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風評被害対策

バイトテロの損害賠償はいくら請求できる?実例と解雇・刑事責任を解説

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バイトテロの損害賠償はいくら請求できる?実例と解雇・刑事責任を解説

厨房で撮った悪ふざけの動画が、翌朝には店名つきで拡散している。企業の担当者から最初に聞かれるのは、あの従業員にいくら請求できるのか、という問いです。

請求はできます。ただし、認められる損害の範囲と実際に回収できる金額は別の話です。1,385万円を請求した店が約200万円で和解した実例が、その差を端的に示しています。

請求できる損害の範囲、金額の実例、本人以外の誰に請求できるか、解雇と刑事告訴の要件、投稿を見つけた直後に企業がとる手順までをまとめます。法定刑は2026年9月時点の現行条文です。拡散が続いている最中であれば、先に初動対応の章から読んでください。

炎上そのものへの対応、たとえば公表や謝罪の進め方は、別の記事で扱っています。

バイトテロとは?企業に生じる損害と近年の傾向

バイトテロとは、従業員やアルバイトが勤務先の商品や設備を使った悪ふざけを撮影し、SNSに投稿する行為をいいます。勤務先の信用と業務を害し、投稿から店名が特定されるまでは数時間で、本人が削除しても保存された動画が拡散し続けます。

企業に生じる損害は次のとおりです。

▼ バイトテロで企業に生じる損害の内訳

損害内容
商品と設備の損害投稿に使われた商品の廃棄、厨房や什器の清掃と消毒、壊れた器具の交換
休業損害清掃や再発防止のために店を閉めた期間の売上
売上の減少と客離れ営業再開後も続く客数の減少、フランチャイズなら他店舗への波及
株価とブランドの毀損上場企業では株価の下落、採用への影響
対応のコスト謝罪文の掲載、問い合わせ対応の人件費、弁護士費用

上の2つは領収書で金額を示せます。下の3つは金額が大きい一方で因果関係の証明が難しく、請求できる範囲が争いになります。

2025年の秋にも大手チェーンで従業員による不適切な投稿が相次ぎました。コーヒーチェーンでは運営会社が10月3日に謝罪文を公表し、ラーメンチェーンでは関与したアルバイトの懲戒解雇と損害賠償請求の準備を運営会社が公表しています。処分の事実と再発防止策を企業側が公表する対応が、近年の標準になりつつあります。

参考:ライブドアニュース ドトールコーヒーショップにおけるSNS不適切投稿に関する報道(2025年10月8日公表)

参考:飲食店ドットコム ジャーナル 2025年も続く飲食テロ・バイトテロに企業は厳格な対応(2025年10月)

バイトテロとは?企業に生じる損害と近年の傾向

バイトテロをした従業員に問える3つの責任

バイトテロをした従業員には、性質の異なる3つの責任を問えます。並行して進めるのが通常です。

▼ バイトテロをした従業員に問える責任

責任根拠企業ができること限界
民事責任民法709条・415条生じた損害の賠償を請求する因果関係の証明と本人の資力に左右される
労務上の責任労働契約法15条から17条懲戒処分や懲戒解雇を行う就業規則の根拠と手続を欠くと無効になる
刑事責任刑法230条・233条・234条・261条ほか被害届の提出や告訴で刑事手続を求める起訴するかどうかは検察官が決める

どの責任も、動く前に証拠を押さえておく必要がある点は共通です。保全と聞き取りが遅れると、損害額を示せず、処分の手続が不十分になり、捜査機関も動きにくくなります。

バイトテロの損害賠償で請求できる損害の範囲

バイトテロの損害賠償で請求できる損害の範囲

損害賠償の根拠は2つあります。不法行為と、労働契約上の義務に違反したことによる債務不履行です。バイトテロは故意の行為ですから不法行為の要件は通常満たし、従業員は勤務先の信用を害しない義務を負うため、債務不履行を理由にしても請求できます。

参考:e-Gov法令検索 民法709条・415条・416条

どちらの根拠でも、請求できるのは、行為から通常生ずべき損害と、当事者が予見すべきであった特別の事情による損害に限られます(民法416条)。不法行為にもこの枠組みが類推されるのが判例の立場で、その行為があればふつうそこまで起きると言える範囲を相当因果関係と呼びます。

▼ バイトテロの損害と認められやすさ

損害立証の方法認められやすさ
商品の廃棄、清掃と消毒、器具の交換領収書、作業記録高い
休業損害休業日数と損益の記録休業の必要性が説明できれば認められうる
営業再開後の売上減少前年同月比などの売上推移他の要因との切り分けが必要
株価の下落、ブランド価値の毀損株価の推移従業員個人への請求としては認められにくい
弁護士費用契約書と請求書不法行為では損害額の一部が認められる例がある

直接損害は領収書と作業記録で確定できる

商品の廃棄、清掃と消毒、器具の交換にかかった費用は、領収書と請求書で金額を示せます。自社で清掃した場合は、作業に当たった従業員の時間と時給の記録が根拠になります。この範囲の損害は因果関係も明らかで、認められやすい部類です。

間接損害は因果関係の証明が壁になる

休業損害は、清掃と再発防止のために店を閉めざるを得なかったと説明できれば請求できるのが通常です。金額は売上そのものではなく、休業日数分の逸失利益、つまり売上から仕入れなど休業で支出を免れた費用を引いた額に、休業中も発生した人件費や家賃を加えて算定します。営業再開後の売上減少は、競合店の出店や季節要因と切り分ける必要があり、立証の難度が上がります。

上場企業の株価下落は、報道で数十億円という数字が出ることがあります。しかし株価は市場全体の動きにも左右され、従業員1人の行為との相当因果関係が認められる範囲は限られると解されます。

責任制限の法理は故意のバイトテロにどこまで及ぶか

従業員への損害賠償請求には、金額を制限する考え方があり、責任制限の法理と呼ばれます。業務中の交通事故で会社が被った損害を運転手に請求した事案があります。最高裁は、請求できるのは損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度にとどまると判断しました。考慮したのは、事業の性格や規模、労働条件、加害行為の態様、会社側の予防措置などです。

参考:裁判所 裁判例検索 最高裁昭和51年7月8日第一小法廷判決 損害賠償請求上告事件(昭和51年7月8日公表)

この判決は過失による事故の事案で、加害行為の態様を考慮要素の一つとしています。バイトテロでは、故意に商品を汚し、それを撮影して投稿するという悪質な態様であるため、上記の事案と同じ割合の減額が認められる可能性は低いと解されます。ただし、故意であれば一切制限されないとまでは言えません。もっとも、会社の指導や管理の状況は考慮要素に入るため、研修や規程を何も整えていなかった企業では、その点を持ち出される余地があります。判断は個別の事情によって変わります。

バイトテロの損害賠償額の実例と相場

バイトテロの損害賠償で、判決で金額が確定した公開裁判例はほとんどありません。多くは示談か和解で終わり、金額が公表されないためです。数少ない実例から、請求額と決着額の関係を読み取ります。金額の目安を一律に示せる段階にはなく、直接損害の積み上げと本人の資力で決まります。

そば店の事例は1,385万円の請求が200万円の和解で終わった

2013年、東京都多摩市のそば店で、アルバイトの大学生が食器洗浄機に入った写真をSNSに投稿しました。店は投稿から約3か月後に閉店し、約3,300万円の負債を抱えて破産しています。店側は学生らに合計1,385万円の損害賠償を求めて提訴しましたが、約200万円で和解したと報じられました。

参考:弁護士ドットコムニュース バカッター・リターン、繰り返されるバイトテロの歴史(2021年6月19日公表)

参考:神戸新聞NEXT バイトテロで倒産したそば店は、200万円で和解(2023年2月)

負債の1割にも届かない額です。店が閉店に追い込まれた因果関係は明らかでも、学生に支払い能力が無ければ判決を取っても回収できません。現実的に払える額で早く決着させる判断が、この和解額に表れています。

回転寿司チェーンの事例は客の迷惑行為で約6,700万円を提訴した

2023年1月、回転寿司チェーンの店舗で客の少年がしょうゆ差しの注ぎ口をなめる動画が拡散しました。運営会社は同年3月に約6,700万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴し、7月31日付で裁判所の仲介による話し合い(調停)がまとまり、訴えを取り下げています。合意の内容は公表されていません。

参考:日本経済新聞 スシロー、「迷惑動画」賠償請求取り下げ 少年と調停成立(2023年8月1日公表)

客が起こした事案ですが、企業が請求額を公表して提訴した点で、以後の抑止の基準になりました。客の迷惑行為に問える責任は別の記事にまとめています。

請求額と回収額が一致しない3つの理由

回収できない理由は3つに整理できます。

▼ 請求額と回収額が一致しない理由

理由内容
相当因果関係の壁売上減少や株価下落は、バイトテロ以外の要因と切り分けられない部分が請求から外れる
本人の資力本人に支払い能力が無ければ、判決を取っても回収できない
示談による減額示談成立後に処罰を求めない意思を示すことも含めて、払える額で早期に解決する選択を企業側が取ることが多い

3つ目の示談は、企業が損をしているように見えて、実務では合理的な選択です。解決金を受け取り、口外禁止と再発防止の条項を入れた合意で終える方が、企業の回復は早くなります。合意書には解決金の額と支払方法、双方向の口外禁止、再発防止の約束を入れます。拡散が続いている時点で合意する場合は、清算の対象を合意時点で判明している損害に限定します。親が支払う場合は、親を連帯債務者として当事者に加えます。請求額を伝える前に方針を固めておいてください。

バイトテロの損害賠償を誰に請求できるか

請求先は、悪ふざけをした本人に限りません。撮影した同僚、投稿を広めた仲間、未成年なら親も、別の根拠で責任を負う可能性があります。図の矢印は、それぞれの相手に対する請求の根拠になりうる法律構成を示しています。

▼ バイトテロの損害賠償を請求できる相手

相手根拠請求できる範囲
行為をした本人民法709条、415条相当因果関係の範囲にある損害
撮影した同僚、投稿と拡散に加担した者民法719条共同不法行為として本人と連帯して負う可能性がある
未成年者の親民法712条、714条本人に責任能力があれば原則として親は負わない。実務では親が支払う例が多い
バイトテロの損害賠償を誰に請求できるか

行為をした本人には不法行為と債務不履行の両方で請求できる

本人への請求は、不法行為と労働契約上の債務不履行のどちらでも構成できます。不法行為では故意と損害と因果関係を企業側が示し、債務不履行では、義務違反があったことを企業が示せば、自分に責任がないことは本人の側が証明しなければなりません。訴状ではどちらか一方に絞らず、両方を並べて主張するのが通常です。

撮影した同僚や拡散した者には共同不法行為で請求できる余地がある

民法719条は、複数人が共同で他人に損害を与えたときは全員が連帯して賠償すると定め、そそのかした者(教唆)や手助けした者(幇助)も同じ扱いにしています。

参考:e-Gov法令検索 民法719条

バイトテロの動画は、悪ふざけをする本人と、それを撮って投稿する同僚の共同作業で作られることがほとんどです。共同不法行為が成立するには、各人の行為が客観的に関連し、共同して損害を生じさせたことが必要です。悪ふざけをした本人と、撮影して投稿した同僚は、一連の行為として共同不法行為に当たる可能性が高いといえます。一方、撮影しただけで投稿に関与していない者や、事後に拡散しただけの第三者は、関与の程度に応じて独立の不法行為として個別に検討することになります。

未成年者の親は責任能力の有無で扱いが分かれる

高校生のアルバイトが起こした事案では、親に請求できるかがまず問われます。民法は、自分の行為の責任を判断できる知能を備えていない未成年者は賠償責任を負わないと定めています。その場合には監督義務者である親が責任を負いますが、親が監督義務を怠らなかったことを証明すれば免責されます。裁判例では、おおむね12歳前後を境に責任能力が認められる傾向にあり、高校生や大学生なら本人に責任能力があると判断されるのが通常です。

参考:e-Gov法令検索 民法712条・714条

本人に責任能力があれば、親は監督義務者としての責任を負いません。ただし、親の監督義務違反と損害との間に相当因果関係があるときは、親固有の不法行為責任が成立しうるとするのが判例です。高校生や大学生の勤務先での行為でこれが認められるのは例外的です。法的には請求先にならなくても、実務では親が本人に代わって支払う例が多く、示談交渉は親を交えて進めます。本人が18歳未満であれば、示談は親権者の同意が無いと後から取り消されるおそれがあるため、親権者を合意書の当事者に加えてください。

バイトテロをした従業員の解雇と懲戒処分

バイトテロをした従業員の解雇と懲戒処分

アルバイトであっても、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。この要件を欠く解雇は権利の濫用として無効になります。懲戒処分にも同じ枠があり、行為の性質や態様に照らして相当でない処分は無効です。契約期間を定めたアルバイトを期間の途中で解雇する場合は、さらにやむを得ない事由が必要で、要件はより厳格です(労働契約法17条1項)。

参考:e-Gov法令検索 労働契約法15条から17条

雇用契約なら就業規則の根拠規定と手続を整えて懲戒解雇する

懲戒解雇をするには、就業規則に懲戒の種類と事由が定められ、それが従業員に周知されていることが前提です。厚生労働省のモデル就業規則は、遵守事項として会社の名誉や信用を損なう行為をしないことを掲げており、多くの企業がこれに準じた条項を持っています。

参考:厚生労働省 モデル就業規則(令和7年12月)第11条(令和7年12月)

包括的な条項でも懲戒の根拠にはなりますが、SNSへの投稿を明示した条項があれば、該当性を争われる余地が小さくなります。手続の順序も結論を左右します。投稿の保全、本人からの聞き取りと弁明の機会、処分の決定と通知、という順で進め、聞き取りの記録を残してください。弁明の機会を与えずに即日解雇した事案は、行為が悪質でも手続面から無効を争われる可能性があります。

解雇には通常、30日前の予告か、30日分の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが要ります。労働者の責めに帰すべき事由による解雇であれば、労働基準監督署の認定(除外認定)を受けることでどちらも不要になりますが、認定には時間がかかるのが難点です。アルバイトでは予告手当を払って即日解雇する例が多く、除外認定を待つのは懲戒解雇の形式を残す必要がある場合に限られます。

参考:e-Gov法令検索 労働基準法20条

業務委託なら善管注意義務違反を理由に契約を解除する

雇用ではなく業務委託で働く作業者が起こした場合は、解雇ではなく契約の解除になります。業務委託は法律上の準委任、つまり仕事の処理を任せる契約にあたることが多いものです。引き受けた側は、任された者として当然払うべき注意を払う義務、いわゆる善管注意義務を負います。勤務先の商品を使った悪ふざけを投稿する行為は、この義務に反すると主張できる場合が多いと考えられます。

参考:e-Gov法令検索 民法656条・644条

契約の実態が雇用でなければ、労働契約法の解雇規制は及びません。ただし指揮命令や勤務時間の拘束が強い場合は、名称にかかわらず労働者と判断され、解雇規制が適用されることがあります。6か月以上続く業務委託では、いわゆるフリーランス法上の解除予告(30日前)の要否も確認が必要です。委託契約書にもSNS投稿の禁止事項と解除事由を置いてください。

参考:e-Gov法令検索 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律16条1項

損害賠償額をあらかじめ決める条項は無効になる

労働基準法16条は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額をあらかじめ定めたりする契約を禁じています。

参考:e-Gov法令検索 労働基準法16条

バイトテロを起こしたら100万円を支払う、という誓約書や規程を作りたくなりますが、この条項は労働基準法16条に反して無効です。金額を予定する条項が無効になるだけで、実際に生じた損害を賠償請求すること自体は妨げられません。誓約書は金額を書くためのものではなく、禁止事項を周知し、懲戒事由を明確にするためのものと位置づけてください。違反すれば罰則の対象にもなる規定なので、既存の誓約書に金額が入っていれば削除が必要です。

バイトテロが該当する刑法上の罪と法定刑

バイトテロは、投稿の内容によって5つの罪に当たりえます。企業は被害届か告訴で刑事手続を求められますが、起訴するかどうかは検察官が判断します。法定刑は、2025年6月1日施行の拘禁刑への一本化を反映した現行条文です。

▼ バイトテロが該当しうる罪と現行の法定刑

罪名根拠条文法定刑
名誉毀損罪刑法230条1項3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
侮辱罪刑法231条1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料
偽計業務妨害罪刑法233条3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
威力業務妨害罪刑法234条3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
器物損壊罪刑法261条3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料

名誉毀損罪:刑法230条

具体的な事実を挙げて(摘示して)人の評判を下げた場合に成立し、その事実が本当かどうかは問いません。法人も対象です。アルバイト店員が厨房を使って落とした食材を調理しているような不衛生な行為を映した動画や画像などの投稿は対象になりえます。公共性のある事実を公益目的で示した場合に、真実だと証明できれば罰しない特例がありますが、悪ふざけの投稿がこれに当たる可能性は低いといえます。

侮辱罪:刑法231条

事実を摘示しなくても公然と人を侮辱した場合に成立します。2022年の改正で、拘留または科料に加えて1年以下の拘禁刑と30万円以下の罰金が法定刑に加わりました。店や会社を貶める抽象的な文言だけが添えられている場合に検討します。

偽計業務妨害罪:刑法233条

虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の業務を妨害した場合に成立します。ごみ箱に捨てた食材をまな板に戻す動画のように、客に提供されたかのような誤解を生む投稿は、偽計に当たる余地があります。2019年には、回転寿司チェーンの事案で撮影者らが偽計業務妨害の疑いで書類送検された報道もあります。

参考:NHK生活・防災 回転寿司店のバイトテロ 偽計業務妨害容疑で3人書類送検(2019年5月29日)

威力業務妨害罪:刑法234条

威力を用いて人の業務を妨害した場合に成立し、条文が前条の例によると定めるため法定刑は偽計業務妨害罪と同じです。商品を汚す様子を投稿して客を遠ざけ、店の営業を妨げる行為は威力による業務妨害と評価されることがあります。バイトテロで捜査機関が最初に検討するのは、この罪と偽計業務妨害罪です。客の迷惑行為でこの罪の疑いで逮捕された報道もあり、従業員の行為でも構成は同じです。

器物損壊罪:刑法261条

他人の物を損壊した場合に成立します。物理的に壊す場合だけでなく、食品を床に落として踏むなど、商品として使えない状態にする行為も損壊に含まれると解されています。この罪は親告罪で、企業が告訴しなければ検察官は起訴できません。被害届ではなく告訴状を出す必要がある点で、他の罪と手続が異なります。告訴は犯人を知った日から6か月以内に行わなければならず(刑事訴訟法235条1項)、示談交渉を続けている間にこの期間が過ぎることがあるので注意が必要です。

参考:e-Gov法令検索 刑法230条から234条・261条・264条

バイトテロが起きた直後に企業がとるべき初動対応

投稿を見つけてから最初の数時間で、その後に取れる手段の幅が決まります。順序を間違えると証拠が消え、処分が無効になり、拡散が止まりません。企業がとる手順は次のとおりです。

▼ バイトテロが起きた直後の対応手順

順序やること目的
1投稿と動画の保全、勤務記録の確保損害賠償、懲戒、刑事のすべての証拠になる
2本人と関係者からの事実確認誰が何をしたかの確定。弁明の機会は処分内容を示して別に設ける
3プラットフォームへの削除申出と拡散の抑止被害の拡大を止める
4公表と謝罪の判断企業の対応姿勢を示し、二次炎上を防ぐ
5警察への相談と損害額の算定刑事告訴の要否と請求額の確定
バイトテロが起きた直後に企業がとるべき初動対応

投稿と勤務記録を削除の前に保全する

削除を急ぐと、請求の根拠になる証拠が先に消えます。投稿のURL、投稿日時、アカウント名、動画本体と表示回数のスクリーンショットを、削除申出より前に確保してください。本人の勤務シフトと、投稿時刻に誰が店内にいたかの記録も、関与者の特定に使います。

本人からの聞き取りは事実確認として行い、日時と出席者、聞いた内容を記録に残します。懲戒手続における弁明の機会は、これとは別に、懲戒事由と予定する処分を本人に示したうえで設けてください。本人が未成年の場合は保護者の同席を求め、長時間の聴取や署名の強要は避けます。

プラットフォームへの削除申出は7日以内に結果が通知される

2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法は、総務省が指定した大規模なプラットフォーム事業者に次の義務を課しています。削除の申出を受け付ける方法を公表すること。申出があれば遅滞なく調査し、申出の日から7日以内に、削除したかどうかとその理由を通知することです。

参考:e-Gov法令検索 情報流通プラットフォーム対処法22条・23条・25条1項

参考:e-Gov法令検索 情報流通プラットフォーム対処法施行規則16条

企業が申し出る場合は、投稿によって企業の名誉権、信用、営業上の利益が侵害されていることを、保全した投稿をもとに具体的に示します。ただし、実際に起きた出来事を映した投稿は真実の事実摘示として違法性が否定されることがあり、企業側からの申出では削除が認められないケースもあります。従業員本人の同意による自主削除や、プラットフォームの利用規約に基づく申請とあわせて検討してください。転載先や切り抜き動画には個別の申出が要ります。手続の詳細は別の記事にまとめています。

公表と謝罪、警察への相談は順序を決めて進める

公表するかどうかは、投稿がすでに店名つきで拡散しているかで決まります。拡散している場合、企業からの説明が無いまま時間が経つほど、隠していると受け取られます。当日は事実確認中であることや衛生面の対応を第一報として出し、処分が確定した後に処分の事実と再発防止策を第二報として出す形が現実的です。公表文には従業員個人を特定できる情報を入れません。入れれば、企業側が名誉毀損やプライバシー侵害を問われる原因になります。過去には、解雇された従業員がネット上で反論を始めて炎上が拡大した例もあります。処分の通知を先に済ませ、可能であれば口外禁止を含む合意を取ってから第二報を出す順序が望ましいところです。

警察への相談は、刑事告訴の要否を決めるために早い段階で行います。器物損壊罪は親告罪で告訴が必要ですが、業務妨害罪は親告罪ではないため告訴は要りません。示談が成立した場合に告訴を取り下げる、あるいは処罰を求めない意思を示すことはありえます。ただし、告訴を持ち出して支払いを迫る交渉は恐喝や強要と評価される危険があるため、交渉は弁護士を通して行ってください。

バイトテロを防ぐ就業規則とSNSポリシーの整備

予防の中心は、禁止事項を規程に置き、従業員に周知し、違反したときに処分できる状態を作っておくことです。研修やスマートフォンの持ち込み制限も効果はありますが、規程と周知が無いと、処分の根拠を争われます。

就業規則にはSNS投稿の禁止事項と懲戒事由を明示する

会社の名誉や信用を損なう行為の禁止という包括的な条項だけでは足りません。勤務中の撮影、店舗内で撮影した画像や動画の投稿、会社や店舗を特定できる投稿を、禁止事項として書き出します。そのうえで違反を懲戒事由に紐づけ、処分の種類を明示します。

条項は自社の業態に合わせて調整が必要で、公開されているひな形をそのまま使えば足りるものではありません。解雇の章で触れたとおり、違反した場合の賠償額を規程や誓約書に書くことはできません。金額の条項は労働基準法16条で無効になるだけでなく、規程全体の信頼性を下げます。

誓約書と研修でアルバイトにも周知して初めて効力を持つ

就業規則は、従業員に周知されていて初めて労働契約の内容になり、懲戒の根拠になります。使用者には、就業規則を掲示するか書面を交付するなどの方法で周知する義務があります。正社員には配っているがアルバイトには見せていない運用は、懲戒の場面で穴になります。

参考:e-Gov法令検索 労働契約法7条・労働基準法106条

入社時にSNS投稿に関する誓約書を取り、年に1回は短時間でも研修を行って記録を残すと、周知の証拠になります。誓約書には禁止事項と、違反した場合に懲戒の対象となることを書きます。社員による社内情報の漏えいへの備えは、別の記事でまとめています。

バイトテロの損害賠償に関するよくある質問

バイトテロの損害賠償請求に時効はありますか

あります。不法行為による損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年で時効になります。加害者が分からないままでも、行為から20年で消滅します。バイトテロでは投稿を発見した時点で加害者も判明していることが多く、その時から3年が起点になります。示談交渉が長引く場合、書面での催告は6か月の猶予にしかなりません。協議を行う旨の書面での合意を取るか(民法151条)、本人に債務を認める書面を出してもらう(民法152条)ことで時効を管理してください。労働契約違反として請求する場合の時効は5年です(民法166条1項1号)。

参考:e-Gov法令検索 民法150条から152条・166条・724条

示談に応じるべきか、それとも訴訟にすべきですか

回収できる見込みと、刑事告訴を続ける必要があるかで決めます。本人が事実を認め、親が交渉に出てきて、拡散が止まっているなら、実例の章で触れたとおり示談で早期に終える方が企業の回復は早くなります。本人が18歳未満なら、親権者も合意書の当事者に。相手が責任を認めず、削除に応じず、拡散を続けている場合は、訴訟と告訴を並行して進めます。

客が起こした迷惑行為も同じように請求できますか

考え方は同じですが、客には労働契約がないため、解雇や懲戒の論点がなく、不法行為だけを根拠にします。客の迷惑行為に問える責任と回転寿司チェーンの事案の経緯は、別の記事で扱っています。

まとめ:バイトテロの損害賠償と解雇は弁護士に相談を

バイトテロを起こした従業員には、損害賠償の請求、懲戒解雇、刑事告訴を並行して進められます。請求できるのは商品や設備の損害から休業損害までが中心で、売上減少や株価下落は切り分けと証明が壁になります。1,385万円の請求が約200万円の和解で終わった実例が示すとおり、本人の資力と示談の判断で決着額は変わります。

請求先は本人に限らず、撮影した同僚や拡散した者にも広がる余地があります。解雇には就業規則の根拠と弁明の機会が要り、賠償額を予定する条項は無効です。投稿を見つけたら、削除より先に保全し、聞き取りと削除申出、公表、警察相談の順で進めてください。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。バイトテロの事案では、投稿の保全と削除申出、損害賠償請求と示談交渉、懲戒処分の手続、刑事告訴の要否の判断までを一連で担当します。拡散して消えなくなった動画は、デジタルタトゥー対策として継続的な削除にも対応しています。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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