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LINEの開示請求は可能?発信者情報開示による個人特定の解説も

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LINEの開示請求は可能?発信者情報開示による個人特定の解説も!

LINEの開示請求は、誹謗中傷や名誉毀損を受けた際に発信者情報を通じて投稿者を特定するためのものです。LINEは原則として、捜査機関の裁判官の令状によるものでなければ対応しませんが、オープンチャットの場合であれば裁判所を通じて開示請求をできる可能性があります。

この記事では、LINEにおける発信者の特定方法や、オープンチャットでの発信者情報開示請求手続きについて解説。IPアドレスや契約者情報の開示の手順も詳しく紹介します。

LINE(ライン)の開示請求について

LINE(ライン)の開示請求について

LINEのグループトークで誹謗中傷や名誉毀損を受けている場合、LINE(LINEヤフー株式会社)に履歴の開示を求めることは、事実上不可能です。

LINEのトーク内容はプライバシー性が高く、LINEは厳重に個人データを管理しています。情報開示は、本人の同意がある場合や捜査機関からの要請など、法令に基づく場合に限られます。弁護士が「弁護士会照会」で開示を求めても、本人の同意がなければ発信者情報は開示されません。

離婚や慰謝料請求の裁判を通じて開示請求することも考えられますが、手続きに時間がかかり、実効性は低いといえます。LINEやアクセスプロバイダに情報が保管されている期間は限られており、裁判所からの照会書が届く頃には履歴が抹消されている可能性が高いためです。

基本は捜査機関への協力のみ対応

LINEは、ユーザー情報を第三者に提供する際には、基本的に本人の同意が必要であるとしています。また、外部からの情報提供の要請には応じず、国家機関による盗聴や検閲などユーザーの人権を侵害する行為にも一切対応しないとの考えです。

ただし、社会的責任を果たすために、例外的に捜査機関からの要請に応じる場合もあるとしています。例えば、捜査機関から情報開示の要請があった場合には、関係法令に基づき適切と判断される範囲で情報を提供することもあるとしています。その際にも、裁判官の令状や関係法令に基づく手続きがない限り原則として応じない方針です。

その一方で、人の生命身体への危険が認められる緊急な場合や具体的な犯罪の疑いが濃厚な場合には、開示の必要性と相当性を総合的に勘案し開示請求に応じる可能性があるとしています。

参考:LINEヤフー株式会社|捜査機関への対応

事件性の有無によっては開示請求が可能

LINEは、警察などの捜査機関からの依頼に応じて情報を提供します。ただし、被害届が受理され捜査が開始されていることが前提です。

原則としてLINEは、トーク内容に違法性がない限り、弁護士会照会や捜査機関の開示請求には応じません。例えば、1対1のトークで誹謗中傷や侮辱的な言葉があっても、それが法律違反とされるケースは少数です。これらの罪は公衆の面前で行われることが前提だからです。

しかし1対1のトークであっても、恐喝や脅迫、ストーカー行為が行われている場合は違法性が高いと考えられ、弁護士や警察に相談することにより発信者情報の入手できる可能性があります。

開示請求についての最近の動向として、捜査機関からのユーザー情報開示に対応した件数は年々増加傾向となっています。直近2022年7-12月の間では、2,415件(前期比7%増)の要請を受領し、1,900件(前期比21%増)の情報開示に対応しています。

参考:LINEヤフー株式会社|LINE Transparency Report – LINE Corporation

裁判所を通じた開示請求は時間がかかる

誹謗中傷の発信者情報開示請求には、半年から1年程度かかるとされています。

まず、誹謗中傷が行われたLINEに対して情報開示を求めますが、LINEに直接請求しても応じられることはまれです。そのため、裁判所に発信者情報開示請求を申し立て、LINEに対する開示命令を得なければなりません。

次にLINEから得られた発信者のIPアドレスとタイムスタンプをもとにアクセスプロバイダ(au、NTTドコモ、ソフトバンクなど)に裁判所を通じて発信者情報開示請求を行います。

LINEとアクセスプロバイダそれぞれにログの保存期間が設けられているため、削除される前に早急に手続きをする必要があります。

裁判所への発信者情報開示請求にあたっては、所定の書式を提出するだけでは認められず、法的根拠等を主張しなければなりません。技術的知識や法律の知識も求められるため、開示請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

LINE(ライン)で個人特定をする2つの方法

LINE(ライン)で個人特定をする2つの方法

LINE上での発信者特定の方法は限られていますが、LINE IDが判明していれば個人を特定できるケースもあります。「弁護士会照会」と「捜査機関を通じた開示請求」の2通りです。ここでは、それぞれについて解説します。

弁護士会照会

LINEの発信者IDが判明している場合には、「弁護士会照会」でLINEヤフー株式会社に問い合わせ、登録時の携帯電話番号を確認できる可能性があります。ただし、発信者側が何らかの権利を侵害していることが前提条件です。

弁護士会照会は、弁護士が取り扱う事件に関連する情報を集め、事実を明らかにするための法律上の制度(弁護士法第23条の2)です。個々の弁護士ではなく、弁護士会が公的機関や民間団体に対して、必要な情報の提供を依頼します。

ただし、日ごろからLINEでのやり取りのある相手であっても、プロフィール画面からはLINE IDを確認するすべがなく、相手に直接尋ねるしかない状況です。つまり、面識のない相手からの誹謗中傷事案では、現実的には送信者のLINE IDを入手することは難しいといえます。

捜査機関を通じた開示請求

LINEヤフー株式会社は、捜査機関からの適切な要請があれば、それに協力する方針を示しています。。

つまり、警察などの捜査機関から特定のユーザーに関する情報開示を求められた場合、そのユーザーが迷惑行為に及んでいると認められれば情報を提供する可能性があります。ただし、その前提条件として、被害者から正式に被害届が受理され捜査が開始されている必要があります。

参考:LINEヤフー株式会社|捜査機関への対応

LINE(ライン)のオープンチャットにおける開示請求

LINE(ライン)のオープンチャットにおける開示請求

2019年にリリースされた「LINEオープンチャット」は、不特定多数の人が参加できる場であることから、発信者情報開示請求権に基づいて発信者を特定できる可能性があります。

LINEオープンチャットは、ゲームや勉強、お悩み相談といった気になる話題や興味のあるテーマについてLINEを交換せずに大勢で話せる新しいSNSサービスです。最大5,000人まで同時にリアルタイムで会話でき、プロフィールもオープンチャットごとに設定できるため、匿名性の高いSNSサービスといえます。

そうしたインターネットの普及に伴い、SNSなどでの誹謗中傷が深刻な社会問題となっています。そのため、総務省は2020年9月「インターネット上の誹謗中傷への対応に関する政策パッケージ」を公表しました。

具体的には、ユーザーへの啓発活動、プラットフォーム事業者の取り組み支援、発信者情報開示制度の整備、相談体制の充実などを推進する方針です。また、2020年8月には「インターネット上の誹謗中傷への対応の在り方に関する緊急提言」をとりまとめるなど、継続的に取り組みを進めていく考えです。

「プラットフォームサービスに関する研究会」において、SNS等のプラットフォーム事業者や事業者団体からヒアリングが行われ、LINEについてもヒアリング内容が公表されています。

LINEオープンチャットは不特定多数の人が参加できる場であり、投稿はプロバイダ責任制限法に基づく「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」に該当します。そのため、発信者情報開示請求権に基づき投稿者の特定が可能です。ただし、LINEオープンチャットの公開設定によっては、発信者情報開示請求の対象外となる場合もあるため注意を要します。

一方のLINEのグループトークは、発信者情報開示請求権の対象にはならない可能性が高くなります。発信者情報開示請求権は、プロバイダ責任制限法に基づく「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」に関するものですが、グループトークでの投稿はこの定義に該当しないためです。

LINE(ライン)のオープンチャットで開示請求をする方法

LINEオープンチャットで名誉毀損や誹謗中傷を受けた場合、投稿者を特定するためには基本的に次の2段階の開示請求を行います。

  1. IPアドレスの開示請求( LINEヤフー株式会社に対して) 
  2. 契約者情報の開示請求( au、NTTドコモ、ソフトバンクなどのアクセスプロバイダに対して) 

 ここでは、それぞれの手続きと2022年10月1日に施行された新たな裁判手続きについて解説します。 

発信者情報開示請求について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

関連記事:発信者情報開示請求とは?改正に伴う新たな手続きの創設とその流れを弁護士が解説

IPアドレスの開示請求

発信者情報開示請求を進める前に、発信者の特定を求める誹謗中傷記事が「名誉毀損に該当するか」や「投稿から時間が経ち過ぎていないか」を検討することが重要です。

これらのポイントを事前に確認しないまま手続きを進めると、特定に失敗する(開示請求が認められない)可能性が高くなります。さらに、発信者情報開示請求は裁判を必要とし、費用と手間がかかるため、手続きを進める価値があるかどうかを事前に判断することが重要です。

発信者情報開示請求をすると決めた場合には、以下の手続きに進みます。

(1)LINEヤフー株式会社に投稿者のIPアドレスとタイムスタンプを開示請求する

発信者特定の第一歩は、投稿に使われたIPアドレス(各デバイス機器に割り振られている識別符号)とタイムスタンプ(Webサイトに記事の投稿をした時刻に関する記録)を入手することです。このIPアドレスから、投稿者が利用していたアクセスプロバイダを特定します。

ただし、LINEヤフー株式会社に発信者情報開示請求を行ったとしても、加害者特定に必要な情報の提供はほとんど望めません。その理由は、LINEヤフー株式会社にも投稿者のプライバシーを守る義務があるためです。

基本的に、LINEヤフー株式会社側は「裁判所からの正式な開示命令がない限り、情報は提供できない」という立場を取ることになります。サイト運営者の自主的な判断で個人情報を渡すリスクは避けたいというのがその理由です。

(2)法的措置の準備も同時進行で進める

LINEヤフー株式会社に任意の開示請求を行う一方で、並行して法的措置の準備も進める必要があります。具体的には、LINEヤフー株式会社に対し、投稿に使用されたIPアドレスやタイムスタンプの開示を求める仮処分の申立てです。

この「発信者情報開示仮処分命令申立」は、LINEヤフー株式会社が任意開示に応じない場合に備え、裁判所からLINEヤフー株式会社に対して情報開示を命じる決定(仮処分)を出してもらう手続きを指します。

(3)開示されたIPアドレスの情報を基にプロバイダを特定する

裁判所の命令を受けてIPアドレスが開示されれば、次はそのIPアドレスからWHOISサービス(ドメイン名やIPアドレスの登録情報などを、インターネット上で検索して参照できるサービス)などのサイトを用い、投稿者が契約しているアクセスプロバイダを割り出します。

契約者情報の開示

LINEヤフー株式会社から開示されたIPアドレスを基に、アクセスプロバイダ(au、NTTドコモ、ソフトバンクなど)に対して、そのIPアドレスを使用していた投稿者の契約者情報(氏名と住所)の開示を請求します。

アクセスプロバイダへの請求にも任意開示と法的手続がありますが、任意開示に応じることはほとんどないため、裁判所に「発信者情報開示請求訴訟」を提起します。訴訟提起後、通常2~3回の口頭弁論を経て判決が出され、請求が認められれば、判決後2週間程度でプロバイダから発信者の情報が開示されます。

プロバイダ責任制限法の改正により1度の手続きでの開示請求も可能に

2022年10月1日に改正プロバイダ責任制限法が施行され、新たな裁判手続きが導入されました。この手続きの主な特徴は、サイト管理者とプロバイダへの開示命令を一体的に審理し、迅速に情報を開示できる点にあります。

特に、サイト管理者から経由プロバイダを開示させる「発信者情報開示命令」が新設され、従来の「発信者情報開示請求」に比べてIPアドレスなどの情報の早期保全が可能となり、手続きの負担も軽減されました。

従来の発信者情報開示請求手続と比較すると、仮処分申し立ての回数が少ないため、手続きの時間を短縮できるメリットがあります。ただし、相手方が異議申し立てを行った場合に既存の手続きに戻る必要があり、結果として時間がかかってしまうデメリットもあります。開示請求を検討する場合は、弁護士に相談し、最適な方法を選択することが重要です。

まとめ:LINE(ライン)で開示請求をしたい場合、まずは弁護士に相談をしましょう

LINE(ライン)で開示請求をしたい場合、まずは弁護士に相談をしましょう

LINEでの誹謗中傷や名誉毀損など、トラブル発生時の発信者特定は容易ではありません。LINEの基本方針は捜査機関への協力のみで、弁護士会照会や個人からの開示要求には応じないケースが多いためです。

しかし、事件性が認められれば開示請求が可能です。また、オープンチャットは不特定多数が参加できるSNSのため、発信者情報開示請求の対象となり得ます。その場合、まずIPアドレスの開示を求め、次にそのIPアドレスの契約者情報の開示請求を行うことで、最終的に発信者特定につながります。

また2022年のプロバイダ責任制限法の改正で、従来の2段階の手続きを1度で行えるようになる「発信者情報開示命令」の手続きも加わりました。

これらの手続きを自力で行うのは困難であり、時間の経過と共に投稿ログが消えてしまう懸念もあるため、相手を訴えることが難しくなってしまうおそれがあります。まずは、証拠となるスクリーンショットなどを保存したうえで早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:デジタルタトゥー

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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