openworkの口コミを特定するための手順と弁護士費用の相場
就職・転職先を選ぶにあたって、人間関係や社風などのリアルな情報を得るために、口コミサイトの存在感が増してきています。
しかし、企業に関する口コミは退職者からなされることが多いため、ネガティブな書き込みが多いという特徴があります。また、登録時に本人確認を行っていないサイトでは、そもそも社内の人間ではない者が、企業への悪評を広めるために書き込むケースも考えられます。
openworkで誹謗中傷の口コミが書き込まれた場合、投稿者特定の手続きを取るのが有効です。今回は、openworkの投稿者を特定する具体的な方法と弁護士費用の相場をご紹介します。
この記事の目次
openworkとは?
2007年にサービスを開始したvorkersがその名を改め、2019年5月23日にopenworkがスタートしました。(運営会社名もヴォーカーズからオープンワーク株式会社に変更)
名称変更の背景には、サイトをプラットフォームとしてさらに成長させたいという強い想いがあります。名称の由来は「より透明性の高い(open)仕事選び(work)を提供する」という意味があり、ユーザー一人ひとりが企業のリアルな情報を入手し、納得いく企業を見つけてほしいとの想いが込められています。
口コミ・評価件数は約940万件、登録ユーザー数も約290万人と転職口コミサイトでは最大規模を誇るサイトです。
openworkは無料でアカウント登録できるため、勤めていたかどうかにかかわらず、各企業に対して口コミを投稿できます。そのため、悪意をもった外部の人間からの誹謗中傷を目的とした投稿も考えられます。
ただ、口コミを投稿する際は最低でも500文字は必要という基準があるため、そう簡単には嫌がらせ目的の投稿は起こらないだろうと考えられます。
openworkで起こり得る誹謗中傷の例
openworkは、主に就職・転職活動における企業研究の一環として利用されるサイトです。悪評を流されると応募を検討していた人が離れてしまう可能性もあり、優秀な人材を逃してしまい大きな損失が生じます。
openworkで起こる可能性のある誹謗中傷の具体例を紹介します。
社員(元社員)からの名誉毀損の内容
社員(元社員)からの、企業の評判を失墜させることを目的とした口コミは少なくありません。
- 査定の明確な基準が存在せず、社長の好みで評価をつけている
- 表向きは有給取得率50%を謳っているが、実際に取得できている社員はほとんどいない
- 営業はパワハラが横行しており、今までに何十人もパワハラが原因で短期離職している
上記の内容は紛れもなく企業の社会的評判を貶める内容に他ならず、事実無根でこのような口コミを投稿したのであれば、名誉毀損に該当する可能性が高いです。名誉毀損の成立要件に関して、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
機密事項の漏洩にあたる内容
企業の口コミという性質上、商品開発の独自のノウハウや財務・経営上の数字など、外部に漏れてはいけない内容が書き込まれる危険性もあります。機密漏洩が起こると企業に致命的な損害を与えますから、見つけたら直ちに対処しなければならない事案です。
openworkで自社への誹謗中傷の口コミを発見したら、大きく分けて下記の2つの手段を取ることができます。
- 口コミの削除申請
- 口コミの投稿者の特定
削除に成功すればこれ以上の被害拡大は防げますが、投稿者に対する責任の追及はできません。ブランドイメージ低下による売上の減少など、実害が発生している場合、損害賠償を請求したいケースもあるでしょう。この場合、投稿者特定の手続きを取ることになります。
次章では、投稿者特定のための手順について詳しく解説していきます。
投稿者特定の手順1:IPアドレスの開示請求
IPアドレスとは?
投稿者特定のためにまずすべきことは、サイトを運営するオープンワーク株式会社に対し、該当の口コミのIPアドレスを開示するよう請求することです。IPアドレスとはインターネットに接続する端末に割り当てられた番号を指します。つまりIPアドレスが判明すれば、誹謗中傷の投稿を行った端末が判明するのです。
openworkは匿名で投稿できますが、投稿時には以下の情報を入力する必要があります。
- 職種
- 役職
- 在籍期間
- 新卒・中途の別
- 性別
かなり細かな情報が必要のため、投稿のタイミングも考慮すると、社内の人間が見れば投稿を行った者が誰か、特定できるケースも考えられます。
また、投稿するにはサイトへの無料登録が必要ですが、登録時に必要な情報は以下の通りです。
- メールアドレス
- パスワード
- 氏名(漢字)
- 氏名(フリガナ)
- 生年月日
- 性別
- 現住所
- キャリア状況
登録時に氏名や住所といった重要な個人情報の入力が求められるため、サイト側に直接、住所・氏名開示請求を行うことも可能です。ただ、この場合、住所や氏名は重要な個人情報のため、訴訟を提起する必要があります。
仮処分手続による投稿者のIPアドレス開示請求
IPアドレス開示請求の際は、基本的には裁判手続きを用います。裁判を提起するのではなく、仮処分という簡易の裁判手続きを取ります。仮処分とは端的に言うと、主張が認められた状態を裁判前に実現する手続きです。
仮処分は裁判と比べ迅速に済むため、素早い対応が求められるネットの誹謗中傷では適した手段です。あくまで「仮」の処分ですが、裁判所からの命令なので、サイトが請求に応じる可能性はかなり高いです。
ただし、裁判所を通した手続きである以上、法的な議論が求められるため、1人で対応するのでなく弁護士に依頼することをおすすめします。この場合の弁護士費用の相場は、
着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度
https://monolith.law/reputation/reputation-lawyers-fee
と言われます。上記費用は、口コミの削除も同時に求めた場合の金額です。ただし、口コミの投稿や量によって、当然金額に変動が生じます。Openworkの最低500字以上という基準があり、これは口コミサイトの中でもかなり量が多い方なので、費用もそれだけ嵩むことが予想されます。
投稿が違法であることを主張・立証する必要
裁判所からIPアドレスの開示命令を発出して貰うには、投稿が違法であると主張・立証する必要があります。注意すべきは、違法でなければ裁判所は主張を認めてくれない点です。
一方、口コミの削除請求では違法の他、サイトの利用規約に違反することを証明できれば、削除してもらうことができます。
例えば、ユーザーの禁止事項を規定するopenworkの利用規約11条1項bには
当社を含む特定の企業、組織に利益または不利益を与えることを目的とした情報を発信する行為
https://www.vorkers.com/rule.php
とあります。この規定に照らし合わせると、前に事例として紹介した機密事項の漏洩は特定の企業に不利益を与える行為だといえ、削除の対象となる可能性が高いです。
対して、IPアドレスの開示請求では、サイトの違反では足りず、違法であると証明しなくてはなりません。
違法の証明には、その口コミが違法であるといえる理由とその説を立証する証拠の提示が必要です。こうした主張は高度な専門的領域なので、風評被害対策を得意とする弁護士に依頼することをおすすめします。
投稿者特定の手順2:ログの削除禁止
IPアドレスが入手できれば、投稿者にインターネット環境を提供したプロバイダが判明します。プロバイダとは固定回線であればnifty、携帯回線であればauといった通信業者を指します。
そして、プロバイダは投稿の年月日に当該IPアドレスを用いた契約者の住所・氏名といったログを保有しています。つまり、ログをたどれば、投稿者の個人情報が入手可能なのです。
しかし、プロバイダはいつまでもログを保存しておくわけではありません。特に携帯回線の場合、3か月程度で消してしまう業者もあります。
このため、ログの削除を禁止する裁判手続きを起こす必要があるのです。しかし、実際には「これからそちらに発信者の住所・氏名開示請求を起こすから、ログを保存しておいてくれ」との通知を出せば事足りるケースが多いです。この通知の際も、該当の口コミが違法であるとの主張・立証が必要です。通知の弁護士費用の相場は、10万円程度とみられています。
Openworkはアプリもリリースされているため、スマホで利用も可能です。しかし、500字以上という投稿の最低文字数を考慮すると、時間がある時に自宅のPCでじっくりと書き込むケースが多いと想定されます。
自宅のネット回線を利用しているのであれば、ログを確認できればすぐに本人に辿り着く可能性は高いでしょう。
投稿者特定の手順3:住所氏名開示請求
ログの保存手続きが完了したら、プロバイダに対し、投稿者の住所氏名開示請求訴訟を提起します。住所氏名開示請求は仮処分でなく、裁判を起こす必要があります。なぜなら、住所や氏名といった個人情報は保護に値する重要な情報のため、より慎重に議論する必要があるためです。
誹謗中傷の場合、名誉毀損を主張するケースが多いですが、その投稿が真実であれば投稿者のプライバシーが優先され、名誉毀損を免れる可能性は高いです。先の事例でいえば、「有給をほとんど取得できていない」との内容が真実だと裁判所が認めると、違法であるとの主張は認められることはかなり難しくなります。
住所氏名開示請求の弁護士費用の相場は、ネット上の情報では
着手金が30万円程度、成果報酬金が20万円程度
https://monolith.law/reputation/reputation-lawyers-fee
とのことです。
投稿者特定の手順4:損害賠償請求
情報開示請求訴訟に勝訴すれば、プロバイダの契約者の住所・氏名が開示されます。投稿者が特定できたことで、相手方への損害賠償請求も可能になります。生じた損害に対する慰謝料だけでなく、調査費用や成果報酬など弁護士に対する費用の請求も可能です。うまくいけば、実質的な負担は一切なく、手続きを完了させることもできます。
しかし、弁護士費用を完全に回収できる額の賠償を勝ち取れるか、そもそも損害賠償請求が認められるのかといったリスクは存在します。こちらに関しては、下記記事で詳細に解説しています。
まとめ
openworkで誹謗中傷の口コミが投稿された際に取りうる、投稿者特定の方法に関して解説してきました。openworkで投稿者を特定するには、IPアドレスの開示請求・(ログ削除禁止の通知)・住所や氏名の開示請求訴訟・損害賠償請求といった、複数の裁判手続きを起こす必要があります。
裁判所を通した手続きはいずれも法的な主張・立証が必須なので、風評被害対策に強い弁護士に依頼すると良いでしょう。