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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

独自ドメイン登録者調査の「ANSI Whois」の検索方法や見方

風評被害対策

独自ドメイン登録者調査の「ANSI Whois」の使い方

いわゆる独自ドメインで運営されているサイトの場合、ドメイン登録者の情報は、「whois」という形で登録・公開されています。ドメインはある程度公的な性質を持つものなので、ネットワーク環境などに問題が発生した場合の技術的な窓口などを情報として登録・公開する必要があるからです。したがって、独自ドメインを取得し、独自ドメインでサイトを運営する場合、取得したドメインについて、自身の情報を「whois」として公開しなければいけない、というのが原則です。

削除やIPアドレス開示請求のためのwhoisの位置付け

これは、ウェブサイト上に誹謗中傷・風評被害を投稿されてしまった側から言えば、

  1. ウェブサイトは匿名でも運営できる
  2. しかし、独自ドメインのサイトの場合には、ドメインの登録者をwhoisで調べることは出来得る
  3. そして、独自ドメインのサイトの場合、ドメイン登録者とサイト運営者は基本的には一致する
  4. ドメイン登録者が分かれば、サイトの運営者、つまり、その誹謗中傷・風評被害記事を消す権限を持っている人間が誰なのか分かる

ということになります。

そこで、独自ドメインサイト相手の削除・IPアドレス開示請求を行う場合、そのドメインの登録者の情報を、whoisで確認するのが、まずは第一歩です。そしてその際に利用されるケースが多いウェブサービスが、「Asuka.Net」の運営するwhois情報取得サービス、「ドメイン名・IPアドレス検索 (ANSI Whois)」です。

「ANSI Whois」の基本的な検索方法・見方

「検索」で登録者情報が表示される

ANSI Whoisの検索方法や見方は、基本的に簡単です。トップページで調査対象となるドメインを入力し「検索」をクリックすると、下記のように、当該ドメインに関するwhois情報が表示されます。

ドメインとサブドメイン

注意点として、ここでいう「ドメイン」は、ウェブサイトのURLの

http://www.monolith-law.jp/article/index.html

「monolith-law.jp」部分です。上記の例で言えば、「/article」以下は、そのドメイン内のウェブページの位置のような情報であり、ドメインではありません。さらに、「www」の部分は「サブドメイン」であり、一つの独自ドメインの中にいくつでも設置可能です。つまり、仮に、

http://www.monolith-law.jp
http://www2.monolith-law.jp
http://blog.monolith-law.jp

のようにいくつもサブドメインがあったとしても、whoisに運営者情報を登録する必要のある「ドメイン」は全て共通であり、一つ一つ、「まずwww.monolith-law.jpについて調べ、次にwww2.monolith-law.jpについて調べ~」というように調査を行う必要はありません。

匿名ドメイン登録サービスとは

ドメイン登録の中には、匿名のものも。

しかし、whoisには、必ずしも「ドメイン登録者」の情報が記録されている訳ではありません。まず、あくまで登録されているのは「自己申告」の住所や氏名です。ドメイン登録の際に、登録されている住所宛に確認の郵便などが届く訳ではありません。独自ドメイン登録の際に利用される、「お名前.com」や「GoDaddy」などの、「ドメインレジストラ」、いわば「独自ドメイン販売業者」は、「正しい住所や氏名を登録してください」「登録が誤っているとドメインを抹消する可能性があります」といった旨の警告を行ってはいますが、実際問題として、例えば

  • 昔住んでいた住所である
  • ビルの階数表示がない
  • そもそも全くの虚偽住所である

といったドメインも、なかなか登録が抹消されないのが現実です。

ドメインレジストラの提供する匿名サービス

さらに、この世には、「匿名ドメイン登録サービス」といったものも存在します。例えば、whoisで下記のような情報が出てくるドメインは、匿名ドメイン登録サービスを用いて登録されているものです。

Registrant Name: Registration Private
Registrant Organization: Domains By Proxy, LLC
Registrant Street: DomainsByProxy.com
Registrant Street: 14747 N Northsight Blvd Suite 111, PMB 309
Registrant City: Scottsdale
Registrant State/Province: Arizona
Registrant Postal Code: 85260
Registrant Country: US
Registrant Phone: +1.4806242599
Registrant Phone Ext:
Registrant Fax: +1.4806242598
Registrant Fax Ext:
Registrant Email: [email protected]

上記は、ドメインレジストラ「GoDaddy」の匿名ドメイン登録サービスを用いて登録されているドメインのwhois情報です。ここに記載されている住所や電話番号はGoDaddy社のそれであり、ドメイン登録者のものではありません。「独自ドメインを登録する場合は登録者自身の住所や氏名を公開するのが原則だが、それを公開したくない人のために、GoDaddy社が、いわば『代わりに』GoDaddyの住所や名称などで当該独自ドメインの登録を行う」というものです。

登録される情報はレジストラごとに異なる

この場合に登録される情報はドメインレジストラごとに異なり、例えば「Namecheap」というドメインレジストラの場合は下記のようになります。

Registrar: NameCheap, Inc.
Registrar IANA ID: 1068
Registrar Abuse Contact Email: [email protected]
Registrar Abuse Contact Phone: +1.6613102107
Domain Status: ok https://icann.org/epp#ok
Name Server: DNS1.REGISTRAR-SERVERS.COM
Name Server: DNS2.REGISTRAR-SERVERS.COM
DNSSEC: unsigned
URL of the ICANN Whois Inaccuracy Complaint Form: https://www.icann.org/wicf/

一般論として言えば、whois情報内に出てくる名称やURL、住所や電話番号を検索し、ドメインレジストラのウェブサイトなどが出て来た場合は、この手の「匿名ドメイン登録サービス」によるものである可能性が高いと言えるでしょう。

この場合、ドメインからサイト運営者を調べるのは一般に困難です。様々な「ノウハウ」を用いてサイト運営者を、whois情報以外の手段で調査するか、「サイト運営者」の特定は一旦諦め、ウェブサーバーの管理者を調べ、ウェブサーバー管理者を相手方とし、削除やIPアドレス開示請求を行う事になります。

ドメイン登録者とウェブサーバー管理者

少し分かりにくいですが、

  • 独自ドメインで運営されているサイトの、当該独自ドメインの登録者
  • (独自ドメインで運営されている)サイトのデータを保管し閲覧者に対して送っているウェブサーバーの管理者

というのは別の概念です。

独自ドメインでサイトを運営する場合の手順

「独自ドメインでサイトを運営しよう」と思った場合には、例えば

  1. まずドメインレジストラの「お名前.com」で独自ドメインを取得する
  2. 次にレンタルサーバーの「さくらインターネット」でサーバーを借りてウェブサイトのデータ一式をアップロードする
  3. 当該独自ドメインにアクセスしようとした際には、「さくらインターネット」のサーバーに繋がるよう設定を行う

というように作業を行います。つまり、独自ドメインを取得した人が誰かは不明だとしても、サーバー管理者に対して「そちらのサーバー内に風評被害・誹謗中傷に該当するような記事がアップロードされているので、削除して欲しい」と求めることは可能なのです。

ドメインレジストラに対する発信者情報開示請求は不可能

さらに付言すれば、ドメインレジストラに対して、記事投稿者のIPアドレスや住所氏名に関する発信者情報開示請求を行うことはできません。本記事では詳細を割愛しますが、ドメインレジストラは、プロバイダ責任制限法上のプロバイダには該当しないからです。

論理的には、ドメインレジストラに対して可能なのは、いわゆる弁護士会照会でしょう。ドメインレジストラに対して、誹謗中傷や風評被害の被害者(の代理人である弁護士)は、何ら法的な開示請求権を有する訳ではありませんが、ドメインレジストラが、誹謗中傷や風評被害を行った犯人、つまり損害賠償請求の相手方に関する情報を保有していることはたしかです。このような場合に使える制度が、「弁護士会照会」と呼ばれるものです。

もっとも、「論理的に可能」というだけであり、現実にドメインレジストラが情報を開示してくれるかは、また別の問題です。

CloudFlare等の「CDN」を使っているサイトも分かる

さらに、whois情報を調べる際、住所や氏名などと別に、もう1箇所、読むべき箇所があります。「Name Server」です。これは、上記の

当該独自ドメインにアクセスしようとした際には、「さくらインターネット」のサーバーに繋がるよう設定を行う

という「設定」に関わるもので、その独自ドメインに紐付いているサーバー情報です。

本記事では詳細は割愛しますが、「Name Server」に「CLOUDFLARE.COM」が登場した場合、そのドメインで運営されているサイトは、いわゆるCDNサービスの「CloudFlare」を利用しています。

Registrar: NameCheap, Inc.
Registrar IANA ID: 1068
Registrar Abuse Contact Email: [email protected]
Registrar Abuse Contact Phone: +1.6613102107
Domain Status: clientTransferProhibited https://icann.org/epp#clientTransferProhibited
Name Server: JAY.NS.CLOUDFLARE.COM
Name Server: LOLA.NS.CLOUDFLARE.COM
DNSSEC: unsigned
URL of the ICANN Whois Inaccuracy Complaint Form: https://www.icann.org/wicf/

CloudFlareなどのCDNサービスの詳細は別記事で解説予定ですが、こうしたドメインで運営されているサイトの場合、削除請求の相手方となるウェブサーバーの位置自体も隠蔽されているため、削除やIPアドレスの開示請求を裁判外で行うことも、裁判や仮処分で行うことも、普通には困難です

当事務所による対策のご案内

インターネット上の誹謗中傷記事の削除や運営者特定など、インターネット法務は、例えばwhois等に関するIT知識を要求される業務です。モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所として、風評被害対策に関するソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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