医薬部外品の使用期限に表示義務はある?弁護士が解説
ドラッグストアやコンビニなどで販売されている一部の栄養ドリンクやビタミン錠剤、殺虫剤などは医薬部外品にあたります。
医薬部外品にあたる場合には、医薬品の厳しい規制が緩和されることになるため、さまざまな企業が医薬部外品の製造・販売に参入しています。
ただし、医薬部外品についても薬機法に定められた一定の事項を表示する義務がある点に注意が必要です。
では、医薬部外品にはどのような内容の表示が義務付けられているのでしょうか。
この記事では、医薬部外品の製造販売に携わる際に知っておきたい表示義務について、詳しく解説します。
この記事の目次
医薬部外品とは
医薬部外品とは、正常な使用方法においては人体に強い作用を及ぼさないことに加え、通常予想される誤用の場合においても人体への作用が緩やかであるものをいいます。
薬機法は、医薬品等に関する規制を定める法律で、正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。
以前は薬事法と呼ばれていましたが、2013年の法改正に伴い名称が変更され、薬機法と呼ばれるようになりました。
薬機法が対象とするものとしては、医薬品、医薬部外品、化粧品の3種類があります。この3種類の区別に関しては、下記記事で詳細に解説しています。
関連記事:「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」はどう区別されているのか?
このうち、医薬部外品は、気軽に入手できることもあり市場規模が拡大しているという特徴があります。
医薬部外品の種類
医薬部外品の種類には、大きく分けて次の3つの分類があります。
- 吐き気その他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止、あせも、ただれ等の防止、脱毛の防止、育毛又は除毛を目的とする物であって機械器具等でないもの(薬機法2条2項1号)
- 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物のうち機械器具等でないもの(薬機法2条2項2号)
- 薬機法第2条1項2号又は第3号に規定する目的のために使用される物のうち、 厚生労働大臣が指定するもの(薬機法2条2項3号)
例えば、口臭スプレーや発毛剤は、薬機法2条2項1号の医薬部外品に該当します。また、殺虫剤は同2号の医薬部外品に該当します。
医薬品が含まれる場合も
治療や予防等を目的とする、本来であれば「医薬品」の定義にあたるものであっても、人体への作用が穏やかなものとして、薬機法2条2項3号の規定に基づき厚生労働大臣が指定したものが「医薬部外品」に分類されることがあります。
この薬機法2条2項3号に基づく厚生労働大臣の指定により医薬部外品となるものとしては、27項目に及びます(平成21年2月6日厚生労働省告示第25号)。
指定医薬部外品
厚生労働大臣の指定による医薬部外品のうち薬機法59条7号の規定に基づき、厚生労働大臣が指定するものについては「指定医薬部外品」となり、その旨の表示が義務付けられています。
指定医薬部外品は全部で21項目あり、以下のとおりです(平成21年2月6日厚生労働省告示第28号)。
1) 専らねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除のために使用されることが目的とされている物
平成21年2月6日厚生労働省告示第28号
2) 次に掲げる物
(1) 胃の不快感を改善することが目的とされている物
(2) いびき防止薬
(3) カルシウムを主たる有効成分とする保健薬((16)に掲げるものを除く。)
(4) 含嗽薬
(5) 健胃薬((1)及び(21)に掲げるものを除く。)
(6) 口腔咽喉薬((17)に掲げるものを除く。)
(7) コンタクトレンズ装着薬
(8) 殺菌消毒薬((14)に掲げるものを除く。)
(9) しもやけ・あかぎれ用薬((20)に掲げるものを除く。)
(10) 瀉下薬
(11) 消化薬((21)に掲げるものを除く。)
(12) 滋養強壮、虚弱体質の改善及び栄養補給が目的とされている物
(13) 生薬を主たる有効成分とする保健薬
(14) すり傷、切り傷、さし傷、かき傷、靴ずれ、創傷面等の消毒又は保護に使用されることが目的とされている物
(15) 整腸薬((21)に掲げるものを除く。)
(16) 肉体疲労時、中高年期等のビタミン又はカルシウムの補給が目的とされている物
(17) のどの不快感を改善することが目的とされている物
(18) 鼻づまり改善薬(外用剤に限る。)
(19) ビタミンを含有する保健薬((12)及び(16)に掲げるものを除く。)
(20) ひび、あかぎれ、あせも、ただれ、うおのめ、たこ、手足のあれ、かさつき等を改善することが目的とされている物
(21) (5)、(11)又は(15)に掲げる物のうち、いずれか二以上に該当するもの
そして、薬機法2条2項3号に基づく厚生労働大臣の指定により医薬部外品となる27項目のうち、指定医薬部外品となる21項目を除くと以下の6項目となります。
しかし、後述する医薬部外品の種類の表示義務との関係で、この区別が重要となります。
- 衛生上の用に供されることが目的とされている綿類(紙綿類を含む)
- 染毛剤
- ソフトコンタクトレンズ用消毒剤
- パーマネント・ ウェーブ用剤
- 薬機法2条3項に規定する使用目的のほかに、にきび、肌荒れ、かぶれ、しもやけ等の防止又は皮膚若しくは口腔 の殺菌消毒に使用されることも併せて目的とされている物
- 浴用剤
なお、医薬部外品にあたらないサプリメント(健康食品)は薬機法ではなく健康増進法による規制対象となります。
サプリメントの広告規制に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
関連記事:サプリメントの広告掲載における留意点
医薬部外品の表示義務
医薬部外品については、医薬品より規制が緩和されており、薬局や店舗販売業等の許可を受けなくても販売ができます。
一方で、医薬部外品特有の様々な表示義務が定められています。
使用期限
一定の医薬部外品については使用期限の表示が必要となります(薬機法59条10号)。
対象となる医薬部外品は、昭和55年厚生労働省告示116号によって以下のとおり定められています。ただし、製造又は輸入後に適切な保存条件のもとで三年を超えて性状及び品質が安定な医薬部外品は対象外となります。
一 アスコルビン酸、そのエステル及びそれらの塩類の製剤
昭和55年厚生労働省告示116号
二 過酸化化合物及びその製剤
三 肝油及びその製剤(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令(昭和三十六年政令第十一号)第二十条第二項の規定により厚生労働大臣が指定する医薬部外品に限る。)
四 酵素及びその製剤
五 システイン及びその塩酸塩の製剤
六 チアミン、その誘導体及びそれらの塩類の製剤
七 チオグリコール酸及びそれらの塩類の製剤
八 トコフエロールの製剤
九 乳酸菌及びその製剤
十 発泡剤型の製剤
十一 パラフエニレンジアミン等酸化染料の製剤
十二 ビタミンA油の製剤
十三 ピレスロイド系殺虫成分の粉剤
十四 有機リン系殺虫成分の毒餌剤又は粉剤
十五 レチノール及びそのエステルの製剤
十六 前各号に掲げるもののほか、法第十四条又は第十九条の二の規定に基づく承認事項として有効期間が定められている医薬部外品
種類
医薬部外品については、前述の分類に応じて容器等に種類に関する表示をすることが義務付けられています。
薬機法2条2項2号が定める、人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物のうち機械器具等ではないものについては、「防除用医薬部外品」の表示が必要です。
更に、防除用医薬部外品のうちシラミ駆除用殺虫剤など人体に直接使用するものを除いて「注意―人体に使用しないこと」の表示も必要となります。
また、薬機法59条7号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する「指定医薬部外品」は、「指定医薬部外品」の表示が必要です。
そして、これ以外の医薬部外品(先述の6項目)については、「医薬部外品」の表示が必要ということになります。
表示すべき文言をまとめると、以下のとおりです。
- 薬機法2条2項2号の医薬部外品(殺虫剤等)-「防除用医薬部外品」、直接人体に使用しないものは「注意―人体に使用しないこと」
- 薬機法59条7号に基づき厚生労働大臣が指定する指定医薬部外品-「指定医薬部外品」
- 上記以外-「医薬部外品」
名称・内容量等
医薬部外品に該当するものは、商品に関する以下の内容の表示もあわせて必要となります。
- 製造販売業者の氏名又は名称及び住所(薬機法59条1号)
- 医薬部外品の名称(薬機法59条4号)
- 製造番号又は製造記号(薬機法59条5号)
- 重量、用量又は個数等の内容量(薬機法59条6号)
- 薬事法42条2項の規定によって基準が定められた医薬部外品については一定の事項(薬機法59条11号)
なお、「薬事法42条2項の規定によって基準が定められた医薬部外品」については、実際に基準が定められた医薬部外品はありません。
成分の名称
防除用医薬部外品と指定医薬部外品については、薬機法59条7条に基づき、有効成分の名称(一般的名称があるものは一般的名称)及びその分量の表示が必要です。
また、厚生労働大臣の指定する成分を含有する医薬部外品については、その成分の名称の表示も義務付けられます。
例えば、香料含有の医薬部外品(人体に直接使用されるもの)は、香料を含有するという表示を行う必要がある旨の通達があります(昭和55年10月9日薬発1330号)。
その他
以上のほか、薬機法60条が準用する52条1項1号の規定に基づき、医薬部外品の添付文書において、用法・用量 (承認された用法・用量)、その他使用及び取扱い上必要な注意事項を記載する必要があります。
また、医薬部外品によっては個別の通達により表示すべき事項が定められているケースがあります。
反対に、薬機法60条が準用する54条では、以下の事項は記載が禁止されています。
- 虚偽若しくは誤解を招く事項
- 承認外の効能・効果
- 保健衛生上危険がある用法、用量若しくは使用期間
医薬部外品の表示規制は厚生労働省の通達を確認
医薬部外品については医薬品と比較して規制が緩和されているとはいえ、他の商品に比べれば依然として製造や販売にあたり確認すべき事項は多いといえます。
特に表示義務に関しては、医薬部外品の商品ごとに細かい規制があります。
そして、この表示規制は薬機法ではなく厚生労働省の通達によって決められていることが多くみられます。通達は法律と比べて改正されやすく、また改正があったことが法律と比べるとわかりにくいと思われます。
このため、実際に医薬部外品を扱う場合には、商品ごとに最新の厚生労働省の通達等を調査する必要があります。
まとめ:医薬部外品の表示義務に困ったら弁護士に相談しよう
医薬部外品を扱う際には、多くの規制に注意を払わなければいけないことがご理解いただけたのではないでしょうか。
医薬部外品を扱うことに慣れていない場合、いきなり全ての規制に対応していくことは難しいかもしれません。
もし、全ての規制を調べることができず、表示義務の内容等に不安がある場合には、専門の弁護士にご相談されることをおすすめします。
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