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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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ウズベキスタンの許認可制度を弁護士が解説

ウズベキスタンの許認可制度を弁護士が解説

ウズベキスタン共和国(以下、ウズベキスタン)は、近年、「新しいウズベキスタン」というスローガンの下、急速な経済開放と法制度の近代化を推し進めています。かつてはソビエト連邦時代の名残を強く残す官僚的な行政システムがビジネスの障壁となっていましたが、現在はデジタル技術を駆使した透明性の高いシステムへの移行が図られています。日本企業がウズベキスタンへ進出する際、最も留意すべきは、特定の事業活動に対する厳格な許認可(ライセンス)制度です。ウズベキスタンでは、金融、IT、専門サービスなど、国家の安全保障や経済秩序に直結する分野において、日本法における業法規制以上に詳細かつ厳格な参入要件が課されています。

本記事では、2021年に刷新された「ライセンス、許可及び通知手続に関する法律」に基づく基本構造を解説した上で、特に日本企業からの関心が高い「暗号資産(仮想通貨)」、「2025年から解禁されるギャンブル・宝くじ産業」、「暗号化技術(ITセキュリティ)」、そして「法務サービス」の各分野における規制の特質について、最新の法令に基づき詳細に論じます。ウズベキスタンの規制は、単なる規制緩和(デレギュレーション)ではなく、デジタル監視を前提とした「管理された開放」という側面が強いことが特徴です。

ウズベキスタンの許認可制度の法的基盤と構造改革

ウズベキスタンにおける許認可制度の根幹をなすのが、2021年7月14日に制定された「ライセンス、許可及び通知手続に関する法律(ZRU-701)」です。この法律は、それまで多数の法令に散在していた許認可に関する規定を統一し、行政手続の透明化とデジタル化を一気に進めるために導入されました。  

この法律では、事業活動に対する規制を、そのリスクの度合いに応じて「ライセンス(Licence)」、「許可(Permit)」、「通知(Notification)」の3つのカテゴリーに明確に区分しています。 「ライセンス」は、市民の生命、健康、環境、国家安全保障に重大な影響を及ぼす可能性のある活動に対して要求されるもので、最も規制強度が強いものです。原則として無期限で発行されますが、維持するための要件は厳格です。 「許可」は、特定の行為や一度限りのアクション(例:特定の周波数の使用、建設行為など)に対して発行されるものです。 「通知」は、比較的リスクの低い活動について、所管官庁への届出のみで事業を開始できる仕組みであり、規制緩和の象徴と言えるでしょう。  

特筆すべきは、これらの手続きが「ライセンス(License)」情報システムという電子プラットフォーム上で完結する点です。申請から発行までがオンラインで行われ、紙のライセンス証書は廃止されました。代わりにQRコード付きの電子文書が発行され、誰でもその有効性を即座に確認できるようになっています。これにより、偽造防止や行政官による恣意的な運用(汚職など)の余地を大幅に減らすことに成功しています。  

参考:ZRU-701号法(ウズベキスタン語・ロシア語)

ウズベキスタンのフィンテック・暗号資産分野における規制

ウズベキスタンのフィンテック・暗号資産分野における規制

ウズベキスタンは、世界でも類を見ないほど、暗号資産(仮想通貨)に対する規制枠組みを急速に整備しています。この分野を統括するのは中央銀行ではなく、大統領直轄の「国家展望プロジェクト庁(NAPP)」です。NAPPは、暗号資産、eコマース、そして後述するギャンブル産業を含むデジタル経済全般に対して、極めて強力な規制権限を有しています。  

暗号資産サービスプロバイダー(CASP)への厳格な要件

ウズベキスタンでは、暗号資産の売買や交換を行う事業者は「暗号資産サービスプロバイダー」としてのライセンスを取得する必要があります。重要な点は、外国法人が直接ライセンスを取得することはできず、必ず本件国内に子会社(居住者法人)を設立しなければならないということです。また、サーバーを本件国内に物理的に設置する義務があり、データローカライゼーションの要件が非常に厳しいことも特徴です。  

ライセンスは活動内容に応じて細分化されており、特に「暗号資産取引所(Crypto-exchange)」と「暗号資産ショップ(Crypto-shop)」の区分が重要です。 暗号資産取引所は、オーダーブック(板)を持ち、多数の参加者間で売買をマッチングさせるプラットフォームです。これに対する参入障壁は極めて高く、ライセンス発行手数料だけで73,400基礎計算額(BCV、約200万米ドル相当)が課されるほか、5,000 BCV(約13万米ドル相当)の最低資本金要件があります。 一方で、暗号資産ショップは、販売所形式で顧客と相対取引を行うモデルであり、こちらのライセンス手数料は比較的低く設定されていますが、それでも月額の活動手数料(上納金のような性質を持つ固定税)が課されます。  

バイナンス(Binance)に対する行政処分と市場の閉鎖性

ウズベキスタンの規制当局であるNAPPは、無許可で活動する海外の大手取引所に対して非常に厳しい態度を取っています。2024年には、世界最大手のバイナンス(Binance)に対し、ライセンスを取得せずに本件国居住者にサービスを提供したとして、巨額の罰金を科しました。 NAPPは、マネーロンダリングのリスクが高い「P2P取引(個人間取引)」を認めておらず、バイナンスがこれを提供していたことも問題視されました。最終的にバイナンスは罰金を支払い、本件国のライセンスを持つ現地パートナー企業を通じてのみサービスを提供するという形で決着しました。

この事例から、日本企業が本件国でフィンテック事業を行う場合、越境サービス(クロスボーダー)での提供は事実上不可能であり、現地法人設立とライセンス取得、そしてサーバーの現地化が絶対条件であることがわかります。  

2025年解禁:ウズベキスタンのギャンブル・宝くじ産業の合法化

イスラム教徒が多数を占めるウズベキスタンでは、長らくギャンブルは厳しく禁止されていました。しかし、2025年1月1日より、オンラインギャンブル、ブックメーカー(スポーツベッティング)、および宝くじが合法化されるという歴史的な政策転換が行われます。この規制監督もまた、NAPPが担当します。

参入障壁としての資本要件と税制

新たに導入されるライセンス制度は、十分な資金力と技術力を持つ大手プレイヤーを選別するように設計されています。 オンラインギャンブルおよびベッティング事業者は、562億5,000万スム(約440万米ドル)の最低資本金に加え、281億2,500万スム(約220万米ドル)の準備金を確保する必要があります。 一方で、税制面では優遇措置が設けられています。事業者の総収入(賭け金から賞金を差し引いた額)に対して4%の売上税が課されますが、これは国際的に見ても競争力のある税率です。さらに、ライセンスを取得した事業者を利用したプレイヤーが得た賞金については、個人の所得税が免除されます。これは、市民を海外の違法サイトから国内の正規サイトへ誘導するためのインセンティブとして機能します。  

ウズベキスタンの情報セキュリティと暗号化製品(SKZI)規制

ウズベキスタンの情報セキュリティと暗号化製品(SKZI)の規制

日本のIT企業や製造業が本件国に進出する際、最も見落としがちで、かつリスクが高いのが「情報暗号化保護手段(SKZI)」に関する規制です。ウズベキスタンでは、国家保安庁(SGB)がこの分野を管轄しており、暗号化機能を持つ製品の取り扱いは厳格に管理されています。  

「暗号化手段」の広範な定義と許可制度

日本においては、民生用の暗号化技術(SSL/TLS通信や一般的なVPNなど)は広く自由に利用されていますが、本件国ではこれらも「暗号化保護手段」として規制の対象となる可能性があります。 具体的には、暗号化機能を持つハードウェアやソフトウェアの設計、開発、製造、販売、修理、および使用にはライセンスが必要です。特に注意が必要なのは輸入時です。GPSトラッカー、通信機器、あるいは高度なセキュリティ機能を持つサーバーなどを輸入する場合、それが「軍事用」でなくとも、暗号アルゴリズムを使用しているという理由だけで、SGBの許可や通知(Notification)が必要となるケースがあります。  

2024年12月の内閣決議No. 874により、開発や製造に関するライセンス要件の一部簡素化が行われましたが、依然として輸入や販売に関する規制は維持されています。製品が「マスマーケット(一般消費者向け)」品であるか否かによって手続きの難易度が変わるため、事前の該非判定が極めて重要となります。  

参考:内閣決議No. 874(ウズベキスタン語・ロシア語)

ウズベキスタンの法務サービス市場と外国法律事務所の活動形態

本件国の法務サービス市場は、日本と同様に、法廷業務を行う「弁護士(Advocate)」と、ビジネス法務を行う「コンサルタント」に明確に分かれています。

外国弁護士の活動制限

本件国において、刑事弁護や法廷での代理人活動を行うことができるのは、本件国の市民権を持ち、弁護士資格を取得した「弁護士」のみです。外国の弁護士資格を持つ者が、そのまま本件国の法廷に立つことはできません。過去には、スイスの著名な弁護士が現地での活動を試みましたが、外国弁護士の活動は認められていないとして入国を拒否された事例もあります。  

日本企業の進出形態

したがって、日本の法律事務所や企業法務担当者が現地で活動する場合、以下のいずれかの形態をとるのが一般的です。

現地法人(コンサルティング会社)の設立: 「法律事務所」という名称は使用できない場合がありますが、コンサルティング会社として法人登記し、契約書作成やアドバイザリー業務を行うことは可能です。

駐在員事務所(Representative Office): 営利活動は禁止されていますが、市場調査や連絡業務のために設置されます。2024年の新規則により、認定手続きはオンライン化されましたが、あくまで「非営利」であることが厳格に求められ、インボイスの発行などはできません。  

まとめ

ウズベキスタンの許認可制度は、ZRU-701号法による手続きのデジタル化や、NAPPによるフィンテック・ギャンブル分野の集中管理など、急速に近代化が進んでいます。しかし、その一方で、暗号資産やギャンブル分野における高額な資本要件や、サーバーの国内設置義務(データローカライゼーション)、暗号化製品に対する国家保安庁の関与など、国家による管理の度合いは依然として高いレベルにあります。

特に、「新しいビジネス」として注目されるフィンテックや、2025年から始まるギャンブル産業への参入を検討する場合、単なる法令調査だけでなく、現地当局(特にNAPPやSGB)の運用実態や、頻繁に行われる法改正の動向をリアルタイムで把握することが不可欠です。また、IT機器の持ち込み一つをとっても、暗号化規制に抵触しないか慎重な確認が求められます。

モノリス法律事務所では、本件国における現地の最新規制動向を踏まえ、ライセンス取得の可能性評価、事業スキームの適法性確認、および現地提携先との契約交渉など、日本企業の皆様が安全にビジネスを展開できるようサポートいたします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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