ベトナムのコーポレートガバナンスを弁護士が解説

ベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム)におけるコーポレートガバナンス法制は加速度的に国際基準への整合化を進めており、同国で事業を展開する外資系企業に対して極めて高度なコンプライアンス要件を求めています。日本企業の進出先として長年重要な位置を占めてきた同国ですが、その法制度は日本法と似て非なる独自の発展を遂げており、現地のガバナンス要件を正確に理解することは事業の存続に直結する重要課題です。
本記事では、2020年企業法およびその抜本的な大改正である2025年改正企業法を中心に、ベトナムにおける企業統治の最新動向と実務的対応策を徹底解説します。
まず第一に、2025年7月に施行された改正企業法により、マネーロンダリング対策の観点から「実質的支配者」の厳格な開示義務が導入されたことが挙げられます。これにより、複雑な投資スキームを用いる日本企業も最終的な自然人の特定と報告を免れなくなりました。
第二に、法定代理人や取締役の個人責任が明文化され、経営判断の失敗が個人の損害賠償責任に直結する厳格な法的環境が整備されました。
第三に、機関設計においては監査役会設置モデルと監査委員会設置モデルの選択が可能ですが、日本法の監査役制度や監査等委員会制度とは権限や独立性の要件において重大な差異が存在します。
第四に、ベトナム国家証券委員会が公表した「2026年版コーポレートガバナンス原則」により、上場企業を中心に環境・社会・ガバナンス要素の経営戦略への統合や、気候変動リスクの管理、サステナビリティ情報の開示が強く求められるようになりました。
さらに、実際の裁判例を見ても、経営陣の善管注意義務違反や少数株主との紛争において、裁判所が経営陣に対して厳しい判断を下す傾向が顕著になっています。
これらのダイナミックな法制度の変遷は、ベトナムがもはや単なる新興国市場ではなく、経済協力開発機構の原則に準拠した透明性の高い資本市場へと脱皮したことを物語っています。企業は法令の字面を追うだけでなく、実質的なガバナンス体制の再構築を急ぐ必要があります。
この記事の目次
ベトナム会社法制の変遷とコーポレートガバナンスの全体像
ベトナムにおける企業活動の根幹をなすのが企業法です。現行の基本的な枠組みは2020年企業法(Law No.59/2020/QH14)によって構築されましたが、国際的な金融規制の要請や国内資本市場の透明性向上のため、2025年6月17日に国会で可決され同年7月1日より施行された2025年改正企業法(Law No.76/2025/QH15)によって劇的な変遷を遂げました。
この法改正の背景には、ベトナムが金融活動作業部会のグレーリストに掲載されたことに伴う、マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策の強化という国家的な急務が存在します。従来のベトナムの行政指導は、会社設立時の事前審査に重きを置いていましたが、本改正により規制の軸足は事後検査へと大きくシフトしました。設立手続き自体はデジタル化によって簡素化される一方で、登録情報に虚偽があった場合や、資本金の過大申告が行われた場合には、行政罰や刑事罰を含む極めて重い制裁が科されることになります。
とくに、非公開の株式会社が私募社債を発行する際、負債総額が自己資本の5倍を超えてはならないという厳格な自己資本比率規制が導入されたことは、企業の過度なレバレッジを抑制し、金融市場のシステミックリスクを低減するための強力な措置です。近年のベトナムでは大手不動産デベロッパーによる社債のデフォルトや不正発行事件が社会問題化しており、この5対1の負債資本比率上限は市場の信頼を回復するための直接的な対応策として機能します。この改正に関する公式な解説は、以下のウェブサイトで確認することができます。
参考:WFWの公式ウェブサイト
日本企業がベトナムで現地法人を設立・運営するにあたっては、こうした事後的な監視と厳罰化という規制環境のパラダイムシフトを正確に認識し、設立段階から資本金の実在性を証明する証跡を厳格に管理するなど、コンプライアンス体制を根本から見直す必要があります。
ベトナム会社の機関設計と日本法との構造的差異

ベトナムの企業法において、株式会社は日本法と同様に、所有と経営の分離を前提とした複数の機関設計モデルから自社に最適なものを選択することが認められています。具体的には、2020年企業法第137条に基づき、2つの主要なガバナンスモデルが存在します。
第一のモデルと日本の監査役会制度との比較
第一のモデルは、株主総会、取締役会、監査役会(または検査委員会)、および社長(または総支配人)を設置する形態です。ただし、株主数が11名未満であり、かつ機関投資家株主の持分合計が総株式数の50パーセント未満である場合には、監査役会の設置は免除されます。この第一のモデルは、日本の会社法における「監査役会設置会社」と外見上は類似していますが、実務上の権限や独立性の要件において重大な違いが存在します。
日本の監査役は株主総会で直接選任され、各監査役が単独で監査権限を行使する「独任制」の機関としての性質を強く持ちます。これに対し、ベトナムの第一のモデルにおける監査役会は、合議体としての性格が強く、委員長には経済、財務、会計、監査、法律などの専門的な学位が要求されます。また、日本の監査役が主として取締役の職務執行の適法性監査を担うのに対し、ベトナムの監査役会は内部統制や財務報告の完全性を確保するための業務監査や内部監査機能に力点が置かれています。
第二のモデルと日本の監査等委員会制度との比較
第二のモデルは、株主総会、取締役会、および社長(または総支配人)を設置し、取締役会の下部に監査委員会を設置する形態です。このモデルを選択する場合、取締役会メンバーの少なくとも20パーセントを独立取締役としなければならないという厳格な構成要件が課されます。また、監査委員会の委員長は必ず独立取締役が務めなければならず、他の委員も非業務執行取締役で構成される必要があります。
日本の「監査等委員会設置会社」を比較すると、構造上の差異が浮き彫りになります。日本の監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役が株主総会で一般の取締役とは区別して選任され、一定の独立した権限を持ちます。一方、ベトナムの監査委員会は取締役会によって設置される取締役会の下部機関としての位置付けが明確です。日本法の下では社内出身の常勤監査等委員を置くことが実務上広く行われていますが、ベトナム法の下では独立性と非業務執行性がより厳格に要求されます。日本から駐在員を派遣して監査委員会のメンバーを構成しようとする際には、その適格性について慎重な法的検討が不可欠です。
以下の表は、ベトナムと日本の主要な機関設計モデルの比較を示しています。
| 比較項目 | ベトナム法(第一のモデル) | ベトナム法(第二のモデル) | 日本法(監査役会設置会社) | 日本法(監査等委員会設置会社) |
| 主要な監督機関 | 監査役会 | 監査委員会(取締役会内) | 監査役会 | 監査等委員会(取締役会内) |
| 委員の選任方法 | 株主総会で選任 | 取締役会が取締役の中から選定 | 株主総会で個別に選任 | 株主総会で監査等委員として選任 |
| 独立性の要件 | 委員長は関連学位が必須 | 委員長は独立取締役、他は非業務執行 | 半数以上が社外監査役 | 過半数が社外取締役 |
| 権限の行使方法 | 合議体としての性質が強い | 委員会として行使 | 独任制(各監査役が単独で行使) | 委員会として行使 |
ベトナム会社の取締役要件と独立取締役の役割
第二のモデルを採用する場合や上場企業において必須となる「独立取締役」の要件は、2020年企業法第155条において極めて厳格に定められています。ベトナムにおける独立取締役は、単なる社外の有識者ではなく、会社との間に一切の利害関係を持たない純粋な第三者であることが求められます。
具体的には、現在または過去3年以内に当該企業やその子会社の従業員であった者は独立取締役になることができません。また、会社の経営陣や大株主と家族関係(配偶者、親、子、兄弟姉妹)を持たないこと、会社の発行済議決権株式の1パーセント以上を直接的または間接的に保有していないことなど、資本的および人的な独立性が厳密に審査されます。さらに、独立性の形骸化を防ぐため、独立取締役の任期は連続して2期までに制限されています。
日本の会社法における「社外取締役」の要件も近年厳格化されていますが、ベトナムの1パーセントという厳しい株式保有制限や、連続就任期間の絶対的な上限設定は、日本法にはない特有の厳格さを持っています。日本企業がベトナム法人の取締役会に現地の独立取締役を招聘する場合、候補者が過去にグループ企業との間にわずかでも取引関係を持っていなかったかなど、徹底したデューデリジェンスを実施する必要があります。
ベトナム会社の法定代理人と厳格化された個人責任
ベトナム企業法では、会社の業務を代表する権限を持つ「法定代理人」を1名または複数名置くことが認められています(第12条)。企業が複数の法定代理人を置く場合、会社の定款において各人の権利と義務を明確に区分しなければなりません。定款に明確な規定がない場合、各法定代理人は第三者に対して会社を代表する完全な権限を有するとみなされ、その署名は会社を法的に拘束します。ベトナム法では、常に少なくとも1名の法定代理人がベトナム国内に居住していることが義務付けられており、これは日本の代表取締役制度において国内居住要件が撤廃されたことと対照的です。
さらに、2025年改正企業法では、この法定代理人の個人的な法的責任が極めて厳格に明文化されました。2020年企業法の下でも忠実義務や善管注意義務は存在していましたが、損害賠償責任の根拠は必ずしも明確ではありませんでした。しかし改正法では、法定代理人がその責任に違反して会社に損害を与えた場合、関連する法令の規定に基づき、会社および株主に対して個人の資産をもって損害を賠償する責任を負うことが明確に示されました。
これは、日本から現地法人の社長や総支配人として赴任する駐在員にとって、個人の財産を脅かしかねない重大な法的リスクを意味します。税務当局や労働当局からのペナルティにとどまらず、経営判断の誤りが直接的に株主からの損害賠償請求に直結する環境が整ったことから、企業は取締役・役員賠償責任保険の導入や、権限委譲規程の厳密な整備によって個人のリスクを遮断する防衛策を講じる必要があります。この個人的責任の強化に関する解説は、以下のウェブサイトで確認することができます。
ベトナム会社の実質的支配者(UBO)開示義務と透明性の確保

2025年改正企業法における最も革新的かつ外資系企業への影響が大きい変更点が、「実質的支配者」に関する申告義務の導入です。これまでベトナムでは実質的支配者の概念はマネーロンダリング防止法制の枠内に留まっていましたが、法改正とそれに伴う政令(Decree 168/2025/ND-CP)により、企業登録の必須要件として明確に法定されました。
政令168号によれば、実質的支配者とは、定款資本または議決権付株式の25パーセント以上を直接的または間接的に所有する自然人、あるいは企業の重要な意思決定に対して実質的な支配権を有する自然人と定義されています。間接的な所有には、複数の特別目的会社や持株会社を介した所有も含まれます。また、支配権の要件には、取締役会の過半数の選解任権、法定代理人や社長の任命権、定款変更の決定権、事業の再編や解散の決定権などが含まれます。
企業は、事業登録機関に対して実質的支配者の氏名、生年月日、国籍、性別、住所、保有割合などの詳細な個人情報を含むリストを提出する義務を負います。通達68/2025/TT-BTCに基づくフォーム10およびフォーム11を使用してこれらの情報を申告し、既存企業であっても、2025年7月1日以降に最初に企業登録内容の変更手続きを行う際に、この実質的支配者情報を遡って申告しなければなりません。さらに、実質的支配者の情報に変更が生じた場合は、変更から10日以内に事業登録機関へ通知する厳格な更新義務が課されています。
この規制は、日本企業がベトナムで合弁会社を設立したり、シンガポール等に設立した中間持株会社を通じて投資を行ったりする際に極めて大きな実務的負担をもたらします。企業はグループ全体の資本関係を遡り、最終的な自然人である支配者を特定しなければならず、情報の虚偽申告や更新漏れがあった場合には重い行政罰の対象となります。日本においても公証人役場での実質的支配者申告制度や商業登記所での実質的支配者リスト保管制度が存在しますが、ベトナムの新制度は企業活動のあらゆる変更登記の際に最新の状況を10日以内に報告することを求めており、コンプライアンスの要求水準が一段と高くなっていることから、日常的な情報管理体制の構築が不可欠であるということが言えるでしょう。
ベトナムにおける少数株主の権利保護と株主代表訴訟
少数株主の保護と経営監視機能の強化も、ベトナムのコーポレートガバナンス改革における重要な潮流です。ベトナムの企業法は、取締役や経営陣に対する株主代表訴訟の提起要件を段階的に緩和してきました。2014年企業法の下では、株主代表訴訟を提起するためには普通株式の1パーセント以上を6ヶ月間連続して保有している必要がありましたが、2020年企業法においては、この6ヶ月という保有期間要件が撤廃され、普通株式の1パーセント以上を保有する株主であれば直ちに訴訟を提起できるようになりました。
日本の会社法における株主代表訴訟は、公開会社においては原則として6ヶ月前から引き続き株式を有する株主に認められており、保有割合の要件はありません(1株でも提起可能)。日本法が保有割合を問わない代わりに保有期間を要求して濫用的な訴訟を防ごうとしているのに対し、ベトナム法は1パーセントという最低保有割合を求める代わりに保有期間を要求せず、投資後直ちに経営陣の責任を追及できる機動性を優先しています。
また、株主総会を招集する権利についても、5パーセント以上の株式を保有する株主に認められています。2025年の法改正では、株主が株主総会の招集を要求する際、関係当局に提供する文書や証拠の正確性について法的責任を負う旨が追加されました。これにより、少数株主の権利濫用を防ぎつつ、正当な監視機能を担保するバランスの取れた制度設計が図られています。さらに、関連当事者取引に対する規制も厳格であり、一定の基準額を超える取引には株主総会や取締役会の承認が必要とされ、利益相反を未然に防ぐ仕組みが整備されています。
2026年版ベトナムのコーポレートガバナンス原則とESGの統合
法的拘束力のある企業法に加え、上場企業や公開企業に向けたソフトローとしてのガバナンス規範も大きく進化しています。ベトナム国家証券委員会は国際金融公社およびスイス経済省の支援を受け、2026年2月3日に「2026年版ベトナム・コーポレートガバナンス原則」を公表しました。この原則に関する公式な発表は、以下の国家証券委員会のウェブサイトで確認することができます。
この新原則は、2023年に改定された経済協力開発機構のコーポレートガバナンス原則に準拠しており、9つの核心的な原則から構成されています。特筆すべきは、国際的な潮流に沿って「コンプライアンス・オア・エクスプレイン(遵守するか、さもなくば説明せよ)」のアプローチが明確に導入された点です。企業は、ガバナンス原則を満たしていない部分について、その理由と今後の改善計画を年次報告書等で投資家に向けて透明性をもって説明する義務を負います。
さらに、2026年版原則の最大のハイライトは、環境・社会・ガバナンス要素とサステナビリティが企業の経営戦略とリスク管理の中心に据えられたことです。原則は、取締役会に対して気候変動リスクやサイバーセキュリティリスクを含む非財務的リスクの監視責任を明記し、社内にサステナビリティまたはESGに関する専門委員会を設置するか、専任の取締役を配置することを強く推奨しています。
これに先立ち、財務省通達(Circular 96/2020/TT-BTC)第10条および付属書IVにより、上場企業はすでに温室効果ガスの直接的および間接的な排出量、水資源の消費量、労働環境の安全性などに関する広範なサステナビリティ・データの開示を義務付けられていました。2026年版の原則はこれに加えて、サステナビリティ報告書の信頼性を高めるために、独立した第三者機関による保証を取得することを推奨しています。
日本のコーポレートガバナンス・コードも気候変動開示やサステナビリティを重視していますが、ベトナムの急速な制度化は、海外のESG重視の機関投資家からの資金を呼び込み、新興国市場からの格上げを目指すという国家的な戦略的意図から、これらの指標が企業の競争力や資金調達能力に直結しているということが言えるでしょう。
ベトナム国有企業のガバナンス改革の現状と課題

ベトナム経済において、国有企業は依然として重要な役割を果たしていますが、そのガバナンス改革は独自の課題を抱えています。2020年企業法では、国有企業の定義が「国が定款資本の50パーセント超を保有する企業」へと拡大され、対象となる企業群のガバナンス要件が整理されました。
政府は政令(Decree 159/2020/ND-CP)等を通じて、国家の所有機能と規制機能を分離し、国家資本管理委員会(CMSC)の権限を強化することで、国有企業を経済協力開発機構のガイドラインに準拠した近代的な組織へと変革しようとしています。2030年までに100パーセントの国有企業が最新のガバナンス基準を適用することを目標に掲げ、取締役会や総支配人の権限拡大、実績に基づく柔軟な採用メカニズムの導入などが議論されています。
しかしながら、伝統的な官僚主義や、商業的利益と社会政治的目標の間の利益相反が依然として足かせとなっており、実質的な監視機能の向上や株式化の遅れが課題として残されています。外資系企業が国有企業と合弁事業を行う際には、こうした国有企業特有の意思決定プロセスの不透明さや政治的要因を十分に考慮した上で、強固な株主間協定を締結することが求められます。
ベトナムにおける司法判断の実務とコーポレートガバナンス裁判例
ベトナムでは伝統的に成文法が重視されますが、近年では最高人民裁判所が公表する判例が下級審を拘束する実質的な法源として機能し始めており、司法の役割が拡大しています。実際の裁判例を分析すると、経営陣のコンプライアンス違反や株主間紛争に対して、裁判所が極めて厳格な判断を下している実態が浮き彫りになります。
経営陣の責任を問う象徴的な事件として、2020年1月14日にフート省人民裁判所(People’s Court of Phu Tho Province)で下された知的財産権侵害に関する刑事判決が挙げられます。この事件では、Viet Phap Aluminum Factory JSCと同社の取締役が、他社の保護された商標を自社のアルミニウム製品に無断で使用したとして刑事訴追されました。裁判所は法人である企業に対して20億ベトナムドンの罰金および損害賠償を命じただけでなく、業務を主導した取締役個人に対しても5億ベトナムドンの罰金を科し、18ヶ月間の役員就任禁止を命じました。この判決に関する公式な解説は、以下のウェブサイトで確認することができます。
参考:ベトナムにおける知的財産権侵害と企業の刑事責任に関する最新判例解説
この判決から、法人の違法行為について、ベトナムの司法は企業という法人格の背後にいる取締役個人の刑事責任や行政責任を容赦なく追及する姿勢を強めているということが言えるでしょう。
また、企業内部のガバナンス不全が引き起こす株主紛争の深刻さを示す事例として、2024年4月8日にアンザン省人民裁判所(People’s Court of An Giang Province)で開始されたHanh Phuc General Hospitalの破産手続きに関する事案があります。この事件は、元経理担当者からの約14億ベトナムドンの債権回収を端緒として破産手続きが申し立てられたものですが、背後には大株主である投資ファンド(Vietnam Oman Investment)と、元会長による経営の私物化や放漫経営を巡る深刻な対立が存在していました。大株主側は、元会長の不透明な意思決定や利益相反行為が病院を破産危機に追い込んだと主張し、裁判所に対して透明性のある判断と経営陣の責任追及を求めました。この事案に関する解説は、以下のウェブサイトで確認することができます。
参考:ベトナムにおける株主紛争事例:Hanh Phuc総合病院の破産手続きとVOIの異議申し立て
こうした裁判例が示す通り、ベトナムにおける会社経営は、書類上の形式的な手続きを整えるだけでは法的リスクを防ぎきれません。株主間の合意形成プロセスや、取締役会を通じた適正な監視機能が実質的に機能していなければ、ひとたび紛争が生じた際に経営陣は個人財産の喪失や刑事罰といった致命的なダメージを被ることになります。
まとめ
これまで詳細に解説してきたように、ベトナムのコーポレートガバナンス法制は、2020年企業法および2025年の大改正、そして2026年版コーポレートガバナンス原則の導入を経て、かつてないスピードで高度化と厳格化を遂げています。実質的支配者の透明な開示、法定代理人に対する厳格な個人責任の追及、そして環境・社会・ガバナンスや気候変動リスクを経営の中核に据えるサステナビリティ要件など、日本企業がベトナムで直面するコンプライアンスのハードルは飛躍的に高まっています。現地法人の経営を単なる支店管理の延長と捉えるのではなく、国際基準に準拠した独立した企業統治の主体として再設計することが急務です。
モノリス法律事務所は、日本とは異なるベトナム特有の法制度や最新の規制動向を踏まえ、現地への進出スキームの構築から、定款の整備、実質的支配者の開示手続き、そして現地法人のガバナンス構築に至るまで、企業の皆様が直面するあらゆる法務課題についてサポートいたします。
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務
タグ: ベトナム社会主義共和国海外事業

































