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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

LINEで脅されたら脅迫罪が成立する?知っておくべき対処法を解説

風評被害対策

LINEは、韓国NAVER Corporation(旧:NHN Corporation)傘下の日本法人であったNHN Japan株式会社が開発したアプリケーションソフトです。NHN Japanは後にLINE株式会社へ商号変更しました。

その後、経営統合等を経て、2023年10月1日にLINE株式会社はZホールディングス株式会社(Yahoo! JAPANなどを傘下に持つソフトバンクグループの企業)などと合併し、「LINEヤフー株式会社(LY Corporation)」となりました。

現在、LINEアプリの開発・運営はこのLINEヤフー株式会社が行っています。

NHN創業者の李海珍(イ・ヘジン)氏が、東日本大震災の時、被災者が家族や親戚と連絡を取ろうとして右往左往する映像を見て発案したとされています。

LINEの特徴

LINEは利用者が相互にアプリをインストールしておけば、通信キャリアや端末を問わずに複数人のグループ通話を含む、チャット機能や音声・ビデオ通信が可能です。通話サービスは通常の音声電話と異なりパケット通信を利用するインターネット電話なので、通話料金を課金されることなく無制限に通話が可能となります。

そのため無料提供されているアプリケーションは「無料通話」などと宣伝されており、この「無料」という宣伝文句が、LINE人気を加速させたと言えるでしょう。

LINEは、インスタントメッセンジャーIDとして、電話番号もしくはFacebookアカウントを利用しており、新規登録・ログイン時にSMS認証で電話番号が確認されます。本アプリケーションは利用開始時に端末電話帳を読み込み、LINEを利用している電話帳登録済みの人々と意思疎通することができる、つまり電話帳連動なので、導入、使用開始が簡単です

LINE独自の機能

LINEのトークでは互いのメッセージが吹き出しで表⽰され、時系列順に連なっていきます。極めてシンプルなスタイルですが、これによって過去に遡って話の内容を確認することもできます。更に「グループ」を設定すれば複数⼈でメッセージのやり取りが可能になります。この、吹き出しの便利さ、見た目の楽しさも、LINE人気の原因の一つでしょう。

LINE利⽤の醍醐味ともいえるスタンプ機能も、LINE⼈気に⼤きく寄与したと⾔えるでしょう。これまでにも絵⽂字はありましたが、あくまでも⽂章の補助的な役割を果たすに過ぎず、文章の後に笑顔のマーク等の絵⽂字を付ける程度でした。しかしLINEのスタンプは、オリジナルのものからユーザーが作ったクリエイタースタンプまで⾮常に豊富な種類があり、いろいろな感情を⾃在に表現でき、コミュニケーションを円滑に、かつ楽しくさせ、LINEを楽しいコミュニケーションツールとしました。

LINEの問題点

LINEには「1つのスマホで1つのアカウントしか持てない」というルールがあります。そこで、LINEを仕事の連絡用に使うと、連絡手段、情報共有ツールとして便利なのですが、その便利さが仇となってトラブルを誘発してしまうこともあります。

私用のスマホを会社の連絡用に使っている場合、プライベートな友人と会話するLINEと会社の業務連絡用に使うLINEを分けられなくなり、業務連絡とプライベートな交信が一緒になってしまい、時間に関係なく上司や同僚などの会社関係の連絡に対応しなければならなくなります。

またLINEを業務連絡用に使っていないケースでも、上司や同僚にアカウントを発見されて「友だち申請」が来たら、断ることは難しいでしょう。

そして、会社の上司や同僚がLINEの友達登録をした上で、業務時間の内外を問わずさまざまな連絡をしてきて、「〇〇さん、無視してる?」「既読スルー?」などと返事を強要するという、LINE強要問題が発生し、後述のようにパワハラが生じることもあります。

他のSNSと異なる点

LINEはFacebookやX(旧Twitter)等の他のSNSと異なる特徴を持ちますが、その中の⼀つはメッセージが公開されない点でしょう。FacebookやX(旧Twitter)はアカウントに鍵をかけていない限り、やり取りの内容はもちろんその時刻や交信相⼿等まで当事者でない⼈も閲覧することができます。しかしLINEならメッセージの受信者しか内容を⾒ることはできません。さらに設定次第では複数⼈での会話が可能で、連絡ツールとしての利便性が⾼いと⾔えます。

利用開始に当たり電話番号登録だけの単純さと、1対1のクローズドな空間でのコミュニケーションがFacebookのようなオープンSNSに馴染めないユーザーを捉え、これが利用者急増の大きな要因とされています。その結果、スマートフォンを持っている⼈のほとんどが使っていると⾔っても過⾔ではないほどに各年齢層に浸透し、「⽣活インフラとして定着した」とまで言われるようになりました。

国内月間アクティブユーザー数9600万人以上、月間アクティブ率86%(2023年9⽉末時点 2023年度第2四半期決算説明会)だそうで、アクティブ率が非常に高いという特徴を持つSNSです。

LINEとパワハラ

厚生労働省は、2012年3月に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」を行い、パワハラの類型をまとめました。

  1. 暴行、 傷害
  2. 脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言
  3. 隔離、仲間外し、無視
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
  5. 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
  6. 私的なことに過度に立ち入ること

LINEは便利なコミュニケーションツールですが、便利さゆえに、こうしたパワハラの温床になる可能性があり、2にあげられた「脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言」に悩まされることもあります。

そうなってしまう原因としては、まず、チャットという手軽さがあげられます。チャットは、メール形式よりもメッセージを送るハードルが低く、コミュニケーションツールとしては優れた点といえますが、上司が部下に送った場合、気軽に送ったとしても部下からすればやはり、「上司からのメッセージ」です。部下に送る場合は、6にあげられた「私的なことに過度に立ち入ること」にも注意したいものです。

また、既読機能も、メッセージアプリとしてはメッセージのやり取りを促進する優れた機能なのですが、やはり職場の上下関係を背景にすると、部下へのプレッシャーとして機能します。部下にとっては上司のメッセージを既読にしてしまうと、すぐに何か返信しなくてはならないというプレッシャーになります。中⾼校⽣の間では、既読したらすぐに返信しなくてはいけないという暗黙のルールがあり、それを守らないことでいじめに発展する問題が頻発しているのですが、上司と部下の間でこれが行われたら、パワハラになるケースもあります

脅迫とは

脅迫とは、相手に対して害悪を加える旨を告知して恐怖を感じさせる行為です。刑法第222条に規定されており、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」が処罰の対象になります。脅迫罪は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」という刑罰が定められています。

SNSやメッセージアプリでの脅迫は、文字や画像を通して行われるため証拠が残りやすく、また第三者にも拡散するリスクがあります。LINEのようなクローズドな空間でも、スクリーンショットなどで証拠保存が容易であり、後にトラブルになる可能性が高いといえます。

特にLINEでの脅迫は「死ね」「ボコボコにする」といった直接的な表現だけでなく、「世の中物騒だからね。窓割って家に入られたりするからね」のような間接的な表現も脅迫行為に該当します。

相手に恐怖を与える意図の有無やメッセージの受信者が恐怖を感じたかどうかが重要な判断基準です。

LINEでの脅迫により逮捕された例

このように日常生活に浸透し、他のSNSのように日記を書く、読むというような使い方ではなく、連絡手段の一つになってしまったLINEなので、いろいろな犯罪に、特に脅迫に使われるようになっています。

LINEで交際相手の母親を脅迫

神奈川県警は、逗子ストーカー事件で事前に相談を受けながら事件発生を防げなかったことを教訓に、2013年7月12日に「人心安全プロジェクト」を発足させ(その後、県警人身安全対策課に発展)、翌13日に初摘発を行いました。 この日脅迫の疑いで逮捕されたのは、LINEで交際相手の高校2年の女子生徒(16)の母親(42)を脅した無職の容疑者(30)で、「徹底的に追い込みますから」「世の中物騒だからね。窓割って家に入られたりするからね。気を付けてください」などと脅すLINEメッセージを、母親に19回送った疑いです。県警によると容疑者は、女子生徒との交際をやめさせようとした女性の母親に腹を立てたということです。

元交際相手にLINEで「死ね」 と脅迫

女性に「死ね」「ボコボコにするから気をつけな」などとメッセージを送ったとして、千葉県警成田署は2014年5月に、脅迫の疑いで会社員(21)を逮捕しました。逮捕容疑は同年4月12,15,23日の3回、県内に住む20代の元交際相手の女性にLINEで脅迫メッセージを送ったというものです。同署によると、この会社員と女性は約1カ月間交際し、前年10月に別れていました。

新聞では実名報道だったので、この容疑者の名前と地名「〇〇〇〇 成田」で検索すると、新聞記事を見ることができますし、2ちゃんねるに容疑者名でスレッドが残っています。

被害者は半年も前にたった1か月付き合っただけで別れた男に脅迫され、生きた心地はしなかったかもしれませんが、加害者も3回メッセージを送ったことで、消すことが困難なデジタルタトゥーを刻みつけてしまったことになります。

大学生をLINEによる自殺教唆の疑いで逮捕

2014年2月、LINEで「お願いだから死んでくれ」等のメッセージを送り、自殺をそそのかした疑いで、大学生(21)が逮捕されました。自殺したのは交際していた同じ大学の女子学生(21)で、当時大騒ぎになりました。

2人は1年以上交際していましたが、事件前日に女性から別れ話を切り出したということです。自殺直前の18時44分から47分頃にかけて、容疑者は「お願いだから死んで」「飛び降りてくれ」「〇〇ちゃん生きてる価値ないよ!」「手首切るより8階から飛び降りれば死ねるじゃん」「なんで早く飛び降りないの?」などと7回にわたって、立て続けにメッセージを送信し、翌日未明、女性は、自宅マンション8階から飛び降り自殺しました。

なお、この事件では東京地検は身柄拘留を求めましたが、東京地方裁判所は「逃亡の恐れがない」として請求を却下し、容疑者は釈放され、その後処分保留とされました。

複雑な背景や事情があった事件なのですが、実名報道され、在学中の大学名も報道されました。現在も男子学生の名前や、「〇〇大学 自殺教唆」等で検索すると、当時の新聞記事を見ることができますし、男子大学生の画像も見ることができます。この事件も、2ちゃんねるにスレッドが残っています。

LINEで脅迫された時の対処法

LINEは便利なコミュニケーションツールである一方、脅迫行為の手段として悪用されるケースも増えています。「殺す」「ボコボコにする」などの直接的な脅迫だけでなく、「〇〇をネットに拡散する」のような、間接的な脅迫も多く見られます。

脅迫メッセージを受け取った際には冷静に、適切に対応することが重要です。以下では、LINEで脅迫を受けた場合の基本的な対処法を解説します。

返信しない

LINEで脅迫メッセージを受け取った場合に重要なのは、返信をしないことです。相手はすでにあなたに対して怒りや憎しみの感情を抱いている可能性が高く、返信によって相手を刺激するとさらに状況がエスカレートする恐れがあります。

脅迫の理由が分からず、反論したい気持ちがあっても、自分の安全を守るために返信は控えてください

証拠を収集する

脅迫メッセージが送られてきたら、直ちに証拠の収集・保存を行ってください。LINEのメッセージ画面のスクリーンショットを撮影し、日時や送信者の情報が分かるように保存することが重要です。

また、メッセージ自体も削除せず、端末に保存しておくとよいでしょう。脅迫に至った経緯を時系列でメモにまとめておくと、後の手続きがスムーズです。証拠がなければ警察が動かない場合もあるため、証拠保全に努めましょう。

被害届の提出・刑事告訴を行う

脅迫行為が悪質であったり、身の危険を感じたりする場合は、警察に被害届を提出するか、刑事告訴を検討しましょう。LINEでの脅迫は、メールやSNS、電話と同様に脅迫罪(刑法第222条)が適用され、2年以下の懲役または30万円以下の罰金の対象です。

警察に相談する際は、先に収集した証拠を持参し、担当者に状況を詳しく説明してください。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:デジタルタトゥー

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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