ブルガリア共和国の法律の全体像とその概要を弁護士が解説

ブルガリアは近年、新たなビジネス展開の魅力的な選択肢として浮上しています。同国は、法人所得税および個人所得税がともに10%のフラットレートとEU内で最も低い水準にあり、ITセクターの個人開発者には実質税率6%という特筆すべき優遇措置も存在します。さらに、比較的安価な労働力と発展したITインフラは、特にソフトウェア開発やビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)を検討する企業にとって大きな魅力となっています。
ブルガリアは日本と同じく大陸法系の国であり、法典を中心とした体系は日本の法務担当者にとって馴染みやすい側面もありますが、一方で、EU加盟国であることから、EU法(例:GDPR、eIDAS規則)が国内法に優先して直接適用されるという、日本とは異なる法的環境も存在します。
本記事では、ブルガリアの法律の全体像とその概要について弁護士が詳しく解説します。
この記事の目次
ブルガリア法制度の基礎
ブルガリアの法制度は、大陸法系に属し、その根幹は成文法にあります。これは、日本の法体系と共通する特徴です。
法体系の概要と特徴
ブルガリアは大陸法系の国であり、その法体系は主に憲法、法律、下位法令によって構成されています。1991年7月12日に採択された現行憲法は、ブルガリア共和国の最高法規であり、いかなる法律もこれに反することはできません。憲法は、国を統一的な議院内閣制共和国と定めています。権力分立の原則が定められており、行政権は政府、立法権は国民議会、司法権は司法機関にそれぞれ付与されています。大統領は、他の政府機関間の仲裁者としての役割を担い、主に儀礼的な権限を有します。
裁判制度と司法機関の構成
ブルガリアの司法制度は、地方裁判所、州裁判所、最高破毀院の3段階からなる一般裁判所系と、行政裁判所、最高行政裁判所の2段階からなる行政裁判所系によって構成されています。
憲法裁判所は、通常の司法制度とは独立して存在し、法律の合憲性を審査し、その解釈に関する拘束力のある決定を下します。ただし、個人による直接の訴えは認められていません。
ブルガリアの弁護士は地方弁護士会に所属しており、全国レベルでは最高弁護士会(Supreme Bar Council)が職業倫理や資格の維持、弁護士の利益代表などを担う自主的な組織として機能しています。
司法の統治は最高司法評議会(Supreme Judicial Council)が担い、25名の委員で構成され、司法部門と検察部門の2つのカレッジに分かれています。この評議会が裁判官、検察官、捜査官の任命、昇進、異動、解任といった人事権を行使します。
日本法との比較における主要な相違点
日本と同様に大陸法系であり、憲法を最高法規とする点は共通しています。しかし、日本の裁判所が法律の合憲性を審査する権限を持つ一方で、ブルガリアには独立した憲法裁判所が存在します。また、日本の裁判官の人事や司法行政が主に最高裁判所によって行われるのに対し、ブルガリアでは最高司法評議会が裁判官や検察官の人事を統括する強い権限を持っています。これは、司法の独立性や運営の透明性に関して、日本とは異なるガバナンス構造を採用していることによるものです。
ブルガリアの会社法:会社形態と設立

ブルガリアの会社法は、商法典にその主要な規定が置かれています。日本と同様に、出資者の責任範囲によって「資本会社」と「人的会社」に大別される点が特徴です。
主要な会社形態の概要と特徴
ブルガリア商法典に明示的に列挙されている会社形態には、合名会社(General Partnership)、合資会社(Limited Partnership)、有限責任会社(Limited Liability Company, OOD)、株式会社(Joint Stock Company, AD)、株式合資会社(Partnership Limited by Shares)があります。資本会社である有限責任会社(OOD)、株式会社(AD)、株式合資会社では、社員(株主)の責任は、原則としてその出資額に限定され、会社の債務に対して個人的な無限責任を負いません。一方、人的会社である合名会社、合資会社では、社員は会社の債務に対して個人的に無限責任を負います。
設立要件と株主の責任範囲
有限責任会社(OOD)の設立は、1名以上の自然人または法人が可能で、居住者・非居住者を問いません。最低資本金はわずか2ブルガリアレヴァ(BGN)であり、これは約1ユーロに相当します。資本拠出は全額払い込みが必要です。株主の責任は、会社への出資額に限定されます。マネージャーは最低1名の個人が必要です。会社は商業登記簿への登録をもって設立されます。
株式会社(AD)の設立は、1名以上の自然人または法人が可能ですが、破産者は設立者となることができません。最低資本金は50,000BGN(約25,500ユーロ)です。登録時に、各株式の額面価格または発行価格の少なくとも25%を払い込む必要があり、残りの部分は、定款で定められた期間内(最長2年以内)に払い込むことができます。会社は自己の財産をもって債務を負い、株主の責任は出資額に限定されます。2018年10月以降、無記名式株式の発行は禁止され、2019年7月までに既存の無記名式株式は記名式株式に変換されました。これは国際的なコーポレートガバナンスの潮流に沿った動きと評価できます。管理体制は、1層制(取締役会)または2層制(監査役会と経営委員会)のいずれかを選択できます。
商業登記制度の利用方法と注意点
ブルガリアでは、会社は商業登記簿への登録をもって正式に設立されます。この登録により、設立前の取引も会社に引き継がれます。商業登記簿はオンラインで公開されており、会社名や株主・役員の氏名で無料で検索できます。ただし、検索にはキリル文字での入力が必要です。キリル文字に不慣れな場合は、Google翻訳などのツールで変換する必要があります。
日本法との比較における設立手続きや資本金要件の差異
日本の合同会社に最低資本金規制がないのと同様に、ブルガリアの有限責任会社(OOD)の最低資本金が2BGNと極めて低いのは、小規模ビジネスやスタートアップにとって大きな利点です。一方で、ADにおける無記名式株式の廃止は、国際的なマネーロンダリング対策や透明性向上へのコミットメントによるものだといえます。事業規模やリスク許容度に応じてOODとADを適切に選択すべきであり、OODは手軽な一方で、ADはより厳格なガバナンスと透明性が求められます。
ブルガリアの契約法
ブルガリアの契約法は、主に1950年債務・契約法(Obligations and Contracts Act, OCA)と1991年商法典(Commerce Act, CA)に規定されています。その基礎には、ドイツ法の影響があり、契約自由の原則、誠実義務、申込みと承諾による契約成立、無効・取消しの概念など、日本の民法と共通する基本的な枠組みを有しています。しかし、その詳細な運用や判例法理は異なります。特に、不動産の所有権移転やその他の物権設定に関する契約が公証証書(notarial deeds)によって行われる必要がある点は、日本の不動産登記制度とは異なる厳格な形式要件であり、注意が必要です。
ブルガリアの労働法
ブルガリアの労働法は、主に労働法典(Labour Code)によって規律されており、雇用主と従業員の間の関係を詳細に定めています。EU加盟国としての労働基準も反映されており、従業員の権利保護に重点が置かれています。
労働契約の種類と必須記載事項
ブルガリアでは、雇用関係を規律する主要な契約として「雇用契約(employment contract)」と「市民契約(civil contract)」の2種類があります。雇用契約には、職場(リモートワークの場合でも住所の記載が必要)、職位と業務内容、契約日と従業員の勤務開始日、雇用契約の期間(有期または無期)、基本および追加の有給年次休暇の日数、雇用契約終了時の双方の通知期間、基本および追加の報酬額ならびにその支払時期、労働日または労働週の長さと労働時間を記載することが義務付けられています。
雇用契約の終了(解雇事由、通知期間、補償)
従業員は書面による通知で雇用契約を終了する権利を有します。標準通知期間は1ヶ月ですが、雇用主によって定められる場合があります。相互合意による契約解除が最も容易な方法です。特定の状況下(病気で業務遂行不能、賃金遅延、雇用主による労働条件の不履行など)では、従業員は無通知で契約を解除できます。雇用主は、職位が不要になった、または財政的負担となった場合(この場合、雇用主は解雇された従業員に金銭的補償をする義務があります)、従業員が職務を十分に遂行していない場合、従業員が遅刻、欠勤、または企業内の規律規則に従わない場合(懲戒解雇)などの事由により雇用契約を解除し、従業員を解雇することができます。無期雇用契約の場合、通知期間は一般的に30日です。団体協約や個別雇用契約により、最長3ヶ月まで延長することができます。有期雇用契約の場合、通知期間は3ヶ月ですが、契約の残存期間を超えることはできません。
補償については、懲戒解雇の場合、従業員は雇用主に対し、通知期間分の総労働報酬に相当する補償を負います。企業閉鎖、人員削減、業務量減少、15労働日以上の休業などの理由で解雇された場合、従業員は失業期間に応じた総労働報酬(最長1ヶ月)の補償を受ける権利があります。病気による雇用関係の終了の場合、従業員は2ヶ月分の総労働報酬に相当する補償を受ける権利があり(勤続5年以上で、過去5年間に同じ理由で補償を受けていない場合)、年金受給資格取得後の雇用関係の終了の場合、従業員は2ヶ月分の総労働報酬に相当する補償を受ける権利があり、同一雇用主で10年以上の勤続がある場合は6ヶ月分の補償を受けられます(一度限り)。
社会保障制度の概要
ブルガリアで雇用契約を結んでいる場合、税金、社会保障、健康保険、年金保険が給与から自動的に控除されます。ブルガリアの社会保障・健康保険制度に登録されていない外国人(例:日本から派遣された駐在員)は、所得税のみを支払います。女性従業員は410日間の有給産休(出産予定日45日前から)の権利があります。有給病気休暇は通常、通常の給与の70-80%に相当します。
ブルガリアにおける税法
ブルガリアは、その競争力のある税制で知られており、特に低い法人所得税率と個人所得税率が特徴です。
法人所得税(Corporate Income Tax, CIT)
ブルガリアの標準法人所得税率は、原則として10%のフラットレートであり、これはEU加盟国の中で最も低い水準の一つです。課税所得に対して計算されます。ただし、2024年1月1日より、EUのグローバル最低税指令(Pillar Two)が導入され、年間連結収益が7億5000万ユーロ以上の大規模な多国籍企業グループは、最低実効税率15%の対象となっています。この変更は主に大規模な多国籍企業に影響し、多くの中小企業には引き続き10%の標準税率が適用されます。
特定の状況下では、法人所得税の減免措置が存在します。例えば、農業活動からの利益に対する一部減免、長期失業者、障害者、高齢者の雇用に対する追加控除、高失業率地域への投資に対する最大100%の法人所得税還付などがあります。
個人所得税(Personal Income Tax, PIT)
ブルガリアの個人所得税率は、原則として10%のフラットレートです。これはEU内で最も低い水準の一つであり、雇用所得を含むさまざまな所得に一律に適用されます。IT分野における優遇措置として、個人ソフトウェア開発者や著作者の権利・ライセンスからの収入(ソフトウェア、視覚芸術、映画、文学作品、音楽、商標、特許などを含む)に対しては、40%の法定経費控除が認められています。これにより、実質的な税率は6%となります。この控除は、ブルガリア商法上のトレーダーではない個人に限定されます。
配当所得、キャピタルゲイン、その他の課税概要
配当所得について、ブルガリアおよび外国法人から支払われる配当および清算分配金は、5%の最終源泉徴収税の対象となります。ただし、EU/EEA加盟国の親会社への配当は0%です。
キャピタルゲインについて、ブルガリアの税務居住者には10%のフラット税率が適用され、非居住者には10%の最終源泉徴収税が適用されます。不動産、車両、金融商品などからの所得が対象です。ブルガリアおよびEU/EEAの証券取引所に上場された株式の売却によるキャピタルゲインは免除されます。
利息所得について、EU/EEA圏内の銀行口座からの利息所得は、2022年4月1日以降、非課税です。EU/EEA圏外の銀行口座からの利息所得は10%課税されます。
賃貸所得について、四半期ごとに10%の前払い個人所得税が課され、年間最終税率も10%です。総収入の10%が法定控除として認められます。
日本法との比較における税率の低さやIT分野の優遇措置の有無
ブルガリアの法人所得税および個人所得税のフラットレート10%は、日本の累進課税制度と比較して非常に低い水準であり、特にIT分野の個人開発者に対する実質税率6%の優遇措置は、日本には存在しない大きな魅力です。この税制のシンプルさと低さは、ブルガリアが外国からの投資を積極的に誘致する上で重要な要因となっています。
税の種類 | ブルガリアの税率 | 日本の税率(参考) | 備考 |
法人所得税 | 10% (フラット) | 約30% (国税+地方法人税) | 大規模多国籍企業は最低15%の実効税率適用 |
個人所得税 | 10% (フラット) | 5%~45% (累進課税) | IT分野の個人開発者は実質6% |
配当所得税 | 5% (源泉徴収) | 約20% (源泉徴収) | EU/EEA親会社へは0% |
キャピタルゲイン税 | 10% (フラット) | 15% (譲渡所得税) | 上場株式の売却は免除 |
ブルガリアにおけるIT関連法制度

データ保護法(GDPRと国内法)
ブルガリアのデータ保護法は、主に一般データ保護規則(GDPR)と、これを補完する国内法である個人データ保護法(Protection of Personal Data Act 2002)によって構成されています。GDPRはEU規則であるため、ブルガリア国内で直接適用され、国内法である個人データ保護法はGDPRの適用を支援し、国内の具体的な側面を規定する役割を担います。
個人データ保護委員会(CPDP)がデータ保護の監督機関として機能しており、その活動は個人データ保護法およびCPDPの活動規則によって定められています。CPDPは、個人データの不法な処理に対する罰金や、データ保護に関するガイドラインの提供など、積極的に監督機能を果たしています。
2023年5月には、情報漏洩を報告する者を保護する内部告発者保護法(Whistleblowers Protection Act)が、個人データ保護法に組み込まれました。企業には、内部通報制度の整備と、それに関連する個人データの適切な管理が求められます。
電子商取引法とサイバーセキュリティ法
ブルガリア法は、一般的に企業が電子商取引に自由に参入することを認めており、伝統的な小売活動と比較して、追加のライセンス要件は課されません。オンラインビジネスの立ち上げを容易にする環境と言えます。
サイバーセキュリティに関しては、サイバーセキュリティ法(Cybersecurity Act)が適用され、対象となる事業体にはサイバーレジリエンスを強化するためのいくつかの重要な義務が課せられています。主要なコンプライアンス要件には、サイバーセキュリティリスクを管理し、ネットワークおよび情報システムを保護するための適切な技術的および組織的措置の実施が含まれます。
政府調達におけるオープンソースソフトウェア義務化
ブルガリアは、政府調達におけるソフトウェアライセンスに関して、先進的かつユニークなアプローチを採用しています。電子政府法(Electronic Governance Act)の改正により、政府向けに開発されるすべてのソフトウェアは、完全にオープンソースであること、および公開のGitHubリポジトリで開発されることが義務付けられました。
電子政府法第58A条は、行政機関がソフトウェアを調達する際に以下の要件を含めることを規定しています。
- 契約の対象がコンピュータプログラムの開発を含む場合、そのコンピュータプログラムはオープンソースソフトウェアの基準を満たさなければならない。
- 関連するコンピュータプログラム、そのソースコード、インターフェースの設計、およびデータベースに関するすべての著作権および関連する権利は、使用、変更、配布において制限なく、発注者に完全に帰属しなければならない。
- 開発は、機関が維持するリポジトリで行われなければならない。
この措置は、ブルガリア政府が透明性とセキュリティの向上を目指していることを明確に示しています。政府調達ソフトウェアのソースコードが一般に公開されることで、研究者やホワイトハットハッカーが政府ウェブサイトのセキュリティ上の脆弱性を報告しやすくなり、政府がセキュリティ上の問題を早期に発見し対処できるようになります。
ブルガリアの電子署名法:デジタル取引の信頼性
ブルガリアにおける電子署名の法的枠組みは、主に電子文書・電子信頼サービス法(Electronic Document and Electronic Trust Services Act, EDETSA)と、欧州連合のeIDAS規則(Regulation (EU) No 910/2014)によって規定されています。eIDAS規則はEU加盟国に直接適用されるため、ブルガリアの電子署名に関する国内法もこれに準拠しています。
ブルガリアの規制では、電子署名は以下の3つのカテゴリに分類されます。
- 単純電子署名(Simple Electronic Signature, SES):
- 電子データに付随または論理的に関連付けられ、署名者が署名のために使用するあらゆる電子形式のデータ。
- 法的効力は、当事者間の合意によって認められます。低リスクの取引や内部文書に用いられます。
- 裁判所での証拠能力は認められますが、追加の証明が必要となる場合があります。
- 高度電子署名(Advanced Electronic Signature, AES):
- 署名者と一意にリンクされ、署名者を識別でき、署名者が単独で管理する署名作成データを用いて作成され、署名後にデータが改ざんされていないことを検出できるもの。
- 法的効力は、単純電子署名と同様に当事者間の合意によって認められ、電子文書・電子信頼サービス法第13条により手書き署名と同等とみなされる場合があります。
- 雇用契約や金融契約、ビジネス取引など、より高い信頼性が求められる場合に用いられます。ソフィア地方裁判所は、AESが雇用契約やビジネス取引において法的に有効であると判断しています。
- 適格電子署名(Qualified Electronic Signature, QES):
- 高度電子署名の一種であり、認定された電子署名作成デバイスを用いて生成され、認定された電子署名専用の適格証明書に基づいているもの。
- 手書き署名と同等の法的効力を有し、EU加盟国間で相互に法的効力が認められます。
- 企業登録、変更事項の届出、補助金申請、犯罪記録証明書の発行、電子バンキング、税金支払いなど、公的機関への提出や高リスクの取引に広く用いられます。
- 適格電子署名は、適格認証サービス提供者(QTSP)によってのみ発行され、その費用は通常、1年あたり25~40BGN、3年あたり30~60BGNです。
電子署名の種類 | 定義と特徴 | 法的効力(ブルガリア/eIDAS) | 日本法との比較 |
単純電子署名 (SES) | 電子データに付随する電子形式のデータ。署名者を識別する機能は限定的 | 当事者間の合意があれば有効。裁判で証拠能力は認められるが、追加証明が必要 | 日本法における「電子署名」の広範な定義に近い |
高度電子署名 (AES) | 署名者と一意にリンク、識別可能、署名者が単独で管理するデータで作成、改ざん検出可能 | 当事者間の合意があれば有効。EDETSA第13条により手書き署名と同等とみなされる場合がある | 日本法における「電子署名」の要件に近いが、より厳格な技術的要件がある |
適格電子署名 (QES) | 高度電子署名の一種で、認定デバイスと適格証明書に基づく | 手書き署名と法的に同等。EU域内で相互承認される | 日本法にはQESに直接対応する概念はない。最も法的確実性が高い |
QESの法的確実性は、ブルガリアにおけるデジタル化推進の基盤となっています。企業は、文書の種類や取引のリスクレベルに応じて適切な電子署名を選択する必要があり、特に法的拘束力が強く求められる契約や公的機関への提出書類では、QESの利用が推奨されます。
まとめ
ブルガリアは、低税率、低い労働コスト、そしてIT分野への積極的な投資と政策的支援により、日本企業にとって魅力的なビジネス展開先となっています。ただ、EU加盟国であることから、GDPRやeIDAS規則といったEU法の直接適用という重要な違いが存在します。特に、個人データ保護の厳格な要件や、適格電子署名(QES)が手書き署名と同等の法的効力を持つという点は、デジタルビジネスを推進する上で不可欠な理解となります。また、政府調達におけるオープンソースソフトウェアの義務化は、ブルガリアが透明性とセキュリティを重視し、IT産業の成長を国家戦略として推進していることを示しており、興味深い側面だといえるでしょう。
関連取扱分野:国際法務・海外事業
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務