フィンランドの不動産法を弁護士が解説

北欧に位置するフィンランド共和国(以下、フィンランド)は高度なITインフラと安定した社会基盤を有し環境技術やデジタルビジネスの分野で日本企業の進出が相次いでいます。しかし同国において事業展開の拠点となるオフィスや駐在員の社宅あるいは投資目的で不動産の取得を検討する日本企業の経営者や法務部員にとって現地の不動産法制を正確に理解することは事業の成否を分ける最重要課題です。フィンランドの不動産法は日本の法体系と類似する部分がある一方で地政学的な要請から近年急速に強化されている外国人に対する購入規制や独特の所有形態そして厳格な修繕義務など日本企業の法務担当者が直感的には理解しがたい特有の制度が無数に存在します。フィンランドの不動産法制において日本企業が特に押さえるべき重要ポイントは大きく分けて五つ存在します。
第一に国家安全保障を目的とした欧州連合(EU)および欧州経済領域(EEA)域外の居住者や企業に対する厳格な事前許可制度です。この規制は2025年の法改正により他国の主権を侵害する国家に対する絶対的な拒否事由が新設されロシアおよびベラルーシ国籍の者に対する全面的な購入禁止措置へとさらに強化されました。
第二に不動産売買契約における厳格な要式主義です。日本のように契約自由の原則に基づく当事者間のみでの売買は認められず公証人に相当する「売買立会人」の関与が契約の有効要件として必須とされています。
第三に「住宅株式会社」と呼ばれる独特のマンション所有形態です。フィンランドではマンションの専有部分を直接所有するのではなく建物を所有する株式会社の株式を取得することで居住権を得るという法形式が採られておりこれにより適用される法律が根本から異なります。
第四に約50年周期で発生する「パイプ工事(Putkiremontti)」と呼ばれる大規模修繕義務とそれに関する情報開示の法制化です。この工事は莫大な費用を伴うため取得前の入念なデューデリジェンスが不可欠です。
そして第五にオーランド諸島における極めて排他的な不動産取得規制の存在です。これらの要素は取引の有効性のみならず取得後の莫大な偶発債務や法令違反リスクに直結するため現地の法制度を正確に把握した上での対応が求められます。
本記事では、フィンランドにおける不動産取引の法的枠組みについて具体的な法令や最新の最高裁判例を交えながら詳細に解説します。
この記事の目次
フィンランド不動産法制の基礎と独特の所有形態
日本企業がフィンランドで駐在員用の住居やオフィスビルを確保する際に必ず直面するのが「何を所有するのか」という法的な概念の違いです。フィンランドの不動産市場においては所有形態が法的に全く異なる二つのカテゴリに分かれておりそれぞれ適用される法律が異なります。この違いを理解することがすべての法務リスク分析の出発点となります。
直接所有(Kiinteistö)と住宅株式会社(Asunto-osakeyhtiö)の違い
フィンランドにおける一つ目の所有形態は独立した土地とその上に建つ建物を直接所有する一戸建てや独立した事業用地などの形態(Kiinteistö)です。これは日本における一般的な不動産所有と同様の概念でありフィンランド土地法(Maakaari 540/1995)の適用を受けます。後述する国防省の購入許可要件や売買立会人の面前での厳格な契約締結義務はこの直接所有の不動産を取得する場合に全面的に適用されます。
もう一つの形態がフィンランド特有の「住宅株式会社(Asunto-osakeyhtiö)」を通じた所有形態です。アパートメントや分譲マンションの所有権は日本のように建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)に基づく専有部分の所有権として扱われるのではありません。フィンランドでは住宅株式会社法(Asunto-osakeyhtiölaki 1599/2009)に基づき建物全体と土地を所有する株式会社が設立されます。買主は不動産そのものではなくこの住宅株式会社の特定の住戸に対する占有権が付随した「株式(Asunto-osake)」を購入することになります。
この法的な立て付けの違いは実務上極めて重要な意味を持ちます。なぜなら住宅株式会社の株式の売買は法的には不動産取引ではなく「動産」の取引として扱われるからです。したがって株式の購入には土地法の厳格な手続きが適用されず売買立会人の関与も不要となります。さらに特筆すべき点として安全保障上の理由から導入された国防省による非EUおよびEEA居住者の購入許可要件も原則としてこの住宅株式会社の株式の購入には適用されません。この法構造から住宅株式会社のスキームが外国資本にとって法的な手続きを簡略化し迅速に拠点を確保するための有効な選択肢として機能しているということが言えるでしょう。
| 比較項目 | 日本の区分所有建物(分譲マンション) | フィンランドの住宅株式会社(Asunto-osakeyhtiö) |
| 法的性質 | 不動産(区分所有権および敷地利用権) | 動産(特定の住戸の占有権を伴う株式) |
| 適用法規 | 建物の区分所有等に関する法律および民法 | 住宅株式会社法(1599/2009) |
| 外国人取得規制 | 特になし(重要土地等調査法の届出対象となる場合はあり) | 原則として国防省の許可不要(動産取引のため) |
| 契約の要式性 | 契約書は任意(実務上は作成するが法的な有効要件ではない) | 書面による株式譲渡(売買立会人の関与は不要) |
| 修繕費用の負担 | 毎月「修繕積立金」として長期的に蓄積 | 必要時に会社が借入れを行い株主が「資本負担金」として返済 |
フィンランド安全保障に基づく外国人および非居住者の取得規制

近年フィンランドにおいて最もドラスティックな法改正が行われている領域が安全保障を目的とした外国人による不動産(Kiinteistö)の取得規制です。日本では重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律いわゆる重要土地等調査法が存在し特定の安全保障上重要な区域内における事前届出が義務付けられていますがフィンランドの規制は特定の地域に限らず国土全域においてより直接的かつ広範に及んでいます。
EUおよびEEA域外居住者に対する購入許可制度
フィンランドでは2020年1月1日に施行された「特定の不動産取得の許可要件に関する法律(Laki eräiden kiinteistönhankintojen luvanvaraisuudesta 470/2019)」に基づき欧州連合または欧州経済領域の域外国籍を持つ個人および域外に本籍を置く法人がフィンランド国内の不動産を取得する際にはフィンランド国防省からの事前許可が義務付けられました。
この法律の適用範囲は直接的な外国法人のみならず、EUまたはEEA域内に設立された法人であっても域外の個人または法人がその法人の議決権の10パーセント以上を保有している場合や同等の実質的な支配権を有している場合には許可申請の対象となります。日本企業がフィンランドに現地法人を設立しその現地法人が事業用の土地や建物を購入する場合であっても、日本の親会社が10パーセント以上の議決権を保有していればこの許可制度の対象となるため極めて慎重な対応が求められます。
国防省はこの許可を審査するにあたり対象となる不動産取得が国家の安全保障や防衛の組織化さらには領土の保全や国境警備に脅威を与えないかを厳格に評価します。ダミー会社を利用した迂回取得を防ぐため複雑なグループ構造や人為的な取り決めも監視の対象となり実質的な支配関係が10パーセント以上であれば許可が要求されます。この制度の詳細はフィンランド国防省の公式ウェブサイトで確認することができます。
2025年改正によるロシアおよびベラルーシ国民の購入禁止措置
ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴う安全保障環境の激変を受けフィンランド政府は不動産がハイブリッド攻撃やスパイ活動の拠点として悪用されるリスクを根本から排除するため法規制をさらに強化しました。2025年4月にフィンランド議会で可決され同年7月15日に施行された改正法(328/2025)により同法第5a条(絶対的拒否事由)が新設されました。
この新たな条項は他国の領土保全や主権および独立を侵害する侵略戦争を行っておりフィンランドの国家安全保障に脅威を与えるとみなされる国家の国民および法人に対する不動産取得の絶対的な禁止を定めています。欧州連合の決定および国内当局の評価に基づきこの基準に該当する国家としてロシア連邦およびベラルーシ共和国が政府政令によって明確に指定されました。これによりロシアおよびベラルーシの国籍を有する個人やこれらの国に登録されている法人さらにはこれらの国の国民や法人が支配する企業はフィンランド国内での不動産取得が原則として全面的に禁止されることとなりました。ただしフィンランドの永住権を有している者については例外的に許可申請の対象として個別に審査される救済措置が残されています。
この厳格な法制化から不動産取引が単なる経済活動ではなく国家防衛の最前線に位置づけられているということが言えるでしょう。実際に2025年10月には国防省が国家安全保障および防衛の組織化を妨げる恐れがあるとして非EU諸国の国籍を持つ買い手による11件の不動産取引に対する許可を立て続けに拒否した事例が報告されています。このような事態は、日本企業がロシアやベラルーシ資本と合弁会社を設立している場合や複雑なファンド構造の中に該当国の資本が混入している場合においてフィンランドでの不動産取得が不可能になるリスクを示しているため、コンプライアンス上の厳格なバックグラウンドチェックが必要となります。
フィンランド不動産売買契約の要式主義と登記手続き
日本における不動産取引では民法の原則に従い当事者の意思の合致さえあれば理論上は口頭でも契約自体は成立します。しかしフィンランドの不動産法制においては土地法の適用を受ける直接所有(Kiinteistö)の取引において契約の形式に対して極めて厳格な要式主義が貫かれています。
土地法に基づく書面要件と売買立会人の関与
フィンランドにおける不動産の売買は土地法(Maakaari 540/1995)によって規律されています。土地法第2章第1条の規定によれば不動産の売買契約は必ず書面で締結されなければならず口頭による契約は一切の法的拘束力を持ちません。契約書には譲渡の意思や譲渡される不動産の特定さらには売主と買主の氏名または名称そして売買代金やその他の対価に関する情報が明記されている必要があります。
さらに日本法と決定的に異なる点として契約の有効性を担保するための「売買立会人(Kaupanvahvistaja)」の存在が挙げられます。フィンランドで不動産の所有権を直接移転する売買を行う場合売主と買主(またはその正式な委任状を持った代理人)が売買立会人の面前で同時に契約書に署名し売買立会人がその取引を証明しなければなりません。売買立会人が関与せずに締結された不動産譲渡契約は法的に無効となり買主は所有権の登記を行うことができません。日本では司法書士が登記手続きを代理して行いますが契約の成立要件として公証人等の面前での署名が義務付けられているわけではありません。フィンランドにおけるこの制度は取引の真正を国が直接担保するためのものであり外国企業が現地で不動産を購入する際にはスケジュール調整や代理人の選任手続きにおいて細心の注意が必要です。
ただし近年では行政のデジタル化に伴い国立土地測量局(Maanmittauslaitos)が運営する電子不動産取引サービスを利用することで物理的な売買立会人を介さずに強固な電子認証を用いた電子署名のみで適法に売買を完了させることも可能となっておりITを活用した実務の効率化も進んでいます。
所有権の登記義務
適法に売買契約が成立した後、買主は契約締結日から6ヶ月以内に国立土地測量局に対して所有権の登記(Lainhuuto)を申請する法的義務を負います。この申請を行う前にフィンランド税務当局に対して移転税(Transfer tax)の申告および納付を完了させておく必要があり税金が未納のままでは登記手続きを進めることができません。売買立会人を利用した場合は立会人が買主に代わってシステム経由で登記申請の通知を行うことが実務上一般的となっています。
フィンランド住宅株式会社における修繕義務とパイプ工事

日本の分譲マンションでは管理組合が長期修繕計画を作成し各区分所有者から毎月修繕積立金を徴収して将来の大規模修繕に備えるシステムが法的に定着しています。フィンランドの住宅株式会社(Asunto-osakeyhtiö)においても建物の維持管理は会社と株主の間で厳格に分担されていますがその運用実態と資金調達のメカニズムには日本と大きな違いが存在します。
住宅株式会社法に基づく会社と株主の責任分配
住宅株式会社法第4章の規定によれば株主(居住者や所有企業)は自身の住戸の内部の表面すなわち床や壁や天井さらには水回りのタイルやその目地を良好な状態に保つ責任を負います。一方で住宅株式会社は建物の構造部や断熱材や外壁や屋根に加えて暖房や給水や電気や換気といった不可欠なインフラ設備の維持管理責任を負います。株主が住戸内でリフォームを行う権利は認められていますが建物の構造や配管に影響を与える工事を行う場合には必ず事前に取締役会や管理会社に書面で通知し会社の監督下で工事を行う法的義務があります。
恐怖のパイプ工事義務と偶発債務リスク
フィンランドの不動産市場において中古のアパートメント株式を購入する際に最も警戒すべき要素が「Putkiremontti」と呼ばれる配管の大規模改修工事です。フィンランドの建物は約30年から50年の周期で建物の配管や水道および電気設備を根本から交換することが必要とされています。
日本では修繕積立金を段階的に蓄積していくため一時的な費用の持ち出しは限定的ですがフィンランドの住宅株式会社では将来のパイプ工事のために数十年がかりで全額を積み立てておく慣行が必ずしも定着していません。パイプ工事の実施が株主総会で決定されると住宅株式会社は銀行から巨額の融資を受けて工事を行いその返済義務が「資本負担金(Rahoitusvastike)」として各株主に持ち分に応じて割り当てられます。このパイプ工事の費用は物件の規模や工法(伝統的な配管交換かライニング工法か等)によりますが1平方メートルあたり500ユーロから600ユーロに達することが一般的です。75平方メートルの一般的なアパートメントであれば8万ユーロ(約1300万円)を超える巨額の請求が株主に降りかかることになります。
この予測困難な財務リスクを軽減するため住宅株式会社法第6章第3条は会社の取締役会に対し今後5年間に見込まれる建物の維持管理に関するニーズを記載した説明書(Kunnossapitotarveselvitys)を作成し年次株主総会で毎年報告することを義務付けています。日本企業が社宅や投資目的で古いアパートの株式を購入する際には対象物件の過去の修繕履歴だけでなくこの5年間の修繕計画書を徹底的に調査しなければなりません。このデューデリジェンスを怠り修繕計画を見落としたまま取得すると直後に物件価格に匹敵するような巨額の修繕費用負担義務を負うことになります。
フィンランドの契約不適合責任と買主の厳格な調査義務
不動産取引における売主の契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)に関するルールもフィンランドの法実務において重要な争点となります。土地法第2章第17条は物件の品質に重大な欠陥(Laatuvirhe)がある場合買主に価格の減額や重大な場合には契約の解除を求める権利を認めています。しかし近年の最高裁判例において買主に対して極めて高度な事前調査義務を課す判断が下されており買い手保護のハードルが実務上極めて高くなっています。
隠れた瑕疵に関する買主の調査義務の判例法理
この点に関してフィンランド最高裁判所が下した重要な判決(KKO:2020:23 2020年3月3日判決)が存在します。この事件は築年数の古い戸建て住宅を購入した買主が引き渡し後に床下や壁の構造内に深刻な湿気とカビによる損傷(隠れた瑕疵)を発見し売主に対して契約の解除と損害賠償を求めたものです。
争点となったのは土地法第2章第22条に規定される「買主の調査義務」の解釈でした。同条は買主が契約締結前の調査で容易に発見できたはずの瑕疵を理由として売主の責任を追及することはできないと定めています。この事件では売買契約の前に実施された状態検査(コンディションチェック)の報告書において建物の構造上湿気のリスクが存在する可能性が示唆されており一部の壁で高い湿度の数値が記録されていました。
最高裁判所は報告書に記載されていたリスク構造や湿気の測定結果は買主に対して建物の状態に関するより詳細な調査を促す「特別な理由」に該当すると判断しました。つまり買主は単に提供された報告書を読むだけでなく専門家を雇用して構造の一部を解体してでも潜在的な損傷の有無を徹底的に確認する高度な調査義務があったと認定したのです。この追加的な調査義務を怠った買主はもはやその瑕疵を理由に売主の責任を問うことはできないとして買主の請求を退けました。この判決に関する公式な情報はフィンランド最高裁判所の公式ウェブサイトで確認することができます。
この最高裁判決からフィンランドにおける不動産取引では買主の自己責任原則が日本以上に強く機能しているということが言えるでしょう。検査報告書に少しでもリスクや疑わしい点が記載されている場合日本企業は現地の建築専門家を起用し破壊検査等を含めた詳細なデューデリジェンスを実施しなければ後日生じた損害を一切補填できなくなるという極めて重大な法務リスクを認識しておく必要があります。
建築請負業者の重過失と瑕疵担保期間経過後の責任
不動産に関連する別の法的論点として大規模修繕工事等を行った請負業者の責任追及に関する最新の最高裁判例(KKO:2025:3 2025年1月9日判決)も実務上極めて重要です。この事件は住宅株式会社が請負業者に複数住戸のパイプ交換工事を依頼した事案において保証期間終了後に不適切な配管の密閉作業に起因する大規模な水漏れ事故が発生したケースです。
フィンランドの一般的な建築請負契約約款(YSE)の第30条によれば保証期間終了後の請負業者の責任は業者の「重過失(Törkeä tuottamus)」または品質保証の重大な怠慢が証明された場合にのみ例外的に認められます。最高裁判所は本件において請負業者が契約および建築基準法に違反する欠陥のある密閉作業を全72住戸中52住戸という多数の住戸で反復的かつ継続的に行っていた事実を重く見ました。裁判所はこのような欠陥の反復性はプロの請負業者に求められる注意義務からの著しい逸脱であり損害発生のリスクが明白であったとして業者の行為を重過失と認定し保証期間経過後であっても住宅株式会社に対する損害賠償責任を認めました。
この判決から大規模な修繕工事を伴う不動産を保有・管理する場合施工業者の瑕疵に対する事後的な法的追及には「重過失」の立証という高いハードルが存在するものの反復的な欠陥の存在を証拠化することで救済される道が残されているということが言えるでしょう。
フィンランドのオーランド諸島における特殊な不動産取得規制

フィンランド国内において例外的に極めて厳しい独自の不動産取得規制が敷かれている地域が存在します。それがバルト海に浮かぶオーランド諸島(Åland)です。オーランド諸島は国際連盟の決定に遡る歴史的な背景からフィンランドの高度な自治領となっており公用語をスウェーデン語とし独自の議会と法律を持っています。
オーランド自治法と郷土権(Kotiseutuoikeus)の要件
オーランド諸島における不動産の取得はオーランド自治法(Ahvenanmaan itsehallintolaki 1144/1991)によって厳格にコントロールされています。同法の目的は島内のスウェーデン語を話す住民の固有の文化と土地を保護することにあります。そのためオーランド諸島において土地や不動産を所有するためには「郷土権(Kotiseutuoikeus またはスウェーデン語でHembygdsrätt)」と呼ばれる特別な権利を有していることが絶対条件となります。
この郷土権を取得するためにはフィンランド国籍を有していることに加えてオーランド諸島に5年以上継続して居住しスウェーデン語の十分な語学力を証明しなければなりません。この要件は外国人に対してのみならずフィンランド本土に住む一般のフィンランド人に対しても等しく適用されるという点で非常に排他的かつ強力な制度です。
郷土権を持たない個人や外国企業がオーランド諸島で不動産を取得したり事業を行うためにはオーランド自治政府(Ålands landskapsregering)から特別な免除許可を取得する必要がありますがこの許可が下りるハードルは法的に極めて高いとされています。したがって日本企業がフィンランド全土を対象としたデータセンターの建設やリゾート開発などの事業展開を計画する際オーランド諸島に関しては本土とは全く異なる法体系と強力な排他性が存在することを前提に戦略を練る必要があります。
まとめ
本記事で解説したようにフィンランドの不動産法制は透明性の高い北欧の法秩序の裏に安全保障の観点からの強力な規制と自己責任原則に基づく厳格な実務慣行が潜んでいます。EU域外居住者に対する国防省の購入許可制度やロシアおよびベラルーシ国民に対する全面禁止措置といった国家安全保障に直結する法令への対応は単なる手続き論にとどまらず企業のコンプライアンス体制そのものを問うものです。また契約の厳格な要式主義やパイプ工事の莫大な費用リスクを伴う住宅株式会社特有の所有形態そして買主に高度な専門知識と事前調査を要求する瑕疵担保の判例法理など日本国内の常識が一切通用しない法務リスクが無数に存在します。
こうした複雑かつ流動的な法環境のもとで日本企業が安全にフィンランド市場へのビジネス展開を図るためには現地の法令や判例動向に精通した専門的な視点からの法務デューデリジェンスの実施が不可欠です。モノリス律事務所ではクライアントの皆様が直面するこれらの国際的な法的課題に対して多角的な視点からリスクを分析し安全な海外展開を実現するためのサポートを行える体制を整えております。外国法制に関するお悩みや具体的な取引における法的リスクの検証が必要な際にはぜひご相談ください。
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務

































