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弁護士の守秘義務はどこまで?範囲・期間・例外と違反したときの罰則

弁護士の守秘義務はどこまで?範囲・期間・例外と違反したときの罰則を弁護士が解説

弁護士に相談すると、相手に知られたくない事情や、会社の外に出せない情報を話すことになります。その内容が家族や取引先、警察に伝わることはないのか。相談だけで終わった場合も守られるのか。

弁護士の守秘義務は弁護士法と弁護士職務基本規程が定める義務で、違反すれば刑法の秘密漏示罪や懲戒処分の対象になります。誰に対して、何を、いつまで守る義務なのかを条文から確かめ、例外と罰則、企業が相談するときの実務まで整理します。

弁護士の守秘義務とは

弁護士の守秘義務とは、弁護士が職務上知り得た秘密を、正当な理由なく他人に漏らしたり利用したりしてはならない義務です。弁護士法23条と弁護士職務基本規程23条が定めており、違反には刑法134条1項の秘密漏示罪が用意されています。

▼ 弁護士の守秘義務を定める3つの根拠

根拠定めている内容違反したときの効果
弁護士法23条弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでないこの条文自体に罰則はなく、弁護士会が処分する理由(懲戒事由)になる
弁護士職務基本規程23条弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない会規違反として懲戒事由になる
刑法134条1項正当な理由がないのに業務上知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金刑事罰。被害者の告訴がなければ起訴されない親告罪(刑法135条)

表の上2つ、弁護士法23条と職務基本規程23条は、守る範囲が少し違います。弁護士法23条は職務上知り得た秘密と書くだけで誰の秘密かを限定せず、職務基本規程23条は依頼者についての秘密に絞ったうえで、利用することも禁じています。弁護士法のこの趣旨を裁判や捜査の場面で具体化したのが、後で述べる証言拒絶権や押収拒絶権です。

弁護士が正確な助言をするには、依頼者に不利な事実まで話してもらう必要があります。外に出るかもしれないと思えば依頼者は肝心なことを隠し、隠された前提で組んだ方針は途中で崩れます。弁護士に何でも話せるという信頼が、紛争を法の手続きに乗せる仕組みを支えています。

弁護士の守秘義務の範囲はどこまで

守秘義務の範囲は次の4点で決まります。誰に対して負う義務か。何が秘密にあたるか。いつまで続くか。誰に話せないか。相談だけで終わった人の情報も、相談したという事実そのものも対象に入り、弁護士を辞めた後も終わりません。

▼ 弁護士の守秘義務の範囲を決める4つの問い

問い結論
誰に対して負う義務か依頼者のほか、相談だけで終わった人、元依頼者、顧問先、社内弁護士の所属組織
何が秘密にあたるか相談内容や資料に加え、相談した事実、解任した事実、雑談で知った事情
いつまで続くか事件が終わった後も、弁護士を辞めた後も一生続く
誰に話せないか家族、紹介者、友人を含むすべての第三者。本人の同意など正当な理由があれば別
弁護士の守秘義務の範囲はどこまで

依頼者だけでなく相談者や元依頼者も対象になる

職務基本規程23条にいう依頼者は、委任契約を結んだ人に限りません。受任に至らなかった相談者、無料相談だけで終わった人、事件が終わった元依頼者、顧問先、組織内弁護士の所属組織まで含みます。正式に依頼していないから守られない、ということはありません。企業間の取引と違い、秘密保持契約を結んでいなくても法律上の義務として守られます。職務と無関係の私的な場で知り合った人の話は、原則として対象外です。

相談した事実そのものも秘密に含まれる

秘密にあたるのは相談の中身だけではありません。相談に来た事実、弁護士を解任した事実、雑談で知った家庭や勤務先の事情も、職務の過程で知ったものであれば対象になります。職務上知り得たとは、弁護士がその資格で職務を進める過程で会話や資料から知ったことをいいます。弁護士という信頼に基づいて打ち明けられた他人の秘密まで広く含むと解されています。

何を秘密とみるかには2つの考え方があります。一般の人なら隠しておきたいと考える事柄とみる客観説と、本人が特に隠しておきたいと考える事柄とみる主観説です。実務では両方を秘密に含めて扱うのが一般的です。

弁護士を辞めた後も一生続く

守秘義務に期限はありません。事件が解決しても続きます。弁護士法23条は義務を負う者として弁護士であつた者を並べており、登録を取り消した後も同じです。職務基本規程56条も、共同で運営する事務所を離れた後も他の弁護士の依頼者の秘密を守る義務は続くと定めています。

相手方や第三者の秘密も含まれると解される

事件の相手方や依頼者以外の第三者の秘密も、弁護士が職務上知ったものであれば対象に含まれると解する見解が有力です。ただし、弁護士法23条には職務基本規程23条にある依頼者についてという限定がないため、弁護士法上の秘密がどこまで及ぶかには争いがあり、断定はできません。学説は次の3つに分かれます。

▼ 弁護士法23条の秘密の範囲に関する3つの考え方

考え方秘密の範囲
限定説依頼者の秘密に限られる
非限定説依頼者の相手方の秘密も対象になる
折衷説依頼者のほか、依頼者に準ずる者の秘密が含まれる

最高裁は平成24年2月13日の決定で、精神鑑定の対象者について知った秘密を医師が漏らした事件を扱いました。刑法134条1項の人の秘密には、鑑定対象者本人だけでなく、鑑定の過程で知った他人の秘密も含まれるという判断です。この決定は弁護士法23条の範囲や相手方の秘密を直接判断したものではありません。ただ、同じ条文が弁護士にも適用されることから、依頼者以外の秘密も対象になり得ると解釈する余地があります。なお、相手方の情報が対象になるとしても、弁護士が依頼者の事件のためにその情報を用いることまで禁じられるわけではありません。企業の相談では、取引先や従業員の情報も依頼者である企業の秘密として扱われるため、学説の違いで守られなくなることは実務上考えにくいと解されます。

参考:最高裁判所第二小法廷 平成24年2月13日決定(刑集66巻4号405頁)裁判所 裁判例検索(平成24年2月13日公表)

家族や紹介者への説明にも本人の同意が要る

依頼者の家族、事件を紹介してくれた人、親しい友人も、弁護士から見れば第三者です。本人の同意がないまま、相談の有無や進み具合を伝えることはできません。家族と一緒に進めたい場合は、依頼者本人が誰にどの範囲まで伝えてよいかを弁護士に明示しておく必要があります。弁護士側は、その家族が事件の利害関係人にならないかを確認したうえで範囲を決め、同意は後から撤回できます。企業の場合は、委任時に情報共有の窓口となる担当者を決めておくのが通常です。

同じ事務所の弁護士や事務職員も義務を負う

同じ事務所の他の弁護士も、職務基本規程56条により同じ守秘義務を負います。事務職員やパラリーガルには弁護士法23条や刑法134条1項は適用されませんが、雇用契約上の秘密保持義務や不法行為責任は本人が負います。加えて弁護士は職務基本規程19条の指導監督義務を負い、職員の漏洩について民法715条の使用者責任を問われ得ます。相談先の情報管理を確かめたいときは、次の3点を尋ねると判断しやすくなります。事務職員と秘密保持契約を結んでいるか。問い合わせ段階の情報の扱いをどこに明示しているか。依頼に至らなかった場合の資料をどう扱うか。当事務所は事務職員と秘密保持契約を結ぶ運用です。

参考:日本弁護士連合会 弁護士職務基本規程(会規第70号)19条・56条(2004年11月10日制定)

弁護士の守秘義務が除外されるケース

例外は2つです。ひとつは弁護士法23条の後半、但しから始まる部分(ただし書)が定める、法律に別段の定めがある場合。もうひとつは職務基本規程23条がいう正当な理由がある場合です。重大な犯罪の予告を受けた場面で通報できるかは、解釈が分かれる問題として別に扱います。

法律に別段の定めがある場合

別段の定めとは、弁護士が例外的に秘密を語らなければならない場合を定めた法律の条文です。実際には、弁護士に証言などを拒む権利を与えた条文の中に、権利を失う条件として書かれています。鍵になるのは本人の承諾です。依頼者の承諾など黙秘の義務の免除がない限り、弁護士は原則として証言や提出を拒めます。ただし、黙秘すべき事実にあたるかは裁判所が判断し、刑事では拒絶が被告人のためだけの権利の濫用と認められる場合には拒めません。

▼ 法律に別段の定めがある場合の主な例

場面根拠秘密を明かすことになる条件
民事裁判の証人尋問民事訴訟法197条2項依頼者の承諾などにより黙秘の義務を免除されたとき
刑事裁判の証人尋問刑事訴訟法149条ただし書本人が承諾したとき。または、証言の拒絶が被告人のためだけにする権利の濫用と認められるとき(被告人が本人である場合を除く)
国会での証言や書類提出議院証言法4条2項ただし書本人が承諾したとき

正当な理由がある場合

職務基本規程23条の正当な理由として、日弁連の解説書は依頼者の承諾がある場合と、弁護士の自己防衛に必要な場合を挙げています。自己防衛が問題になるのは、弁護士自身が、依頼を受けた事件に関連して係争の当事者になったときです。懲戒の審理で自分の主張を立証しなければならないときや、証拠隠滅などの嫌疑が弁護士自身に向いたときも同じです。自己の主張や立証に必要不可欠な範囲に限って開示が許され、限度を超えた開示は正当な理由になりません。

正当な理由の整理は、日弁連の逐条解説である解説 弁護士職務基本規程 第3版に沿っています。

参考:日本弁護士連合会 解説 弁護士職務基本規程 第3版の発行情報(弁護士倫理に関する取組ページ)(2017年12月発行)

犯罪の予告を受けたとき警察に通報できるか

過去に犯した罪を弁護士に打ち明けても、弁護士に通報の義務はありません。むしろ守秘義務が通報を禁じており、原則として通報されることはありません。公判で証人として呼ばれても、刑事訴訟法149条により弁護士は証言を拒めます。相談だけで終わった場合も同じです。ただし、弁護士が通報しないことは、企業自身が法令や契約で負う報告や通知の義務とは別の問題です。相談の場でその有無を確認してください。

問題になるのは、これから人を傷つけるという予告を聞いた場面です。人の生命や身体への重大な危害が差し迫り、弁護士が説得しても本人が思いとどまらない状況が問題になります。この場合、危害を防ぐための必要最小限の開示は正当な理由にあたる余地があると解されます。危害の重大さ、切迫の程度、他の手段の有無を個別に検討して判断される、極めて限定された場面の話です。

弁護士が守秘義務に違反したときの罰則

弁護士法23条そのものには罰則がありません。それでも違反した弁護士は、刑法の秘密漏示罪、弁護士会の懲戒処分、依頼者への損害賠償という3つの責任を問われます。3つは別々の手続きで進み、同時に負うこともあります。

▼ 守秘義務違反で弁護士が負う3つの責任

責任根拠内容
刑事責任刑法134条1項秘密漏示罪。6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金。告訴がなければ起訴されない親告罪
懲戒処分弁護士法56条1項・57条1項所属する弁護士会による処分。戒告、2年以内の業務停止、退会命令、除名の4種類
民事責任民法644条・709条依頼者に生じた損害の賠償。慰謝料を含む
弁護士が守秘義務に違反したときの罰則

秘密漏示罪は6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金

刑法134条1項は、弁護士や弁護士であった者が正当な理由がないのに業務上知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処すると定めています。現行の刑法は拘禁刑と定めており、懲役ではありません。秘密漏示罪は刑法135条により親告罪で、秘密を漏らされた本人の告訴がなければ起訴されません。裁判で秘密がさらに広がることを防ぐためです。

参考:e-Gov法令検索 刑法(明治40年法律第45号)134条・135条

弁護士会の懲戒処分は戒告から除名まで4種類

弁護士法56条1項は、弁護士法や会則に違反したときに弁護士が懲戒を受けると定めており、守秘義務違反は懲戒事由になります。処分は弁護士法57条1項が定める戒告、2年以内の業務停止、退会命令、除名です。除名を受けた者は、弁護士法7条3号により3年を経過するまで弁護士となる資格を持ちません。

参考:e-Gov法令検索 弁護士法(昭和24年法律第205号)56条・57条・7条

依頼者への損害賠償責任

弁護士と依頼者の関係は委任契約で、弁護士は民法644条により、その職業の人に通常求められる注意(善良な管理者の注意)を払って委任事務を処理する義務を負います。秘密を守ることはこの注意義務に含まれると考えられ、漏らして依頼者の法律上保護される利益を侵害すれば、債務不履行または民法709条の不法行為として損害賠償責任を負います。契約に至らなかった相談者に対しても、次の見出しで紹介する裁判例のように、不法行為に基づく責任が認められることがあります。

参考:e-Gov法令検索 民法(明治29年法律第89号)644条・709条

守秘義務違反が認められた裁判例

大阪地方裁判所は平成18年9月27日、相談者から届いたメールの内容を事務所外の他の弁護士に伝えた弁護士に対し、20万円の慰謝料の支払いを命じました。理由は弁護士法23条の守秘義務違反です。相談者と弁護士の間に委任契約はありませんでした。判決は、弁護士法23条の守秘すべき秘密は委任関係を有する依頼者の秘密に限らず、職務上知り得た秘密が広く対象になるとしています。契約書の有無ではなく、弁護士という立場で情報を受け取ったかどうかを重視した判断で、下級審の一事例ですが実務上の指針になります。

参考:一般財団法人女性労働協会 判例データベース 弁護士守秘義務違反事件(大阪地裁平成18年(ワ)第1464号)(平成18年9月27日判決)

弁護士の証言拒絶権と押収拒絶権

弁護士法23条は秘密の保持を権利としても定めています。この権利は、裁判で証言を拒める証言拒絶権、捜査機関による資料の差押え(押収)を拒める押収拒絶権として、個別の法律に書き込まれています。依頼者が弁護士に話した内容は、国家機関が求めても原則として引き出せません。ただし、これは弁護士の手元にある情報についての権利です。依頼者本人への尋問や、依頼者が自社で保管する相談記録に対する提出命令や差押えを防ぐものではないため、保管場所と共有範囲は社内で決めておく必要があります。秘密の持ち主である本人が承諾したときだけ、弁護士側も拒む理由がなくなります。

▼ 弁護士が秘密を守るために行使できる権利

場面根拠弁護士ができること
民事裁判の証人尋問民事訴訟法197条1項2号職務上知り得た黙秘すべき事実について証言を拒む
民事裁判の文書提出命令民事訴訟法220条4号ハ黙秘の義務が免除されていない事実を記した文書の提出を拒む
刑事手続の押収刑事訴訟法105条・222条1項委託を受けて保管する他人の秘密に関する物の押収を拒む
刑事裁判の証人尋問刑事訴訟法149条委託を受けて知り得た他人の秘密について証言を拒む
捜査機関による通信傍受通信傍受法16条他人の依頼を受けて行う業務に関する弁護士との通信は傍受されない。弁護士自身が傍受令状に被疑者として記載されている場合を除く
国会の証人喚問議院証言法4条2項委託を受けて知り得た他人の秘密について宣誓、証言、書類の提出を拒む

企業が弁護士に相談するときの守秘義務の実務

企業が弁護士に相談するときの守秘義務の実務

企業が弁護士に相談する前に押さえたいのは3点です。問い合わせのどの段階から守秘義務の対象になるか。取引先との秘密保持契約で縛られた情報を見せてよいか。顧問弁護士や社内弁護士の位置づけはどうなるか。相談の手順は、秘密保持契約の例外条項を先に確認することから始まります。問い合わせでは案件の分野と相手方名だけを伝え、受付時に守秘義務の下で聞く旨の確認を受けます。契約書や時系列のメモなどの資料は、そのうえで面談に持参します。

問い合わせの段階と法律相談の境目

守秘義務が及ぶのは、弁護士と相談者という関係の下で聞いた情報です。問い合わせフォームから一方的に届いた最初のメールは、まだこの関係に入っていません。たとえば、ある会社の依頼で取引先を訴える準備をしているとします。その取引先から同じ件で問い合わせが届き、事情まで聞いてしまうと、弁護士は先に受けた依頼を続けられなくなるおそれがあります。対立する双方の味方になること、いわゆる利益相反を、弁護士法25条と職務基本規程27条・28条が禁じているからです。相手方から信頼関係に基づくと認められる程度の協議を受けた事件は、職務を行えない事件になります。そのため、弁護士は相談を受ける前に利益相反がないかを確認しなければなりません。予約時に相手方の名前を尋ねられるのはこのためです。

そこで多くの法律事務所は、利益相反の確認が取れてから相談を受けるか判断するという運用をとっています。当事務所も同じです。これは問い合わせ段階の情報が法律上守られないという意味ではなく、確認前に事情を受け取ると弁護士が身動きを取れなくなるおそれがあるためです。

▼ 企業が弁護士に相談を持ち込むときの3段階

段階企業側がすること守秘義務の扱い
1 問い合わせ相手方の名称と案件の分野のみを伝える。事案の内容、漏洩したとされる情報の中身、従業員の氏名、契約書などの資料はこの段階では送らない利益相反の確認に用いる。詳細はこの段階では書かない
2 相談の受付利益相反がないこと、および以後の話を守秘義務の下で聞くことの確認を受けるこの時点から対象
3 法律相談資料を含めて具体的な事実を伝える対象。相談だけで終わっても続く

秘密保持契約で縛られた情報を弁護士に開示できるか

取引先との秘密保持契約で受け取った情報を弁護士に見せてよいか、という相談は少なくありません。まず確認するのは契約書の例外条項です。多くの秘密保持契約には、守秘義務を負う弁護士などの専門家には業務に必要な範囲で開示できるという条項が置かれており、この条項がある場合でも、確認したい点が4つあります。開示を業務上必要な範囲に留めること。契約目的の範囲内であること。開示先に同等の守秘義務を負わせること。弁護士に開示する旨を取引先に通知すること。取引先との紛争に備えて開示する場合は、紛争の解決や法的検討が契約目的の定義に含まれているかも確かめます。これらを確かめたうえで行えば、契約上の問題は通常生じません。

例外条項がない契約では、まず相手方の書面同意を得るか、社名や固有名詞を伏せた要約で相談する方法を検討します。それが難しい場合はどうか。開示先が守秘義務を負う弁護士であり、法的助言の範囲で必要な限度に留まれば、契約の趣旨に反しないと解される余地はあります。ただし、契約の文言と開示の目的によって結論が変わり、違約金や差止めの条項がある契約では特に慎重な判断が必要です。開示の前に該当条項だけを弁護士に見せて手順を決め、これから結ぶ契約には専門家への開示を例外とする条項を入れておくのが確実です。契約書そのものを相談に持参することは、その存在と条項が依頼者の秘密として守られるため差し支えありません。

顧問弁護士と社内弁護士の守秘義務

顧問先の企業は、個別の事件を依頼していなくても依頼者にあたり、日常の相談で伝えた経営情報は顧問契約が終わった後も守秘義務の対象です。企業に勤める社内弁護士(職務基本規程50条では組織内弁護士と呼びます)にとっては、所属する組織が依頼者にあたります。転職後も前の勤務先の秘密を利用することは許されず、採用の場面では、前職の秘密を聞き出さないことが企業側の注意点になります。情報漏洩を防ぐ社内の仕組みは、企業自身の規程で整える必要があります。

弁護士の守秘義務でよくある質問

弁護士法23条と弁護士会照会の23条照会は同じものですか

別の制度です。弁護士法23条は弁護士が秘密を保持する権利と義務を定めた条文で、23条の2は弁護士会照会を定めた条文です。弁護士会照会とは、弁護士が受任している事件について、所属する弁護士会を通じて官公署や企業などに必要な事項の報告を求める制度をいいます。片方は秘密を守る規定、もう片方は情報を集める規定。仕組みと手順は別の記事で解説しています。

司法書士や行政書士の守秘義務と何が違いますか

秘密を守る義務がある点は共通しますが、根拠と罰則が違います。司法書士法24条と行政書士法12条は漏らしてはならない義務を定めるだけで、弁護士法23条のように保持する権利とは書いていません。罰則も別です。弁護士は刑法134条1項の秘密漏示罪で処罰されます。司法書士は司法書士法76条が6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金を、行政書士は行政書士法22条が1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金を定めています。民事訴訟法197条1項2号や刑事訴訟法149条が証言拒絶権を明記する職種に弁護士は含まれますが、司法書士と行政書士は含まれていません。

参考:e-Gov法令検索 司法書士法(昭和25年法律第197号)24条・76条/行政書士法(昭和26年法律第4号)12条・22条

まとめ:弁護士の守秘義務を理解して安心して相談を

まとめ:弁護士の守秘義務を理解して安心して相談を

▼ 弁護士の守秘義務の要点

項目要点
対象になる人依頼者、相談だけの人、元依頼者、顧問先、社内弁護士の所属組織
秘密の範囲相談内容、資料、相談した事実。相手方の秘密も含むと解する見解が有力
期間事件終了後も、弁護士を辞めた後も一生
例外法律に別段の定めがある場合。依頼者の承諾や自己防衛という正当な理由がある場合
違反したとき秘密漏示罪、戒告から除名までの懲戒処分、損害賠償
企業が確認すること問い合わせ段階と相談の境目。秘密保持契約の例外条項。顧問と社内弁護士

当事務所による対策のご案内

当事務所は、IT・ベンチャー企業の法務と各種企業のIT・知財法務を中心に扱う法律事務所です。ご相談の内容は弁護士法23条の守秘義務の下で取り扱い、秘密保持契約で縛られた情報の相談方法についても、最初の問い合わせの段階から手順をご案内しています。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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