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ネットワークビジネスは違法?「マルチ商法」と「ネズミ講」の法的問題点を解説

ネットワークビジネスは違法?「マルチ商法」と「ネズミ講」の法的問題点を解説

親しい人から「楽をして稼げる」「必ず儲る」などと勧誘され、契約したのち借金で代金を支払ったが実際には儲からず借金だけが残った、などのようなニュースを聞いたことがあると思います。

これは、ネットワークビジネスを悪用したケースですが、法律を守り合法的に行っている企業も多数存在しているのも事実です。

今回は、「ネットワークビジネス」の法律上の定義や禁止事項、および類似する言葉「連鎖販売」「無限連鎖講」の意味や違いについても分かりやすく説明します。

ネットワークビジネスとは?

ネットワークビジネスとは?

「ネットワークビジネス」は、大きく分けて次の2つの意味で使用されています。

A 連鎖販売取引と呼ばれるビジネス

B インターネットなどのネットワークを利用するビジネス

Bについては、Amazonなどの「ネットショップ」、ヤフオクなどの「ネットオークション」、ソフトウエアの「クラウドサービス」、ブログやYouTubeを利用した広告ビジネスなど、さまざまなビジネスモデルが私たちの生活に深く浸透しているのは周知の通りです。

Aの「連鎖販売取引」は、個人を販売員として勧誘し、更にその個人が次の販売員の勧誘をさせるというかたちで、販売組織をピラミッド型に拡大して行う商取引のことです。「マルチレベルマーケティング(MLM)」「マルチ商法」「ネットワークビジネス」などとも呼ばれています。

ネットワークビジネスでは、人と人のネットワークを利用し、基本的には宣伝広告や店舗に依存しないため販売経費を大幅に削減することができ、その分の利益を販売員に対する報酬や製品開発費などに振り分けることが可能です。

また、自分が勧誘した販売員が売上を得るとその一部が自分に分配されるので、勧誘した販売員、つまり自分の下位にいる販売員の数が増えるに従って報酬も増えることになります。

ネットワークビジネスで世界的に展開している企業では、Amway、Natura Cosmeticos、Herbalife、Avon Productsなどがよく知られていますが、国内でもポーラ化粧品、メナード、ノエビアなどがあります。

連鎖販売とは(定義/要件)

特定商取引法(特定商取引に関する法律)では、ネットワークビジネスを「連鎖販売取引」として次のように規定しています。

  • 物品の販売(または役務の提供など)の事業であって
  • 再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を
  • 特定利益が得られると誘引し
  • 特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む)をするもの

また、消費者庁では連鎖販売取引の具体例を次のように解説しています。

「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので、他人を誘ってその人に売れば儲かります」とか「他の人を勧誘して入会させると1万円の紹介料(特定利益)がもらえます」などと言って人々を勧誘し、取引を行うための条件として、1円以上の負担をさせる場合であれば「連鎖販売取引」に該当します。

実態はもっと複雑で多様な契約形態をとっているものも多くありますが、入会金、保証金、サンプル商品、商品などの名目を問わず、取引を行うために何らかの金銭負担があるものはすべて「連鎖販売取引」に該当します。

(出典:消費者庁 特定商取引ガイド

連鎖販売取引に対する規制

特定商取引法では、消費者の安全を守るために、連鎖販売取引を行う者に対し次の義務を課しています。

氏名などの明示義務(第33条の2)

連鎖販売取引を行うときには、勧誘に先立ち消費者に対して次の事項を告げなければなりません。

  • 統括者(連鎖販売業を実質的に掌握している者)、または実際に消費者に対して勧誘を行う者(統括者を含む)の氏名(名称)
  • 金銭などの負担を伴う取引についての契約締結を勧誘する目的である旨
  • その勧誘にかかわる商品または役務の種類

広告する際の表示義務(第35条)

連鎖販売取引について広告する場合には、以下の事項を表示しなければなりません。

  • 商品(役務)の種類
  • 取引に伴う消費者の負担に関する事項
  • 他人の勧誘によって得られる報酬について広告をするときにはその計算方法
  • 統括者などの氏名(名称)、住所、電話番号
  • 統括者などが法人で、電子情報処理組織を使用する方法によって広告をする場合には、当該統括者などの代表者または連鎖販売業に関する業務の責任者の氏名
  • 商品名
  • 電子メールによる商業広告を送る場合には、統括者などの電子メールアドレス

書面の交付義務(第37条)

連鎖販売業を行う者が連鎖販売取引について契約する場合には、以下の2種類の書面を消費者に渡さなければなりません。

  • 契約の締結前:概要書面(当該連鎖販売業の概要を記載した書面)
  • 契約の締結後:契約書面(契約内容について明らかにした書面)

また、契約書面には、赤色の枠の中に赤字で「クーリング・オフ(契約の解除)」について記載しなければならず、字の大きさは8ポイント以上であることが必要です。

無限連鎖講とは(定義・要件)

無限連鎖講とは(定義・要件)

連鎖販売取引とよく混同されるものに、「無限連鎖講(いわゆるネズミ講)」がありますが、「無限連鎖講の防止に関する法律」では次のように定義されています。

  • 金品を出す加入者が無限に増加することを前提として
  • 先に加入した者を先順位者、これに連鎖して段階的に2倍以上で増加する後続の加入者を後順位者となり
  • 先順位者が後順位者の出す金品から自己の出した金品の価額又は数量を上回る金品を受け取る仕組みの「金品の配当組織」

例えば、先に無限連鎖講に加入した者が2人の後順位者を加入させ、さらにこの2人が同様に後順位者を2人ずつ加入させるという方法を繰り返し、加入者をどんどん拡大させます。

そして、先順位者は、一定の時点で所定の金品を取得して組織を離れ、後順位者も同様に一定の時点で所定の金品を取得して順次組織を離れていくというものです。

上記の事例では問題がないように見えますが、無限連鎖講は加入者が無限に増加することを前提としており、必ずどこかの時点で後順位者の獲得が行き詰まり、破綻することが明白なため法律で禁止されているのです。

両者の違い

連鎖販売取引(ネットワークビジネス)と無限連鎖講(ネズミ講)との違いは、その定義から明確に区別することができます。

  • ネットワークビジネス:物品を販売(または役務の提供など)する事業
  • ネズミ講:金品を配当する組織

つまり、商品の販売や役務の提供などの商行為を通じて報酬を得て配当するのが「連鎖販売取引」、単に会員費などの名目で報酬を得て配当するのが「無限連鎖講」ということです。

連鎖販売取引はどのような場合に違法となるか。

連鎖販売取引で違法となるのは、前述の「連鎖販売取引に対する規制」で紹介した、①氏名などの明示義務、②広告する際の表示義務、③書面の交付義務に違反した場合のほか、特定商取引法で禁止している次の行為を行った場合です。

禁止行為(第34条)

連鎖販売取引を行う者が勧誘を行う際、次の行為は禁止されています。

  1. 勧誘の際、または契約の締結後、その解除を妨げるために、商品の品質・性能など、特定利益、特定負担、契約解除の条件、そのほかの重要事項について事実を告げないこと、あるいは事実と違うことを告げること。
  2. 勧誘の際、または契約の締結後、その解除を妨げるために、相手方を威迫して困惑させること。
  3. 勧誘目的を告げない誘引方法(いわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールスと同様の方法)によって誘った消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘を行うこと。

誇大広告の禁止(第36条)

連鎖販売取引について広告する場合に「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」などを行うこと。

未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(第36条の3)

特定商取引法ではメール送信を承諾しない消費者に対し、連鎖販売取引電子メール広告を送信することを禁止していますが、以下の場合は規制対象外となります。

  • 「契約の成立」「注文確認」「発送通知」などに付随した広告
  • メルマガに付随した広告
  • フリーメール等に付随した広告

ネットショップに関する特定商取引法の規定について詳しく知りたい方は、下記記事にて詳述していますので本記事とあわせてご覧ください。

まとめ

まとめ

ネットワークビジネス自体は、ネズミ講などとは異なり合法的なビジネスですが、悪意を持った事業者による消費者の被害が後を絶ちません。

そのため、違法行為を行う、あるいは行う恐れのある事業者に対する差止請求が認められている他、違反者に対しては業務改善指示、業務停止命令、業務禁止命令などの行政処分や罰則などがあります。

連鎖販売取引を事業として行う場合には、法令で定められている規制や禁止事項に抵触しないことが重要となりますので、独自に判断するのではなく専門的な知識や経験が豊富な弁護士に事前に相談することをおすすめします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。ネットワークビジネスをめぐるトラブルは大きな問題となっており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所は様々な法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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