デジタルタトゥーとは?法律リスクと企業・個人の対処法を弁護士が解説

過去の不適切な投稿や情報がネットに残り続け、就職や結婚といった人生の岐路で思わぬリスクに直面している企業や個人は少なくありません。
この記事を読めば、ご自身の状況が法的な権利侵害に該当するかを判断でき、専門家である弁護士への相談や削除請求といった具体的な対処へ踏み出すための知識を得られます。
この記事の目次
デジタルタトゥーとは?放置した場合の法律上のリスクは?
デジタルタトゥーとは、一度インターネット上に公開された情報が半永久的に残り続ける状態を、消すのが難しい入れ墨(タトゥー)に例えた言葉です。個人に関する情報だけでなく、企業に関するネガティブな情報も含まれます。
これらを放置すると、名誉毀損やプライバシー侵害といった法的な問題に発展するリスクがあり、社会生活を送る上で深刻な不安要素となり得ます。
デジタルタトゥーの危険性については「デジタルタトゥーとは?IT弁護士が危険性を解説」で詳しく紹介しています。
では、具体的にどのような情報がデジタルタトゥーとなり、どのような被害につながるのでしょうか。
一度インターネット上に拡散されると消えない?デジタルタトゥーの定義
デジタルタトゥーは、本人が削除したつもりの投稿や画像であっても、他者によるコピーやスクリーンショットによってネット上に拡散され、完全に消すことが極めて困難になる現象を指します。情報が瞬時に世界中に広まるインターネットの特性上、一度拡散したデジタルデータを完全に消去することは、技術的にほぼ不可能です。
そのため、情報が残り続けることで、長期間にわたり個人のプライバシーや企業の名誉を脅かし続けることになります。
逮捕歴やSNSの悪ふざけ投稿も含まれる?デジタルタトゥーの主な種類
デジタルタトゥーにはさまざまな種類が存在します。
具体的には、過去の逮捕歴や前科に関するニュース記事、いわゆる「バイトテロ」と呼ばれるようなSNSでの不適切な投稿、元交際相手などが私的な画像を公開するリベンジポルノなどが挙げられます。
NHKドラマ「デジタル・タトゥー」第4話のIT技術と法律については「NHK「デジタル・タトゥー」第4話のIT技術・法律」で詳しく紹介しています。
たとえ不起訴処分で終わった事件であっても、逮捕されたという事実だけが残り続けるケースは少なくありません。また、事実無根の嘘やデマ、特定の個人や企業を貶めるための誹謗中傷なども、一度拡散されると深刻なデジタルタトゥーとなり、犯罪行為として扱われる可能性があります。
就職や結婚にも影響?デジタルタトゥーがもたらす深刻な被害の実態
デジタルタトゥーがもたらす被害は深刻で、人生のさまざまな側面に影響を及ぼします。
例えば、就職活動において採用担当者が応募者の名前を検索し、過去の逮捕歴や不適切な投稿を発見した場合、採用が見送られるリスクが高まります。
過去の芸能活動情報の削除については「過去の芸能等活動の削除」で詳しく紹介しています。
また、結婚を考える際に相手やその家族に過去の情報を知られ、関係が悪化する問題も起こり得ます。
企業においても、商品に関する誹謗中傷や「ブラック企業」といった評判が拡散されると、売上の低下や人材採用の困難に直結するなど、経営上の大きなリスクとなります。
デジタルタトゥーを削除するにはどうすれば?法律に基づいた対処法とは?

デジタルタトゥーとなってしまった情報を消すには、法的な根拠に基づいた適切な対処が必要です。
個人で対応することも不可能ではありませんが、法的な知識や交渉のノウハウが求められるため、多くの場合は弁護士への相談が有効な手段となります。削除請求は、名誉権やプライバシー権といった人格権の侵害を根拠に行い、手続面では「情報流通プラットフォーム対処法」(旧プロバイダ責任制限法)が大きく関わります。一般的には、裁判外での削除依頼から裁判所での手続きへと段階的に進めます。
風評被害対策については「風評被害対策」で詳しく紹介しています。
これらの法的対処法を検討する上で、注意すべき点も存在します。
削除請求に関わる「情報流通プラットフォーム対処法」の概要
かつて「プロバイダ責任制限法」と呼ばれていた法律は、令和7年(2025年)4月1日に改正法が施行され、名称が「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(情報流通プラットフォーム対処法)に変わりました。
注意したいのは、この法律が削除を求める権利そのものを定めているわけではないという点です。投稿の削除を求める根拠は、あくまで名誉権やプライバシー権などの人格権です。この法律は、サイト管理者やサーバーの管理会社(プロバイダ)が投稿を削除した場合、あるいは削除しなかった場合に、どのようなときに損害賠償責任を負うのかを定めることで、プロバイダが削除の判断をしやすくする役割を果たしています。
さらに令和7年の改正では、利用者数が一定規模を超える大規模なプラットフォーム事業者を総務大臣が「大規模特定電気通信役務提供者」として指定し、削除対応の迅速化と運用状況の透明化を義務付けました。指定を受けた事業者は、削除申出の窓口を整備・公表すること、申出に対して原則7日以内に削除するかどうかを判断して申出者に通知すること、削除基準を策定・公表することなどが求められます。Google、LINEヤフー、Meta、TikTok、Xなどの事業者が指定されています。
ステップ1:サイト管理者やプラットフォーム事業者へ削除を申し出る
最初の対処法として、権利を侵害している情報が掲載されているウェブサイトの管理者や、利用されているサーバーの管理会社に対し、裁判外で削除(送信防止措置)を求めます。
多くのサイトでは削除依頼の問い合わせフォームが設置されており、そこから権利侵害の内容と理由を具体的に示して削除を依頼します。
大規模特定電気通信役務提供者に指定されたSNSや検索サービスであれば、法律に基づく削除申出の窓口が用意されており、原則として7日以内に対応結果の通知を受けられます。この段階で管理者が任意に削除に応じれば、迅速な解決が期待できます。
ただし、削除するかどうかは最終的に事業者の判断に委ねられるため、申出の内容によっては削除されないこともあります。
ステップ2:任意削除に応じない場合に裁判所へ「仮処分」を申し立てる
サイト管理者が任意の削除に応じない場合、次の手段として裁判所に対して投稿記事の削除を求める「仮処分」の申し立てを行います。
これは、通常の訴訟よりも短期間で判断が示される手続きで、権利侵害が続いている状況を早期に解消するためのものです。申し立てにあたっては、権利侵害があることと、早急に削除しなければならない必要性を、証拠に基づいて示す必要があります。裁判所が申し立てを認めれば、サイト管理者に対して投稿の削除を命じる決定が出されます。
この決定には法的な強制力があり、実務上は多くの事業者が決定に従って削除に応じています。
ウェブサイトそのものの削除が難しい場合の選択肢「検索結果からの削除請求」
サイト管理者が特定できない場合や、任意の削除に応じない場合など、ウェブサイトそのものの削除が難しいケースがあります。そのような場合の対処法として、GoogleやYahoo!といった検索エンジン運営会社に対して、検索結果から該当ページを除外するよう求める方法があります。
もっとも、検索結果の削除については、平成29年(2017年)1月31日の最高裁判所決定により、その事実を公表されない法的利益が、検索結果を提供する理由に優越することが明らかな場合に削除が認められるという基準が示されており、ハードルは低くありません。
検索結果から除外されれば、問題のページ自体は残っていても、他人の目に触れる機会を大幅に減らすことが可能です。
逮捕歴や炎上投稿は消せる?情報の種類別にみる削除できる可能性の目安
デジタルタトゥーを消すことができるかどうかは、情報の種類や内容によって判断が異なります。例えば、逮捕歴に関する情報でも、その後に不起訴処分となった場合や、事件から相当な時間が経過して公共の利害との関連性が薄れた場合は、プライバシー侵害を理由に削除できる可能性が高まります。
令和4年(2022年)6月24日の最高裁判所判決は、旧Twitter(現X)上の逮捕歴に関する投稿について、その事実を公表されない法的利益が投稿を公表し続ける理由に優越する場合には削除を求めることができると判断しました。検索結果の削除で求められる「明らか」という要件が付されなかったため、SNS上の投稿については削除が認められやすくなったと考えられています。
逮捕記事・前科情報の削除については「逮捕記事・前科情報の削除は令和4年最高裁判決で容易になった?」で詳しく紹介しています。
一方で、公共性の高い事件の前科に関する情報や、表現の自由の範囲内と判断される意見などは、削除が難しいケースもあります。
個別の事案ごとに法的判断が必要となるため、専門家への相談が不可欠です。
デジタルタトゥーの削除でよくある失敗とは?依頼前の注意点は?
デジタルタトゥーの削除を試みる際には、いくつかの注意点が存在します。知識がないまま個人で行動すると、かえって事態を悪化させる危険性があるためです。
また、削除を代行する業者の中には違法なものが存在するだめ、依頼先を慎重に選ぶ必要があります。これらの失敗を避け、適切に対処するためには、事前にリスクや注意点を理解しておくことが重要です。
特に企業の場合、デジタルタトゥーは経営に深刻な影響を及ぼすため、事前の対策が不可欠です。
個人での安易な削除依頼が「再炎上」を招く危険性
法的な知識がないまま個人でサイト管理者へ削除依頼を行うと、その行為自体が相手を刺激し、被害がさらに拡大する「再炎上」のリスクがあります。
例えば、感情的な要求や不適切な主張は、削除依頼の内容をネット上で晒される原因となり得ます。
一度再炎上が起きると、情報がさらに広範囲に拡散され、収拾がつかなくなる危険性も高まります。
こうした二次被害を避けるためにも、慎重な対応が求められます。
法律違反のリスクも?「非弁行為」にあたる違法な削除代行業者
報酬を得る目的で、本人に代わって削除請求などの法律事務を行うことは、弁護士法第72条で禁止されている「非弁行為」という犯罪にあたります。弁護士資格を持たない削除代行業者に依頼することは、この違法行為に加担するリスクを伴います。
近年、違法業者からの請求を問題視し、その依頼内容を公開するサイトも現れており、かえって被害を拡大させることにもなりかねません。
デジタルタトゥーの削除を依頼できるのは、法律上、被害者本人か弁護士のみである点に注意が必要です。
なぜITに強い弁護士を選ぶべきなのか?技術的知見の重要性
デジタルタトゥーの問題は、法律知識だけでなく、インターネット技術への深い理解が不可欠です。
特に、海外サーバーを利用したサイトや、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)によって運営者の情報が隠されているケースでは、技術的な知見がなければ有効な対策を講じることが困難ですめです。ITエンジニアとしての経歴を持つなど、技術に精通した弁護士であれば、システムの仕組みを理解した上で最適な法的アプローチを選択できます。
そのため、複雑な事案を解決するためには、ITに強い弁護士への相談が極めて重要になります。
企業が取るべきデジタルタトゥー対策とは?風評被害への備えは?

企業にとってデジタルタトゥーは、経営の根幹を揺るがしかねない重大なリスクです。
悪意のある口コミやデマ、従業員の不祥事などがインターネット上に残存すると、ブランドイメージの低下や経済的な損失に直結します。そのため、問題が発生した後の対処だけでなく、日頃からリスクを予防する体制を構築することが不可欠です。
具体的には、風評被害の監視体制の整備や、従業員への教育などが求められます。実際に、適切な対策によってデジタルタトゥーの問題を解決した事例も存在します。
売上低下や採用難に直結する企業への深刻な風評被害
企業に関するデジタルタトゥーは、深刻な風評被害を引き起こします。
例えば、「ブラック企業」「商品に欠陥がある」といった根拠のない噂が拡散されると、顧客離れによる売上低下や、金融機関からの信用低下を招くリスクがあります。
また、採用活動においても、応募者が企業名を検索した際にネガティブな情報を見つければ、応募をためらう要因となり、優秀な人材の確保が困難になるなど、事業運営に直接的な影響を及ぼします。
従業員の不祥事を防ぐためのSNS利用ガイドライン策定のポイント
企業のデジタルタトゥー対策において、従業員による不祥事を未然に防ぐ予防策は極めて重要です。その一つとして、SNSの私的利用に関する明確なガイドラインを策定し、全従業員に周知徹底することが挙げられます。
ガイドラインには、業務上の秘密情報や顧客の個人情報を投稿しないこと、会社の名誉を傷つけるような発言を慎むことなどを具体的に盛り込みます。
定期的な研修を実施し、従業員一人ひとりがスマホの利用に伴うリスクを正しく理解する機会を設けることも効果的です。
【事例】風評被害対策で過去のデジタルタトゥーを乗り越えたケース
例えば、過去にメディアで報じられた写真が、本人の与り知らないところでデジタルタトゥーとして残り、結婚を前に大きな障害となったケースがあります。
相談者は、かなり昔に面白半分で撮影された写真がインターネット上に拡散され続けていることを発見し、将来のパートナーやその家族に知られることを深く憂慮していました。専門家が調査したところ、複数の掲示板やまとめサイトに画像が転載されていることが判明。法的手続きとIT技術を駆使し、拡散された情報を一つずつ特定して削除請求を行うことで、すべてのデジタルタトゥーを消すことに成功し、その後、無事に結婚生活を送ることができました。
デジタルタトゥーと法律に関するよくある疑問
デジタルタトゥーの問題に直面した際、多くの方が費用面や法的な対抗措置、そして自身の権利について具体的な不安や疑問を抱くことでしょう。
特に、弁護士への相談を検討する段階では、どの程度の費用がかかるのか、投稿者を特定して責任を追及できるのかといった点は、次の一歩を踏み出す上で重要な情報です。ここでは、そうした法律に関するよくある疑問について解説します。
デジタルタトゥーの削除を弁護士に依頼する場合、費用はどのくらいかかりますか?
弁護士費用は依頼内容によって異なります。サイト管理者との裁判外での交渉による削除の場合、着手金が不要な完全成果報酬制で、1ページあたり10万円前後が目安です。
裁判所を通じた仮処分手続きを行う場合は、30万円程度の着手金が必要になることが一般的です。
依頼する法律事務所や事案の難易度によって費用は変動するため、相談の際に詳細な見積もりを確認することが重要です。
デジタルタトゥーの原因となった投稿者を特定し、法的に訴えることはできますか?
はい、可能です。
「発信者情報開示請求」という法的手続きを利用して、匿名の投稿者を特定できます。特定後、その投稿者に対して名誉毀損などを理由に損害賠償(慰謝料)を請求する民事裁判を提起したり、悪質なケースでは刑事告訴をしたりすることもできます。
誹謗中傷等の投稿者特定については「誹謗中傷等の投稿者特定」で詳しく紹介しています。
ただし、手続きが複雑なため、弁護士への相談が不可欠です。
デジタルタトゥーと「忘れられる権利」は法律でどう関係しますか?
「忘れられる権利」とは、個人のプライバシーに関わる過去の情報を、インターネット上から削除するよう要求する権利を指します。
日本ではまだ法律で明確に定められていませんが、最高裁判所の判例では、プライバシー権の一環として認められる傾向にあります。特に、逮捕報道などの検索結果の削除を求める裁判において、この権利が重要な争点となります。
忘れられる権利とGoogle Spain判決・GDPRの関係については「EUの「忘れられる権利」とGoogle Spain判決・GDPRの関係」で詳しく紹介しています。
まとめ:消えないデジタルタトゥーの悩みは法律の専門家である弁護士に相談を
デジタルタトゥーは、個人での対処が難しく、安易な行動は再炎上などのリスクを伴います。また、違法な代行業者も存在するため、依頼先の選定には注意が必要です。
権利侵害の有無を法的に判断し、サイト管理者との交渉や裁判手続きを適切に進めるためには、専門的な知識が不可欠です。深刻な不安を抱え続ける前に、まずはデジタルタトゥー問題の経験豊富な弁護士に相談し、最適な対処法を見つけることが解決への第一歩となります。
法律とIT技術を駆使する風評被害対策・デジタルタトゥー削除サービス
モノリス法律事務所は、インターネット上に刻まれた誹謗中傷や個人情報といった「デジタルタトゥー」の問題に対し、まだ社会的な認知が十分でなかった時代から警鐘を鳴らし続けてきました。代表弁護士がITエンジニア出身である強みを活かし、「法律」と「ITテクノロジー」を融合させたアプローチで、一般的には困難とされる高度な削除請求や発信者特定を実現します。
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カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務



































