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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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フィンランドの医療・医薬品法を弁護士が解説

フィンランドの医療・医薬品法を弁護士が解説

フィンランド共和国(以下「フィンランド」)において、医療および医薬品に関連するビジネスの展開を検討している日本企業の経営者や法務部員の皆様に向けて、同国の医療・医薬品法の詳細な解説を行います。北欧のイノベーション大国であり、高度な福祉国家としても知られるフィンランドにおいて、人々の生命と健康に直結する医療分野の法規制は極めて厳格かつ体系的に整備されています。フィンランド市場への参入を成功させるためには、国内の法制度のみならず、欧州連合(EU)の包括的な法規制の枠組みとの密接な関連性を深く理解することが不可欠です。

第一に、フィンランドにおける医薬品の製造、販売、輸入、流通の全段階は医薬品法によって包括的に規制されており、その運用はフィンランド医薬品庁(Fimea)によって強力に監督されています。EUの医薬品指令に完全に準拠した販売承認プロセスが採用されており、事前の公的な承認なく市場に医薬品を流通させることは違法となります。

第二に、医薬品のマーケティングおよび医療広告には極めて厳格な制限が課されています。日本の薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や医療広告ガイドラインと同様に、虚偽の表示、誇大広告、消費者の誤解を招く表現は厳重に禁止されています。とりわけ、医師の処方を必要とする処方薬に関する一般消費者向けの広告は例外なく禁止されており、プロモーションの対象は資格を持つ医療従事者のみに限定されています。一般向けに広告が許可されている市販薬(OTC医薬品)であっても、ステルスマーケティングを排除するために消費者保護法に基づく強い監視が行われています。

第三の要点として、医療従事者に対するプロモーションや利益供与の制限について、フィンランドでは業界の自主規制機関である製薬業界団体(Pharma Industry Finland)が定める倫理規範により、提供可能な食事の上限額が具体的なユーロ単位の数値で設定されています。日本の医療用医薬品製造販売業公正競争規約とは異なる運用基準が存在するため、現地のコンプライアンス要件に合わせた社内規定の再構築が不可欠となります。

第四に、法令違反行為に対する行政処分や司法の判断は非常に厳格です。Fimeaによる多額の条件付き罰金を伴うマーケティング禁止命令の事例や、市場裁判所(Market Court)による迅速な差止命令など、法務上のリスクが事業の存続に直結する厳しい環境が形成されています。

本記事では、フィンランドにおける医療・医薬品規制の根幹をなす「医薬品法」(Lääkelaki,395/1987)を中心に、医療広告やプロモーションに関する規制の詳細、さらには日本の法律との重要な異同について、具体的な法令の該当箇所や最新の判例を交えながら解説します。日本企業がフィンランド市場において適法かつ安全にビジネスを展開するための実践的な法的知識を網羅的に提供します。

フィンランド医薬品法の基本構造とEU規制枠組み

フィンランドにおいて医薬品のライフサイクル全体を管理する基本法が、1987年に制定された医薬品法(Lääkelaki,395/1987)です。医薬品法第1条において、この法律の目的は医薬品の安全性を維持および促進し、その安全かつ適切な使用を確保することであると明記されています。さらに、フィンランド国内における医薬品の適切な製造と安定的な供給を保証することも目的とされています。この法律の根本的な理念は、日本の薬機法が第一条で掲げる「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性及び安全性の確保」という目的と軌を一にするものです。日本の法律とほぼ同じである基本的な医薬品の製造業許可や卸売販売業の許可制度についての詳細な説明は割愛しますが、フィンランドの法体系がEU指令(特に人間用医薬品に関する指令2001/83/EC)を国内法化したものであるという点は、多国間でビジネスを展開する上で極めて重要な意味を持ちます。

フィンランドにおける規制の運用と執行は、国家機関であるフィンランド医薬品庁(Fimea)が中心となって担っています。Fimeaは、医薬品の販売承認から市場投入後の安全監視(ファーマコビジランス)、さらにはマーケティング活動の適正性審査に至るまでを広範に監督する強力な権限を有しています。医薬品法第20a条に基づき、医薬品はFimeaがこの法律に基づいて販売承認を付与したか、またはEUの機関が販売承認を付与した場合に限り、一般に販売または消費のために市場に流通させることができます。

ここで日本企業が留意すべき日本の法律との重要な違いは、医薬品の販売承認プロセスがEU全体の相互承認システムと複雑に連動している点です。フィンランドで販売承認を得るためには、国ごとの審査を受ける国内手続(National Procedure)、複数のEU加盟国で同時に審査を受ける非中央審査方式(Decentralised Procedure:DCP)、すでにいずれかの加盟国で承認された医薬品を他の加盟国に承認させる相互承認方式(Mutual Recognition Procedure:MRP)、そして欧州医薬品庁(EMA)が主導してEU全域で有効な承認を得る中央審査方式(Centralised Procedure:CP)という複数のルートが存在します。

国内手続やDCP、MRPを利用した場合の審査プロセスは概ね210日(MRPの場合は90日)と定められており、承認された医薬品に関する要約製品特性(Summary of Product Characteristics:SmPC)やパッケージリーフレットはフィンランド語およびスウェーデン語で作成され、Fimeaが運営するデータベースであるFimeaWeb上で一般に公開されます。

フィンランドの医療広告と医薬品マーケティングに関する規制

フィンランドの医療広告と医薬品マーケティングに関する規制

医薬品のマーケティング活動は、医薬品法およびその下位法令である医薬品令(Lääkeasetus,693/1987)によって厳重にコントロールされています。フィンランドにおける「マーケティング」の定義は非常に広く、医薬品令第25条の規定によれば、処方、供給、購入、または使用を促進することを意図したすべての宣伝活動、広報、販売促進活動が含まれます。この広範な定義は、日本の薬機法における「広告」の三要件である、顧客を誘引する意図があること、特定の医薬品等の名称が明らかにされていること、そして一般人が認知できる状態にあること、という解釈と共通する部分が多いと言えます。

しかしながら、マーケティングの対象者と提供できる情報の範囲については、明確な法的境界線が引かれています。最も重要なルールの一つは、処方薬(医療用医薬品)の一般消費者向け広告が全面的に禁止されている点です。これは日本の薬機法第67条で定められている「がんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいもの」についての一般向け広告の制限を、すべての処方薬に拡大し、より強力に適用しているものと理解することができます。処方薬のマーケティングは、医薬品を処方または供給する法的資格を持つ特定の医療従事者(医師や薬剤師、またはその業務を遂行中の学生など)のみを対象として慎重に行われなければなりません。さらに、医薬品法第91b条の規定により、処方薬に関するデジタルマーケティングを実施する際には、一般消費者がアクセスできないよう、医療従事者のみが閲覧できる保護措置(アクセス制限等)を講じることが義務付けられています

一般消費者に向けて広告を行うことができるのは、処方箋なしで購入できる市販薬(OTC医薬品)に限られます。OTC医薬品の広告であっても、日本の規制と同様に、客観的で正確な情報提供が求められ、消費者の不安を煽って不必要な医薬品の使用を促すような表現は禁止されています。すべてのマーケティング活動において、使用される情報はFimeaによって承認された要約製品特性(SmPC)と完全に一致している必要があり、これを逸脱する効能効果を謳うことは固く禁じられています。

フィンランド独自の厳格な運用として特筆すべき点は、一般消費者向けの広告において商業的意図を明確にするための措置です。Fimeaは、一般の消費者が提示されたコンテンツが医薬品の広告であることを明確に認識できるようにするため、広告内に「医薬品(medicine)」または「市販薬(over-the-counter medicine)」という言葉を明記することを強く推奨しています。記事風の広告や、一般的な健康情報番組を装って特定の医薬品を推奨するような、いわゆるステルスマーケティングは、消費者保護の観点から違法と判断されます。

フィンランド医療従事者への情報提供と利益供与の厳格な制限

医薬品のマーケティングにおいて、製薬企業から医療従事者に対する接待や利益供与の制限は、コンプライアンス上極めて重大なリスクをはらむ領域です。日本では、医療用医薬品製造販売業公正競争規約(公取規約)によって、提供できる弁当の単価や飲食の限度額が事細かに定められています。フィンランドでも同様の目的を持った規制が存在しますが、製薬業界の自主規制機関であるPharma Industry Finland(PIF)が定める倫理規範(PIF Code of Ethics)によって、極めて具体的かつ厳格な数値による制限が設けられています。

PIFの倫理規範によれば、医療従事者に対する接待やもてなしは、学術的または教育的なイベントの主目的に付随する二次的なものでなければならず、一般的な参加者が自己負担しても構わないと考える妥当な範囲に収める必要があります。以下の表は、フィンランドにおける製薬企業から医療従事者への利益供与に関する規制の枠組みを、日本の一般的な規制枠組みと比較したものです。

比較項目フィンランドの規制枠組み(PIF Code of Ethics等)日本の規制枠組み(公取規約等)
接待・飲食の限度額ランチ:最大45ユーロ(付加価値税込)
ディナー:最大100ユーロ(付加価値税込)
弁当・茶菓:通常数千円程度
飲食等:通常一人当たり2万円以内などの基準
同伴者への接待処方薬のマーケティングイベントにおいて、医療従事者以外の者(配偶者等)への接待は厳格に禁止。原則として医療関係者以外の同伴者への接待や費用の負担は認められない。
価値移転の透明性公開医療従事者や組織に対する資金提供や利益供与は毎年公開することが義務付けられている。「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」に基づき、資金提供等の情報をウェブサイト等で公開。
監督とエンフォースメントFimeaの厳格な監視に加え、業界団体による強力な自主規制と欧州全体(EFPIA)の規範への連動。厚生労働省、各都道府県の指導および公正取引協議会による措置。

フィンランドにおける飲食の限度額は、現地の物価水準と付加価値税(VAT)を含めた明確なユーロ建てで規定されており、ランチは一人当たり最大45ユーロ、ディナーは最大100ユーロまでとされています。日本企業が現地で医療従事者向けの学術講演会やプロモーションイベントを企画する際には、日本の公取規約の感覚ではなく、このPIFが定める厳格なユーロ上限額を遵守するための詳細な予算管理体制を構築しなければなりません。

さらに、フィンランドにおける価値移転(Transfer of Value)の透明性確保は、ヨーロッパの製薬団体連合会(EFPIA)の倫理規定に強く連動しており、社会からの監査の目が非常に厳しいという特徴があります。製薬企業は、研究開発費や講演に対する謝礼、イベントへの参加費用など、医療従事者や医療機関に対して行ったすべての経済的利益の提供を毎年公開することが義務付けられています。患者は自らの健康と福祉に責任を持つという意識が高まっており、医療従事者と製薬企業の結びつきに対する透明性が社会的に強く求められているためです。

デジタルマーケティングとステルスマーケティングの排除

デジタルマーケティングとステルスマーケティングの排除

近年、スマートフォンの普及やソーシャルメディアの発達に伴い、デジタルマーケティングやインフルエンサーを活用したプロモーションが急速に拡大しています。フィンランドにおいて医薬品や医療機器をデジタル空間で宣伝する際には、医薬品法だけでなく、消費者保護法(Consumer Protection Act,38/1978)および不公正ビジネス慣行法(Unfair Business Practices Act,1061/1978)の規定が直接的に適用されます。

消費者保護法第2章第4条および不公正ビジネス慣行法第1条第2項には、「マーケティングの商業的目的および誰のためにマーケティングが行われているかは、マーケティングから明確に判別できなければならない」という趣旨の規定があります。これは、インフルエンサーを用いたマーケティングにおいて、企業から報酬を受け取っているにもかかわらず、個人の純粋な感想であるかのように装うステルスマーケティングを明確に違法とするものです。インフルエンサーを起用して市販薬(OTC医薬品)や医療機器を宣伝すること自体は禁じられていませんが、投稿には必ず「広告」または「提携」であることを明記し、企業との関係性を透明にしなければなりません。さらに、医療の専門家ではないインフルエンサーが、科学的根拠のない効果効能を断言したり、特定の病気の治療に絶大な効果があるかのような不適切な健康被害の不安を煽る表現を用いることは厳格に禁止されています。

また、未承認薬の情報提供に関する規制も、日本企業が十分に留意すべきポイントです。フィンランド国内で有効な販売承認を取得していない医薬品のマーケティング活動は、いかなる場合でも禁止されています。これは日本の薬機法第68条における承認前医薬品の広告禁止と同等の規制です。ただし、医療従事者が国際的な学術会議や研修イベントなどにおいて、将来フィンランドで同じ名称で販売される予定の未承認薬について自主的に情報を求めてきた場合、企業側がその要請に応じて客観的な事実のみを提供すること自体は容認されています。しかし、企業側から積極的に未承認薬の広告宣伝やプロモーションを行うことは禁止されており、デジタルメディアやソーシャルメディア上で未承認薬の効能を期待させるような記事を配信することも違法となります。

フィンランド規制当局による監視体制と違反に対する行政処分

フィンランドにおける医療・医薬品法の施行とコンプライアンス遵守状況の監視は、Fimeaによって厳密に行われています。Fimeaは、毎年約35件に及ぶ医薬品マーケティングに関する事案を処理しており、法令違反に対しては極めて強力な是正措置を講じる権限を持っています。マーケティング規制の違反に対する主要な行政処分として、医薬品法第91条に基づくマーケティングの継続または更新の禁止命令があり、これは多くの場合、多額の条件付き罰金(conditional fine)を伴って発出されます。

実務上極めて重要な決定として、2020年3月4日にFimeaがNovartis Finland Oyに対して下したマーケティング禁止決定が挙げられます。この決定に関する公式なプレスリリースは、フィンランド医薬品庁の公式ウェブサイトで確認することができます。

参考:フィンランド医薬品庁の公式ウェブサイト

この事案において、Novartis Finland Oyは、本来であれば薬局で販売されるべき外来患者の自己投与用医薬品を、特定の医療センターを通じて割引価格で提供するという取り決めを行っていました。Fimeaは、この取り決めが通常の医薬品調達手続きの範囲を逸脱しており、実質的に医薬品法第91条が禁ずる不適切なマーケティングおよび販売促進活動に該当すると判断しました。さらに、契約によってこの割引価格の対象となる患者グループを意図的に制限しようとした点が、医薬品法第92条の規定にも違反すると判断されました。

Fimeaは、製薬企業が契約を通じて患者の選択に介入することは、医師の独立した専門的処方判断に対する社会の信頼を根本から脅かす行為であると厳しく指摘しました。その結果、Novartis Finland Oyに対しては、当該マーケティング慣行の継続を直ちに禁じる命令とともに、100,000ユーロにのぼる条件付き罰金が科されました。この事例から、フィンランドにおける「マーケティング」という概念が、単なる広告宣伝やプロモーション活動にとどまらず、販売スキームや医療機関との複雑な契約構造そのものにも厳格に適用され得るということが言えるでしょう。

また、特許や商標に関連する医薬品のマーケティング紛争において、フィンランドの市場裁判所(Market Court)が下した判決も日本企業にとって重要な指針となります。2024年3月28日に下された市場裁判所の判決(判決番号:MAO:186/2024)では、特許権者である原薬メーカーが、後発品を扱う競合他社に対する予備的差止命令を求めました。この判決に関する法的な解説は、Hannes Snellman法律事務所の公式ウェブサイト等で確認することができます。

参考:Hannes Snellman法律事務所の公式ウェブサイト

この事件において特許権者は、競合他社が対象製品に関する販売承認および医療保険の償還ステータスを当局から取得した事実をもって、フィンランド市場への参入準備が実質的に完了しており、特許侵害のリスクが目前に迫っていると主張しました。市場裁判所は、単なる申請の段階を超えて販売承認等を実際に取得した行為が、侵害の蓋然性を飛躍的に高める要素であると認定し、差止命令の要件を満たすという判断の強力な根拠としました。日本企業がフィンランド市場にジェネリック医薬品などで新規参入する際、販売承認の取得という行政手続きの完了が、直ちに競合他社からの特許侵害訴訟や販売差止のトリガーとなるリスクを十分に認識しておく必要があります。

商標に関する事例として、2021年2月9日の判決(判決番号:MAO:48/21)では、商標権侵害に対する損害賠償額の算定基準が示されており、悪意のある侵害や長期間にわたる違反行為に対しては、合理的な補償額が厳格に算定されることが示されています。これらの判例から、フィンランドにおける司法の介入が非常に実効的かつ迅速に行われるということが言えるでしょう。

フィンランドの医療機器および民間医療サービスに関する規制

フィンランドの医療機器および民間医療サービスに関する規制枠組み

医薬品のみならず、医療機器や医療機関が提供する民間医療サービスに関する法規制も、フィンランドでは非常に精緻に構築されています。医療機器に関しては、2021年に制定された医療機器法(Medical Devices Act,719/2021)ならびにEUの医療機器規則(MDR,2017/745)および体外診断用医療機器規則(IVDR,2017/746)が直接的に適用されます。日本企業が注意すべき最大の違いは、フィンランドにおいて医療機器の市場投入そのものに対してFimeaが個別の事前承認を行うわけではないという点です。製造業者が自らの責任において法に定められた適合性評価を実施し、製品にCEマークを付与することで市場に流通させることができます。そのため、マーケティング活動において「Fimeaによって承認された」といった表現を用いることは、公的機関による個別の事前承認があるかのような誤解を消費者に与えるため、法的に固く禁じられています。医療機器の広告には、製造業者の情報と、CEマークが付与された医療機器である旨を明確に記載する義務があります。

民間医療サービスの提供と広告については、私的医療法(Private Health Care Act,152/1990)および健康保護法(Health Care Act,1326/2010)がその基盤となっています。医療サービスのマーケティング活動に対しては、医薬品と同様に消費者保護法および不公正ビジネス慣行法が適用され、虚偽または誤解を招く情報の使用が厳しく禁じられています。さらに、フィンランド医師会(The Finnish Medical Association)が自主的なマーケティングガイドラインを定めており、医療サービスの広告における真実性、適切性、信頼性が厳格に求められています。日本の医療法に基づく医療広告ガイドラインと同様に、患者の不安を煽る目的で病気や症状の深刻さを過度に強調することや、「国内ナンバーワン」「最高の治療法」といった客観的な証明が困難な最上級表現を用いることは明確に禁止されています。

市場裁判所において医療サービスのマーケティング手法が争われた事例として、2018年6月11日の判決(判決番号:MAO:315/18)があります。この事案に関する法的な解説は、Krogerus法律事務所によるレポートで確認することができます。

参考:Krogerus法律事務所の公式ウェブサイト

この判例では、民間企業が医療サービスをマーケティングする際、自己の専門分野外のサービスを過大に広告したり、医療サービスを一般的な消費財のプロモーション手法と不適切に結びつけたりすることが厳しく制限されることが確認されました。医療という高度な公共性と倫理性を有するサービスを提供する企業は、一般的な商業広告と同等の手法を用いるべきではなく、消費者保護と医療の信頼性維持という高い基準を満たさなければならないことが示されました。日本の医療機関やヘルスケア企業がフィンランドでクリニックを開設したり、先進的な医療サービスを展開したりする際には、医療従事者の職能団体のガイドラインと消費者保護当局の双方の厳しい基準を満たす、極めて慎重な広告戦略を構築する必要があります。

まとめ

本記事では、フィンランドにおける医療および医薬品法の詳細、とりわけ医薬品の承認プロセスからマーケティングおよび広告規制に至るまでの複雑な法的枠組みについて解説してきました。記事全体の要点を総括すると、フィンランドの医薬品法はEU指令に完全に準拠しており、製品の品質と患者の安全性の確保を至上命題としています。医薬品のマーケティングに関しては、フィンランド医薬品庁(Fimea)が極めて強力な監視権限を握っており、処方薬の一般向け広告は厳格に禁止され、未承認薬の積極的なプロモーションも決して許されません。また、一般消費者向けに許可されているOTC医薬品や医療機器の広告であっても、消費者保護法と連動してステルスマーケティングを徹底的に排除する厳格な運用が行われています。

医療従事者へのプロモーション活動においては、業界の自主規制(PIF Code of Ethics)によってランチやディナーの接待上限額が具体的なユーロ単位で設定されており、国際的な基準に照らしても非常に高いレベルの情報の透明性が要求されます。規制に違反した場合には、Fimeaによる条件付き罰金を伴うマーケティング禁止命令が下される重大なリスクがあり、Novartis Finland Oyの事例が示すように、不適切な販売スキームや医療機関との価格設定の構造自体も厳厲な処罰の対象となります。加えて、市場裁判所による数々の判例が示す通り、特許権の保護や消費者保護の観点から、ビジネスの根幹を揺るがす差止命令や多額の損害賠償請求が迅速に発動される法的環境が整っています。

これらの厳格かつ複雑な規制環境において、日本企業が安全かつ継続的にビジネスを展開するためには、現地の法令だけでなく、行政機関のガイドラインや業界団体の倫理規定、さらには最新の判例動向を正確に把握し、初期段階から事業計画に組み込むことが不可欠です。現地の法規制と日本のコンプライアンス基準の差異を適切に埋めるためには、高度な法的分析と専門的な知見が必要とされます。複雑な現地の法規制に関する課題に対して、モノリス法律事務所がサポートいたします。日本企業の皆様がフィンランドをはじめとする海外市場において、医療・医薬品に関連するビジネスを適法かつ円滑に展開できるよう、行政当局の動向調査から具体的な広告内容の適法性審査、そして現地コンプライアンス体制の構築に至るまで、多角的な視点から企業活動に寄り添います。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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