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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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令和7年資金決済法改正のポイント:暗号資産・ステーブルコイン・越境決済はどう整理されたか

決済のデジタル化は、単なる利便性の向上を超え、暗号資産やステーブルコインが実体経済の決済手段として組み込まれる新たな局面を迎えています。しかし、日本の法制度はこれまで、中央集権的な既存の金融システムを前提に設計されていたため、ブロックチェーン等の分散型技術や高度なAPI連携を基盤とする新興サービスとの間に、構造的な乖離が生じていました。

これを受け、令和7年(2025年)6月に成立した改正資金決済法は、デジタル金融サービスの健全な発展と利用者保護、そして国際的な規制調和の両立を図るため成立しました。本改正では仲介業の整備や越境決済の適正化など、実務上の課題に対する明確な整理が行われました。

本記事では、改正の背景にある問題を整理し、実務者が押さえるべき重要ポイントを詳しく解説します。

令和7年(2025年)資金決済法改正の背景

令和7年(2025年)の改正を理解するためには、なぜ今、このタイミングで見直しが必要だったのかを押さえる必要があります。背景には、主に以下の3つの要因があります。

金融サービスのデジタル化と制度の「想定ズレ」

暗号資産や電子決済手段を中心とする新しい金融サービスは、既存の制度が想定していたビジネスモデルとは異なる形で広がってきました。

特に問題となっていたのが、

  • 売買や交換そのものは行わず
  • あくまで「媒介」や「接続」の役割を担う事業者

の位置づけです。

従来の制度の下では、こうした事業者に対して、暗号資産交換業者と同等の規制を課すことは現実的ではありませんでした。しかし、何の規律も及ばない状態を放置すれば、利用者保護や責任の所在が曖昧になります。

イノベーションを阻害しないことと、無規制状態を許さないこと。そのバランスをどう取るかが、長らく制度上の課題となっていました。

利用者保護と「資産が逃げる」リスク

暗号資産や電子決済手段の取引が拡大する中で、より深刻な問題として浮上したのが、事業者破綻時の資産保全です。

従来の資金決済法では、暗号資産の現物のみを取り扱う暗号資産交換業者について、破綻時に資産の国外流出を防ぐための明確な国内保有命令の規定が存在していませんでした。

グローバルに事業を展開する事業者が増える中で、

  • 法律上の管理主体
  • 実際の資産の保管場所

が乖離するケースも少なくありません。実際、海外法人が関与する暗号資産関連事業者の破綻事例では、現物専業であっても利用者資産の保全が困難になるリスクが顕在化しました。

「破綻した後にどう回収するか」ではなく、「そもそも資産が国外に出ない構造をどう作るか」 という発想への転換が求められていたのです。たとえ海外に本社があるグループ企業であっても、日本の利用者の資産は日本国内でしっかり守らせる。いわば「日本の金庫から勝手に持ち出させない」ための強力な命令権限が、今回明確化されました。

国際的な規制動向と越境決済

国境をまたぐお金のやり取りが増えるにつれ、マネー・ローンダリングなどの不正リスクをどう抑えるかは、各国共通の課題になっています。とりわけ問題になっているのが、銀行ではない事業者が国際送金に関与するケースです。取引の当事者ではないとしても、送金の流れに関わる以上、規制の空白を放置するわけにはいかない、という認識が国際的に強まっています。

こうした流れを受けて、金融安定理事会(FSB)は2024年12月、国境をまたぐ送金サービスを提供するノンバンクについても、各国が足並みをそろえて規制・監督を行うべきだとする勧告を公表しました。今回の資金決済法改正で、取引そのものには関与しない収納代行業者であっても、国際送金を行う場合には資金移動業の規制を適用することとされたのは、この国際的な要請を踏まえたものです。

また、信託型ステーブルコインの裏付け資産の管理についても、同様に海外の制度や実務を意識した見直しが行われています。ステーブルコインとは、円やドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたデジタル通貨のことです。その中でも「信託型」は、「発行分と同じ額の現金を、銀行などの信託銀行に預けて(信託して)別管理する」仕組みを指します。 いわば、「いつでも本物の現金と交換できる引換券」のようなもので、安全性が高いのが特徴です。これまでは、利用者の資産を守るために、預かった現金の運用方法は「銀行預金」などに限定されるなど、極めて厳格に制限されていました。しかし、今回の改正ではこの運用ルールに一定の「柔軟性」が持たされることになりました。

暗号資産・電子決済手段関連の規制見直し

改正点1:暗号資産・電子決済手段関連の規制見直し

暗号資産や電子決済手段をめぐる改正では、まず、これまで制度上の位置づけが曖昧だった「媒介型」のビジネスを整理する点が大きなポイントとなります。

電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の創設

本改正の大きなポイントの一つが、暗号資産や電子決済手段の「売買・交換の仲介だけを行う事業者」を想定した、新たな業態の創設です。具体的には、暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者(以下「所属業者等」)から委託を受け、暗号資産や電子決済手段の売買・交換の「媒介」だけを行う事業者として、「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」が新設され、登録制が導入されました。

電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の定義と所属制の採用

電子決済手段・暗号資産サービス仲介業とは、暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者以外の者が、それらの業者から委託を受けて、

  • 電子決済手段の売買・交換の媒介
  • 暗号資産の売買・交換の媒介

を業として行うことを指します。電子決済手段・暗号資産サービス仲介業を行うためには、内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。

また、仲介業者は、自由に複数の業者の仲介を行えるわけではなく、特定の所属業者等のために仲介を行う「所属制」が採用されています。

登録要件の一つとして、仲介業者が所属する暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者が、認定資金決済事業者協会に加入していることも求められています。

仲介業者に対する業務規制

仲介業者には、「仲介に特化した立場」であることを前提とした規制が課されます。まず重要なのは、仲介業者は、利用者から金銭や暗号資産などの財産を一切預かることができないという点です。仲介業者は、あくまで取引を「つなぐ」役割に限定されており、利用者資産を管理しないことが制度上の前提とされています。

このため、資金移動業者などに課されるような、供託義務などの複雑な財務規制は課されていません。また、仲介業者は、業務開始にあたって、次のような事項を利用者に明示する義務があります。

  • 所属業者等の商号
  • 自らが所属業者等の代理権を有していないこと

あわせて、銀行などの業務と誤解されないための説明や、電子決済手段・暗号資産の内容、手数料、契約条件などについて、利用者が正しく理解できるよう情報提供を行う義務も課されています。

なお、暗号資産の仲介行為については、利用者に対する信用供与(立替や貸付のような行為)は禁止されています。

また、仲介業者の媒介行為によって利用者に損害が生じた場合には、原則として、委託を行った所属業者等が賠償責任を負うとされています。これは、仲介業者に対する監督責任が、所属業者等にあることを明確にするためです。もっとも、所属業者等が仲介業者の選定や委託にあたり相当の注意を尽くし、かつ損害の発生防止に努めていた場合には、例外的に責任を免れることができるとされています。

資産の国内保有命令の導入

今回の改正では、暗号資産の現物のみを取り扱う暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者について、破綻時などに資産が国外へ流出するおそれがある場合に備え、新たな規定が設けられました。具体的には、公益または利用者保護のために必要があると認められるときには、内閣総理大臣が、当該事業者に対して資産を国内で保有するよう命じることができるとされています。

これまでの制度では、こうした現物専業の事業者について、資産を国内に留め置くことを明確に求める手段が必ずしも十分ではありませんでした。今回の見直しは、事業者の破綻後に対応するのではなく、破綻しても利用者の資産が国外に流出しないよう、事前に手当てを講じるという考え方を制度として明確にしたものだと言えるでしょう。

信託型ステーブルコインの裏付け資産管理の柔軟化

今回の改正では、特定信託受益権、いわゆる信託型ステーブルコインの裏付け資産(信託財産)について、その管理・運用方法が見直され、一定の柔軟性が認められることになりました。

従来の制度では、信託型ステーブルコインの裏付け資産は、その全額を要求払預貯金として管理しなければならないとされていました。価値の安定性を最優先する考え方に基づくものではありましたが、国際的には必ずしも一般的な運用とは言い難く、日本の制度は相対的に硬直的だとの指摘もありました。

改正後は、こうした国際的な動向を踏まえ、発行額の50%を上限として、元本を毀損しない形での運用が認められます。具体的には、国債証券や定期預金など、内閣府令で定められる安全性の高い資産を保有することによる運用が可能となりました。

この見直しにより、信託型ステーブルコインの価値の安定を確保しつつ、過度な制約によって事業の自由度や競争力が損なわれることを避ける狙いがあります。安全性を維持したまま、国際的な制度や実務との整合を図ろうとする改正と言えるでしょう。

資金移動業関連の規制見直し

改正ポイント2:資金移動業関連の規制見直し

今回の改正は、特に「クロスボーダー(越境)決済」に関与する事業者にとって、自社のビジネスモデルが引き続き規制の枠外(収納代行等)として維持できるか、あるいは資金移動業の登録が必要になるかを再検討すべき重要な内容となっています。

国境をまたぐ収納代行への資金移動業規制の適用

これまで実務上、資金移動の当事者ではない中間的な役割(収納代行業者等)がどこまで資金決済法の規制を受けるかは、個別判断に委ねられる側面がありました。今回の改正では、国際的な要請(FSB勧告等)を背景に、「実質的に国境をまたぐ資金移動の機能を担っているか」という観点から、規制の射程が明確化されました。

  • 多段階委託への対応:資金移動が一段階で行われず、複数の業者が介在する「リレー形式」であっても、一連の流れとして為替取引を構成すると判断されます。形式的な委託契約の有無ではなく、経済的な実態が重視されます。
  • 「原則として為替取引」とする整理:国際送金については、利用者保護の観点から、例外的にリスクが低いと判断されるケースを除き、原則として資金移動業の登録が必要な「為替取引」に該当すると整理されました。
  • 実務上の留意点:海外のECプラットフォームと日本の消費者の間に入り、決済資金の清算を行うスキームを持つ事業者は、改めて「資金移動業」としてのライセンス取得、あるいはスキームの見直しを迫られる可能性があります。

利用者資金保全方法の多様化と返還手続きの迅速化

今回の改正では、従来の「供託」に代わる、あるいはこれを補完する3つの新スキームが導入されました。

類型スキームの概要実務上のメリット
① 履行保証人債務引受契約銀行等の適格者が、業者の為替債務を引き受ける契約供託による資金の固定化を避け、資金効率を向上させることが可能。
② 履行保証人保証契約銀行等の適格者が、業者の債務を保証する契約同上。銀行の与信枠を活用した保全が可能。
③ 履行保証金弁済信託契約信託会社等が信託財産を管理し、倒産時に直接弁済する契約倒産手続の枠外で、信託会社から利用者に迅速な直接返還が可能。

この改正により、還付手続きの迅速化が図られました。従来の供託制度では、還付手続きに相当な期間(半年〜1年超)を要していましたが、これらの契約活用により、法務局を経由しない「直接返還」が可能となります。事業者にとっては、多額のキャッシュを法務局に固定する(供託する)必要がなくなり、金融機関の保証や信託機能を活用することで、より柔軟な資金運用が可能になります。

企業に求められる資金決済法改正への対応

企業として求められる対応

これまで見てきたとおり、今回の改正では制度の枠組みが整理されただけでなく、事業者の立ち位置や責任の所在が、これまで以上に明確にされました。とりわけ、暗号資産や電子決済手段をめぐるビジネスについては、自社の事業が「どの業態に該当するのか」「どの規制を前提に事業を設計すべきか」を改めて確認する必要があります。

以下では、今回の改正を踏まえ、企業として実務上どのような対応が求められるのかを、領域ごとに整理します。

電子決済手段・暗号資産サービス仲介業に関する対応

今回新たに新設された電子決済手段・暗号資産サービス仲介業に関する対応としては、新規参入時の登録申請や、仲介業者に業務を委託する場合の内部統制の構築が必要となります。

新規参入時の登録対応と体制構築

暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者の媒介業務のみを行おうとする企業は、速やかに電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の登録申請を準備する必要があります。

登録にあたっては、申請書に記載すべき事項(業務の種別、所属業者等の商号等)を明確にするとともに、適正かつ確実な業務遂行体制と法令遵守体制を整備し、それを裏付ける書類を整えることが求められます。特に、利用者からの金銭等の預託禁止を徹底するための厳格な内部統制を構築しなければなりません。

所属業者としての責任と管理

既存の暗号資産交換業者等が仲介業者に業務を委託する場合、仲介業者が起こした損害について所属業者等も賠償責任を負うリスクがあるため、委託先の選定と管理が極めて重要になります。委託先の仲介業者のコンプライアンス体制や情報安全管理体制について、定期的な監査や指導(委託先指導)を厳格に行い、法令遵守を確保する必要があります。

資金移動業者に求められる対応

今回の資金決済法改正により資金移動業者に求められる対応としては、自社の事業が為替取引に該当するかどうかの評価や、供託に代わる保全措置導入の検討があります。

クロスボーダー収納代行事業の適法性確認

国境をまたぐ収納代行サービスを提供している企業は、そのサービスが改正後の資金決済法第2条の2の規定に基づき「為替取引」に該当するかを法的に評価する必要があります。

特に国際送金に関わる業務は、規制対象となる可能性が高く、該当する場合は、資金移動業の登録または業務範囲の変更(変更登録)の手続きを遅滞なく進めなければなりません。施行日以前から該当行為を営んでいた者には経過措置がありますが、期限(施行日から6か月間)が定められています。

利用者資金の保全方法の再検討

資金移動業者は、利用者資金の早期返還ニーズに対応するため、新たに導入された履行保証人債務引受契約、履行保証人保証契約、履行保証金弁済信託契約といった、供託に代わる保全措置の導入を検討すべきです。

これらの契約は、破綻時の迅速な資金返還を可能にするだけでなく、自社のキャッシュフローの効率化にもつながる可能性があります。

資産の国内保有体制の整備

暗号資産交換業者及び電子決済手段等取引業者は、内閣総理大臣による資産の国内保有命令に迅速に対応できるよう、国内に保有すべき資産の範囲(政令で定める部分)を特定し、緊急時に国外資産の国内への移転を確実に行うための体制を整備しておくことが重要です。

まとめ:貸金決済法改正対応は弁護士に相談を

今回の資金決済法改正は、デジタル金融を取り巻く環境の変化を受け、日本が利用者保護とイノベーションの促進を同時に実現しようとした点に特徴があります。新しい技術やビジネスモデルを一律に規制するのではなく、リスクの所在に応じて制度を組み替えようとする狙いがあります。

新設された電子決済手段・暗号資産サービス仲介業は、その象徴と言える制度です。媒介に特化した事業者を登録制の下で位置づけ、責任関係を明確にすることで、過度な規制によって参入を妨げることなく、一定の利用者保護を確保する枠組みが整えられました。

また、資金移動業者の破綻時を想定し、銀行等の保証機関や信託会社を活用して、利用者に直接資金を返還できる仕組みが導入された点も重要です。これにより、デジタルマネーに対する信頼性を制度面から下支えすることが期待されます。信託型ステーブルコインの裏付け資産について、発行額の50%を上限として国債や定期預金による運用が認められた点も、国際的な規制動向を踏まえた現実的な対応と言えるでしょう。

これらの改正により、企業は、クロスボーダー取引が資金移動業の規制対象に該当しないかといった点の確認や、利用者資金の保全方法の見直しなど、継続的なコンプライアンス体制の整備が求められます。その際には、法令の理解にとどまらず、事業モデルやデジタル技術の特性を踏まえた検討が不可欠となるでしょう。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。当事務所は暗号資産やブロックチェーンに関わるビジネスの全面的なサポートを行います。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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