ドローンレベル4飛行解禁、関連ベンチャーが理解すべき法律を解説
2022年(令和4年)、ドローンの「レベル4」飛行に向けて航空法の改正が行われ、さまざまなビジネスでのドローン活用への可能性が大きく広がりました。一方で、ドローンの活用に関しては、近年急速に拡大したということもあり、どのような法律の規制があるかがあまり認識されていないのが現状です。
ドローンにおいてはその飛行の安全性を確保したり、適法に無線通信を行ったりするために、導入にあたっては、各種法律に抵触しないよう注意しなければなりません。
ここでは、ドローン関連ビジネスを始める際やドローンを導入するにあたって知っておくべき法律について解説します。
この記事の目次
ドローン関連ビジネスとは
ドローン市場は、近年急速に発展し、世界で注目されている新しいビジネス分野です。ドローン関連ビジネスには、日本において、15分野合計39の産業・業務用途があると言われており、大きな可能性を秘めたビジネス分野として注目を集めています。
例えば、ドローンビジネスの4割を占めるインフラ・点検分野では、現在、災害等の緊急時の医薬品や医療品の配送に関する実証実験が行われており、産学官連携で医薬品の配送ガイドライン、防災計画・協定等の策定が予定されています。
また、人を乗せるドローンタクシーは、海外でも開発が進められていますが、ヘリコプターにはない利点が数多くあると言われています。とりわけドローンは、騒音が少なく、エコであることが利点ですが、パイロットにかかる費用を抑えるため、自動運転も開発されています。
ドローンに関係する8つの法律
ドローン飛行には、屋外で飛行する場合の法的規制として「航空法」と「小型無人機等飛行禁止法」が挙げられます。他にも、下記を関連法令として知っておくとよいでしょう。
- 航空法
- 小型無人機等飛行禁止法
- 電波法
- 民法(プライバシーの侵害・肖像権・個人情報保護法・損害賠償)
- 道路交通法
- 重要文化財保護法
- 条例・都立公園法
- 自然公園法・国有林・海岸法・港則法・海上交通安全法
航空法(国土交通省)
ドローン飛行に関わる日本の法律は、ドローン等の重量がこれまで200g以上が航空法の規制対象となっていましたが、2022年6月20日より機体登録制度が施行され、100g以上のドローン等は、国交省への登録と機体への登録ID表示が義務化されます。
そして、ドローンを「登録なしで利用した場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される」ことになります。
2022年12月には、機体認証や操縦ライセンスを含めた、飛行レベル4(有人地帯での目視外自律飛行)に向け、安全確保の管制システムや法整備が全面的に施行されました。
飛行方法の規制としては、以下の8つがあります。
- 飲酒時・薬使用時の飛行禁止
- 危険な飛行禁止
- 夜間飛行の禁止
- 目視外飛行の禁止
- 人や建物等と30m以上の距離の確保
- 集会場上空での飛行の禁止
- 危険物輸送の禁止
- 物件投下の禁止
なお、上記3~8を行うには、国土交通大臣の承認が必要です。
小型無人機等飛行禁止法(警察庁)
ドローンを飛ばす上で覚えておかなければならない法律は「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(以下、小型無人機等飛行禁止法)」です。
同法は国が指定する重要施設とその周辺でのドローンの飛行を禁止を定めています。ドローンは使用にあたっての手軽さや機動性によって、国の重要施設の上空を飛行することも可能です。ですが、悪用されるとテロなどの大きな危険を招くおそれもあります。
2015年には首相官邸の屋上に小型のマルチコプターが落下した事件がありました。こうした事件を受け、同法が制定された経緯があります。
小型無人機等飛行禁止法第13条によると「違反した者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます(小型無人機等飛行禁止法第13条)。
規制対象となる小型無人機等
規制対象となる小型無人機等の飛行は、以下の2つです。
- 小型無人機を飛行させること
- 特定航空用機器を用いて人が飛行すること
「ドローン等」とは、飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるものをいいます。
(例) ドローン(マルチコプター)、ラジコン機、シングルローター、固定翼機、農薬散布用ヘリコプター等
「無人航空機」とは、「ドローン等」のうち、100g以上の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものをいいます。
「特定航空用機器」とは、操縦装置がある気球、ハンググライダーなどの人が飛行して高度や進路を変更できるものを指します。
参考:警視庁| 小型無人機等飛行禁止法について
飛行禁止区域
指定対象施設の敷地・区域の上空(レッド・ゾーン) と、その周囲おおむね300mの上空(イエロー・ゾーン)においては、小型無人機等の飛行を禁止されています。
「レッドゾーン」に該当する施設としては、
- 国の重要な施設等(国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居等)
- 危機管理行政機関の庁舎
- 対象政党事務所
- 対象外国公館等
- 対象防衛関係施設
- 対象空港
- 対象原子力事業所
などが挙げられます。
なお、このほかにも、外国要人の来日等に伴い、一時的に対象施設が追加されることがあります。
参考:警視庁|小型無人機等飛行禁止法に基づく対象施設の指定関係
ただし、例外として下記の場合に限り、小型無人機等の飛行禁止に関する規定は適用されません。
- 対象施設の管理者又はその同意を得た者による飛行
- 土地の所有者等が当該土地の上空において行う飛行
- 土地の所有者の同意を得た者が、同意を得た土地の上空において行う飛行
- 国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
ですが、レッドゾーンでは、
- 土地の所有者若しくは占有者が当該土地の上空において行う飛行
- 国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
であっても、対象施設の管理者の同意が必要です。
電波法
電波を利用するには、国内の技術基準に適した無線設備を使用し、総務大臣の免許や登録を受け、無線局を開設しなければなりません。
ただし、微弱な無線局や一部の小電力無線局の場合にはその必要はありません。
例えば、総務省の「技術基準適合証明」と「技術基準適合認定」を受けた「技適マーク」の付いているスマホ等の無線機器は、日本で通信をすることを許可されています。 一般的に市販されているドローンは、電波法が定める無線局免許や無線従事者資格の取得を求められることはほとんどありません。
しかし、海外から輸入したドローンは「技適マーク」が付いていないことがあるため注意が必要です。
産業用ドローンを使用するケースでは、「5.7GHz帯」の電波が用いられていることが多く、そのドローンを飛行させるには「無線局免許」及び「第三級陸上特殊無線技士」以上の資格が必要となります。
また、移動通信システムをドローンに搭載して使用する場合には「実用化試験局の免許」を取得する必要があります。
民法(プライバシーの侵害・肖像権・個人情報保護法・損害賠償)
ドローン等を撮影に使用する場合は、個人を特定するものや著作物が映らないようにしなければなりません。 撮影したデータが漏洩することのないよう、その取扱いにも注意が必要です。
また、ドローンを飛行させることによって、財産を含め、他人に属する権利を侵害した場合は、損害賠償が求められる可能性もあります(民法第709条、第710条)。
道路交通法
公道でのドローン等の離着陸・飛行は交通の妨げとなるので、警察署長の道路使用許可が必要です (道路交通法第77条)。
重要文化財保護法
ドローン等を飛行させる場所が、著作権や毀損防止を目的として撮影や飛行を禁止されている区域かどうかをあらかじめ所有者に確認する必要があります。
条例・都立公園法
ドローン等を飛行させる場所が、撮影や飛行を禁止されている区域か確認する必要があります(東京都立公園では全面的に禁止されています) 。
自然公園法・国有林・海岸法・港則法・海上交通安全法
自然公園や国有林、海岸・海上(水中)で飛行する場合の許可申請先は次のとおりです。
- 自然公園 →環境省あるいは都道府県
- 国有林 →農林水産省(林野庁/森林管理局)
- 海岸・港 →港湾局あるいは地方公共団体
- 領海の海上 →海上保安庁
- 公海の海上 →許可不要
まとめ:ドローンビジネスを開始する前に弁護士に相談を
以上、ドローン関連ビジネスにおいて、知っておくべき法律について網羅的に解説しました。
2022年(令和4年)には、ドローンにまつわる航空法の大幅な改正が施行され、ドローン活用の可能性が広がりましたが、ドローンを用いてビジネスを行う場合には、これらの法律に抵触しないよう注意することが重要となります。 特に、飛行に伴う人や財産への危険を考慮に入れ、安全に飛行することが必須となります。また、飛行する場所や状況に応じて、適切に許可・承認を得る必要があり、これに違反した場合には罰則が科されます。
ドローンに関する法規制については専門的な法律知識が要求されるため、あらかじめ弁護士に相談をすることをおすすめします。
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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。ドローンビジネスのローンチにあたっては高度に専門的な法的知識が必要です。当事務所は様々な法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。
モノリス法律事務所の取扱分野:IT・ベンチャーの企業法務
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務