メタバースとNFTの法的課題とは 気をつけるべき法律を解説
昨今、メタバースとNFTが注目を集めています。メタバースとNFTについては、非常に有用な分野で、多くの事業者が参入しようとしています。ですが、比較的新しい分野ということもあり、法律的に十分に整理されていないのが現状です。そのため、メタバースとNFTに関する法律の知識がないと、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。
そこで、本記事では、メタバースやNFTに関する事業を行うことを考えている事業者の方を対象に、メタバースとNFTに関する法的課題について説明をします。
この記事の目次
メタバースとは
メタバース(Metaverse)とは、インターネット上等に構築された三次元のバーチャル空間において、アバターなどを利用し、利用者間で接する環境のことをいいます。
メタバースの7つの要素
メタバース(Metaverse)は、アメリカ合衆国出身の小説家・SF作家であるニール・スティーヴンスン氏が、1992年に自身が書いた小説である『スノウ・クラッシュ(Snow Crash)』の中で生み出した用語であると言われています。
メタバース(Metaverse)は、「超越」や「超」という意味がある「meta」という単語と、「世界」や「宇宙」という意味がある「universe」という単語を組み合わせて作られた造語です。
また、投資家のマシュー・ボール氏は、メタバースの要素として、以下の7つの要素を挙げています。
- 永続的であること
- 同期的であること
- 無限の同時接続ユーザが存在していること
- 完全に機能した経済が存在すること
- 実社会との垣根が存在しないこと
- 相互運用性が認められること
- 幅広い人々の貢献が認められること
上記の7つの要素は、メタバースを判断するうえで、一つの指標になると考えられます。
メタバースの2つの分類
メタバースについては、大きく分けて、「完全な仮想世界」と「現実空間内包型」の2つに分類することができます。
「完全な仮想世界」では、メタバースの中で完全な仮想世界が構築され、我々が生活している現実空間とは切り離されたメタバースが存在することになります。
「現実空間内包型」では、「完全な仮想世界」とは異なり、メタバースの中に現実空間も取り入れ、完全な仮想世界と現実の仮想世界が共存をすることになります。
メタバースの事例
メタバースについては、現実空間内包型のメタバースよりも、完全な仮想世界のメタバースの事例の方が多いというのが現状です。
例えば、人気ゲームである、Fortnite、どうぶつの森、Minecraft(マインクラフト)などは、ゲーム内で仮想の世界が構築されており、現実の仮想世界とは区別された完全な仮想世界といえます。
現実空間内包型のメタバースとしては、代表的なものとして、ポケモンGOやドラゴンクエストウォークなどがあげられますが、現実空間内包型のメタバースは、現状では、多く存在しているとはいえません。
メタバースとNFTの関係
近年、NFTが、メタバースに大きな影響を及ぼしています。
そこで、以下では、メタバースとNFTの関係について着目をし、解説をします。
NFTとは、非代替的なトークンのことをいいます。NFTは、非代替的、すなわち、他のもので代替することが困難であるため、唯一無二の価値を生み出すことができます。
関連記事:NFTにはどのような法律の規制があるのか弁護士が解説
NFTとメタバースを組み合わせることにより、オープンメタバースを実現することができます。
オープンメタバースとは、特定のメタバースで獲得したアイテムなどを、別のメタバースでも使用できるというものです。
NFTであれば、メタバース内のアイテムに価値を設定することができますので、オープンメタバースを実現することが可能となります。
メタバースの中には、当然のことながら、バーチャルな世界ですので、我々が現実世界で使用しているものを持ち込むことはできません。NFTを利用することにより、オープンメタバースを実現することが可能となった結果、メタバースの中で使用するアイテムなどのデジタルコンテンツに価値を発生させることができ、デジタルデータを、我々が現実世界で使用しているものに近い存在にするということが可能になりました。
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メタバースにおける法的課題
前述のように、メタバースにはさまざまな有用性が認められますが、法的な整備が十分なされているとは必ずしもいえず、法的な課題もあります。
そこで、以下では、メタバースにおける法的課題について説明をします。
メタバースと知的財産権
まず、メタバースにおける法的課題については、知的財産権との関係があります。とりわけ、知的財産権の中でも、著作権との関係が問題となるケースが多いものと考えられます。
著作権とは、著作物を保護するための権利のことをいいます。
また、著作物について、著作権法第2条第1項第1号では、以下のように規定されています。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
上記の定義に該当するものについては、著作物として、著作権法による保護を受けることになります。
多くのメタバースの中では、アバターが使用されますが、アバターの中には、アニメのキャラクターやゲームのキャラクターが使用されているケースも多くあります。
メタバースの中で、アニメのキャラクターやゲームのキャラクターをアバターとして使用するためには、他者の著作物であるキャラクターを使用することになるため、著作権の権利者の許諾が必要になるものと考えられます。
また、現実空間内包型のメタバースの場合には、現実に存在している建物が再現されているケースもあります。建物の中には、美術の著作物と評価され得る建物があり、メタバースの中での現実の建物の利用方法によっては、著作権法に違反する可能性もあります。
他には、例えば、メタバースの中で音楽活動を行うということも考えられます。メタバースが、現実世界に近づくことにより、メタバース内でコンサートを開くということも考えられます。
この場合、オリジナルの楽曲を歌う場合には問題はありませんが、他の人が作曲した楽曲を歌う場合には、楽曲の著作権者から許諾を受ける必要があるものと考えられます。
さらに、現実空間内包型のメタバースの場合には、より現実空間に近づけるために、企業のロゴなどが利用されているケースも考えられ、この場合には、商標権との関係も考える必要があります。
メタバースと肖像権・パブリシティ権等
次に、メタバースにおける法的課題については、肖像権との関係があります。
メタバースの中で使用されるアバターには、アニメやゲームのキャラクターだけでなく、実在する特定の個人を再現したアバターが使用される可能性があります。この場合には、アバターとして再現された特定の個人の肖像権を侵害する可能性があります。
また、メタバースの中で使用されるアバターについては、芸能人や有名人を再現したアバターが使用される可能性もあります。
芸能人や有名人を再現したアバターについては、前述の肖像権の問題だけでなく、アバターとして使用された芸能人や有名人のパブリシティ権(自己の氏名や肖像が有する顧客吸引力を排他的に使用することができる権利)が侵害される可能性もあります。
他には、メタバースの中で、特定の者のなりすまし行為により、なりすまされた者の名誉権が侵害されるという状況が発生する可能性も考えられます。
まとめ:メタバースとNFTの法律的な問題点についてのご相談は弁護士へ
以上、本記事では、メタバースやNFTに関する事業を行うことを考えている事業者の方を対象に、メタバースとNFTに関する法的課題について説明をしました。
メタバースについては、とても有用な技術ですが、本記事で説明したように、法律的に整理をするべき問題が多くあります。
メタバースやNFTについては、法律的な知識だけでなく、メタバースやNFTに関する知識も必要であるため、これらの最新のIT技術に関して専門的な知識を有する弁護士に相談をすることをおすすめいたします。
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