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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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タイの取引競争法を弁護士が解説

タイの取引競争法を弁護士が解説

タイ王国(以下、タイ)においてビジネス展開を検討される日本企業の経営者や法務担当者の皆様にとって現地の法令を正確に理解し遵守することは事業成功の根幹をなす極めて重要な課題です。とりわけ近年急速にその存在感を増し実務上の脅威ともなりつつあるのが日本の独占禁止法に相当するタイの「取引競争法(Trade Competition Act)」です。タイの経済成長と多国籍企業の進出に伴い国内市場の競争環境は激しさを増しており特定の企業による市場の独占や寡占あるいは優越的地位の濫用による中小企業の排除といった問題が浮き彫りになってきました。こうした背景からタイでは市場の公正で自由な競争を促進し消費者の利益を保護するために1999年に旧取引競争法が制定されました。しかし旧法下では国営企業が規制の対象外とされていたことや違反行為に対する定義の曖昧ささらに執行機関の独立性の欠如が影響し約20年間の運用において実際に罰則が適用された事例はごくわずかに留まっていました。

この反省に立ちより公正で透明性の高い市場環境を構築し実効性に乏しいという課題を根本から解決するため2017年取引競争法(Trade Competition Act B.E.2560(2017))が制定されました。新法のもとでは執行機関である取引競争委員会(Trade Competition Commission of Thailand。以下TCCT)は政府の直接的な影響を受けない独立した国家機関として再編され予算および人事面での強固な自律性を獲得しました。さらにこれまで適用除外であった国営企業に対しても一部の国家安全保障や公共の利益に基づく事業を除いて広く法律が適用されるようになり官民を問わず公正な競争を促す土壌が整備されました。この新法の施行以降TCCTの権限は飛躍的に強化され日系企業に対しても厳格な調査と巨額の課徴金や行政罰が科される事例が増加しており監視体制はかつてないほど厳格化しています。

本記事では、タイの取引競争法について市場支配的地位の濫用、企業結合、カルテル、不公正な取引方法という4つの主要な規制対象行為を中心にその全容を詳細に解説します。記事全体の要点は以下のとおりです。

第一に、タイの取引競争法は市場シェアや売上高といった客観的かつ明確な数値基準を用いて規制対象を定義している点が挙げられます。日本法が定性的な基準を重視するのに対しタイでは実務上の予測可能性が高い反面その数値基準に抵触した際の適用の厳格さには細心の注意が必要です。

第二に、企業結合(M&A)の規制においては競争への影響度合いに応じて事前承認と事後届出という二元的な手続きが採用されており画一的な事前届出を基本とする日本の制度とは異なる慎重な戦略の立案が求められます。

第三に、カルテル規制においては違反行為の深刻さによって刑事罰と行政罰が明確に区分されている点が特徴であり同業者間の安易な情報交換が致命的な結果を招く構造となっています。

第四に、不公正な取引方法についてはフランチャイズビジネスや食品デリバリープラットフォームなど現代の商慣行や特定産業の課題に迅速に対応するための詳細なガイドラインが次々と整備されており実務に即した柔軟かつ強力な法執行が行われています。

そして最後にTCCTによる積極的な法執行がなされる一方でその行政処分の妥当性が中央行政裁判所において争われるケースも増加しており企業側が合理的な抗弁を展開して勝訴する画期的な判例も登場しています。

これらの要点を踏まえ日本の独占禁止法との重要な違いを浮き彫りにしながらタイ独自の競争法制のメカニズムを網羅的に紐解いていきます。

タイにおける市場支配的地位の濫用に関する規制と日本法との比較

タイの取引競争法第50条は市場支配的地位にある事業者がその優越的な立場を不当に利用して市場の競争を阻害する行為を厳格に禁止しています。この規制を正しく理解するためにはまず法律が定義する「市場支配的地位(Market Dominant Position)」の要件を把握する必要があります。TCCTが発行する通知によれば市場支配的地位は極めて具体的な数値基準によって定義されています。具体的には単独の事業者において過去1年間の特定の製品またはサービス市場における市場シェアが50%以上でありかつその市場における売上高が10億バーツ以上である場合が該当します。また単独で要件を満たさない場合であっても上位3社の合計市場シェアが75%以上でありかつそれら3社の合計売上高が10億バーツ以上である場合も市場支配的地位にあるとみなされます。ただしこの複数企業による合算要件において個別の市場シェアが10%未満の事業者は除外されるという規定も存在します。

この明確な数値基準は日本の独占禁止法における「私的独占」の枠組みと対照的です。日本の独占禁止法では他の事業者の事業活動を排除し又は支配することにより公共の利益に反して一定の取引分野における競争を実質的に制限するという定性的な要件を中心に実務が形成されておりシェアの数値はあくまで違法性を推認するためのひとつの指標に過ぎません。これに対しタイの競争法では定量基準が条文および通知によって明示されているため要件に該当する企業は自社が市場支配的地位にあるという前提のもとで日々の事業活動を監視しなければならないということが言えるでしょう。特に独自の高度な技術を持つ日系企業がタイのニッチな市場に参入した場合競合他社が少ないことから容易に市場シェア50%を超過してしまい意図せず市場支配的地位にある事業者として第50条の厳しい規制対象に組み込まれるリスクが存在します。

第50条で禁止されている濫用行為には、不当な商品またはサービスの購買・販売価格の設定および維持正当な理由のない供給量の制限や提供の停止他の事業者の製品の購入を不当に強制する抱き合わせ販売、そして競合他社の市場参入に対する不当な干渉や妨害などが含まれます。市場支配的地位にある事業者がこれらの行為を行った場合深刻な競争阻害をもたらしたとみなされ厳重な処罰の対象となります。企業側は価格改定や取引先との契約条件の変更を行う際その判断が純粋な経営上の合理性に基づくものであり市場から競争を排除する目的ではないことを客観的なデータと論理で証明できる内部体制を構築しておくことが不可欠です。

この市場支配的地位の基準に関する詳細な通知はTCCTの公式ウェブサイトで確認することができます。

参考:TCCTの公式ウェブサイト

タイにおける企業結合規制の二元的な手続きと実務上の留意点

タイにおける企業結合規制の二元的な手続きと実務上の留意点

日系企業がタイにおいて事業拡大や再編を行う際にとりわけ直面する頻度が高いのが取引競争法第51条に基づく企業結合(M&A)規制です。企業結合の定義には他社との合併、事業の支配権を獲得するための全株式または一部株式の取得、そして競争に影響を与える規模の事業資産の取得が含まれます。株式取得については議決権の25%超あるいは50%超を取得する場合などTCCTの通知により細かく規定されています。タイの企業結合規制の最大の特徴は対象となるM&Aが市場の競争に与える影響の深刻さに応じて事前承認(Permission)事後届出(Notification)という完全に異なる2つの手続きルートが用意されている点です。

事前承認が義務付けられるのは当該企業結合の結果として市場における独占(Monopoly)が生じる場合あるいは結合当事者が結合後に市場支配的地位を有するに至る場合です。この要件に該当する場合企業結合の当事者は取引を実行する前にTCCTに対して承認申請を行いTCCTから正式な許可を得るまでクロージング(取引実行)を完了させることができません。TCCTは申請を受理してから最大105日以内に承認の可否や条件付承認の決定を下す権限を持っています。一方で企業結合の結果として市場における競争が実質的に減少するものの独占や市場支配的地位の形成には至らない場合は事後届出の手続きが適用されます。具体的には結合当事者のいずれかまたは両方の当該市場における過去1年間の売上高が10億バーツ以上である場合がこの要件に該当し企業結合が完了した日から起算して7日以内にTCCTに対して事後届出を行わなければなりません

日本の独占禁止法における企業結合規制と比較するとその構造的な違いは鮮明です。日本の場合は当事会社の国内売上高の合計額などに基づき一定の閾値を超える企業結合はすべて事前届出の対象となり原則として届出受理後30日間の待機期間が設定されます。事後届出のみで許容される大規模案件の枠組みは原則として存在しません。タイでは競争に与える影響の度合いによって手続きが二分されているためM&Aを検討する初期段階において自社および対象会社の市場シェアと売上高を精緻に算定し当該取引が事前承認の対象となるのかそれとも事後届出で足りるのかを正確に見極めるプロセスが極めて重要です。この判断を誤り事前承認が必要な案件を無許可で実行した場合厳しい罰則が科されるだけでなく企業結合そのものの無効化といった重大な法的リスクを背負うことになります。

項目タイの取引競争法(第51条)日本の独占禁止法(第15条等)
規制対象となる主な行為合併、株式取得、資産取得合併、株式・持分取得、事業譲受け等
手続きの枠組み競争への影響度に基づく事前承認と事後届出の二元制当事会社の売上高要件に基づく事前届出制
事前手続きの要件結合により独占または市場支配的地位が形成される場合一定の国内売上高を超過する場合
事後手続きの要件売上高10億バーツ以上で独占等に至らない場合は結合後7日以内に届出原則として事後届出の制度はない(一部例外を除く)
待機期間(事前手続きの場合)TCCTによる審査期間として最大105日原則として届出受理後30日間(短縮の可能性あり)

タイにおいてのカルテルおよび競争制限的行為の厳格な取り締まり

取引競争法第54条および第55条は事業者が他の事業者と共同して市場の競争を不当に制限する行為いわゆるカルテルを厳しく規制しています。タイの競争法制において特筆すべきはカルテル行為をその性質の深刻さに応じて深刻なカルテル(Hardcore Cartel)深刻でないカルテル(Non-hardcore Cartel)に法律の条文レベルで明確に区別し適用される罰則の性質を完全に分けている点です。

第54条で規定されるハードコア・カルテルは同一の市場において互いに競合関係にある事業者間における合意を指します。具体的には製品やサービスの価格の共同決定、販売地域や顧客の割り当て、生産量や販売量の不当な制限、そして公共調達や民間入札における談合などが含まれます。これらは市場メカニズムを根底から破壊する最も悪質な行為と位置付けられており違反した企業には刑事罰が適用されます。法人に対する罰則に加え法人の意思決定に関与した経営トップや担当取締役などの個人に対しても最高で2年の禁錮または違反が行われた年の売上高の10%以下の罰金あるいはその両方が科されるという極めて重い制裁が用意されています。

一方の第55条で規定されるノン・ハードコア・カルテルは競合関係にない事業者間での協調行為や競争を制限する可能性はあるもののハードコアには該当しない合意を対象としています。例えばメーカーと販売代理店の間で結ばれる排他的な販売地域の指定や再販売価格の維持行為あるいは業界団体内における将来の価格戦略や生産計画に関する機微な情報交換などがこれに該当する可能性があります。ノン・ハードコア・カルテルに対する処罰は行政罰の対象となり刑事罰は適用されませんがそれでもなお最大で違反年の売上高の10%に相当する多額の行政罰金が課されるリスクがあります。

日本の独占禁止法第3条においては価格カルテルや入札談合などの不当な取引制限が主に規制対象となり違反行為に対しては課徴金納付命令という行政上の措置と悪質な場合の刑事罰の双方が規定されています。しかしタイのように条文の構成自体が行為の性質によって二分され罰則の種類が初めから切り分けられているわけではありません。タイで事業を展開する日系企業にとって業界の会合や親睦会において競合他社と価格や生産量に関する情報交換を行うことは直ちに第54条の刑事罰リスクを惹起する危険な行為であるということが言えるでしょう。社内における競争法コンプライアンス研修の徹底と同業者との接触に関する厳格な社内ルールの運用が急務となります。

タイの不公正な取引方法と各種ガイドラインの展開

タイの不公正な取引方法と各種ガイドラインの展開

取引競争法第57条は事業者が他事業者の事業運営に対して不当に損害を与える行為全般を不公正な取引方法(Unfair Trade Practices)として広範に禁止しています。この条文は市場における自由な競争を担保するだけでなく取引関係における交渉力の格差を利用した搾取を防ぐ役割を担っています。具体的には優越的地位の濫用、不当な取引妨害、正当な理由のない取引条件の事後的な変更、一方的な契約解除などがこの第57条の規制対象となります。

この規定は日本の独占禁止法における不公正な取引方法および下請代金支払遅延等防止法(下請法)の機能に相当します。日本で下請法が親事業者と下請事業者の資本金格差という客観的かつ形式的な基準に基づいて画一的に適用されるのに対しタイの第57条の実務運用では資本金の大小といった形式基準だけでなく個別の取引関係における実質的な交渉力の格差や市場の構造が総合的に評価されます。したがって取引規模にかかわらず相手方を不当に拘束するような契約条件を押し付けた場合第57条違反として摘発されるリスクが生じます。

さらに、タイにおける第57条運用の最大の特徴は特定の産業分野や新しいビジネスモデルに焦点を当てた極めて詳細なガイドラインがTCCTから相次いで発行されている点です。例えば、フランチャイズ事業に関するガイドラインではフランチャイザーがフランチャイジーに対して不当に高額な原材料の購入を強制する行為や合理的な理由なく近隣に競合店舗を出店してフランチャイジーの利益を損なう行為が細かく規制されています。また、小売・卸売事業における不公正な取引慣行に関するガイドラインでは大型量販店が納入業者に対して支払う不当な協賛金の要求が禁じられています。近年では急速に市場を拡大している食品デリバリープラットフォーム事業に関するガイドラインも制定され飲食店に対する不当な手数料の引き上げや他社プラットフォームの利用制限が規制の対象となりました。

これによりタイの競争法は技術の進歩や新しいビジネスモデルの台頭に即座に対応し現代の商慣行に合わせた柔軟かつ強力な法執行を実現しているということが言えるでしょう。現地で流通網を構築したりサプライチェーンを管理する日本企業は自社の業界に適用される最新のガイドラインを常に把握し契約実務に反映させる必要があります。

タイの執行事例と判例から読み解く実務への影響

2017年の新法施行後TCCTの独立性が確保されたことで監視と執行のペースは劇的に加速しており数多くの調査と行政処分が行われています。同時にTCCTの強硬な行政命令を不服とする事業者が自らの正当性を主張して中央行政裁判所(Central Administrative Court)に提訴し処分の取り消しを求める司法闘争の事案も頻発しています。

その代表的な判例として大手自動車メーカーである日産タイ法人(Nissan Motor(Thailand) Co., Ltd.)が関与した事件が挙げられます。この事件は日産タイ法人が長年にわたり取引関係にあった特定のディーラーに対して契約期間の満了に伴う契約更新を行わない旨を通知したことが発端となりました。TCCTはメーカー側の一方的な契約非更新の決定が合理的な理由なくディーラーの事業活動に深刻な損害を与えるものであり取引競争法第57条が禁じる不公正な取引方法に該当すると認定し日産タイ法人に対して多額の行政罰を科す命令を下しました。これに対して日産タイ法人は自社の決定はディーラーの販売実績の低迷や販売網再編という正当な経営上の理由に基づくものであると主張しTCCTを相手取り中央行政裁判所に処分の取り消しを求める訴えを提起しました。

中央行政裁判所は詳細な事実認定と審理を行った結果、2022年9月28日に原告である日産タイ法人の請求を全面的に認容しTCCTの罰金命令を取り消す判決を言い渡しました(当事者:Nissan Motor(Thailand)Co., Ltd. 対 Trade Competition Commission、判決年月日:2022年9月28日、中央行政裁判所)。この画期的な判決から企業側が市場動向の変化や販売戦略の合理的な見直しといった経営上の正当な理由に基づいて契約の非更新や取引条件の変更を決定した場合仮に相手方との間に交渉力の格差が存在していたとしてもそれが直ちに競争法上の不公正な取引方法として違法と評価されるわけではないということが言えるでしょう。またTCCTの強大な裁量権や独自の事実認定に対しては、司法の場において厳格な適法性審査が行われることが明確に確認された点でもタイで事業を行うすべての多国籍企業にとって実務上極めて重要な意義を持ちます。

この判決に関連する情報や裁判所の管轄に関する概要はタイ行政裁判所の公式ウェブサイトで確認することができます。

参考:タイ行政裁判所の公式ウェブサイト

もうひとつの注目すべき事例として大規模な企業結合案件におけるTCCTの介入が挙げられます。2020年に実施されたCPグループによるTesco Stores(Thailand)Limitedの巨大買収案件においてTCCTは小売市場における競争を著しく制限する懸念があるとして極めて詳細な審査を行いました。最終的にTCCTは第51条に基づく事前承認を付与したもののその承認にあたっては今後一定期間は同種市場における他社の買収を完全に禁止する条件や既存の中小サプライヤーとの取引条件を不当に変更せず維持する条件といった極めて厳格な制約を付加しました。この事例からタイの取引競争法が単なる法典上のルールにとどまらず国家経済に影響を与える巨大M&Aに対しても強力な拘束力と介入権限を発揮しているということが言えるでしょう。

タイにおけるコンプライアンス体制構築の重要性と実務対応

タイにおけるコンプライアンス体制構築の重要性と実務対応

タイにおける取引競争法の強化は単なる法規制の変更にとどまらず現地で活動する企業の経営戦略そのものに多大な影響を及ぼしています。特に日系企業は日本国内の独占禁止法コンプライアンスには精通していてもタイ独自の数値基準や二元的なM&A審査手続きさらにハードコア・カルテルに対する厳格な刑事罰規定を見落とす危険性があります。例えば、タイ国内における同業他社との業界団体での会合においては価格や生産量に関する情報交換が意図せずハードコア・カルテルと認定されるリスクが常に伴います。そのため現地法人の経営陣のみならず営業担当者や調達担当者に至るまで現地の競争法に関する実践的な教育を徹底することが求められます。

また下請取引や販売代理店との契約においても日本のような形式的な下請法の適用基準に頼るのではなく、実質的な交渉力格差を踏まえた上で不公正な取引方法に該当しないよう契約書面のレビューを厳格に行う必要があります。特に前述したフランチャイズやデリバリープラットフォームなどの新興分野においては、TCCTが発行するガイドラインが事実上の法律と同等の効力を持って実務を規律しているため、これら最新の規制動向を常時モニタリングする体制の構築が不可欠です。TCCTの調査権限は広範に及んでおり抜き打ちの立ち入り検査(ドーンレイド)が行われるケースも想定されるため有事の際の対応マニュアルの整備や初動対応訓練の実施も推奨されます。

まとめ

タイの取引競争法は2017年の全面的な法改正を契機として日本の独占禁止法と同等あるいは特定の規制領域においてはそれ以上に厳格かつ実効性の高い競争法制へと劇的な進化を遂げました。かつては形骸化が指摘されていたタイの競争政策ですが現在では強大な権限を持つ独立機関であるTCCTによって積極的な法執行が行われており日系企業を含む多くの多国籍企業がその厳しい監視下に置かれています。

本記事で詳細に解説したように、タイの取引競争法の要点は市場支配的地位を認定するための客観的かつ厳格な数値基準の導入や企業結合における事前承認と事後届出の二元的な手続き体系といったタイ独自の慎重なアプローチにあります。また、カルテル規制においてはハードコア・カルテルに対する刑事罰の直接的な適用という強い抑止力が働いており同業者間の不適切な接触には細心の注意が求められます。さらに、不公正な取引方法の分野では変化の激しい現代のビジネスモデルに特化したガイドラインが次々と施行されており企業は自社の取引慣行が最新の規制に抵触していないかを常にアップデートし社内のコンプライアンス体制を継続的に見直す必要があります。

同時に、日産タイ法人の判例が明確に示しているようにTCCTから厳しい違反処分を受けた場合であっても企業側が合理的な経営判断に基づく正当性を司法の場で論理的に主張し不当な処分を覆す道が開かれています。これはタイの法治主義が着実に成熟しつつある証左でもありますが裏を返せば当局の強硬な調査に対して法的に説得力のある反証を組み立てる周到な準備が平時から企業側に強く求められていることを意味します。タイで事業を推進する日本の経営者や法務担当者にとって現地の商慣習と最新の法律実務を融合させたコンプライアンス体制の構築は企業の存続と成長を左右する生命線です。

事業パートナーの選定から契約条件の精査、現地サプライチェーンの構築、そして大規模なM&Aの実行に至るまであらゆるビジネスプロセスにおいて取引競争法の観点からの綿密なリスク評価が不可欠となります。モノリス法律事務所はタイの取引競争法をはじめとする現地の複雑な法規制に関する深い知見を有しており日本企業が直面する多様な法的課題に対して皆様の企業活動を法的にサポートいたします。市場進出前の詳細なリスク分析や契約書の厳格なレビュー、社内コンプライアンス体制の構築、そして万が一現地当局からの予期せぬ調査を受けた際の迅速な対応方針の策定に至るまでタイでのビジネス展開に関する法的なご不安や課題がございましたら我々の法律事務所へご相談いただくことが可能です。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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