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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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NASDAQ新規則IM-5101-4の初期適用事例──SEC取引停止後の上場廃止決定と日本企業の予防法務

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NASDAQの新規則IM-5101-4について、SECによる取引停止を受けた既上場企業に対する適用事例が公表されています。Magnitude International Ltd.は、2026年8月3日付で、同規則に基づく上場廃止決定通知を受領したと発表しました。制度の導入によって生じたリスクが、実際の上場維持手続に現れた事例です。ただし、担当部門による決定通知と上場廃止の最終確定は区別する必要があり、同社の9月18日付公表資料では、当該決定は引き続き審査の対象とされています。この規則への対応では、自社による不正行為の防止だけでなく、第三者のSNS上の活動、株主構成や市場流動性、上場を支援するアドバイザーの選定まで視野に入れる必要があります。

本記事では、公式資料を基に、Magnitude社などの初期適用事例を整理し、新規上場審査との関係、上場後に備えるべき情報管理や説明体制を解説します。

NASDAQのIM-5101-4はどのような上場廃止リスクを定めるのか

初期適用事例を理解するには、IM-5101-4による判断の対象を確認する必要があります。中心となるのは、企業の業績だけでなく、その株式について公正で秩序ある取引を維持できるかという問題です。

SEC取引停止を前提とする個別判断

SECは2026年6月3日、IM-5101-4の導入を承認しました。同規則は、相場操縦の可能性を示す取引活動があり、SECが一時的な取引停止を実施した証券について、NASDAQが投資家保護のために必要と判断した場合に、裁量により上場廃止とする仕組みです。裁量とは、一定の金額や日数だけで結論を決めず、具体的な事情を評価して判断することを意味します。

そのため、株価の急騰やSNSでの言及だけでIM-5101-4による上場廃止が自動的に決まるわけではありません。SECによる取引停止が前提となり、その上でNASDAQが個別に判断します。一方、他の上場基準を満たしていても、この判断を受ける可能性があります。

参考:SEC|IM-5101-4導入に係る迅速承認命令

企業自身の不正が確認されていない場合も対象となる

IM-5101-4は、企業との関係が確認されていない第三者が相場操縦を行っているように見える場合や、企業・関係者の関与をNASDAQが判断できない場合にも、権限を行使できるとしています。

このため、企業が「そのSNS投稿は依頼していない」と説明しても、それだけで上場維持が保証されるわけではありません。企業の関与の有無と、その証券が相場操縦の影響を受けやすい状態にあるかは、異なる問題だからです。企業自身の適法な行動を示す資料に加え、市場の健全性を説明する準備が求められます。

参考:NASDAQ|Listing Rules IM-5101-4

Magnitude社に対するSEC取引停止とNASDAQ上場廃止決定

Magnitude社に対するSEC取引停止とNASDAQ上場廃止決定

Magnitude社の事例では、SECによる一時的な取引停止、NASDAQによる売買停止、上場廃止決定通知が、異なる時点で行われています。それぞれの措置を分けて把握することが重要です。

SNS上の勧誘を理由としたSEC取引停止

Magnitude International Ltd.は、シンガポールに本拠を置く企業です。SECは同社株式について、2025年12月5日から18日まで、一時的な取引停止を実施しました。

SECの公表資料は、身元不明の者がSNSを通じて投資家に株式の購入・保有・売却を推奨し、取引を記録したスクリーンショットの送信を求めていたことを説明しています。SECは、これらの推奨が株価と出来高を人為的に引き上げる目的を持つように見えるとして、相場操縦の可能性を取引停止の理由としました。

ここで公表されているのは、潜在的な相場操縦に関する懸念です。この資料から、同社自身が相場操縦を実行したと認定されたと読み取ることはできません。

SECの停止期間満了後もNASDAQの売買停止が継続

NASDAQは、SECによる停止期間が満了した後の2025年12月19日、同社に追加情報を求めていることを理由に売買停止を公表しました。

この経緯は、SECの停止期間が終われば当然にNASDAQで売買が再開されるとは限らないことを示しています。企業が取引再開の見通しを説明する際には、SECの措置と、取引所が別途維持する停止措置を分けて確認する必要があります。

参考:NASDAQ|Nasdaq Halts Magnitude International Ltd

8月3日付でIM-5101-4に基づく決定通知

同社がSECに提出した8月5日付公表資料によれば、NASDAQの上場資格審査部門は、2026年8月3日付でStaff Delisting Determinationを通知しました。これは、担当部門が当該証券を上場廃止とする旨を示す決定通知です。資料は、根拠としてIM-5101-4に基づく裁量的権限を明示しています。

同社はこの公表時点で、会社による不正行為を認める判断はNASDAQから伝えられていないと説明し、審査パネルへの審理請求を行う意向を示しました。ただし、これは会社側の説明であり、NASDAQが会社の無関与を積極的に認定したという意味ではありません。

また、同資料は、審理請求によって上場廃止等の措置が留保されても、既存の売買停止はNASDAQが解除するまで続くと説明しています。上場廃止手続を争うことと、株式を再び売買できることは別の問題です。

参考:SEC|Magnitude International Ltd Announces Receipt of Nasdaq Delisting Determination Notice

IM-5101-4の初期運用から分かること

Magnitude社については、8月の決定通知だけでなく、その後の開示も確認する必要があります。また、同社以外にも同規則に基づく決定通知が公表されており、単独の事例として捉えるのは適切ではありません。

9月の開示では上場廃止決定の審査が継続

Magnitude社は、9月16日に年次報告書Form 20-Fの提出遅延に関する追加の決定通知を受領しました。その後、9月17日に報告書を提出し、同日に提出義務への適合回復が確認されたと、9月18日付で公表しています。

しかし、その公表資料は、提出遅延の問題が解消しても、8月3日付のIM-5101-4に基づく決定には影響せず、別途、審査が継続していると明記しています。したがって、本件は「上場廃止決定通知が出された事例」として扱い、この開示を根拠に上場廃止の最終確定まで断定することは避けるべきです。

この経緯からは、複数の上場維持上の問題が並行する場合、一つの問題を解消しても他の問題まで解消するわけではないという実務上の注意点も読み取れます。

参考:SEC|Magnitude International Ltd Announces Subsequent Confirmation of Compliance with Nasdaq Periodic Filing Requirement

MaxsMaking社にも先行する決定通知

MaxsMaking Inc.のSEC提出資料にも、2026年7月17日付で、IM-5101-4に基づく上場廃止決定通知を受領したとの記載があります。同社についても、前年のSEC取引停止とNASDAQの売買停止に続いて、同規則が適用されています。

この資料により、Magnitude社を同規則の「最初の適用事例」と表現することは適切でないと分かります。また、新規則の導入前にSECの取引停止を受けた銘柄についても、導入後に上場廃止判断が行われている点に注意が必要です。ただし、これらの公表資料だけから、全ての停止銘柄が同様に扱われると一般化することはできません。

参考:SEC|MaxsMaking Inc. Form 6-K

NASDAQ上場後の予防法務──SNSと株主構成の管理

以下は、規則と公表事例を踏まえた実務上の対応案です。個々の監視方法が一律に義務付けられているという意味ではなく、照会や審査に対応できる記録を平時から整えることを目的とします。

SNS上の異常を会社の開示と照合する

SNSの監視では、社名や銘柄コードの投稿数に加え、利益を断定する勧誘、閉鎖的なグループへの誘導、売買の証拠画像の提出要求など、具体的な行動に着目することが考えられます。公開情報として把握できた投稿について、URL、確認日時、内容を保存し、株価・出来高の変動と照合できるようにします。

同時に、決算や契約締結などの公表時刻、IR資料の内容、会社が依頼した広告の配信期間を記録します。こうした記録があれば、市場の変動と会社の情報発信との関係について、推測と確認済みの事実を分けて説明しやすくなります。

不審な投稿を発見した場合の社内連絡先も、法務、IR、経営陣、米国側弁護士の間で決めておくと有用です。会社を装った発信への訂正や注意喚起は、確認できた事実を基に行い、未確認の相手方の関与や取引再開時期を断定しない運用が適切です。

株主数だけでなく流動性の実態を説明する

IM-5101-4の審査では、浮動株、株式の分布、取引状況などが考慮されます。浮動株とは、ここでは市場で一般投資家による取引に供される株式を指し、流動性とは、売買のしやすさを意味します。規則は、十分な浮動株や投資家層、取引需要があることを示す企業側の証拠も考慮するとしています。

参考:NASDAQ|Listing Rule IM-5101-4

実務上は、把握可能な大株主の状況、株式の売却を一定期間制限するロックアップの条件、制限解除の予定、直近の増資による株式数の変化などを継続的に整理することが考えられます。株主数が多くても、実際に市場へ出回る株式が限られていないかという観点が必要です。

名義上の保有者と実際の投資判断を行う者が異なる場合もあるため、完全な把握が難しい情報については、取得できた範囲と限界を明示します。売買停止後に資料を集め始めるよりも、平時の推移を残しておく方が、異常発生前後を比較しやすくなります。

この管理は、会社が株価や出来高を作り出すことを意味しません。検討の中心は、株主構成と資本政策の実態を把握し、根拠のある説明を可能にすることです。

NASDAQ上場審査とアドバイザー選定の関係

NASDAQ上場審査とアドバイザー選定の関係

初期適用事例は、上場準備段階での支援者選定にも示唆を与えます。ただし、新規上場を拒絶する審査と、既上場企業を上場廃止とする審査は、根拠となる規則を区別する必要があります。

IM-5101-3とIM-5101-4に共通する着眼点

新規上場の裁量的な拒絶を扱うIM-5101-3では、監査人、引受人、法律事務所、ブローカーなどのアドバイザーに関する事情が審査対象となります。既上場企業を対象とするIM-5101-4でも、アドバイザーの規制上の履歴や、懸念のある取引・大きな価格変動が生じた他の案件への関与などが考慮されます。

参考:SEC|SR-NASDAQ-2026-009・Amendment No.1

このため、SECの取引停止対象となった企業と共通するアドバイザーがいる場合、その過去の関与内容が審査上の検討材料となり得ます。ただし、同じ法律事務所等を利用しているという事実だけで、上場拒絶や上場廃止が自動的に決まる規則ではありません。また、確認した公表資料から、Magnitude社の決定が特定のアドバイザーとの関係を理由としたと断定することもできません。

選定理由と業務範囲を記録に残す

支援者の選定では、費用や上場支援件数に加え、過去の案件で問題が生じた際の担当業務、規制当局による指摘の有無、その後の改善内容などを確認する方法が考えられます。過去案件に関与していたことと、その問題に責任を負っていたことは分けて評価すべきです。

契約面では、紹介者や再委託先の利用、投資家向け広報の承認方法、照会を受けた場合の資料提供、業務記録の保存などを具体化します。会社が把握しない第三者に勧誘活動が広がっていないかを確認できる仕組みも有用です。

特に、引受業務とIR・株式の宣伝活動の担当が分かれている場合は、誰が何を承認し、会社に報告するのかを明確にします。適切な選定過程と継続的な管理を説明できることが、上場後の対応にも役立ちます。

NASDAQ上場廃止決定通知を受けた場合の初動

予防措置を講じていても、第三者の活動を完全に制御することはできません。通知を受けた場合に備え、審査対応と事業への影響確認を同時に進められる体制を整えておくことが重要です。

不服申立ての期限と必要資料を直ちに確認する

NASDAQのRule 5815は、担当部門の決定について審査パネルによる審理を求める手続を定めています。原則として、決定通知の日から7暦日以内に請求する仕組みであり、営業日ではない点に注意が必要です。通知を受けたら、適用規則、具体的な理由、申立期限、必要な費用や提出方法を直ちに確認します。

参考:NASDAQ|Listing Rule 5815

説明資料は、会社・関係者と問題の活動との関係、株式の分布や取引状況、会社の開示内容、実施済みの改善策を整理して作成します。抽象的な関与否定だけでなく、NASDAQが示した個別の懸念に対応する資料を準備することが実務上重要です。

売買停止が続く場合の事業上の影響を把握する

Magnitude社の公表資料が示すように、上場廃止を争っている間も売買停止が続く場合があります。そこで、資金調達の予定、上場維持や取引継続を条件とする契約条項、株式報酬制度などへの影響を確認します。これは個別契約の内容に応じた検討であり、停止によって当然に契約違反や期限の利益喪失が生じるという意味ではありません。

投資家向けの説明では、会社の事業継続、売買停止、上場廃止審査の状況をそれぞれ示します。事業が通常どおり継続していることを説明する場合にも、それを取引再開や上場維持の保証と受け取られる表現にしないことが重要です。

まとめ:新たなNASDAQ上場廃止決定については専門家に相談を

IM-5101-4に基づく裁量的な上場廃止判断は、Magnitude社やMaxsMaking社への決定通知という形で、実際の運用段階に入っています。ただし、決定通知、審査の継続、上場廃止の最終確定、売買停止の解除は、それぞれ区別して把握する必要があります。企業自身の不正が確認されていなくても、第三者の活動と市場の流動性に関する懸念が上場維持に影響し得ることが、この制度の重要な特徴です。日本企業の対応では、SNS上の異常を把握する体制、株主構成と資本政策の記録、アドバイザーの選定・管理を、上場準備から継続して整えることが有用です。問題が生じた場合には、米国側の専門家と連携して期限を管理し、自社の関与の有無と市場の健全性の双方について、資料に基づく説明を準備することが求められます。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。当事務所では、米国証券規制と日本の会社法の双方にまたがる資本政策の設計、上場維持リスクのマネジメント、コーポレート・アクションの実行支援について、経営陣の意思決定を支える助言を提供しています。NASDAQ上場支援については、下記記事をご参照ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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