ケースに該当する場合は、違法とはなりません。
分量や画質が軽微な場合を考えてみます。漫画の数コマや論文の数行など、複製される部分が著作物全体から見てごくわずかな場合や、画質が粗く鑑賞に堪えないような場合は、軽微なものとして違法性が認められないことがあります。
二次創作の場合、二次創作そのものは著作権法違反となる可能性がありますが、現状では違法ダウンロードの規制対象外となっています。そのため、二次創作者自身がアップロードした作品のスクショは、違法にはなりません。ただし、第三者が無断でアップロードした二次創作物のスクショは違法となる可能性があります。
また、詐欺被害の証拠としてスクショするなど、社会的に正当な目的でスクショする場合や、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合は、違法とはみなされません。
例外要件は、著作権法の解釈によって判断されるため、常に適法となるわけではありません。スクショをする際は、違法なコンテンツではないか、著作権者の利益を不当に害する行為ではないか、慎重に判断する必要があります。
著作権侵害と思われるスクショを発見した場合の対応方法
著作権を侵害していると思われるスクショを発見したときはどうすれば良いのか、以下で詳しく解説します。
投稿を放置しておく
著作権侵害への対応として、あえて投稿を放置しておく選択肢もあります。著作権侵害に対して法的な措置をとるには、手間と費用がかかります。弁護士に依頼するとなると、弁護士費用も無視できません。そのため、著作権侵害の程度が軽微であったり、一度きりの偶発的なものであったりする場合には、あえて放置する選択もあります。
特に、著作権侵害に当たるかどうか微妙なケースでは、裁判を起こしても著作権侵害と認められない場合があるため、注意してください。放置すると、そのようなリスクを回避できるメリットもあります。
削除に向けた動きをする
自身の著作物が無断でスクショされ、SNSに投稿されている場合、著作権法に基づき、著作物の削除を請求できます。削除請求には、すでに著作権侵害が行われた場合の侵害停止請求と、著作権侵害のおそれがある場合における侵害予防請求の2種類があります。
侵害停止請求は、すでに投稿された著作物の削除を求めるもので、侵害予防請求は、今後同様の侵害が行われるのを未然に防ぐためのものです。また、緊急性がある場合は、訴訟よりも迅速に対応できる仮処分の申し立てが可能です。
仮処分とは、裁判所が一時的に著作物の削除を命じる手続きで、本訴訟と並行して行えます。
著作物使用料や損害賠償の請求に向けて動く
本来、著作権のあるスクショを使用するには、著作権者へのライセンス料の支払いが必須です。
しかし、無断でスクショを使用された場合、著作権者は本来得られるはずだった使用料を失うだけでなく、著作物の価値が毀損されるなどの損害を被る可能性があります。このような状況では、著作権者は民法第709条に基づく不法行為による損害賠償請求が可能です。
請求できる損害賠償には、本来支払われるべき著作物使用料だけでなく、著作物の無断使用によって生じたその他の経済的損害も含まれます。著作物使用料や損害賠償の費用は、著作権侵害の期間や程度に応じて算定されます。そのため、まずは著作物の削除請求(使用の差止請求)を行い、著作権侵害を停止させるのが一般的です。
その後、著作権侵害の状況を詳しく調査し、適切な費用を算定した上で、損害賠償請求を行います。
自身の名誉回復に向けた請求を行う
著作権侵害は、著作権者の財産権だけでなく、著作者人格権も侵害する可能性があります。
著作者人格権とは、著作物に対する著作者の精神的なつながりを保護する権利で、氏名表示権や同一性保持権などが含まれます。
氏名表示権とは、著作者が自分の著作物に名前を表示するかしないか、また、どのような名前で表示するかを決定する権利です。同一性保持権とは、著作者が自分の著作物の内容を勝手に変更されたり、歪曲されたりしないように保護する権利です。
著作権侵害によって著作者人格権が侵害された場合、著作権法第115条に基づき、名誉を回復するための措置の請求が可能です。
例えば、侵害者に対して新聞への謝罪広告の掲載を求めるなど、侵害行為によって傷つけられた名誉を回復するための措置を請求できます。
刑事責任の追及による再犯の防止を図る
著作権侵害は、民事上の責任だけでなく、刑事責任を問われる可能性がある深刻な問題です。著作権法第119条、第124条によると、侵害行為に対して、個人には10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金が科せられます。著作権侵害の被害者が、侵害者を告訴すると、警察が捜査を行い、検察が起訴するかどうかを判断し、起訴されれば、裁判で刑事責任が追及されます。
刑事責任の追及が持つ意味は、侵害者個人に対する罰だけでなく、社会全体への警告でもあります。
著作権侵害に対する刑事罰の存在は、潜在的な侵害者に対する抑止力となり、再犯防止に貢献すると期待されます。
スクショによる著作権侵害の場合に弁護士で対応できること
スクショの引用が著作権法違反だと判断できる場合は、弁護士に対応を依頼すべきです。以下ではその理由について詳しく解説します。
発信者情報開示請求による投稿者の特定
自身の著作物を含むスクショがSNSに無断で投稿された場合、発信者情報開示請求によって投稿者を特定できます。これにより、著作権侵害に対する適切な対応が可能です。
発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法に基づき、コンテンツプロバイダ(SNS事業者)やアクセスプロバイダ(インターネット接続事業者)に対して、投稿者の情報を開示するよう求める手続きです。
しかし、発信者情報開示請求は、複数の裁判手続きが必要となる複雑なプロセスになっています。手順は以下のとおりです。
- コンテンツプロバイダに対して発信者情報開示の仮処分を申し立て、投稿者のIPアドレスなどを特定する
- 特定されたIPアドレスからアクセスプロバイダを特定し、発信者情報の消去禁止の仮処分を申し立てる
- アクセスプロバイダに対して発信者情報の開示を求める訴訟を提起する
手続きは専門的な知識が必要であり、時間と費用もかかります。そのため、弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けながら進めるのがおすすめです。
弁護士は、発信者情報開示請求の経験が豊富であり、法的な手続きをスムーズに進められます。また、発信者特定後の対応についても、法的観点から適切なアドバイスを提供してくれます。
仮処分による削除請求
発信者情報開示請求によって著作権侵害の投稿者が特定できた場合、次のステップとして、投稿の削除を求める訴訟を提起できます。しかし、訴訟には時間がかかるため、著作権侵害による損害が拡大する恐れのある場合や、緊急に投稿を削除する必要があるケースでは、仮処分手続の検討が有効です。
仮処分とは、裁判所が一時的に投稿の削除を命じる手続きです。仮処分が認められれば、本訴訟の結果を待たずに速やかに投稿を削除できるため、著作権侵害の拡大を防ぎ、被害を抑えられます。
仮処分の手続は、訴訟と同様に専門的な知識が必要です。弁護士に相談すれば、適切な書類作成や手続きのサポートを受けられます。また、弁護士は、裁判所に対して効果的な主張を行い、仮処分が認められる可能性を高められます。
損害賠償請求
発信者情報開示請求によって著作権侵害の投稿者を特定できた場合、著作物使用料やその他の損害賠償を請求する訴訟を提起できます。
著作権法には、損害賠償額の算定に関する規定があり(著作権法第114条)、著作権者の請求が容易です。例えば、侵害者が著作権侵害によって利益を得ている場合は、その利益額が損害額と推定されます。
また、本来ライセンス料が必要な著作物を無断で使用している場合は、ライセンス料相当額を損害額として請求可能です。
規定は損害額の限度を定めたものであり、侵害者が実際の損害額は少ないと主張しても、減額は認められません。損害賠償請求は、専門的な知識が必要な手続きです。弁護士に相談すれば、適切な損害額の算定や請求手続きのサポートを受けられます。
弁護士は、著作権法に関する専門知識を有しており、法的に適切な主張や立証を行い、、適切な損害賠償を獲得できるよう尽力します。
まとめ:スクショによる著作権侵害の対応は弁護士に相談を
スクショは便利な機能ですが、著作権侵害に当たるケースがあるため注意してください。違法なコンテンツと知らずにスクショした場合や、引用の範囲内であれば適法となるケースがあるなど、判断が難しいケースも少なくありません。
もし、スクショの著作権侵害について不安な点がある場合は、弁護士への相談をおすすめします。弁護士は著作権法の専門家であり、個々のケースに応じて適切なアドバイスや対応策を提案してくれます。被害を受けた際はためらわずに、弁護士に相談してください。
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