弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

Facebookでの誹謗中傷への対処法とは?誹謗中傷の例を踏まえて解説

風評被害対策

Facebookでの誹謗中傷の実例と刑事・民事の責任追及

Facebook は、月間ユーザー数が世界第1位のSNSです。日本国内でも高い人気を誇り、現在は30代以上の人が多く使っているSNSといわれています。本記事では実例を紹介しながらFacebookにおける誹謗中傷とその対処法について解説していきます。

Facebookの特徴

Facebookには、TwitterやInstagram等のSNSとは異なる3つの特徴があります。

実名でのアカウント登録が基本

Facebookは、コミュニティ規定において「利用者が日常的に使用する名前をアカウントに使用すること」「ご自身に関する正確な情報を提供すること」とあるように、実名での登録と利用が基本です。実名で利用していないことが判明すると、本名に訂正するまでの間、アカウントが停止されることもあります。

参照サイト:アカウントの保全性と実名の使用(Facebookコミュニティ規定)

ビジネスとしての利用も多い

実名での利用が原則とされているFacebookの性質から、フリーランサーや会社役員などがFacebookにおいて、自分のビジネスを展開している例も多くあります。

他のSNSと比較すると誹謗中傷は少ない

Facebookでは、顔写真を載せているユーザーも多く、設定によって出身地や、出身の学校、勤務先なども公開できるため、同姓同名の人から個人を特定しやすいです。そのため、知人を見つけやすいという利点がある反面、自分も知人から見つけられやすいというリスクがあります。

したがって、悪質な書き込みや行為をすると、親しい友人、知人や同僚などに直ちに知られてしまいます。この匿名性の低さから、Facebookにおいては、他のSNSに比べて誹謗中傷の件数が少ないと言われています。

参照サイト:読売新聞オンライン:昨年の誹謗中傷投稿削除、FB5万件・インスタ10万件…メタが国内分公表

参照サイト:一般社団法人セーファーインターネット協会:誹謗中傷ホットライン概要資料

Facebookで誹謗中傷を受けた場合に被る影響

Facebookでは実名アカウントが基本だからこそ、誹謗中傷を書き込まれた場合、その内容が近しい人に知られてしまいます。

他のSNSや掲示板のように不特定多数に誹謗中傷が拡散することは少ないです。しかし、近しい人だからこそ、「〇〇さんがこんなことを言われている」「××さんって、そういう人だったのかな」と、具体的に悪い印象を抱くことに繋がりかねません。近しい人に誹謗中傷の内容が具体的に伝わってしまうからこそ、実生活において不特定多数に広まるより重大な悪影響を被る可能性があります。

また、Facebookのページは検索に強いため、YahooやGoogle検索で上位に表示されやすいという特徴があります。そのため、誹謗中傷を受けたときには、他のサイトに比べても、よりいっそう被害が拡大する可能性もあります。

Facebookにおける誹謗中傷の事例

以下では、Facebook上での誹謗中傷の事例を挙げるとともに対処手段について解説していきます。

本人のコメント欄での誹謗中傷

本人に対する害意がある場合は当然として、害意がなくても、他者の投稿やコメントを批判して結果的に誹謗中傷してしまうことがあります。Facebook上の友達は実生活上の知人・友人であることが多いため、距離感の近さゆえに、本人にとっては他人に知られたくない情報である名誉やプライバシーに関する情報が書き込まれることがあります。実際、過去の経歴や犯罪歴、恋愛歴を公表されたり、明らかにしていない住所や勤務先などを書き込まれるという、個人情報の漏洩というトラブルも生じています。

相手アカウントのタイムライン上での誹謗中傷

誹謗中傷を受けている本人のタイムラインではなく、誹謗中傷する側のタイムライン上で本人を名指しにして、本人からは見えないところで誹謗中傷を書き込んでいるケースもあります。この場合、知人や友人には誹謗中傷されていることを隠せませんし、個人情報の漏洩を止めることもできません。

仕事上の誹謗中傷

Facebookを仕事上のツールとして活用している人も多いので、仕事上の評判を低下させることを広められたり、コメントに書かれたりするケースがあります。「仕事上でトラブルを起こしたことがある」「この会社はブラックだ」「接客態度が悪い」などの書き込みによって、売り上げが低下したり会社の信用が毀損される可能性があります。

写真投稿とタグ付け

写真を勝手に投稿され、タグ付けされることがあります。このとき、タグ付けされた相手にも同じ投稿がタイムラインで流れてしまいます。その写真を見た他の人が意図せずに誹謗中傷を拡散してしまうこともあります。

このような問題をあらかじめ防ぐためには、個人の設定画面から、設定、タイムラインとタグ付けを選択して、タグ付けについての公開の設定を事前にしておくとよいでしょう。そうすると、あなたがタグ付けされた写真が公開される前に、公開していいかどうかをあなたが判断できるようになります。

ネットストーカー被害

Facebookでは、本人を特定することが容易な上に、日々起きたことを気軽に投稿しやすいので、その人がその日どんな行動をしたのか、誰といたのかということを、逐一把握できることがあります。

元配偶者や元交際相手、あなたに片思いをしていた人などがFacebookのアカウントをチェックしてつきまとい、個人情報を調べ上げたり執拗にメールを送ってきたりという、ネットストーカーになることもあります。そしてネットストーカーによって個人情報や秘密が暴露される、被害者の社会的評価を下げるような虚偽の情報を流されるといった誹謗中傷に発展する事件が起きています。

関連記事:ネットストーカーの定義は?警察が動いてくれる基準を解説

リベンジポルノ被害

元配偶者や元交際相手が、拒否されたことの仕返しとして、相手の裸の写真や性的場面の動画などを公開する行為をリベンジポルノといいますが、画像や動画も投稿できるというFacebookの機能を使ったリベンジポルノの被害も発生しています。

なりすまし行為

「なりすまし」は同姓同名のFacebookのアカウントを開設し、プロフィール画像を本人の写真にする等して、あたかも本人のアカウントであるように見せかけるもので、Twitterでも同様のなりすまし行為が問題になっています。

なりすましたアカウントで第三者を誹謗中傷する内容の投稿やコメントを行うと、周囲の人からは本人が誹謗中傷をしているように受け取られてしまいます。その結果、本人の社会的評価が低下してしまいます。

関連記事:なりすましの削除やIPアドレス開示請求

乗っ取り行為

乗っ取り行為とは、他者によって自己のアカウントが不正にアクセスされ、使用されてしまう行為です。なりすましと異なり、本人のアカウントを実際に用いて投稿等がなされる点でなりすましと異なります。

Facebookには多くの個人情報があるためアカウントが乗っ取られると、乗っ取った者によってアカウント上の個人情報をすべて閲覧されてしまいます。乗っ取りによって得た情報を用いて誹謗中傷もやりたい放題となります。

実際に、乗っ取った人が本人名義で他者を誹謗中傷する投稿をしたり、卑猥な書き込みをしたことによって、本人の社会的評価が下がるというトラブルが生じています。こうしたトラブルに巻き込まれると、特に、ビジネスにFacebookを用いている場合、取り返しのつかないことにもなりかねません。

関連記事:不正アクセス禁止法で禁止される行為

なお、Facebook以外での名誉毀損によって社会的評価を低下させた事例については下記の記事にて解説しています。

関連記事:名誉毀損の成立に必要な社会的評価の低下とは?弁護士が解説

Facebookの誹謗中傷への対処の基本

Facebookの誹謗中傷への対処の基本

Facebookで誹謗中傷された場合、相手を法的に訴えることが可能ですが、実際に誹謗中傷されたという証拠がないと訴訟で勝つことが困難になります。そこで、誹謗中傷に対処するためには証拠が必要になるのですが、書き込みは削除することが容易なので、書き込みの存在を示すための証拠保全が誹謗中傷対処の基本になります。

証拠保全の方法としては、投稿したアカウントが分かるように書き込みをスクリーンショットすることで十分です。その際には、後からアカウントのユーザー名や写真を変更されても困らないようにページのURLも映るようにして撮るべきでしょう。

また、単独の書き込みでは誹謗中傷と認定するのが難しい場合には、誹謗中傷と認定できるように前後の投稿も併せて撮っておくことが重要です。

既に述べたように、Facebookの誹謗中傷への対処において基本となるのは証拠保全です。もっとも、Facebookにおける誹謗中傷の対処法は複数あり、証拠保全が不要な方法もあります。以下では、それぞれの方法について解説します。

アカウントをブロックする

誹謗中傷がそれほど悪質なものではなく、相手とのつながりを絶つことでトラブルが解決するというのであれば、相手のアカウントをブロックすればいいでしょう。

例えば○○さんの投稿右上のマークをクリックし、次画面の「サポートを依頼または投稿を報告」をクリックし、「次に進むには問題を選択してください」画面の、「〇〇さんをブロック/この相手とやり取りできなくなり、お互いに表示されなくなります」「○○の投稿をすべて非表示にする/この人の投稿がニュースフィードに表示されなくなります」のどちらか、もしくは両方を選んで「送信」すれば終了です。

この方法による場合、証拠保全の必要性は必ずしも高くないでしょう。

本人に直接お願いする

誹謗中傷を行っている本人に、Messengerというアプリを使って誹謗中傷をやめるよう連絡するという方法もありますが、もともとお互いが感情的になっている場合、誹謗中傷がさらにエスカレートしてしまう事になり逆効果です。また、やり取りを画像として保存され、悪用される可能性もあるためお勧めできません。

この方法による場合も、やはり証拠保全は必要ではないと思われます。

Facebookへ投稿内容の削除を依頼する

投稿が自身を誹謗中傷するものであり、削除したいと思ったときには、投稿右上の[…]マークをクリックし、次画面の「サポートを依頼または投稿を報告」よりFacebookへ報告しましょう。削除したいと思う対象がコメントの場合には、コメント横の[…]マークをクリックしてFacebookに報告しましょう。

報告を受けてFacebookの運営元であるメタ社は、報告内容をFacebookのコミュニティ規定に照らしてチェックします。そして、コミュニティ規定に違反していると判断された場合には投稿やコメントが削除される仕組みです。

ここで大切なことは、コミュニティ規定に照らして削除するかを判断する主体はあくまでメタ社であり、自分自身ではないということです。したがって、自身は削除してほしいと思っていても削除されないということが起こり得ます。

この方法による場合、Facebookへの報告に際して画像を添付できるため証拠保全が有効であると思われます。また、仮にメタ社によって削除してもらえなかった場合、訴訟や仮処分によって削除を求めることが可能ですが、その際、請求が認められるためには書き込みの存在を証明する必要があります。したがって、証拠保全の必要性は高いといえるでしょう。

Facebookへアカウント削除を依頼する

誹謗中傷が同一のアカウントによって継続的に行われるような場合には、Facebookに当該アカウントのプロフィールやページから報告をすることが可能です。当該アカウントの内容や行為がFacebook利用規約に違反していると判断された場合、アカウント停止処分が科されます。

あくまで停止処分であり、アカウント削除ではないですが、Facebookのコミュニティ規定に重大な違反をした停止アカウントは、メタ社の審査による停止解除やアカウントの復元ができなくなるとされています。したがって、この処分がされた場合には当該アカウントを復元する手段がなくなるので事実上のアカウント削除処分に当たるといえます。

もっとも、アカウント停止処分を科すか、また、永久停止処分を科すかを判断するのはあくまでメタ社なので、報告したからといって必ず対処してもらえるわけではありません。

この方法による場合も、メタ社によって処分してもらえなかった場合、訴訟や仮処分で当該アカウントの投稿を削除するように請求できるので、書き込みの存在を証明するために証拠保全の必要性は高いといえるでしょう。

Facebookの誹謗中傷への法的対処

リベンジポルノ被害の場合

先にあげた「Facebookにおける誹謗中傷事例」の「リベンジポルノ被害」の場合には、Facebookの対応を待つことなく、速やかに警察に届けましょう。リベンジポルノ等の違法情報の通報を受け削除を行う窓口も、セーフラインによって開設されています。

刑事の責任追及

他人を誹謗中傷する投稿やコメントをする行為には名誉毀損罪が成立する可能性があります。

公然と事実を摘示し、人の名誉を損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法第230条1項

不特定多数に公開された場で、具体的事実を取り上げ、人の社会的評価を低下させるような行為をした場合には、名誉毀損罪に問われる可能性があります。例えば、「犯罪者○○」という事実に反するワードとともに○○の写真を投稿すれば名誉毀損罪が成立します。また、本人になりすまして卑猥な画像や文章を投稿した場合なども、これに当たります。

「死ね」や「バカ」、「ブス」のように具体的事実を取り上げないで人の社会的評価を低下させた場合には、侮辱罪が成立する可能性もあります。

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法第231条

なお、名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪といって、告訴か告発がないと刑事責任を追及することができない犯罪なので、処罰を望む場合には告訴か告発を行う必要があります。

関連記事:意見ないし論評を含む表現の名誉毀損の成立要件とは

誹謗中傷の内容によっては、脅迫罪にあたる可能性があります。

1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法第222条

「殺す」や「家に火をつける」はもちろんですが、「勤め先に悪い噂を広める」という場合も脅迫罪にあたる可能性があります。

関連記事:ネットにおける誹謗中傷と脅迫罪

また、虚偽の情報を書きこんで相手方の経済的な信用を損ねた場合には信用毀損罪が成立する可能性もあります。

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法第233条

民事の責任追及

誹謗中傷をしてきた加害者に対しては、民事上の責任を追及することもできます。その場合には、書き込みをしたアカウントが誰のものなのか、個人特定をすることが必要です。

まず、Meta Platforms,Inc.に、発信者情報開示の仮処分を申し立てます。Meta Platforms,Inc.はアメリカ合衆国の法人です。海外サイトと国際管轄の問題については、当サイトの別記事をご参照ください。

関連記事:FacebookやAmazon等の海外サイトと国際裁判管轄

日本の裁判所で申し立てを行えますが、仮処分命令が認められるとMeta Platforms,Inc.は情報を開示しますので、次に、特定した経由プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を行い、発信者の本名や住所などを特定します。

関連記事:書き込みした犯人を特定する「発信者情報開示請求」とは?

発信者を特定したら、名誉毀損や侮辱に当たるような投稿・書き込みであれば、損害賠償を請求することができます。また、投稿により精神的損害を受けたとして慰謝料を請求することも可能です。早期段階で専門の弁護士へ相談をお勧めします。

まとめ:Facebookにて誹謗中傷を受けたら弁護士へ相談しましょう

Facebookで誹謗中傷を受けた場合、仮処分や損害賠償請求の訴訟をするためにはMeta Platforms,Inc.の資格証明書を取得する作業から始める必要があります。また、仮処分を認めてもらったり、裁判に勝つには、その他にも法律やインターネットについての豊富な知識が必要です。

また、ある表現が誹謗中傷に当たるかどうかの判断も法律の専門家でなければ困難な時があります。Facebookで誹謗中傷を受けたときには、まず弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る