ルクセンブルク大公国の法律の全体像とその概要を弁護士が解説

ルクセンブルク大公国は、国際経済において極めて重要な役割を担う国です。特に金融サービス分野では世界有数のハブとして知られ、一人当たりGDPは世界平均の10倍以上を誇ります。この経済的成功は、長年にわたり培われた政治的安定性、堅牢な金融・立法フレームワーク、そして多言語対応が可能な高度な専門人材に支えられています。近年では、金融サービスに加えて、物流、鉄鋼生産、衛星技術、フィンテック、人工知能(AI)、宇宙技術といった先端分野への投資を積極的に行い、経済の多角化を進めています。
ルクセンブルクの法制度は、フランスやベルギーの影響を強く受けた大陸法系システムを採用しており、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴事法の五大法典を基盤としています。ルクセンブルクは過去にタックスヘイブンとして認識された時期もありましたが、近年ではマネーロンダリング対策(AML)規制を強化し、受益者情報登録簿の公開を徹底するなど、国際的な透明性要求に適応し、信頼性の高い金融センターとしての地位を再構築しています。
本記事では、ルクセンブルクの法律の全体像とその概要について、弁護士が詳しく解説します。
この記事の目次
ルクセンブルクの法体系と判例法の位置付け
ルクセンブルクは大陸法系に属し、その法制度は成文法典を主要な法源とします。これは、英米法系が判例(judicial precedent)に強く依拠する「Stare Decisis(先例拘束の原則)」を採用するのとは対照的です。
ただ、一般的には、大陸法系の国々においても、裁判所は過去の判決を全く無視するわけではなく、類似の判決が積み重なることで形成される「Jurisprudence Constante(判例の継続性)」は、事実上の説得力を持つ「ソフトロー」として機能しています。日本も大陸法系に属し、成文法主義を採っていますが、最高裁判所の判例は下級審や実務において事実上強い拘束力を持つとされています。最高裁判所自身も、通常は自身の判例を踏襲する傾向にあります。
しかし、ルクセンブルクは、この「判例の継続性」の要請が弱く、個々の司法判断に先例としての法的拘束力がない、と言われています。これは、ある裁判所の判決が、その後の類似事件において他の裁判所を法的に拘束するものではないことを意味します。
このルクセンブルクの特性より、日本企業が法的リスクを評価する際には、過去の判例の積み重ねよりも、成文法の条文解釈や法学者の見解、そしてEU法の動向により重きを置く必要があります。
ルクセンブルクにおける会社設立とコーポレートガバナンス

ルクセンブルクは、多様な事業形態を提供しており、特に「商事会社法」(Loi du 10 août 1915, concernant les sociétés commerciales)によってその設立と運営が規定されています。
主要な会社形態とその特徴
ルクセンブルク法が認める商事会社には、株式会社(Société anonyme: SA)、有限会社(Société à responsabilité limitée: SàRL)、簡易株式会社(Société par actions simplifiée: SAS)、株式合資会社(Société en commandite par actions: SCA)、合名会社(Société en nom collectif: SNC)、単純合資会社(Société en commandite simple: SCS)、特別合資会社(Société en commandite spéciale: SCSp)、協同組合(Société coopérative: SC)などがあります。この中でも、最も一般的に利用されるのは、SAとSàRLです。
- SA(株式会社): SAは大規模企業に適しており、最低資本金は30,000ユーロです。株主の責任は出資額に限定され、株式を公開市場で発行して資金調達が可能です。ガバナンス構造は、取締役会による単層型と、経営委員会と監査役会による二層型のいずれかを選択できます。原則として、一定の閾値を超える場合、少なくとも1名の法定監査役(statutory auditor)の任命が必須となります。
- SàRL(有限会社): SàRLは中小企業に最も人気のある形態で、最低資本金は12,000ユーロ(一部資料では12,500ユーロ)です。株主数は1名から100名までで、責任は出資額に限定されます。経営は1名または複数のマネージャーが行い、マネージャーの国籍に制限はありません。株主が60名を超えるSàRLは、法定監査役による監査が義務付けられます。簡易有限会社(SàRL-S)は、最低資本金が1ユーロから12,000ユーロと低く設定されており、設立手続きも簡素化されていますが、自然人のみが出資・経営可能で、商業目的が限定されるなどの制約があります。
会社設立手続の概要
ルクセンブルクでの会社設立には、いくつかの重要な手続きが必要です。まず、原則として公証人による定款(incorporation deed and articles of association)の作成が必須です。これにより、会社の基礎となる文書が法的に有効となります。次に、希望する会社名がルクセンブルク商業会社登記簿(Luxembourg Business Registers: RCS)でユニークであることを確認し、予約する必要があります。最低資本金は、SAでは30,000ユーロ、SàRLでは12,000ユーロ(または12,500ユーロ)が設立時に全額払い込まれる必要があります。資本金が完全に払い込まれていることを証明する銀行預金証明書は、手続きを進める上で不可欠です。最後に、RCSへの登記が求められます。
コーポレートガバナンスの原則と特徴
ルクセンブルクのコーポレートガバナンスは、主に取締役会または経営委員会が会社の運営と経営に責任を負い、株主総会は、取締役の任命・解任を含めた重要事項を決定する、というものです。
ルクセンブルク証券取引所(LuxSE)に上場する企業には、「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」原則に基づく10のコーポレートガバナンス原則が適用されます。これは、推奨される原則に従うか、従わない場合はその理由を説明することを求めるもので、日本の上場企業におけるコーポレートガバナンス・コードと類似した考え方です。
SAの取締役やSàRLのマネージャーには居住要件がないため、日本企業がルクセンブルクに子会社を設立する際に、日本からの役員派遣や、国際的な人材プールからの選任が可能です。ただし、会社の税務上の居住地がルクセンブルクと見なされるためには「中央管理地」がルクセンブルクにあることが重要であり、取締役会や株主総会の開催場所、主要な意思決定の場所などが考慮されます。実態を伴わない場合は税務上のリスクが生じる可能性があるため、ガバナンスの実質化が税務コンプライアンス上も重要となります。
また、SàRLの株主数が60名を超えると法定監査が義務付けられるため、日本の中小企業が有限会社形態で進出する場合、資金調達に伴い株主数が増加すると、予期せぬ監査コストが発生する可能性があります。
ルクセンブルクにおける不動産所有権と登記制度
不動産の所有権は、民法典第544条から546条、および711条から717条によって規定されています。所有権の移転は当事者間の合意によって発生しますが、第三者に対する対抗要件として、抵当登記簿(mortgage register)への登記が必須です。この登記にはルクセンブルクの公証人による公証証書(notarial deeds or acts)が必要です。登記がなくても当事者間の契約の有効性には影響しませんが、第三者に対しては効力を主張できません。
また、ルクセンブルクでは「係属中の所有権移転に関する仮登記(preliminary priority notice)」を行うことはできません。最終的に締結され、正式に執行された売買契約のみが登記可能です。これは、日本で不動産売買の予約や所有権移転請求権の保全のために仮登記が広く利用されているのと異なる制度です。不動産取引の確実性を確保する上で、契約締結から登記完了までの期間におけるリスク管理が、より重要であると言えます。
ルクセンブルクにおける外国投資誘致のための税制優遇措置
ルクセンブルクは、高度な人材とイノベーションを誘致するための国家戦略として、多様な税制優遇措置を積極的に推進しています。
インパトリエイト税制の改革
2024年12月20日付の法律により、2025課税年度からインパトリエイト(外国からの赴任者)税制が大幅に近代化されました。これにより、総年間報酬(現物給付を含む)の50%が最大400,000ユーロまで非課税となります。これは、フランスやイタリアの類似制度と整合性を図り、適格基準を簡素化し、法的確実性を向上させるものです。
利益分配ボーナスの非課税枠拡大
2025課税年度から、企業が従業員に付与できる利益分配ボーナスの非課税上限が、前事業年度のプラスの利益の5%から7.5%に引き上げられました。また、部分的に非課税となるボーナスの最大額は、受給者の総年間報酬の25%から30%に増加しました。
若年従業員向け新規ボーナス非課税制度
2025課税年度から、ルクセンブルクで初の無期雇用契約を結ぶ30歳未満の従業員を対象に、新たな裁量的ボーナス制度が導入されました。このボーナスは、総年間報酬が100,000ユーロを超えない場合、75%が非課税となり、年間最大5,000ユーロが上限です。
スタートアップ優遇策
2025年4月初旬に、革新的な若手企業への個人投資を奨励する新たな税額控除を提案する法案が議会に提出されました。これは、スタートアップの初期段階での資金調達アクセスを改善し、ルクセンブルクの起業エコシステムを強化することを目的としています。この税額控除は2026課税年度から適用される予定です。
知的財産(IP)税制
2018年1月1日より施行された新たなIP税制(所得税法第50条の3)の下では、特許、実用新案、著作権で保護されたソフトウェアなどの適格IP資産から得られる適格純所得は、所得税から80%の非課税優遇を受けます。これにより、ルクセンブルクに拠点を置く法人納税者の実効税率は、2025課税年度から全体で約4.774%となります。また、適格IP資産はルクセンブルクの純資産税(NWT)からも完全に免除されます。この制度は「ネクサス・アプローチ」に基づき、単にIPを保有するだけでなく、そのIPの創出や開発に実質的な活動が伴っていることを要求します。これは、国際的な税源浸食と利益移転(BEPS)対策の潮流に沿ったもので、日本企業がIPをルクセンブルクに移転する際には、実体のある研究開発活動や管理体制を構築する必要があります。日本企業は、これらの優遇策を最大限に活用することで、人件費や研究開発費の負担を軽減し、競争優位性を確立できる可能性があります。
ルクセンブルクの労働法と雇用契約の留意点

ルクセンブルクの労働法は、労働者の権利保護を重視し、労働者代表と雇用者代表の協議を通じて策定されます。
雇用契約の種類と終了
最も一般的な雇用契約は、無期雇用契約(Contrat à Durée Indéterminée: CDI)と有期雇用契約(Contrat à Durée Déterminée: CDD)です。CDIは期限がなく、企業の長期的なニーズに対応し、雇用主が解雇する場合、その理由を正当化する義務があります。CDDは最長2年間で、2回まで更新可能ですが、その後も必要性が続く場合はCDIを締結する必要があります。試用期間は、CDDの場合、契約期間の4分の1を超えてはならず、最低2週間です。
最低賃金と賃金インデックス制度
ルクセンブルクでは、社会的最低賃金(minimum social wage: SSM)が設定されており、従業員の資格と年齢に基づいて決定されます。ルクセンブルクの賃金決定の大きな特徴は、法定の「スライディング・ペイ・スケール(échelle mobile des salaires)」制度、すなわちインフレ連動型賃金調整が適用される点です。消費者物価指数が2.5%上昇すると、すべての賃金(最低賃金を含む)が自動的に引き上げられます。これは、労働者の購買力を保護するための仕組みであり、日本にはないルクセンブルクの非常に特徴的な制度です。企業にとって人件費がインフレに直接連動して上昇することを意味し、事業計画やコスト管理においてインフレリスクをより強く考慮する必要があります。特に高インフレ期には、予期せぬ人件費増大が収益を圧迫する可能性があります。
テレワークに関する規定
新型コロナウイルス危機以降、労働者はテレワークの法的権利を得ており、雇用主との合意に基づき自宅で勤務できます。特に越境通勤者(cross-border commuters)には特例があり、フランスやベルギーからの通勤者は年間34日間、ドイツからの通勤者は2024年1月1日以降34日間までテレワークが可能です。この越境通勤者向けのテレワーク特例は、ルクセンブルクが周辺国からの労働力に大きく依存している経済構造を反映したものです。これは、日本企業がルクセンブルクで多国籍な人材を雇用する際に、柔軟な働き方を制度的にサポートする環境があることを示唆しますが、同時に、各国の税法や社会保障制度との複雑な連携を考慮する必要があることを意味します。
ルクセンブルクにおける金融分野の法制度
ルクセンブルクは、その経済の大部分を金融サービスが占める、世界有数の金融センターであり、その法制度は国際的な投資活動を強力に支援するよう設計されています。特に、投資ファンドの多様性と金融機関に対する厳格な監督体制が特徴です。
投資ファンドの多様性と規制
ルクセンブルクは、欧州における投資ファンドの主要な拠点であり、さまざまな種類の投資ファンドが提供されています。
- UCITS(Undertakings for Collective Investment in Transferable Securities): 譲渡性証券の集合投資スキームであり、EU指令に基づいて設立され、特に欧州経済領域(EEA)内のリテール投資家向けに提供されます。UCITSは、ルクセンブルクの「集合投資事業に関する2010年12月17日付法」(2010年法)の第一部を遵守する必要があります。
- AIFs(Alternative Investment Funds): オルタナティブ投資ファンドは、ヘッジファンドなど幅広い投資ファンドをカバーします。ルクセンブルクは、AIFMD(Alternative Investment Fund Managers Directive)を国内法にいち早く導入することで、オルタナティブ投資ファンドの組成において主導的な地位を確立しています。
- SIF(Specialised Investment Fund): 専門投資ファンドは、プロフェッショナル投資家および機関投資家を対象とし、広範な知識を持つ投資家向けに提供されます。最低資本金は125,000ユーロであり、規制が少ないため投資の柔軟性が高いという利点があります。SIFは、リスク分散要件が適用され、単一の投資へのエクスポージャーはSIF資産の30%を超えてはなりません。
- SICAR(Investment Company in Risk Capital): リスクキャピタル投資会社は、リスクキャピタルへの投資に特化したファンドです。
- RAIF(Reserved Alternative Investment Fund): 規制対象外のオルタナティブ投資ファンドであり、SIFやSICARの法的・税務的特徴を組み合わせつつ、規制の二重構造を排除することで、市場投入までの時間を大幅に短縮できる点が特徴です。RAIFは、リスクキャピタルに投資する場合を除き、あらゆる資産クラスに投資できます。
これらのファンドは、ルクセンブルク金融監督委員会(CSSF)の承認が必要であり、承認申請は書面で行われ、新規UCITSの場合は電子プラットフォーム「eDesk」を使用する必要があります。UCITSの資本金はCSSFの承認後6ヶ月以内に125万ユーロに達する必要があり、SIFの純資産も24ヶ月以内に125万ユーロに達する必要があります。また、特定のUCITSやマネーマーケットファンドには、サブスクリプション税(taxe d’abonnement)の免除が適用される税制優遇措置があります。
金融機関のライセンスと監督
ルクセンブルクで金融サービスを提供する企業は、金融セクター法(Law of 5 April 1993 on the financial sector)に基づき、「金融セクターの専門家」(Professional of the Financial Sector: PSF)としてライセンスを取得する必要があります。
- ライセンス要件: PSFライセンスの取得には、財務省への申請が必要であり、CSSFの助言を得て承認が与えられます。申請には、事業計画、IT設定の説明、AML手続きの草案、会社設立関連文書の準備などが含まれます。
- 実体要件: ルクセンブルクに中央管理地と登記上の事務所を置くことで、ルクセンブルクにおける実体要件を満たす必要があります。これは、ルクセンブルクから商業機能が実際に運営されていることを意味します。
- ガバナンスとリスク管理: 投資会社は、明確な組織構造、責任の所在、リスク特定・管理・監視・報告のための効果的なプロセスを含む、強固な内部ガバナンス体制を持つ必要があります。
- 経営陣と株主の適格性: ライセンス取得には、経営陣および主要株主(議決権の10%以上を保有、または経営に重大な影響力を行使できる者)の評判と経験が審査されます。日々の経営は、評判と経験を持ち、ほぼ同等の権限を持つ少なくとも2名の自然人に委ねられる必要があります。これらの者は、ルクセンブルクまたはグラン・レジオンに居住している必要がありますが、1名については最初の6ヶ月間は居住要件の免除が認められる場合があります。
- AML/CFT規制: ルクセンブルクは、マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)の枠組みを強化しており、CSSFは金融セクターのAML/CFTコンプライアンスを監督する主要機関です。近年、CSSFはAML要件を満たさない企業に対し、顧客デューデリジェンスの不備、取引監視の不十分さ、リスク評価の欠陥などを理由に、多額の行政処分を課しています。これは、コンプライアンス違反が許容されず、厳格なガバナンス慣行の実施が競争優位性につながることを示しています。
- DORA(Digital Operational Resilience Act): 2025年1月17日以降、金融機関は主要なICT関連インシデントをCSSFに報告することが義務付けられています。
ルクセンブルクにおける衛星技術に関連する法制度

ルクセンブルクは、宇宙産業の発展を国家戦略の柱の一つとして位置づけ、特に宇宙資源の探査・利用に関する先駆的な法制度を整備しています。これは、宇宙ビジネスへの投資を誘致し、欧州における宇宙技術ハブとしての地位を確立するための重要な取り組みです。
宇宙法と宇宙資源の所有権
ルクセンブルクは、国際宇宙法(国連宇宙空間平和利用委員会が策定)の枠組みを遵守しつつ、国内法を整備しています。
- 宇宙活動法(Law of 15 December 2020 on Space Activities): 2021年1月1日に施行されたこの法律は、宇宙活動の認可と監督に関する明確な法的枠組みを提供し、宇宙活動に関連するリスク管理と国家責任を規定しています。この法律により、経済省とルクセンブルク宇宙庁(LSA)が宇宙活動の認可と監督、および宇宙空間に打ち上げられた物体の登録を担当することになりました。
- 宇宙資源探査・利用法(Law of 20 July 2017 on the Exploration and Use of Space Resources): 2017年8月1日に施行されたこの法律は、宇宙で取得された資源の所有権を規制するライセンスおよび監督制度を確立しています。ルクセンブルクは、欧州で初めて、商業企業が宇宙で取得した資源の所有権を法的に保証する国となりました。この法律は、小惑星などの地球近傍天体(NEO)から取得される資源(金属、鉱物、ガスなど)に適用されますが、衛星通信、軌道位置、周波数帯の使用には適用されません。この法律は、1967年の宇宙条約(Outer Space Treaty: OST)と整合するもので、領土主権を主張するものではなく、あくまで宇宙資源の取得に焦点を当てています。
認可と監督体制
宇宙活動を行う企業は、ルクセンブルクの経済省およびLSAから事前の認可を得る必要があります。
- 認可要件: 宇宙資源利用ミッションを行う企業は、ミッションごとに管轄大臣からの事前認可が必要です。認可申請には、リスク評価、ミッションに関連する適切な財源の存在、および健全で慎重な運営の証明が求められます。
- 事業者要件: ルクセンブルクの規制枠組みに依拠する事業者は、株式会社(SA)、株式合資会社(SCA)、有限会社(SàRL)、または欧州会社(SE)のいずれかの形態である必要があります。また、事業者の管理の中心地および登記上の事務所がルクセンブルクに所在している必要があり、行政・会計構造、財務・技術・法定手続きに関する十分な証拠を提出しなければなりません。年次決算は独立監査人による監査が必要です。
- 国家宇宙物体登録簿: 宇宙活動法に基づき、ルクセンブルクは国家宇宙物体登録簿を設置しており、ルクセンブルクが登録義務を負う全ての物体が登録されます。この登録簿は公開され、定期的に更新されます。
- 申請手続き: 宇宙物体の打ち上げ予定の少なくとも6ヶ月前までに、LSAに書面による予備申請を提出する必要があります。宇宙活動を他の事業者に移管する場合も、移管の少なくとも3ヶ月前までに経済省に書面申請が必要です。
投資誘致と優遇策
ルクセンブルクは、宇宙産業への投資を促進するため、さまざまな資金調達ツールと優遇措置を提供しています。
- 国家プログラム: LuxIMPULSEなどの国家プログラムや、研究開発・イノベーション促進のための国家補助金が提供されています。ルクセンブルク国立研究基金(NRF)は、企業とルクセンブルクの公的研究機関との間の官民パートナーシップ(PPP)プロジェクトに特化した資金を提供しています。
- 欧州プログラム: 欧州宇宙機関(ESA)やEUのプログラム(Horizon 2020など)への積極的な参加を通じて、企業は資金調達の機会を得ることができます。
- アクセラレーションプログラム: Fit 4 Start – SPACEは、有望なスタートアップを選抜し、初期段階の資金調達と個別コーチングを提供します。
- 税制優遇: 企業は、スタートアップから多国籍企業まで、事業のあらゆる段階で税制優遇や直接補助金を利用できます。
- 外国直接投資(FDI)審査: 2023年9月1日に施行されたルクセンブルクFDI法は、外国投資家がルクセンブルクの「重要活動」(航空宇宙、防衛、金融、データ処理・ストレージなどを含む)を行う企業を支配する場合、経済省への事前通知を義務付けています。これは、国家安全保障や公共の秩序へのリスクを最小限に抑えることを目的としており、航空宇宙分野への投資を検討する際には、この審査メカニズムを考慮する必要があります。
まとめ
ルクセンブルクは、その安定した政治・経済環境、高度に発展した金融セクター、そしてEUの中心に位置する地理的優位性から、日本企業にとって欧州市場へのゲートウェイとして非常に魅力的な国です。法制度は大陸法系であり、日本法と共通の基盤を持つ一方で、EU法の影響を強く受けることによる独自の規制や、国際的な潮流に合わせた迅速な法改正が特徴です。
関連取扱分野:国際法務・海外事業
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務
タグ: ルクセンブルク大公国海外事業