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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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【令和8年6月改正】社会福祉法等改正のポイントと介護事業者が取るべき対応

令和8年(2026年)6月19日、参議院本会議において「社会福祉法等の一部を改正する法律」が可決・成立し、同月25日に公布されました。本改正は、人口減少や超高齢社会の進展、単身高齢世帯の急増といった劇的な社会構造の変化に対応し、令和9年(2027年)4月1日からの段階的な施行に向けて、介護保険制度および社会福祉制度の持続可能性を確保するための抜本的な見直しを行うものです。今回の法改正は、介護サービスを供給する事業者に対して、従来の経営方針や日々のオペレーション、コンプライアンス体制の変革を強く求める重大な変革を含んでいます。

本記事では、今回の社会福祉法改正における主要な変更点を介護サービス事業者向けに整理し、実務上生じる法的な留意点や必要な備えについて詳細かつ網羅的に解説します。

この記事の目次

中山間地域や人口減少地域における介護サービスの確保と特例制度

深刻な過疎化と労働力不足が進む地方自治体や中山間地域においては、介護人材や国家資格を持つ専門職を確保することが極めて困難になっています。全国一律に設定されている厳密な人員配置基準や設備・運営基準を維持しようとすれば、結果として事業の継続を断念せざるを得ず、地域住民が必要なサービスを受けられなくなるという悪循環が発生していました。こうしたサービス維持の限界に対応するため、今回の法改正では地域特性に合致した特例的な給付制度や事業スキームが新たに設計されました。

特定地域サービス新設の背景と対象地域の基準

過疎地域や離島のように、サービスの提供維持が著しく困難な地域でのサービス基盤の確保を図るため、介護保険法に新しい特例サービス類型である「特定地域サービス」および「特定地域居宅サービス」が創設されました。人口の減少その他の厚生労働省令で定める基準に該当する地域として都道府県が定める「特定地域」に所在する事業所において、柔軟な介護サービスの提供を可能とする特例措置が導入されます(介護保険法 第42条の3、第54条の3等)。

具体的にどの地域が「特定地域」に該当するかについては、今後の省令等で詳細が定められますが、介護保険部会等においては、高齢者人口の中でも特に介護ニーズが急増する「75歳以上人口の密度」などの定量的指標に着目した基準が検討されています。

深刻な人口減少が生じている離島振興対策実施地域や山間地、あるいはこれらに準ずる人口希薄地域が主な指定候補とされており、事業者が事業所を展開する区域が指定を受けるか否かによって、今後の人員確保戦略やサービス継続計画が大きく変化することとなります。

参考:厚生労働省|特定地域(中山間・人口減少地域)の考え方

配置基準の弾力化および包括的評価の仕組み

特定地域サービスに指定された区域内に所在する事業所においては、都道府県の条例で定める基準を満たすことを条件に、従来適用されていた全国一律の厳格な配置基準(例えば管理者の常勤専従要件や、専門職の常勤・夜勤配置要件など)について、柔軟な緩和が認められることとなります。これにより、1人の管理者が複数の小規模事業所を兼務したり、夜間や特定の時間帯における有資格者の配置義務を弾力化したりすることが可能になります。

さらに、サービス利用者の需要が縮小する地域での安定した経営を支えるため、出来高払い(サービス提供時間や回数に応じた介護報酬)の代わりに、月単位の「包括的評価(定額報酬)」を選択・導入できる仕組みが導入されます。ただし、この特例給付を利用するにあたっては、以下の表に示すような、隣接する特定地域「外」の事業者との間での基準の乖離から生じる法的・経営的な配慮が必要となります。

項目通常地域(特定地域外)特定地域(中山間・人口減少地域)
人員・設備配置基準国および都道府県が定める厳格な一律基準地域の実情に応じた条例による柔軟な緩和措置
介護報酬の支払体系サービス提供回数・時間等に基づく出来高制が基本経営安定化を図る月当たりの定額報酬(包括的評価)等
事業者の民事上の注意義務基準遵守を前提とした厳格な安全配慮義務人員基準が緩和されても、安全配慮義務の水準は不変

人員基準が緩和された環境下であっても、利用者が事故等に遭遇した場合、事業者としての民事上の「安全配慮義務」の判断水準が自動的に低下するわけではない点に注意が必要です。人員を充足できないからといって杜撰な見守りや不十分なケアを放置すれば、万が一の介護事故発生時に多額の損害賠償義務を免れることは困難です。設備やシステムの代替的な活用(見守りセンサー等)を併用しつつ、実質的な安全性をいかに担保するかという、より高度なリスクマネジメントが求められます。

特定地域居宅サービス等事業の創設と委託契約時の注意点

民間のサービス事業所の相次ぐ撤退や、人材確保の途絶等により、特例的な特定地域サービスを活用してもなおサービス提供体制を維持することが困難な地域において、市町村が「地域支援事業」として自ら居宅サービス等を直接実施し、または適切な事業者に委託して運営を行うことができる「特定地域居宅サービス等事業」が新たに創設されます(介護保険法 第115条の45第1項)。この仕組みは、従来の介護給付に代えて市町村が介護保険財源を機動的に活用し、地域内の最少のサービスインフラを死守するためのセーフティネットとしての役割を果たします。

事業者が市町村から本事業の受託を受ける場合、締結する委託契約書には十分な法的な確認が必要です。特に、サービス提供に伴う損害賠償責任の分担関係、人員配置維持が一時的に困難になった場合のペナルティや解除要件の有無、提供されるサービス水準の客観的な評価手法、および委託費の積算根拠と物価変動等に伴う改定条項など、長期的かつ安定的に事業を運営するための各種法的条項の精査が必須となります。

単身高齢者支援の制度化と社会福祉法改正による第二種社会福祉事業の位置づけ

頼れる身寄りのない単身高齢者支援の制度化と社会福祉法改正による第二種社会福祉事業の位置づけ

身寄りのない高齢者が急速に増加する中、これらの人が介護サービスや医療を受けるに際し、入院・入所時や緊急医療時の同意、さらには死亡時の葬儀や遺留品、未払い費用の処理など、これまで家族や親族が当然のように担ってきた機能を誰が代替するのかという問題が深刻化しています。介護現場においては、事実上これらの事務やリスクを肩代わりせざるを得ない「シャドウワーク」が事業者の経営リスクや業務負担を押し上げていました。今回の社会福祉法等の改正は、この深刻な領域に初めて公的な支援のメスを入れるものとなっています。

第二種社会福祉事業としての日常生活支援・死後事務支援

社会福祉法の改正により、頼れる身寄りのない生計困難者に対する支援事業が、正式に「第二種社会福祉事業」として位置づけられました(社会福祉法 第2条第3項)。

近隣に居住する家族がいないこと等により日常生活等を営むのに支障がある生計困難者に対し、福祉サービスの利用援助、日常的金銭管理、入院入所の各種手続き、および死後事務支援等を一体的に提供する事業が、社会福祉法に基づき第二種社会福祉事業として明確に定義されました。具体的には、以下の3つのフェーズに沿った支援が無料または低額で提供される公的枠組みが構築されます。

  • 日常の生活支援:福祉サービスの利用手続き援助、日常的な金銭管理、重要書類の預かり
  • 入院や施設入所時の手続き支援:手続き代行、費用支払代行、緊急連絡先の提供
  • 死亡後の死後事務支援:葬儀や納骨の契約、居室の家財処分、行政機関への届け出

この第二種社会福祉事業には、認定所轄庁の認可を受けた「社会福祉連携推進法人」なども参入できる仕組みとなっており、多様な主体が制度の下で身寄りなし高齢者を支援できる環境が整えられます。

身元保証人問題をめぐる介護サービス事業者の民事上のリスクと新たな法対応

介護施設や有料老人ホームが入居時に「身元保証人」または「身元引受人」を求める割合は極めて高く、有料老人ホームでは約9割に達しているという実態がありました。厚生労働省は「身元保証人がいないことのみを理由に入所を断ることは正当な理由に該当せず違法である」という通知を繰り返し発出してきましたが、現場の事業者には以下の民事上のリスクに対する対抗手段がありませんでした。

  • 利用料や医療費等の滞納リスク:本人が自己決定能力や支払能力を喪失した際の費用回収不能
  • 急変時の医療同意リスク:手術や延命措置を決定する代理権者が不在のままでの医療不介入
  • 退去・死亡時の残置物処理リスク:相続財産管理人の選任申立て等をしないまま残置された居室の処理の長期化

今回の改正による日常生活支援・死後事務支援の事業化により、事業者は身寄りのない入所者に対し、これらの支援を実施する公的な社会福祉法人等との契約締結を勧めることができるようになります。これにより、滞納リスクや退居時の残置物処理、さらには緊急連絡機能の多くが外部の公的な第二種社会福祉事業によって担保されることとなり、事業者自らがこれらの保証責任を不当に引き受ける必要がなくなります。契約書や重要事項説明書における「身元保証人」に関する条項を改定し、これらの新設事業の利用を連携条件として組み込むことが、契約実務上の有効な法対応となります。

地域権利擁護相談支援センターと成年後見制度の利用促進

身寄りのない単身高齢者の中には、意思決定能力自体がすでに衰退している人も多数存在します。これまでは、利用者の判断能力が不十分であっても、成年後見制度の開始までに多大な事務コストや申立て費用がかかるため、制度の利用が進まないことが大きな課題でした。本改正では、権利擁護制度の円滑な利用支援や相談に一元的に対応する中核的な機関として、市町村が「地域権利擁護相談支援センター」を設置することができるものと規定されました(社会福祉法 第106条の7)。

事業者は、判断能力の低下した単身利用者の財産管理や介護契約等の締結に際し、本センターと緊密に連携をとることによって、成年後見人の迅速な選任手続きや、地域における適切な権利擁護スキームにシームレスにアクセスすることが可能となります。これにより、認知症高齢者との契約における無効主張トラブルや、適切な意思決定支援を欠いた状態でのサービス提供といった法的瑕疵リスクを大幅に軽減することができます。

有料老人ホームに対する登録制度の導入と介護保険法改正に伴う相談支援の再編

近年、特定の難病患者や重度の要介護者を「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」に集中的に入居させ、同一の運営企業が展開する訪問介護や訪問看護といった個別サービスを過剰に利用させて保険給付を限界まで請求する、いわゆる「過剰な囲い込み行為」が社会的な批判の対象となっていました。入居者自身の自主的な選択権が侵害されるだけでなく、一部事業者の突然の破綻による利用者の路頭迷いなどの問題が発生したことを受け、今回の法改正は有料老人ホームの規制を大幅に厳格化しました。

特定有料老人ホームの登録要件と事業者のガバナンス義務

本改正では、中重度等の要介護者などを中心に受け入れる、一定の保護の必要性が極めて高い有料老人ホームを「特定有料老人ホーム」に指定し、これまでの簡易な届出制から都道府県知事等による厳格な「登録制度(登録有料老人ホーム)」へと移行させます。

中重度の要介護者等を対象とする特定有料老人ホームに対し、5年ごとの有効期間に基づく更新制、財務状況の開示・公表、および入居者保護基準等を満たす運営を担保するための登録制度が介護保険法および老人福祉法に基づき整備されます。

登録有料老人ホームへの移行に伴い、事業者は指定の有効期間内におけるコンプライアンス管理をより高いレベルで行う必要があります。登録がなされないまま事業を継続すれば無登録運営による処分の対象となり得るほか、定期的な行政による監査や財務諸表の公開が義務付けられるため、徹底したコーポレートガバナンスと、不当な収益構造の排除が不可避となります。

登録施設介護支援の新設と利用者自己負担導入の実務的影響

登録有料老人ホームの創設に伴い、当該施設の入居者を対象とした独自のケアマネジメント枠組みとして「登録施設介護支援」および「登録施設予防支援」が新たに新設されます。

従来の「居宅介護支援」においては、作成されるケアプランに対して利用者の自己負担(介護保険適用による10割給付)はありませんでしたが、この新設される「登録施設介護支援」では、利用者に対し原則「1割(所得により最大3割)」の自己負担分を徴収することが導入されます。この背景には、基本報酬の中にすでにケアプラン代金が内包され自己負担分を支払っている介護付き有料老人ホーム等の特定施設入居者との不公平感を是正する意図があります。

事業者の事務・実務への直接的なインパクトは、毎月の「ケアプラン作成に伴う自己負担額の請求業務および集金業務」が新たに発生する点です。たった1人でも該当する利用者がいれば、事業所には新たな請求管理オペレーション、滞納時の督促や回収といった民事上の管理実務が追加されることになります。料金改定や契約書の再締結などを含め、事前の実務フローの構築が必須です。

特定事業者の囲い込み防止策と会計分離の義務化

利用者の主体的選択肢を歪める悪質なサービス誘導行為を根絶するため、改正法は複数の事業者間における独立性の確保を厳しく命令しています。

  • 同一法人の指定・勧誘の制限:老人ホームの入居条件として、特定の同一系列の訪問介護・訪問看護、特定のケアマネジャーを利用することを義務づけ、またはこれを拒否した場合に入居を拒否する行為を法律上全面的に禁止します。
  • ケアマネジメントの独立性宣言:事業者は、ケアプランの作成が不当に特定のサービスへ偏向しないよう、独立性の確保に係る方針を明文化し、公表することが求められます。
  • 住まいと介護事業の経理の区分:ホームの運営事業(住まい事業)と、提供する介護サービス事業との間で、会計を厳密に分離し区分経理を行うことが義務付けられます。

事業者がもし特定の系列事業所への誘導等を行い、これらの基準に違反したと認められる場合は、都道府県知事等から登録の取消しや、最悪の場合は介護保険法に基づくサービス指定の取消処分を受ける恐れがあります。同一グループ内で不動産(有料ホーム)と介護サービス(訪問等)を垂直統合型で経営している企業にあっては、法的な利益相反や優越的地位の乱用行為が生じていないか、会計区分が適正に行われているかを弁護士等の専門家に依頼して事前にコンプライアンスチェックすることが不可欠です。

ケアマネジャーの資格更新制廃止に伴う介護事業者への研修受講支援義務と資格制度の改正

ケアマネジャーの資格更新制廃止に伴う介護事業者への研修受講支援義務と資格制度の改正

福祉業界における最大級の人材不足への打開策、あるいは現場職員への事務・手続き的負担の軽減を図るための目玉政策の一つが、ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格の更新制度にまつわる見直しです。しかし、一部で広く流布している誤解(更新制が廃止されれば今後は面倒な法定研修を一切受ける必要がなくなるという解釈)を事業者がそのまま信じてしまうと、将来的に極めて深刻な法的ペナルティに直面するリスクがあります。

更新制廃止と新たな法定研修・業務禁止命令の実態

法改正により、介護支援専門員証に設定されていた「5年の有効期間」が廃止され、これに伴う再研修や有効期間更新のための研修制度そのものは確かに廃止されます。しかし、更新という手続きのための手続きは廃止されるものの、ケアマネジャーとしての資質の保持や専門性の更なる向上のための「新たな法定研修制度」が改めて介護保険法上に義務として明記されます。

介護支援専門員は、その資質の保持及び向上を図るため、都道府県知事が行う研修を受けるものとされ、正当な理由なくこれを受講しない場合は都道府県知事による受講命令、さらには最長1年間の業務禁止処分を行うことができます。

つまり、従来の5年という形式的な有効期限に伴う更新手続きの手間はなくなりますが、ケアマネジャーには引き続き一定の頻度で適正な研修を継続的に受講する法的な受講義務が課されることとなります。これを怠り、知事の命令にも従わない場合には「1年以内の業務禁止」という極めて厳しい行政処分を下され、結果として現場での実務稼働ができなくなる法的リスクを有しています。

雇用するケアマネジャーに対する研修機会確保措置と事業者の法的ペナルティ

今回の法改正において、介護サービス事業者が特に注視しなければならない最重要ポイントが「雇用する事業者側の法的義務化」です。

これまで、ケアマネジャーの更新研修費用や受講機会の確保(研修受講中のシフトのカバーや有給付与、受講費用の補助等)は、あくまで事業所ごとの任意の取り組みや福利厚生、あるいはケアマネジャー個人の自己負担に委ねられていました。しかし、本改正では、ケアマネジャーを雇用する指定居宅サービス事業者や施設の開設者に対し、当該職員がこの新設される法定研修を受講するための「機会を確保するための措置(機会確保措置)」を講じることが、法律上の重い「義務」として規定されました。

雇用する事業者が、職員のシフトの都合がつかないことを理由に受講を断念させたり、機会確保に向けた支援を怠ったりして義務違反と認定された場合、以下のフローにより段階的に厳しい処分が実行されることになります。

  1. 是正勧告:都道府県等による適正化に向けた指導および措置要請
  2. 是正命令:正当な理由なく勧告に従わない場合の是正命令措置
  3. 指定取消・効力停止:命令に違反した場合の介護サービス事業者指定の取消・効力一部停止

事業者は、単に「更新が無くなって良かった」と考えるのではなく、就業規則や研修支援規程、雇用契約書の記載内容をアップデートし、雇用するケアマネジャーの新たな研修受講計画を事業所のシフト管理へ組織的に組み込む体制を事前に構築することが義務付けられていると認識すべきです。

介護福祉士経過措置の延長と准介護福祉士の廃止

若手介護人材の定着や資格確保の障壁をなだらかにするため、資格制度上の経過措置の見直しも行われます。介護福祉士養成施設を平成29年度(2017年度)から令和13年度(2031年度)までの間に卒業した者については、国家試験の合否にかかわらず、卒業日の属する年度の翌年度の4月1日から5年間は、経過措置として介護福祉士の資格が有されることとなりました。卒業後5年間に継続して介護等の業務に従事するか、あるいは5年以内に試験に合格すれば、恒久的にその資格を保持することができます。なお、これまで暫定的な資格として設定されていた「准介護福祉士」は廃止されます。

事業所においては、新卒者や留学生といった養成施設の卒業生に対し、経過措置期間に甘んじることなく、合格に結びつくための系統的な実務指導、内部勉強会の実施、受講費用の助成等のプログラムを展開することが重要です。人材定着や有資格者比率の維持ひいては介護報酬加算の安定的取得に向けて、組織的な「教育投資」体制を明文化することが強く求められます。

災害時における福祉支援体制の法制化と経営基盤の強化

近年相次ぐ大規模震災の教訓から、災害時における被災地域の要配慮者(介護が必要な高齢者や障害者等)の速やかな避難や支援、福祉避難所の円滑な運営を支える枠組みとして、福祉と防災の連携の強化が推進されています。今回の改正は、個別法人の防災・事業継続体制を強化しつつ、地域ごとの複数の法人同士の連携による「規模の経済」や災害対応力の獲得を可能にする法制度が創設されています。

災害派遣福祉チーム登録制度の法制化と事業継続計画への影響

災害発生時に被災地域の避難所等で高齢者等に専門的な介護支援や相談を提供する災害派遣福祉チーム(通称:DWAT)について、厚生労働大臣が事前に災害時福祉業務に従事する意志のある福祉人材を登録し、計画的な研修を実施する「人材登録制度」が法制化されました。今後、大規模災害が発生した際には、登録されているチーム員に対して都道府県知事等から派遣要請が出される仕組みとなります。

事業所においては、自社の職員がDWATに登録・派遣された場合であっても、自身の施設内での利用者サービスが麻痺しないよう、BCP(事業継続計画)における非常時代替人員の確保計画や優先業務のスクリーニングをさらに高度化させる必要があります。派遣要請時には派遣元事業所の人員負担への配慮が法律上なされる方向ですが、事業者側の自主的なリスクアセスメントと体制設計は変わらず義務として課されます。

社会福祉連携推進法人の業務拡充と経営の共同化・大規模化への備え

少子化と経営コストの高騰、さらにはICT機器の導入要求等に対応するため、今回の社会福祉法改正により、複数の法人が広域的に連携して事業を効率化するための「社会福祉連携推進法人」の役割が更に拡大されます。具体的には、所轄庁の認可を受けることで、社会福祉連携推進法人が自ら「第二種社会福祉事業」を運営できるようになるほか、法人間での土地や建物といった資産の有効活用、貸付支援等を行いやすくなるように法制度が整備されます(社会福祉法 第126条)。

中規模・小規模の介護サービス事業所が単独で厳しい経営環境を耐え抜くことは限界を迎えつつあります。今後は、本改正による法人間アライアンスの法制度的緩和を見据え、以下に示すような共同化や大規模化への参画を真剣に検討すべきです。

  • ICT機器導入費用の共有:先端ロボット、見守りセンサー、AIインフラの共同投資によるコスト半減
  • 共同購買スキーム:消耗品や食材等の共同一括調達によるコストパフォーマンスの最大化
  • 専門人材のシェアリング:研修費用、採用広報コストの分担、および人事評価制度等の平準化

経営基盤の強靭化とサービスの維持は、もはや一つの事業所だけで完結すべき課題ではなく、法律が提供するアライアンス枠組みを巧みに活用したアグリゲーション戦略に移行していくこととなります。

まとめ:社会福祉法等の改正対応は弁護士に相談を

今回の社会福祉法および介護保険法等の複合的な法改正は、事業者にとって「経営ルールの前提そのものの変化」をもたらすものと言っても過言ではありません。特定地域における特例介護サービスの創設や、身寄りのない高齢者に対する第二種社会福祉事業の構築は、地域ニーズに的確に対応するための大きな支援インフラを提供してくれます。その一方で、有料老人ホームへの登録制度移行、囲い込み対策としての会計区分義務、そしてケアマネジャーの研修に対する事業者の機会確保義務化など、法が事業者に要求する遵守事項の水準と義務違反に対する処罰の厳格さはかつてない高まりを見せています。

令和9年からの段階的な施行に向けて、事業者は各施設における各種規程や、雇用契約、利用契約の文面を最新の法秩序に適うように見直すとともに、グループ内の取引関係におけるコンプライアンス上の死角がないか、自己の事業所が受ける影響を精緻に試算することが求められます。法的な瑕疵を早期に埋め、新たな制度が提供する公的メリット(新設事業の活用、アライアンス制度の利用など)を積極的に活用しつつ、不確実な時代を勝ち抜く強固な組織構造を作り上げていただくことを推奨いたします。

当事務所による対策のご案内

介護事業は、介護保険法や老人福祉法、会社法など、さまざまな法律の規律が張り巡らされた業界です。モノリス法律事務所は、一般社団法人 全国介護事業者連盟や、全国各都道府県の介護事業者の顧問弁護士を務めており、介護事業に関連する法律に関しても豊富なノウハウを有しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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