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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

急増するリベンジポルノ被害の状況別相談先と対処法について解説

風評被害対策

リベンジポルノ相談

リベンジポルノとは、嫌がらせや復讐を目的として、性的な写真や動画をインターネット上で公表する行為を指します。リベンジポルノの被害は年々増加しており、深刻な社会問題となっています。しかし、被害に遭った場合、「どこに相談すればよいかわからない」「どのような対応を取ればよいかわからない」という方もいるでしょう。

本記事では、リベンジポルノ被害の現状や相談先、対処法を詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

年々増加するリベンジポルノの被害

女性警察官と男性警察官

SNSや匿名掲示板の普及に伴い、リベンジポルノの被害も増加しています。リベンジポルノ被害の現状を、警察庁の「令和4年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について」からご紹介します。

リベンジポルノ(私事性的画像)に係る事案への相談等状況の推移は下記の通りです。

相談等件数
平成26年(2014年)110
平成27年(2015年)1,143
平成28年(2016年)1,063
平成29年(2017年)1,243
平成30年(2018年)1,347
令和1年(2019年)1,479
令和2年(2020年)1,570
令和3年(2021年)1,628
令和4年(2022年)1,728
参照:令和4年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について

相談内容には、下記のようなものが挙げられます。

  • 画像を公表された
  • 画像を公表すると脅された
  • 画像を送りつけられた
  • 画像を所持されている、撮影された
  • その他(加害者に画像を所持されているかもしれないなど)

被害者の性別は男性が13.5%、女性が86.5%であり、圧倒的に女性の被害が多いことがわかります。年齢層では、19歳以下が27.5%、20歳代が42.0%、30歳代が13.5%と、20歳代が一番多く、40代以降は徐々に減る傾向にありました。

表を見ると、リベンジポルノの被害は年々増加していることがわかります。しかし、数値として表面化しているのは少数で、ショックや羞恥心から公にできない人がいることも忘れてはなりません。

参考:令和4年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について 

リベンジポルノに該当する行為とは

バツ印

平成25年(2013年)10月に発生した、三鷹ストーカー殺人事件(犯人が被害者の性的な写真・動画をアダルトサイトにアップロードしていた)をきっかけに、平成26年(2014年)に制定されたのが「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」です。この法律は、リベンジポルノ防止法とも呼ばれます。

リベンジポルノに該当する行為は、下記の通りです。

  1. 第三者が撮影された人物を特定できる方法で、電子通信回路を通じて私事性的画像記録を不特定もしくは多数の者に提供した(第3条1項)
  2. 私事性的画像記録を不特定もしくは多数の人に提供した、または公然と陳列した(第3条2項)
  3. 1、2の行為をさせる目的で、電子通信回路を通じて私事性的画像記録を提供し、または私事性的画像記録物を提供した(第3条3項)

私事性的画像記録とは、下記に挙げる画像や動画のデータを指します。

  1. 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
  2. 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
  3. 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

リベンジポルノの法律について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

関連記事:リベンジポルノの法律とは?罰則の内容や対応方法についても解説!

リベンジポルノを放置するリスク

リスク

画像をインターネット上に拡散されてしまうと、削除されない限り自然に消えることはありません。それどころか、さらにコピーされ、拡散されてしまい、被害が大きくなってしまう恐れがあります。

特に、画像と共に氏名や住所が記載されている場合、身元が特定されてしまいます。リベンジポルノの被害に遭ったら、早急に対応することが重要です。

リベンジポルノ被害に遭ったときの対処方法

How To

リベンジポルノの被害に遭った場合、どのような対処をすればよいのでしょうか。ここでは、具体的な対応を解説します。

被害の証拠を収集する

リベンジポルノが発覚した場合、即座に削除したいと考える人は多いでしょう。しかし、削除によって証拠がなくなると刑事告訴等ができなくなってしまう恐れがあります。また、法的手続により削除を求める場合も、裁判所が判断するための証拠を残しておく必要があります。

被害の証拠として、URLや日時が表示された状態でスクリーンショットを撮る・動画の場合は録画を撮る・画像の投稿日時を記録するなどして、証拠として残しておくことが重要です。

該当の動画や画像の削除を依頼する

証拠が十分に集まったら、リベンジポルノの削除依頼を行います。画像や動画が掲載されてしまったSNSや掲示板、動画サイトなどに直接、削除請求を行いましょう。削除してもらう方法には、下記のようなものがあります。

  • サイト運営者・管理者に削除依頼をする
  • 裁判手続に基づいて削除してもらう

投稿がリベンジポルノに該当する場合、被害が深刻であることから、基本的に削除に応じてくれるサイトが多いでしょう。しかし、サイトによっては削除請求に対応してくれない場合もあります。

特に、裁判手続きで削除を請求する場合には、権利が侵害されていることを法律にのっとって主張する必要があります。迅速に削除したい場合には、弁護士に依頼することを検討するとよいでしょう。削除請求について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

関連記事:「まとめサイト」に対する名誉毀損や著作権侵害による削除請求

損害賠償請求や慰謝料を請求する

相手方に損害賠償を請求する場合、加害者を特定することが必須となります。発信者情報開示請求により、相手方を特定できる可能性があります。

発信者情報開示請求とは、コンテンツプロバイダ(インターネット接続サービスを提供する事業者)から加害者の情報(氏名や住所、電話番号など)を開示してもらう手続きのことです。加害者が誰かわかっていたとしても、証拠がなければ「自分はやっていない」としらを切られる恐れもあります。このような場合にも、発信者情報開示請求により、証拠をつきつけることが可能です。

特定のためには、コンテンツプロバイダ等でログが保存されている必要がありますが、ログの保存期間が数か月などの短い期間であるプロバイダもあります。できるだけ早期に対応することが必要です。

関連記事:書き込みした犯人を特定する「発信者情報開示請求」とは?

名誉毀損罪などで告訴する

リベンジポルノ防止法や名誉棄損罪などで相手方を告訴することも可能です。リベンジポルノを行った場合、リベンジポルノ防止法違反以外にも、名誉棄損罪やわいせつ物頒布等の罪、18歳未満の画像の場合は児童ポルノ公然陳列罪などに該当する可能性があります。

関連記事:Youtubeで他人や企業の誹謗中傷を行った場合の名誉毀損罪について

リベンジポルノに関する投稿の削除方法

女性の写真

裸や性的な写真が投稿されてしまった場合、どのように削除すればよいのでしょうか。ここでは、具体的な削除方法を紹介します。

ウェブフォームより削除を依頼する

個人・または弁護士と共に削除依頼をする場合、ウェブフォームから削除申請を行います。申請するフォームがない場合は、会社に直接メールする・内容証明郵便(いつ誰から誰にどのような内容の文書が差し出されたのかを、謄本によって証明する郵便)を送るといった対応が必要です。

主な媒体の削除依頼申請窓口は、下記の通りです。

Google:自身のサイトでホストしているページを Google から削除する

Yahoo!:プロバイダ責任制限法に関する申告を行う方へ

X(旧Twitter):Xおよびセンシティブなコンテンツを安全に使用する

Facebook:ヘルプセンター

送信防止措置依頼による削除依頼

サイトの運営者やプロバイダに対し、送信防止措置依頼を行います。送信防止措置とは、依頼されたサイト運営者やプロバイダなどが、インターネット上の画像や書き込みを削除することです。送信防止措置依頼の流れは、下記の通りです。

  1. サイトの運営者・プロバイダより加害者に対して送信防止措置を講じる要請があった旨を通知
  2. 7日以内(リベンジポルノは2日以内)に反論がない場合、投稿を削除

加害者から反論があった場合、削除可否の判断はサイトの運営者・プロバイダが行います。送信防止措置請求について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

関連記事:プロバイダ責任制限法の送信防止措置請求依頼書の書き方とは

仮処分による削除依頼

削除依頼しても相手側が対応をしてくれない場合は、裁判所へ削除の仮処分申し立てを行います。削除依頼における仮処分とは、裁判所からサイト運営者やプロバイダに対して仮の削除命令を出してもらう手続きのことです。

仮処分による削除依頼の流れは、下記の通りです。

  1. 裁判所へ削除請求の申し立てを行う
  2. 裁判所による申立書の確認・審尋(面接)
  3. 担保金(担保として提供される金銭)の納付
  4. 裁判所より仮処分命令の発令

仮処分による削除依頼は個人で行うこともできますが、手続きには専門的な知識が必要になります。時間もかかってしまうので、弁護士を通して行うのがおすすめです。

リベンジポルノ被害の相談先

リベンジポルノの被害に遭った場合の相談先には次の3つの相談先があります。後述する状況に合わせて適切な相談先に相談しましょう。

セーファーインターネット協会

リベンジポルノの相談窓口として挙げられるのが、セーファーインターネット協会です。セーファーインターネット協会とは、インターネットの悪用に対する対策を立案・実行する団体です。セーファーインターネット協会では、国内外のサイトで掲載された画像や動画の削除依頼を無料で行っています。

下記の連絡先から直接問い合わせが可能です。

一般社団法人セーファーインターネット協会|リベンジポルノの被害にあわれたら

警察

加害者の逮捕や刑事罰を望む場合は、警察に連絡しましょう。最寄りの警察署に届け出る場合は、「生活安全課」を利用します。また、リベンジポルノの相談窓口として「サイバー犯罪窓口」「性犯罪被害相談窓口」の2つがあります。

警察に相談する場合は、被害の証拠が必要です。

警察庁|サイバー事案に関する相談窓口

警察庁|各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「♯8103(ハートさん)」

弁護士

弁護士に依頼する方法もあります。弁護士に対応してもらえる内容には、下記が挙げられます。

  • ネット上のリベンジポルノの削除依頼
  • 損害賠償請求

弁護士に依頼すれば、警察へ提出する被害届・告訴状の作成や損害賠償請求にかかる示談交渉も代わりに行ってくれます。わからないことはアドバイスももらえるので、対応に困っている方や不安な方は弁護士に相談するのがおすすめです。リベンジポルノに関する相談をする場合は、IT・インターネットを得意とする弁護士に依頼するのがよいでしょう。

リベンジポルノ被害における状況別の相談先

女性の写真

リベンジポルノ被害に遭った場合、加害者に罰を与えたいと考える人がいる一方、周りに知られずに動画を削除したいと考える人もいます。ここでは、状況別の相談先を紹介しますので、参考にしてください。

リベンジポルノに該当する動画・画像の削除のみをしたい場合

画像や動画の削除のみをしたい場合にはセーファーインターネット協会への相談がおすすめです。セーファーインターネット協会は一般の法人団体のため、削除依頼をしても警察には通報されません。周りに知られずに穏便に解決したい場合は、セーファーインターネット協会に相談するとよいでしょう。

なお、セーファーインターネット協会で2023年に削除依頼を行った件数は11,716件、そのうち93%にあたる10,848件が削除されています。

身元の特定をしたい場合

身元の特定をする場合は、発信者情報開示請求を行う必要があります。しかし、請求に必要な手続きや書類の作成をしなければならないため、個人では対応が難しいといえます。そのため、警察もしくは弁護士へ相談するのがおすすめです。

明らかに犯罪だといえる場合は警察に相談することで、捜査の一環として投稿者の特定を行ってもらえます。加害者の特定だけでなく、画像の削除、損害賠償・慰謝料請求なども含めて相談したい場合は、弁護士に依頼しましょう。

投稿者の特定について知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

関連記事:5ちゃんねるの書き込み削除、投稿者特定に必要な手続きを解説

慰謝料を請求したい場合

慰謝料を請求したい場合、身元の特定をしたあとに内容証明郵便を送り、訴訟をしなければなりません。こちらも専門的な知識が必要となるため、弁護士に相談するのがおすすめです。

リベンジポルノに係る慰謝料の相場が気になる方は、下記の記事を参考にしてください。

相手に刑事罰を求めたい場合

加害者を逮捕してもらいたい・刑事罰を求めたい場合は、警察に相談しましょう。警察に告訴状を提出する際には、証拠の画像や動画が必須です。相談の前にリベンジポルノ被害の証拠を集めておきましょう。

まとめ:リベンジポルノの被害は適切な相談先へ

女性弁護士

リベンジポルノ被害の件数は年々増加しています。このような状況から平成26年(2014年)に制定されたのが「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(リベンジポルノ防止法)です。

リベンジポルノの相談先は、警察やセーファーインターネット協会、弁護士などさまざまです。相手に罰を与えたい・動画の削除だけしたいなど、人によって希望する対応は異なります。まずは自分がどうしたいのかを考えたうえで、状況にあった相談先を選びましょう。

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モノリス法律事務所の取扱分野:デジタルタトゥー

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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