弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

医師の推薦を広告表現として利用するのは薬機法違反?

医師の推薦を広告表現として利用するのは薬機法違反?

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」がいわゆる「薬機法」です。以前は「薬事法」という名称でしたが、2014年に改正されて現在の薬機法になりました。医薬品や医療機器のみならず、化粧品も適用範囲となっています。

化粧品の広告表示には薬機法が適用されるため、使う言葉や文面などにいろいろな規制があります。規制に違反した広告表示にしてしまうと、薬機法違反となって罰則が科せられてしまうケースもあるので注意が必要です。薬機法で、医師の推薦を広告に利用すると法律違反となってしまうのかというのはケースごとに違いがあり、分かりにくい部分があります。

この記事では、どのようなケースで医師の推薦を化粧品の広告表示に利用すると薬機法違反になるかについて詳しく解説します。

薬機法違反となる医師の推薦する化粧品広告とは

薬機法違反となる医師の推薦する化粧品広告とは

化粧品広告に医師の推薦を使うことは禁止されており、薬機法では下記のように定められています。

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器または再生医療等製品の効能、効果または性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解される恐れのある記事を広告し、記述し、または流布してはならない(薬機法第66条)

出典:厚生労働省|医薬品等の広告規制について

また、誇大広告の防止や広告の適正化を図るために、厚生労働省が薬機法をもとに作成した「医薬品等適正広告基準」では下記のように定められています。

医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。 ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。

出典:厚生労働省|医薬品等適正広告基準の改正について

医師や薬剤師や美容師など国家資格の取得者からの推薦や公認は、肩書や権威による影響力が大きいために一般消費者が誤認しやすくなるため、禁止されています。

また、薬局や学会などの組織の推薦も禁じられています。「医師もおすすめ」「〇〇学会で認められた」「大学との共同研究」「厚生労働省認可」などの言葉を化粧品広告に使うと薬機法違反となります。

研究者や開発者が白衣を着た広告の問題点

研究者や開発者が白衣を着た広告の問題点

医師などの国家資格を持つ人の推薦を化粧品広告に使うことは禁じられていますが、国家資格とは関係のない研究者や開発者の推薦の言葉は薬機法違反にはなりません。しかし、広告に掲載されている研究者・開発者の人が白衣を着ている場合は、また注意が必要です。

日本化粧品工業連合会の「化粧品等適正広告ガイドライン2017年度版」では、下記のように記載されています。

医師等のスタイル(白衣等)の人が、化粧品等の広告中に登場すること自体は直ちに医薬関係者の推せんに該当するわけではないが、医師等のスタイルの人が製品の効能効果や安全性に関して、指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告表現は、その内容が事実であっても原則として行わないこと。

出典:日本化粧品工業連合会|化粧品等の適正広告ガイドライン2017年度版

白衣を着た姿の人が化粧品の広告に掲載されること自体は薬機法違反とはなりませんが、原則掲載すべきではないということです。国家資格を持つ医師などの人でなくても、医師などの職業の人だと誤解されるような白衣姿は一般消費者を誤認させるため、避けましょうというルールです。法律違反による罰則のリスクはないとしても、すべきではありません。

参考記事:薬機法上の罰則・逮捕要件は?避けるポイントも解説

健康食品を医師が推薦する広告は問題か

健康食品を医師が推薦する広告は問題か

化粧品広告において、医師の推薦を利用するのは薬機法違反になりますが、健康食品においては医師の推薦があっても薬機法違反になりません。薬機法が適用されるのは、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などであり、健康食品は適用外となるためです。

しかし、健康食品であっても身体への医学的な効果効能を謳ってしまうと、薬機法違反となってしまうため、注意しましょう。

健康食品や栄養機能食品の広告で謳えるのは、食品表示基準で決められた栄養機能のみです。「身体のこの部分に効果がある」など具体的な効果効能を謳ったり、病名などを挙げて症状が改善するような誤認を与えたりすることはできません。仮に効果の内容が事実であったとしても、承認前の医薬品販売として判断されるので薬機法に抵触します。

医師の推薦の事実すら虚偽だった広告の問題

医師の推薦の事実すら虚偽だった広告の問題

医師の推薦を広告に利用できる範囲について、薬機法をもとに解説してきました。そのほか、広告に表示している医師が推薦している事実そのものが虚偽であった場合は、大きな問題が生じます。

実際には医師が推薦している事実などないのに、あたかも医師のおすすめの商品のような広告表示をすることは、不当表示や誇大広告として景品表示法に違反する問題になります。

「医師が推薦している」という虚偽の事実を表示することで、一般消費者に商品を著しく優良だと見せる「優良誤認」となり景表法違反です。景表法違反を犯すと、広告停止の措置命令や課徴金の納付命令を科されてしまうリスクがあります。

比較優良広告の注意点

比較優良広告の注意点

広告表示で商品を良く見せる方法に、「比較優良広告」があります。比較優良広告とは、ほかの同業他社の商品・サービスと比較して著しく優良・有利であるとする広告です。

消費者庁では、比較広告のガイドラインとして以下のポイントを挙げています。

比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること比較の方法が公正であること

出典:消費者庁|比較広告

主張する根拠が客観的な実証に基づいているか、調査・実証したデータを正確に認識できる内容になっているか、公正な比較内容になっているかが重要な要素です。

また、他社とほとんど変わらない結果であるにもかかわらず、「No.1」や「当社だけ」など他社より著しく優良であるかのような広告表示にすると不当表示となります。

まとめ:化粧品広告は弁護士のリーガルチェックで薬機法違反回避を

六法全書を読む男性

化粧品の広告表示で、医師の推薦を利用することは薬機法違反になります。また、医師の推薦そのものが虚偽だった場合は、景表法違反になり課徴金を科されるリスクもあります。薬機法違反や景表法違反は回避しなければなりませんが、表現の規制範囲が難しい部分もあって理解するのは困難です。

薬機法における広告表現に不安があったり、トラブルになってしまったりした場合は、法律の専門家へのご相談を検討ください。化粧品や健康食品等の広告は、あらかじめ弁護士によるリーガルチェックをすることで薬機法違反を回避できます。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に豊富な経験を有する法律事務所です。当事務所では、メディア運営事業者・レビューサイト運営事業者・広告代理店・サプリメントといったD2Cや化粧品メーカー・クリニック・ASP事業者などに対し、記事やLPのリーガルチェック、ガイドライン作成やサンプリングチェックなどのサービスを提供しています。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:記事・LPの薬機法等チェック

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る