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薬機法改正2026をわかりやすく解説|登録販売者の常駐と指定8成分

令和8年(2026年)5月の薬機法改正で何が変わる?市販薬の規制強化について解説

令和8年(2026年)5月1日、市販薬の販売ルールが変わりました。省令上の区分だった「濫用等のおそれのある医薬品」は、法律に根拠を持つ「指定濫用防止医薬品」へ改められ、対象の成分も6つから8つに広がっています。

現場でいちばん戸惑いが大きいのは陳列です。情報提供設備とは、医薬品の説明や相談を受けるために店舗が設けたカウンターなどの設備です。ここから7メートル以内に陳列する方法を選ぶと、その設備に薬剤師または登録販売者を継続的に配置しなければなりません。登録販売者は、薬剤師でなくても第2類・第3類の一般用医薬品を販売できる資格者です。レジに資格者が張り付くことになった店舗が多く、登録販売者の常駐が義務になったのかという問い合わせが増えています。しかし、常駐そのものを命じる条文は置かれていません。

この記事では、令和8年5月1日に施行された内容と令和9年以降に施行される内容を分けたうえで、指定8成分、確認事項と数量の上限、陳列方法の選択、そして違反した場合に何が起きるのかを、条文と告示にもとづいて整理します。

薬機法改正2026で何が変わったのか

根拠となるのは令和7年(2025年)5月21日に公布された令和7年法律第37号です。この改正法は一度にすべてが動き出すのではなく、附則1条で施行日が区分されています。市販薬の販売実務に効くのは令和8年5月1日に施行された部分で、薬剤師が常駐しない店舗に関する仕組みはまだ動いていません。

この記事では、国会が定める法律、内閣が定める政令、厚生労働省が定める省令(薬機法施行規則)、省令のもとで成分や数量を具体的に示す告示を区別して書きます。附則は法律の末尾に置かれ、施行日などを定める部分です。今回の改正では、これまで省令で定められていた販売時のルールが法律本体に書き込まれました。

▼ 改正法の施行時期の区分

施行時期主な内容
令和8年5月1日指定濫用防止医薬品に関する情報提供と確認、販売数量と年齢の制限、陳列の規制/要指導医薬品のオンライン服薬指導とインターネット販売、特定要指導医薬品の新設
令和9年5月20日薬剤師等が常駐しない店舗での一般用医薬品の受渡し(登録受渡店舗)/薬局開設者の責務、健康増進支援薬局の認定、薬局医薬品の販売に従事する者に関する事項

参考:厚生労働省|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の公布について

薬機法改正2026で何が変わったのか

令和8年5月1日に施行された内容

この日に動き出したのは、指定濫用防止医薬品に関する規定と、要指導医薬品の販売方法に関する規定です。従来は省令に基づく遵守事項として運用されていた販売時の確認や数量の制限が、法律そのものの義務に格上げされました。根拠が省令から法律に移ったことで、義務の内容と名宛人が条文上明確になり、薬機法36条の11第4項の販売禁止のような新たな義務も加わりました。違反の有無を条文で直接判断できるようになった点が、実務上の変化です。

陳列についても、薬機法57条の2第4項が新たに置かれ、指定濫用防止医薬品は適正な使用を確保するように陳列しなければならないことになりました。具体的な方法は施行規則で定められています。

要指導医薬品のオンライン販売と特定要指導医薬品の新設

要指導医薬品はこれまで店舗での対面販売に限られていましたが、薬剤師がオンライン服薬指導を行ったうえでのインターネット販売ができるようになりました。同時に、対面による販売が特に必要なものを厚生労働大臣が指定する「特定要指導医薬品」の区分が設けられ、こちらは引き続き対面での販売に限られます。

オンライン服薬指導の手順や、どの品目が特定要指導医薬品にあたるのかは、下記の記事で解説しています。

令和9年5月までに施行される内容

薬剤師や登録販売者が常駐しない店舗で一般用医薬品を受け渡す仕組み(登録受渡店舗)は、改正法29条の5以下に新設されました。制度の中身は後の章で扱い、ここでは施行時期だけを押さえます。

ただし、この部分は附則1条3号の区分に入っており、令和9年5月20日から施行されます。令和8年5月1日の時点では動いていません。なお、附則には施行日前でも登録の申請ができる旨の定めが置かれており、登録の効力は施行日に生じることとされています。準備を先に進めることはできる建て付けです。

参考:e-Gov法令検索|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和8年政令第209号)

指定濫用防止医薬品とは何か

指定濫用防止医薬品とは何か

指定濫用防止医薬品とは、濫用した場合に中枢神経系の興奮や抑制、幻覚を生じるおそれがあり、その防止を図る必要があるものとして厚生労働大臣が指定した医薬品です。薬機法36条の11第1項が定義しており、薬事審議会の意見を聴いたうえで告示で成分が指定されます。

対象になるのは薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品です。医療用医薬品は含まれません。

市販薬は、要指導医薬品と一般用医薬品に大別されます(薬機法4条5項3号・4号)。要指導医薬品は薬剤師による対面等での情報提供と指導が必要な区分で、一般用医薬品はリスクの程度で第1類から第3類に分かれます。第1類医薬品を販売できるのは薬剤師だけで、第2類・第3類医薬品は登録販売者でも販売できます(36条の9)。指定濫用防止医薬品はこれらの区分を横断して成分ごとに指定されるもので、どの区分に属していても、指定成分を含む内服薬であれば対象になります。

濫用等のおそれのある医薬品から変わった点

名称が変わっただけではありません。旧区分は省令に基づく薬局開設者等の遵守事項として置かれていましたが、改正後は法律の条文そのものが薬局開設者、店舗販売業者、配置販売業者に義務を課しています。薬機法36条の11の1項が情報提供、2項が購入者の状況の確認、3項が数量と年齢の制限です。

さらに4項が置かれました。情報提供ができない場合など、適正な使用を確保できないと認められる場合には、販売や授与をしてはならないとされています。断ることが現場の判断ではなく法律上の義務になった点が、旧区分との最も大きな違いです。

対象となる8成分と外用剤の扱い

告示で指定されたのは次の8成分です。新たに加わったのはジフェンヒドラミンとデキストロメトルファンの2成分で、従来の6成分と合わせて8成分になりました。いずれも「ただし、外用剤を除く」とされており、規制がかかるのは飲み薬です。点眼剤や坐剤、軟膏剤、貼付剤は対象から外れています。

あわせて、1回に販売できる数量の上限も告示で決まりました。上限は成分ごとに違います。基本は5日分ですが、かぜ薬など特定の効能を持つ製剤に限って7日分まで認められる成分があり、どの効能で7日分になるかも成分ごとに異なります。エフェドリンとコデインは効能を問わず5日分です。

▼ 指定8成分と1包装あたりの数量の上限

成分数量の上限
エフェドリン5日分
コデイン5日分
ジヒドロコデイン5日分。かぜ薬の効能を有すると認められる製剤は7日分
ジフェンヒドラミン5日分。かぜ薬の効能を有すると認められる製剤は7日分
デキストロメトルファン5日分。かぜ薬の効能を有すると認められる製剤は7日分
プソイドエフェドリン5日分。かぜ薬または鼻炎用内服薬の効能を有すると認められる製剤は7日分
ブロモバレリル尿素5日分。解熱鎮痛薬の効能を有すると認められる製剤は7日分
メチルエフェドリン5日分。かぜ薬または鼻炎用内服薬の効能を有すると認められる製剤は7日分

参考:厚生労働省|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第三十六条の十一第一項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する医薬品

参考:厚生労働省|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第百五十九条の十八の六第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める数量

薬機法そのものの成り立ちや規制の全体像は、下記の記事で解説しています。

指定濫用防止医薬品の販売で確認する事項と数量の上限

販売のたびに必要になるのは、書面を用いた情報提供と、その前提となる確認です。情報提供は情報提供設備のある場所で、購入しようとする者の状況に応じて個別に行い、内容を理解したことと質問の有無まで確認させなければなりません。

販売前に確認しなければならない事項

第2類医薬品と第3類医薬品の指定濫用防止医薬品では、確認すべき事項が施行規則に列挙されています。

▼ 販売前に確認する事項(施行規則159条の18の5)

根拠確認する事項補足
159条の18の5第4項年齢第2類・第3類では確認が必要
同第4項他の薬剤または医薬品の使用の状況同上
同第1項1号購入しようとする者の氏名18歳未満の場合
同第1項2号当該医薬品とそれ以外の指定濫用防止医薬品の購入または譲受けの状況自店に限らず他店での購入を含む
同第1項3号上限を超えて購入しようとする理由上限を超える場合
同第1項4号適正な使用を目的とする購入であることを確認するために必要な事項
同第1項5号そのほか、情報提供に必要な事項

購入の状況は自店に限りません。他店での購入状況まで確認の対象に入っているため、同じ人が店舗を変えて買い集めることを想定した聞き取りが求められます。

18歳未満への販売と数量の上限

36条の11第3項の本文は、上限を超える数量の販売と、18歳未満への販売を禁じています。年齢を18歳と定めているのは施行規則159条の18の6第2項です。

もっとも、この禁止には例外が2つあります。1つは、相手が薬剤師等である場合です。もう1つは、18歳以上の者や、上限の範囲内で購入しようとする18歳未満の者などに対して、薬剤師または登録販売者が対面等により情報提供を行う場合です。18歳未満を含める部分は施行規則159条の18の6第3項が定めています。ここでいう対面等とは、対面のほか、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話する方法など、適正な使用を確保できる方法として省令で定めるものをいいます(薬機法4条5項3号)。メールやチャットだけの方法は含まれません。18歳未満でも、上限内の1包装であれば、対面等により情報提供を行ったうえで販売できます。

年齢や購入状況の確認方法について、施行規則は確認すべき事項を列挙するにとどまります。確認の方法までは定めていません。店頭では購入者の申告をもとに薬剤師または登録販売者が確認することになり、その手順は後述する指定濫用防止医薬品販売等手順書に定める事項です。インターネット販売については、厚生労働省の質疑応答集(令和8年1月30日事務連絡)の問6が、自己申告によらない客観的な確認が重要だとしています。例として、身分証のアップロード、マイナンバーカードによる年齢認証、通信事業者の契約情報に基づく認証が挙げられています。決済手段をクレジットカードに限定して年齢を確認する方法も可能とされています。ただし、18歳未満でも入手できるプリペイドカードで決済できないかを確かめる必要があります(問7)。

18歳以上の者が上限内の1包装を購入する場合には対面等は求められませんが、1項の情報提供と2項の確認は販売方法を問わず必要です。

▼ 年齢と数量による販売方法の違い

購入しようとする者数量販売の方法
18歳未満上限の範囲内の1包装対面等により情報提供を行ったうえで販売できる
18歳未満上限を超える数量、複数個販売できない
18歳以上上限の範囲内の1包装対面等は求められないが、確認と情報提供は必要(インターネット販売でも省略できない)
18歳以上上限を超える数量、複数個理由を確認し、対面等により情報提供を行ったうえで販売できる
指定濫用防止医薬品の販売で確認する事項と数量の上限

陳列方法として認められる2つの方法

陳列の方法は施行規則218条の5に定められています。対象は第2類医薬品または第3類医薬品にあたる指定濫用防止医薬品で、第1類医薬品はもともと別の陳列規制がかかります。

▼ 指定濫用防止医薬品の陳列方法

条文陳列の方法薬剤師または登録販売者の継続的な配置
218条の5第1号指定濫用防止医薬品陳列区画の内部の陳列設備に陳列する。鍵をかけた陳列設備や、購入者が直接手を触れられない陳列設備に陳列する場合は区画の内部でなくてもよい求められない
218条の5第2号情報を提供するための設備から7メートル以内の範囲に陳列する当該設備に継続的に配置することが必要

どちらの方法を採るかは、それぞれの要件を満たすことを前提に店舗が選べます。1号の指定濫用防止医薬品陳列区画は薬局等構造設備規則で要件が定められている区画であり、店舗の一角を区画と称するだけでは足りません。7メートル以内に陳列する方法を選んだときにだけ、資格者を情報提供設備に継続的に配置する必要が生じます。レジに人を張り付けなければならないかどうかは、この選択の結果として決まります。

指定濫用防止医薬品陳列区画とは、指定濫用防止医薬品を陳列する陳列設備から1.2メートル以内の範囲をいいます(薬局等構造設備規則1条1項13号ロ。店舗販売業の店舗は2条12号)。1号の陳列として認められるには、この範囲に購入者が進入できないようにする措置が必要です。鍵をかけた陳列設備や、購入者が直接手を触れられない陳列設備に陳列する方法でもかまいません。あわせて、指定濫用防止医薬品を販売しない時間帯がある店舗では、区画を閉鎖できる構造にしておくことが求められます(同号ハ)。

▼ 陳列方法を選ぶときの目安

店舗の状況現実的な選択
資格者が常時1名で、情報提供設備と売場が離れている1号(区画の内部、施錠、空箱陳列)が現実的。2号を選ぶと、その資格者が情報提供設備を離れにくくなる
資格者が複数いて、情報提供設備から7メートル以内に売場を置ける2号も選べる。短時間の離席への対応を手順書に定めておく
指定濫用防止医薬品を販売しない時間帯がある1号を選ぶ場合、区画を閉鎖できる構造にしておく

薬機法改正2026で登録販売者に常駐義務は生じたのか

結論から書くと、改正薬機法に登録販売者を常駐させなければならないと定めた規定は置かれていません。現場で資格者が売場に張り付くことになったのは、前章で見た陳列方法のうち7メートル以内に陳列する方法を選んだ結果です。

常駐を直接義務づける規定は置かれていない

施行規則218条の5第2号が使っている言葉は「継続的に配置すること」です。配置する先も店舗全体ではなく、情報を提供するための設備です。義務が生じるのは2号の陳列方法を選んだ店舗だけで、1号を選べばこの配置は求められません。

店舗管理者を置く義務は改正前からある別の規定であり、今回の改正で新設されたものではありません。常駐義務が新たにできたという理解は、この2つを混ぜてしまったものと考えられます。

空箱陳列なら情報提供設備への継続的な配置は求められない

質疑応答集の問4は、空箱や商品カードを使った陳列について明確に答えています。空箱を購入者が手に取れる場所に置き、医薬品の実物は購入者の手が届かない場所に陳列していれば、218条の5第1号に適合する陳列と解されています。この場合、2号の継続的な配置は法令上求められません。適合しているかどうかは、空箱が置かれた場所ではなく実物が置かれた場所で判断されます。

7メートル以内に陳列する方法を選んだ場合の運用についても、質疑応答集の問3と問5に答えがあります。飲水やトイレ休憩などの短時間であれば、離席中の対応とその手順をあらかじめ指定濫用防止医薬品販売等手順書に定めておきます。その手順に沿って対応することで、陳列場所を閉鎖せずに離席できるという整理です。離席中に無資格者が販売できるわけではありません。柱や高い棚で死角ができる場合は、ミラーの設置などで視認性を確保する対応が示されました。ただし、購入者が完全に隠れてしまう裏側への陳列は避けることとされています。

なお、空箱陳列で不要になるのは2号の継続的な配置だけです。販売そのものは薬剤師または登録販売者が情報提供と確認を行ったうえで進める必要があり、資格者が不在の時間帯に指定濫用防止医薬品を販売できない点も変わっていません。

参考:厚生労働省|指定濫用防止医薬品の販売等に係る質疑応答集(Q&A)について

薬機法改正2026で登録販売者に常駐義務は生じたのか

令和9年までに施行される登録受渡店舗

常駐に関しては、これから逆方向の変化が控えています。薬剤師や登録販売者が常駐しない店舗でも、遠隔での管理のもとで一般用医薬品を受け渡せる仕組みが、改正法29条の5以下に新設されました。受渡しを行う店舗は都道府県知事の登録を受け、受渡しを委託する薬局開設者や店舗販売業者には、その店舗における受渡しの管理を行わせることが求められます。

この部分の施行日は令和9年5月20日で、まだ動いていません。登録受渡店舗の話を令和8年5月の改正内容として説明している情報を見かけますが、その部分はまだ施行されていません。附則1条3号の規定が動いていない以上、薬剤師等が常駐しない店舗での一般用医薬品の販売は現時点ではできません。施行日前でも登録の申請自体は可能とされているため、多店舗展開を予定している事業者は、政令の内容を確かめながら準備を進めることになります。

薬機法改正2026に違反した場合の行政処分と手順書の整備

36条の11の各項に違反したこと自体を処罰する規定は、薬機法の罰則には置かれていません。もっとも、指定濫用防止医薬品の規制全体に刑事罰がないという意味ではなく、実務でまず効いてくるのが行政処分だという整理です。都道府県知事は、報告を求め、または立入検査を行います。そのうえで、法令違反があり、保健衛生上の危害の発生や拡大を防ぐ必要があると認めるときは、業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命じることができます。

この命令に違反した場合には罰則が定められており、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科とされています。法人の従業者が業務に関して違反したときは、行為者を罰するほか法人にも罰金刑が科されます。さらに、法令違反があったときは、許可の取消しや期間を定めた業務の全部または一部の停止を命じることもできます。これは裁量処分であり、違反があれば自動的に取消しになるものではありません。

▼ 義務違反があった場合に想定される流れ

段階根拠内容
報告徴収・立入検査薬機法69条2項都道府県知事が報告を求め、または職員に立入検査をさせる
業務運営の改善命令薬機法72条の4第1項法令違反があり、保健衛生上の危害の発生または拡大を防止する必要があると認めるとき
命令違反に対する罰則薬機法86条1項21号、90条2号1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金またはその併科。法人にも罰金刑
許可の取消し、業務停止薬機法75条1項この法律その他薬事に関する法令で政令で定めるもの、またはこれらに基づく処分に違反する行為があったとき

薬機法違反で実際に行われた行政処分の例は、下記の記事でまとめています。

義務を負うのは薬局開設者と店舗販売業者

36条の11が義務を課している相手は、薬局開設者、店舗販売業者、配置販売業者です。条文は、これらの者が薬剤師または登録販売者に情報を提供させ、確認させなければならないという書き方をしています。許可の取消しや業務停止の対象になるのも、許可を受けた開設者や販売業者です。

登録販売者個人が36条の11違反を理由に薬機法上の処分を直接受ける建て付けにはなっていません。ただし、薬剤師は薬剤師法上の処分、登録販売者は販売従事登録の消除、店舗管理者は変更命令の対象となる場面があります。もっとも、手順書に反した対応をしたことが雇用契約上の問題になる場面は考えられます。店舗としては、個人の判断に委ねるのではなく、誰が対応しても同じ結論になる手順を用意しておくことが求められると解されます。

指定濫用防止医薬品販売等手順書に定める手順

施行規則159条の18の7は、指定濫用防止医薬品を販売する場合に「指定濫用防止医薬品販売等手順書」を作成しなければならないと定めています。記載すべき手順は次の5つです。

▼ 指定濫用防止医薬品販売等手順書の記載事項(施行規則159条の18の7第1項)

号記載する手順手順書に書く内容の例
1号販売または授与の方法店頭販売とインターネット販売それぞれの流れ、誰が対応するか
2号情報提供と確認確認する7つの事項の聞き方、書面(フリップなど)に載せる情報提供の内容
3号陳列選んだ陳列方法(1号か2号か)と、2号を選んだ場合の短時間の離席時の対応
4号上限を超える購入や、上限内でも頻繁な購入で適正な使用を確保できないと認められる場合の対応理由の確認のしかた、販売を断るときの説明、相談窓口の案内
5号そのほか適正な販売に必要な事項年齢確認の方法、確認した内容の記録の様式、従業員への周知と研修

同条2項は、薬剤師または登録販売者にこの手順書に基づいて業務を行わせることまで求めています。作って備え置くだけでは足りず、現場が手順どおりに動いている状態を作ることが義務の内容です。前章で見た短時間の離席への対応も、この手順書に定めておくことが前提になります。研修の記録や、レジ端末での注意喚起の設定も、手順どおりに運用していたことを示す材料になります。

▼ 法令上の義務と、自社を守るための任意の対応

区分内容
法令上の義務手順書の作成(施行規則159条の18の7第1項)/手順書に基づいて業務を行わせること(同2項)/販売時の情報提供と確認(薬機法36条の11第1項・2項)/数量と年齢の制限(同3項)/定められた方法での陳列(57条の2第4項、施行規則218条の5)
任意の対応(義務ではないが、手順どおりに運用していたことを示す材料になる)従業員研修とその記録/レジ端末での注意喚起の設定/確認した内容の記録/相談窓口を案内する手順

販売を断るときの説明と記録

断ることに現場が迷うのは、根拠を示せないからです。36条の11第4項は、情報提供ができない場合その他適正な使用を確保することができないと認められる場合には販売してはならないと定めています。売らないことが店舗の裁量ではなく法律上の義務である以上、その旨を伝えたうえで対応することになります。

あわせて、確認した内容を記録として残しておくことは、適正に販売したことを示す資料になります。ただし、記録には氏名や購入理由などの個人情報が含まれるため、利用目的、保存期間、閲覧できる者の範囲を手順書または社内規程で定めたうえで運用する必要があります。同じ人が短い間隔で購入を繰り返している場合の対応も、手順書に組み込んでおきます。販売を断るだけで終わらせず、相談窓口を案内する手順を置いておくと、現場の判断がぶれません。

▼ 多店舗を運営する事業者の進め方

順番担当やること
1本部(法務・店舗運営)店舗ごとの人員体制と売場の配置を確かめ、陳列方法を1号か2号か店舗ごとに決める
2本部施行規則159条の18の7第1項の5つの記載事項を満たす手順書の雛形を作る
3店舗運営部・店長陳列の実態が選んだ方法に合っているかを店舗ごとに確認し、必要なら什器や区画を直す
4店長薬剤師・登録販売者に手順書を周知し、研修の記録を残す
5本部確認と記録が現場で続いているかを点検し、手順書を見直す

まとめ:薬機法改正2026への対応は弁護士にご相談を

まとめ:薬機法改正2026への対応は弁護士にご相談を

令和8年5月1日に施行された内容は、指定濫用防止医薬品の8成分への拡大、販売時の確認と数量の上限、そして陳列の規制です。陳列は2つの方法から選ぶことができ、資格者を情報提供設備に継続的に配置しなければならないのは7メートル以内に陳列する方法を選んだ場合に限られます。常駐を命じる条文が新設されたわけではありません。

点検すべきなのは、手順書が施行規則の記載事項を満たしているか、陳列の実態が選んだ方法に合っているか、確認と記録が現場で続いているかの3点です。違反があった場合に許可の取消しや業務停止を受けるのは開設者や販売業者であり、体制の整備は経営の問題として扱う必要があります。

薬剤師等が常駐しない店舗での受渡しは、令和9年5月20日から施行されます。店舗の設計や人員配置を見直す予定がある場合は、政令の内容を確かめながら準備を進めることになります。自店の運用が条文に合っているかの確認や、手順書と社内規程の整備でお困りの際は、当事務所にご相談ください。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT分野とインターネットの法務に積極的に取り組んでいる法律事務所です。医薬品を扱う事業者に対し、販売手順書や社内規程のリーガルチェック、広告表現の薬機法チェック、行政対応まで対応しています。詳細は下記のページをご覧ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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