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香港の薬機法・医療機器規制を弁護士が解説

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香港の薬機法・医療機器規制を弁護士が解説

香港(中華人民共和国香港特別行政区)は、1997年に中国へ返還された後も、「一国二制度」の下で中国本土とは異なる資本主義経済とコモンロー(英米法)の法体系を保っています。その土台となる基本法は外交と防衛を除く高度な自治を認めており、医薬品や医療機器の規制も、中国本土とは別の香港独自の法令で運用されています。

日本の薬機法に当たる香港の主要な法律は、「薬剤業及び毒薬条例(Pharmacy and Poisons Ordinance、Cap. 138)」です。「Cap.」は香港の条例に付く番号です。この条例は医薬品の登録、製造、輸入、販売を管理しており、日本で承認済みの医薬品でも、香港で販売するには改めて登録を受けなければなりません。医療機器については、2026年11月時点で医療機器全般を対象とする法定の登録制度が無く、衛生署(Department of Health)が任意の表列(登録)制度(MDACS)を運用しています。健康食品やサプリメントの効能表示は、「不良医薬広告条例(Undesirable Medical Advertisements Ordinance、Cap. 231)」で厳しく制限されています。

香港の医薬品登録は、日本のように国内の当局が承認の可否を一から判断する仕組みではなく、海外の参照規制当局(香港が審査の参考として認める海外の当局)の承認を要件とする仕組みが中心でした。現在は、新薬の登録に必要な海外の承認を2つから1つに減らした「1+」の仕組みが導入され、独自の審査を担う新たな機関の設立も準備されています。医療機器も法定化が予定されており、香港の薬事規制は転換期にあります。

本記事では、香港の医薬品の定義と登録制度、毒薬表による分類と販売・製造・輸出入の免許、未登録医薬品に対する刑事罰と判例、臨床試験、中成薬の規制、医療機器の任意の表列制度、健康食品の効能表示の規制を、日本法との違いを交えて取り上げます。あわせて、現地の販売代理店との契約、越境EC、広東省・香港・マカオからなる粤港澳大湾区への展開といった実務上の留意点も解説します。

香港の医薬品・医療機器規制の枠組み

中国本土とは別の香港の規制体系

香港は中華人民共和国の特別行政区ですが、医薬品や医療機器の規制は中国本土とは別の体系で運用されています。中国本土では国家薬品監督管理局(NMPA)が規制を統括していますが、香港では衛生署と、後述する薬剤業及び毒薬管理局などの法定機関が規制を担います。そのため、中国本土で医薬品の承認を得ていても、香港で販売するには香港の法令に従って改めて手続を取る必要があります。

香港の規制を担う機関

実務の中心は衛生署で、医薬品の登録審査、臨床試験の承認、市販後の安全監視、輸出入の管理などを担っています。衛生署の中では、薬物事務部(Drug Office)が西洋薬を、中医薬規管弁公室が中成薬(中国伝統医学に基づく生薬製剤)を、医療機器部(Medical Device Division)が医療機器をそれぞれ担当しています。

法的な決定権を持つのは、薬剤業及び毒薬条例に基づく法定機関である「薬剤業及び毒薬管理局(Pharmacy and Poisons Board)」です。医薬品の登録や製造業者・卸売業者の免許などの権限は管理局にあります。中国伝統医薬については、「中医薬条例(Chinese Medicine Ordinance、Cap. 549)」に基づく香港中医薬管理委員会(Chinese Medicine Council of Hong Kong)が、中医師の登録や中成薬の登録を管理しています。

参考:香港電子法例|Pharmacy and Poisons Ordinance(Cap. 138)

日本の薬機法とのアプローチの違い

日本の薬機法では、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査を経て厚生労働大臣が製造販売承認を与えます。これに対し香港では、海外の参照規制当局の承認を要件とする仕組みが中心で、衛生署のガイダンスが挙げる参照国には日本も含まれています。現在は、他の当局の承認に頼らない独自審査へと移り始めています。

香港の医薬品の定義と登録制度

薬剤業及び毒薬条例に基づく医薬品の定義と登録

薬剤業及び毒薬条例第2条第1項は、医薬品(pharmaceutical product)を次のように定義しています。人または動物の疾病を治療・予防する性質があると示される物質、または薬理学的・免疫学的・代謝的な作用で生理機能を回復・矯正・変更する目的や、医学的診断の目的で使われる物質です。2020年の改正(2021年8月1日施行)で、遺伝子治療製品、体細胞治療製品、組織工学製品からなる先進治療製品(advanced therapy product)もこの定義に含まれました。

この定義に当たる製品は、薬剤業及び毒薬管理局に登録されていない限り、販売、販売の申出、頒布、販売目的での所持などができません。根拠は、条例の下位規則である「薬剤業及び毒薬規例(Pharmacy and Poisons Regulations、Cap. 138A)」第36条第1項です。以下、この規則を「規例」と呼びます。

香港の承認審査と「1+」の仕組み

新しい化学成分・生物学的成分を含む医薬品(新薬)の登録には、従来、2つの参照規制当局の承認が必要とされてきました。香港政府は、新薬へのアクセスを早めるため、2023年11月1日から「1+」の仕組みを導入しました。生命に関わる疾患や重い疾患の新薬について、参照当局1つの承認に加え、香港の臨床データと香港の専門家の認定があれば登録を申請できるとするものです。2024年11月1日からは、対象がすべての新薬に広がり、ワクチンと先進治療製品も含まれました。

これにより、日本で厚生労働大臣の承認を受けた新薬を香港に導入する際、香港の臨床データなどの要件を満たせば、欧米の当局の承認を待たずに登録を申請できる場合があります。また香港政府は2026年6月、公立病院を運営する病院管理局が推薦する新薬(当初はがん治療薬)を優先審査し、最長150営業日の審査期間を約100営業日に短縮する見込みを示しました。

独自の審査を担う機関として、香港政府は「香港医療製品規制センター(Hong Kong Centre for Medical Products Regulation、CMPR)」を2026年末までに設立する予定で、2026年11月時点で設立の準備が進められています。他の当局の承認に頼らず臨床データに基づいて承認する「一次評価(primary evaluation)」は、2026年から段階的に始め、2030年に全面実施する計画です。

参考:香港政府新聞公報|”1+” mechanism extended to all new drugs(2024年10月25日)

参考:香港政府新聞公報|Centre for Medical Products Regulation(2025年6月26日)

参考:香港政府新聞公報|Office for Introducing Innovative Drugs and Medical Devices(2026年6月8日)

香港の登録の有効期間と登録名義人の責任

医薬品の登録証明書の有効期間は登録日から5年で、更新を受けることができます(規例第36条第5項・第7項)。登録を受けられるのは、香港の製造業者、輸入業者、海外製造業者の香港の支店・代理店などです。香港に拠点の無い日本の製造業者がそのまま登録名義人(Certificate Holder)になることはできないため、香港の代理店や輸入業者に名義を持たせるか、香港に子会社や支店を設けて自ら名義人となるのが一般的です。

登録名義人は、製品の品質と安全性について当局に対する責任を負い、製品回収(リコール)も登録名義人が実施します。代理店に名義を持たせる場合の契約上の注意点は、後述します。

香港の毒薬表による分類と販売・製造・輸出入の免許

香港の毒薬表による分類と販売・製造・輸出入の免許

毒薬表による分類と販売場所の規制

日本の薬機法は、医薬品を薬局医薬品(処方箋医薬品を含む)、要指導医薬品、一般用医薬品(第1類から第3類)に分けて販売を規制しています。香港では、規例の附表10に定められた「毒薬表(Poisons List)」に基づいて分類と販売の規制が行われます。ここでいう「毒薬」は、日本の薬機法上の毒薬とは異なり、販売の規制を受ける成分を広く指す用語です。分類ごとの販売の条件は次のとおりです。

香港における分類販売できる場所と条件
第1部毒薬のうち附表3に掲げるもの(処方箋が必要な成分)認可毒薬販売商(薬局)で、登録薬剤師の監督の下、医師・歯科医師・獣医師の処方箋に基づいてのみ販売できる
上記以外の第1部毒薬認可毒薬販売商(薬局)で、登録薬剤師が自ら、またはその在席・監督の下でのみ販売できる
第2部毒薬認可毒薬販売商または列載毒薬販売商(薬店)で販売できる
毒薬を含まない医薬品登録された医薬品であれば、一般の小売店で販売できる(抗生物質条例・危険薬物条例の対象を除く)

「認可毒薬販売商(Authorized Seller of Poisons)」は、毒薬の小売を許可された登録薬剤師や法人で、いわゆる薬局に当たります。「列載毒薬販売商(Listed Seller of Poisons)」は、第2部毒薬だけを販売できる薬店です(条例第21条・第26条)。日本では一般用医薬品の販売にも薬局開設許可や店舗販売業の許可が必要です。これに対し香港では、毒薬を含まない登録医薬品は一般の小売店でも販売できると薬物事務部が説明しています。ただし、仕入れに当たる輸入や卸売には、次に述べる免許と許可が必要です。

参考:薬物事務部|Frequently Asked Questions

製造業者・卸売業者の免許と輸出入の許可

香港で医薬品を製造するには製造業者の免許が必要で、免許の前提として、医薬品の製造管理と品質管理の基準(GMP)を満たすことが求められます。基準は国際的な査察の枠組みであるPIC/Sのもので、香港の薬剤業及び毒薬管理局は2016年1月にPIC/Sに加盟しています。医薬品を卸売する事業者にも卸売業者の免許が必要で、医薬品を輸入・輸出できるのは免許を受けた卸売業者または製造業者に限られます(条例第28A条)。

さらに、医薬品を輸入・輸出するたびに、「輸出入条例(Import and Export Ordinance、Cap. 60)」に基づく許可が必要です。許可は衛生署が発行するもので、日本の薬機法上の業許可とは別の、貿易管理の側面を持つ規制です。ペニシリンなどの抗生物質には抗生物質条例(Cap. 137)が、麻薬や向精神薬には危険薬物条例(Cap. 134)が、それぞれ追加で適用されます。

香港における未登録医薬品の刑事罰と判例

未登録医薬品に対する刑事罰

香港では、未登録の医薬品を販売したり、販売目的で所持したりすることは犯罪です。規例第36条第1項の違反には、条例第29条第2項と第34条により、第6級の罰金(10万香港ドル)と2年の拘禁刑が科され得ます。日本でも未承認医薬品の販売は刑事罰の対象ですが、処罰には原則として未承認であることの認識(故意)が必要です。これに対し香港では、未登録であることを知らず、相当の注意を払っても発見できなかったことを、被告人の側で証明しなければ責任を免れません(規例第36条第1C項)。

香港終審法院の判例

この点を示す判例として、香港の最上級審である終審法院のHin Lin Yee and Another v HKSAR事件(2010年3月26日判決、[2010] HKCFA 11)があります。医師である上訴人は、公衆衛生及び市政条例(Public Health and Municipal Services Ordinance、Cap. 132)第54条第1項の違反で有罪とされました。同項は、人の使用に適さない薬の販売などを禁じる規定です。あわせて、未登録医薬品を販売目的で所持したとして、規例第36条第1項の違反でも有罪とされました。

規例第36条第1C項は、製品が登録されていないことを知らず、相当の注意を払っても発見できなかったことを被告人が証明すれば、抗弁になると定めています。上訴人は仕入先を信頼していたと主張しました。しかし終審法院は、製品のラベルに登録番号が無く、衛生署や仕入先に問い合わせれば未登録だと分かったとして、この抗弁を認めませんでした。香港で医薬品を扱う事業者は、ラベルの登録番号の確認や衛生署への照会など、登録状況を自ら確かめる手順を社内に設けておく必要があります。

参考:HKLII|Hin Lin Yee and Another v HKSAR(2010 HKCFA 11)

香港の臨床試験の規制と先進治療製品

香港の臨床試験の規制と先進治療製品

臨床試験証明書と倫理委員会の承認

香港で人を対象とする臨床試験を行うには、規例第36B条に基づき、事前に薬剤業及び毒薬管理局から臨床試験証明書(Certificate for Clinical Trial/Medicinal Test)を取得しなければなりません。申請には、試験を実施する機関の倫理委員会の承認を示す書類も必要です(後日の提出も認められます)。

管理局のガイダンスによれば、申請の目標処理期間は45営業日で、管理局の委員会の審議を要する場合は60営業日です。申請者への照会中は期間の進行が止まる仕組みで、証明書の有効期間は5年以内とされています。

参考:薬剤業及び毒薬管理局|Guidance Notes on the Application for Certificate for Clinical Trial/Medicinal Test

先進治療製品の扱い

前述のとおり、先進治療製品は2021年8月から医薬品の定義に含まれており、臨床試験や販売には臨床試験証明書や登録が必要です。日本では細胞治療や遺伝子治療の製品は医薬品とは別の「再生医療等製品」として規制されますが、香港では医薬品の一種として扱われる点が異なります。

香港の中成薬の規制

中医薬条例と香港中医薬管理委員会の役割

香港では、西洋薬とは別に、中国伝統医薬の法制度が整備されています。日本の漢方製剤に相当する製品は、中医薬条例の下で規制されます。香港中医薬管理委員会の下に置かれた中薬組(Chinese Medicines Board。中薬を担当する部会)が、中成薬(proprietary Chinese medicines)の登録や、中薬の製造業者・卸売業者の免許を扱っています。

中成薬を香港で販売するには、安全性、品質、有効性を示す資料を提出して登録を受ける必要があります(中医薬条例第119条)。申請の窓口は衛生署の中医薬規管弁公室です。

日本の漢方製剤を香港で扱う際の留意点

日本企業が日本の漢方製剤を香港で販売する場合は、その製品が薬剤業及び毒薬条例の対象となる西洋薬か、中医薬条例の対象となる中成薬か、あるいは食品として扱われるのかを、成分と効能表示に基づいて検討しておく必要があります。香港当局は中成薬への西洋薬の成分(シルデナフィルなど)の混入を監視しており、混入が見つかった製品に回収を命じた例があります。

香港の医療機器規制の現状と法定化の動き

香港の医療機器規制の現状と法定化の動き

衛生署の任意の表列制度とリスク分類

日本では医療機器は薬機法の承認・認証・届出という法定の制度で規制されますが、香港には、2026年11月時点で医療機器全般を規制する法律がありません。

その代わりに、衛生署の医療機器部が2004年から「医療機器行政管理制度(Medical Device Administrative Control System、MDACS)」を運用しています。条件を満たした製品を当局の一覧に載せる、任意の表列(リスティング)制度です。MDACSは、一般の医療機器をリスクに応じてクラスI(低リスク)からクラスIV(高リスク)に、体外診断用医療機器をクラスAからクラスDに分けています。表列を申請できるのは、一般の医療機器ではクラスIIからIV、体外診断用医療機器ではクラスBからDの製品です。任意の制度なので、表列されていなくても輸入・販売はできます。ただし、香港政府の説明では、製品の性質によって薬剤業及び毒薬条例、消費品安全条例(Cap. 456)、商品説明条例(Cap. 362)などの既存の条例が適用されます。放射線を発する機器は放射線条例の対象となり、医療機器の広告にも不良医薬広告条例が適用されます。病院管理局や衛生署の調達では、表列された製品を優先する仕組みも設けられています。

参考:医療機器部|About Us

現地責任者の役割

MDACSに表列を申請できるのは、香港の製造業者か、海外の製造業者が指名した「現地責任者(Local Responsible Person、LRP)」です。LRPは、香港で設立された法人か、香港で事業登記をした個人・法人でなければなりません。LRPは単なる連絡窓口ではなく、苦情への対応、有害事象の報告、製品回収の管理、記録の保管といった市販後の義務を負います。

日本企業が香港に参入する際は、販売代理店をLRPに指名する方法と、香港に子会社を設けて自社でLRPとなる方法があります。代理店をLRPにする場合は、将来の代理店の変更に備え、表列情報の移転や市販後の責任の引継ぎについて、代理店契約に条項を設けておくことが紛争の予防につながります。

放射線機器に適用される条例と法定化の検討状況

医療機器全般を規制する法律はありませんが、X線装置などの照射装置や放射性物質を含む機器には、「放射線条例(Radiation Ordinance、Cap. 303)」に基づく放射線管理局(Radiation Board)の免許が必要です(同条例第7条)。

香港政府は、行政長官が毎年示す施政方針である2025年の施政報告で、医療機器の法定規制に関する立法の提案を2026年に示す方針を明らかにし、香港医療製品規制センターの設立に合わせて準備を進めています。2026年11月時点で、医療機器を規制する条例は成立していません。法定の制度が導入されれば、任意の表列制度で参入してきた事業者にも新たな義務が生じる可能性があるため、立法の動向を注視する必要があります。

参考:香港政府新聞公報|LCQ16: Marketing of medical and health products(2026年1月28日)

香港の健康食品の効能表示と不良医薬広告条例

不良医薬広告条例による疾患名の表示の禁止

健康食品やサプリメントを香港で販売する日本企業が特に注意すべきなのが、不良医薬広告条例です。同条例第3条第1項は、附表1に掲げる疾患(がん、心臓・心血管疾患、糖尿病を含む内分泌疾患など14項目)の治療・予防につながる広告や、附表2に掲げる目的(月経の誘発、性的能力の回復や不妊の治療、外科的な外見の変更など)の広告を禁止しています。日本でも、健康食品が疾病の治療・予防をうたえば薬機法の広告規制の対象になります。香港の特徴は、規制される疾患や目的を附表で具体的に列挙している点と、医薬品・食品だけでなく医療機器や治療の広告にも適用される点にあります。

健康食品は原則として公衆衛生及び市政条例の下で食品として規制されますが、成分や効能表示、用法・用量などによっては医薬品に当たり、登録が必要になることがあります。日本の特定保健用食品や機能性表示食品の表示であっても、血糖・血圧・コレステロールに関する文言は香港では制限の対象になり得ます。日本のパッケージの文言をそのまま使うと、広告規制の違反や未登録医薬品の販売に当たると判断されるおそれがあります。

経口摂取製品の効能表示の制限

2005年の改正条例により、第3B条と附表4が設けられ、2012年6月1日から施行されています。附表4は経口摂取製品の健康強調表示を6つの類型に分け、乳房のしこり、泌尿生殖器系、内分泌系に関する表示を全面的に禁止しています。血糖、血圧、血中脂質・コレステロールの調整に関する表示は、附表4が定める限られた文言(その値に関心のある人向けである旨や、値の安定に役立つ可能性がある旨など)に限って認められます。

さらに、薬剤業及び毒薬条例や中医薬条例の下で登録されていない製品がこれらの文言を使うときは、広告に次の免責文言を明記しなければなりません。製品が登録を受けておらず、表示は登録のための評価を受けておらず、疾病の診断・治療・予防を目的としない旨を、英語と中国語で示すものです。

「This product is not registered under the Pharmacy and Poisons Ordinance or the Chinese Medicine Ordinance. Any claim made for it has not been subject to evaluation for such registration. This product is not intended to diagnose, treat or prevent any disease.(此產品沒有根據《藥劑業及毒藥條例》或《中醫藥條例》註冊。為此產品作出的任何聲稱亦沒有為進行該等註冊而接受評核。此產品並不供作診斷、治療或預防任何疾病之用。)」

違反した場合、初回の有罪で第5級の罰金(5万香港ドル)と6か月の拘禁刑、同じ規定の2回目以降の違反で第6級の罰金(10万香港ドル)と1年の拘禁刑が科され得ます(第6条)。

参考:香港電子法例|Undesirable Medical Advertisements Ordinance(Cap. 231)

香港の広告規制の全体については、次の記事で解説しています。

日本企業が香港で事業を展開する際の実務上の留意点

香港の代理店契約における登録名義と責任の分担

香港では、医薬品・中成薬の登録名義人や医療機器のLRPとなる現地の事業者が、法令の遵守と製品管理の窓口になります。日本企業が香港の販売代理店にこれらの地位を委ねる場合、契約終了時の引継ぎが紛争の原因になりやすい点に注意が必要です。代理店契約では、名義の移転の条件、登録の維持費用の負担、登録に関するデータが日本企業に帰属することを定めます。あわせて、契約終了時に代理店が名義の変更や再登録に協力する義務と、製品回収が起きた場合の衛生署への報告、費用の負担割合、原因究明への協力も定めておくことが望まれます。

越境ECで香港の消費者に販売する場合

日本のECサイトから香港の消費者に医薬品や健康食品を直接販売する場合にも注意が必要です。旅行者が自己使用のために合理的な量の医薬品を携行する場合は輸入の許可が不要とされていますが、この例外は郵送による購入に当然に及ぶものではありません。事業として香港向けに医薬品を販売・発送すると、未登録医薬品の販売や無許可の輸入に当たるおそれがあります。取り扱う製品が毒薬表のどの区分に当たるか、香港で登録が必要な医薬品かどうかを、事前に確認しておくべきでしょう。

「港澳薬械通」を活用した大湾区への展開

香港政府は、広東省と連携して「港澳薬械通」と呼ばれる仕組みを推進しています。香港で登録され、臨床上緊急に必要な医薬品や、香港の公立病院で使われている医療機器を、粤港澳大湾区内の指定医療機関で、広東省当局の承認を得て使用できるようにするものです。2021年8月に広東省が規定を公布し、香港大学深圳医院で試行が始まりました。

日本企業にとっては、「1+」の仕組みを利用して日本で承認された新薬を香港で登録し、香港での使用実績を積むことで、大湾区の患者に製品を届ける道が開ける可能性があります。ただし、港澳薬械通は指定医療機関での使用を認める仕組みで、中国本土での販売には別途NMPAの承認が必要です。

参考:香港政府大湾区ウェブサイト|Mainland policies and measures(2021年8月25日)

まとめ

本記事では、香港の医薬品・医療機器規制を、日本法との違いを中心に解説しました。日本との大きな違いの一つは、海外の承認を要件とする医薬品の登録で、「1+」の仕組みにより緩和が進んでいます。医療機器では、全般を対象とする法定の登録制度が無く任意の表列制度が運用されていますが、法定化が予定されており、放射線条例や不良医薬広告条例などは医療機器にも適用されます。広告規制は、規制する疾患・目的を列挙し、経口摂取製品に許される表示の文言まで定めている点が特徴です。未登録医薬品の取扱いや不適切な効能表示は刑事罰の対象となるため、進出前の法務の確認と、現地代理店との契約の設計が欠かせません。

香港では、新たな規制機関の設立や医療機器の法定化など、薬事規制の見直しが続いています。当事務所では、香港をはじめとする海外での事業展開をご検討の日本企業の皆様に対し、登録名義人や現地責任者を誰に任せるかの検討、販売代理店との契約書の作成・確認、効能表示の確認などについてサポートいたします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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