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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

ネット炎上した際、企業がとるべき対応とは?

風評被害対策

「炎上」とは、「ネット上で特定の対象に対して批判が殺到して収まりがつかなくなった状態」もしくは、「特定の話題に関する議論の結果多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる状態」とされています。

炎上発生件数はモバイルとSNSが普及し始めた2011年を境に急激に増加しており、毎月100件ほどの個人・企業が炎上の対象となっていると言われています。

企業に発生するネット炎上は、「ユーザーからの不買運動」や「お得意先からの取引停止」をはじめ、様々な方面でネガティブな結果をもたらす可能性があります。

では、企業が炎上にあってしまったとき、どのような対策が可能なのでしょうか。詳しく解説していきます。

企業炎上の3つの類型

企業の炎上をその形態から分類した3種について、詳細を個別に解説します。

営業・売上に影響を及ぼす場合

企業活動や商品に関する悪評が流れて、売上が下がってしまう場合があります。たとえばバイトテロ(飲食店で働く非正規雇用の従業員が商品等を使用して悪ふざけする様子をSNSに投稿した事例)や、従業員の言動(ホテルや不動産会社の従業員が、芸能人や客に関するプライバシーを晒してしまった事例)などがきっかけとなって炎上した場合です。商品の欠陥に関する根も葉もない噂(商品に異物が混入していたなど)がSNS上で広まることもあります。こうした場合、営業・売上に大きな影響が生じます。

求人・採用に影響を及ぼす場合

「あの会社はブラック企業だ」など、職場環境や人間関係に関する悪評を立てられることによって求人に対する応募が激減するなどの場合があります。かつては求人の媒体といえばタウンページくらいでしたが、今ではほとんどがスマホやPCです。新卒の就活生や転職希望者のほとんどが検討している会社の名前をネット検索しています。ネットを使っていない求人は存在しないと言ってもいい状況だからこそ起こるケースですが、退職者や不満を持つ社員によって投稿された記事等が悪影響となり、応募を辞める懸念があります。

上場審査の障害になる場合

ネット上での「あの企業は法令違法をしている」等の記事や評判が、上場審査の大きな障害になる場合があります。新規の上場申請に伴って監査法人に上場審査のアドバイザーとして入ってもらうことがありますが、その監査法人からネット上での自社のレピュテーション(社会的評判・評価)に指摘が入ったら、速やかに対応しなければなりません。

企業炎上への備え

事業者は、ネットを通じて売上や求人に悪影響が出ている場合、「自社が風評被害に遭っている」と考えていいでしょう。

主力商品の種類が少なく、かつそれらをECサイト経由で販売している中小企業の場合、一度の炎上で商品売上がほぼゼロになる可能性もあります。現在では、多くのユーザーが商品を購入する際にネットで事前検索するので、検索エンジンのファーストビュー(検索結果画面で最初に表示される範囲)にマイナス情報が書かれていると、購入率が下がる確率が非常に高くなります。

したがって、自社の企業名や商品名を検索サイトで検索し、その結果の1ページ目を、定期的に監視することが必要です。

また、売上や求人を特定のサイトに依存する割合が高いのであれば、そのサイト内の自社に関するページのコメント欄を注視すべきです。

転職系の口コミサイトに関しては、主要なサイトがいくつかありますが、社名で検索した際、最初に表示される転職サイトが企業によって異なるので、最上位に表示されるサイトから順に対応を考えることが重要となります。

中小企業や個人事業主の場合、オフラインでの人間関係のこじれがオンラインに出てしまうパターンが多いため、退職する従業員やユーザーへの対応に気をつけておくことが大切です。

炎上の実態

炎上の媒体や、炎上に参加する人について、知っておくことが必要です。

炎上の媒体

5ちゃんねるなどの匿名掲示板が炎上を起こしやすいと考える人が多いのですが、現時点で最も炎上リスクが高い媒体は、Twitterです。炎上が広がり、まとめブログや匿名掲示板、ウェブメディアなどがTwitterの投稿を引用することで拡散が大きくなっていくケースが多く、自殺した女子プロレスラー木村花さんへの誹謗中傷も、Twitterが舞台のひとつでした。

ブログが炎上することもありますが、Twitterに意見が投稿されることで拡散し、炎上が広がる場合が多いと言えます。Twitterは、あまり深く考えずに言葉を垂れ流していく性質であることから、炎上が広がりやすい媒体だといえるでしょう。

最近では、YouTubeやInstagramなどの、ライブ配信・動画・画像が炎上に発展する場合も増えています。ネットメディアでも動画や画像に関するサイトが注目されており、これに比例して炎上の数も増えているというわけです。今後は、動画や画像に対しても注意を払う必要があるでしょう。

炎上参加者

様々な調査結果がありますが、炎上参加者はネット利用者の数パーセント以下のごく少数にすぎないという点において共通しています。

こうして生み出される炎上は、「数人いれば作れてしまう」ということを知っておいたほうがいいでしょう。炎上はひとりで作り出すことは難しいですが、3人いれば簡単に作れてしまいます。中小企業の場合には、犯人は特定少数と考えて差し支えありません。まとめサイトなどで生み出される炎上は、不特定多数が批判しているように見えますが、発信者情報開示請求を行い発信者を特定すると、投稿元は3人くらいしかいなかったなどということがよくあります。

炎上への対応

自社がネット炎上してしまったら、どのように対応すればいいのでしょうか。判断を間違えると、一般ユーザーからますます怒りや不満を買ってしまい、火に油を注ぐこととなる可能性があります。

落ち着くこと

炎上のショックで取り乱してしまうことが多いのですが、冷静な対応こそが必要です。

例えば、自社アカウントで炎上が起きた場合、慌てて問題の投稿等を削除すると、ユーザーは「隠ぺい」「誤魔化し」と捉える可能性が高く、炎上が加速する場合が多くあります。

また、対応や発言が一貫せず、「不誠実だ」とされてしまったら、収拾不可能となってしまいます。政治家の常套である「誤解があったようですが」などという不誠実な対応は、致命的です。「悪いのは誤解したあなた達の方だ」と、開き直っていると思われてしまいます。

謝罪は方針が決まってから

炎上するだけの原因がこちら側にあるのであれば、謝るほかありません。誠実に、何よりも一貫した姿勢で、不必要なことは言わずに謝罪しましょう。しかし、その場合にも、謝罪するという対応策を企業として決定してから、実行することが大切です。

反論する場合には、筋が通っているのかどうか、判断が独りよがりにならないよう、弁護士等の外部コンサルを使うべきだと言えます。

無視した方が良い場合

売上や求人に支障がないと判断できれば、スルーした方が良い場合もあります。全国規模で展開している大企業や公的機関でなければ、スルーする方が速やかに鎮火し、被害が小さくて済む場合が多くあり、中小企業や個人事業主の場合は特に状況判断が必要です。こうした判断も、弁護士等外部コンサルの客観的な判断にゆだねる方がいいと言えます。

原因の削除

炎上の原因やきっかけがネット上の外部ページにある場合、それらはどうすれば削除できるのでしょうか。

まずその書き込みが「事実」なのか、それとも個人の「感想」なのかを区別する必要があります。嘘であれば消しやすいですが、個人の感想(店員の対応が悪い、商品が美味しくないなど)については削除申請しにくいと言えます。

ただし、飲食の口コミサイトやSNSに関しては別の判断軸があり、投稿が「利用規約違反」ということなら削除を申請し、認めてもらえる可能性があります。飲食の口コミサイトやTwitterなどは、自由な言論を形成することでプラットフォームとしての価値を形成しているのですが、自分たちで利用規約を決めている以上、違反の事実があれば話が通しやすくなります。

各サイトとも、しっかりとした規約をつくっているので、投稿が規約に反しているかということを論証できれば削除申請が可能です。

転職口コミサイトの場合、消せるか否かの判断基準はその投稿が事実であり、具体的かどうかという点にあります。もちろん、こちらも利用規約を定めているので、規約違反による削除申請を検討することが可能です。

まとめ

ネットの普及に伴い、特定の対象に批判が殺到して収まりがつかなくなる「炎上」が増加しています。

企業のネット炎上は、売上や求人へ悪影響を及ぼし、冷静かつ迅速な施策が必要となります。その判断は個別の案件により異なり、複雑で、対応を誤ると事態を悪化させとりかえしのつかない大炎上となるおそれがあります。

もし炎上してしまった場合は、すみやかに経験豊かな弁護士にご相談ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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