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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

転職に影響する逮捕歴や前科情報はデータベースから削除出来るのか?

風評被害対策

逮捕歴や前科の情報と新聞データベースから自分の名前や情報は削除出来るのか?

逮捕歴とは、事件を起こして警察に逮捕された履歴のことです。
逮捕されたからといって起訴されるとは限らず、不起訴になれば当然有罪にもならないので、前科もつきません。

前科というのは実際に刑事裁判を受け、刑罰を受けた履歴のことです。
前科があるというのは有罪になっているということなので、誤認逮捕や冤罪の可能性はありません。

このように、逮捕歴と前科では意味が大きく異なるのですが、一般の人はあまり区別せずに取り扱っていますし、どちらも報道されます。
そして、逮捕情報は報道されると、前科情報以上に拡散されてしまう場合があり、就職・転職活動や、現在勤就業中であっても会社にバレてしまうことで不利益をもたらす場合があります。

逮捕歴や前科の情報はどこにあるのか

逮捕歴や前科の情報は様々な場所でデータとして保存されています。

当サイトの別記事で解説しましたが、逮捕歴や前科の情報は通常、

  1. 警察や検察、本籍のある市区町村の内部データベース
  2. 関係者の記憶や断片的な情報
  3. 国会図書館などの新聞や雑誌
  4. インターネット上
  5. 新聞データベース

にあります。

警察や検察、本籍のある市区町村の内部データベース

前科や逮捕歴に関する情報は、警察や検察、本籍のある市区町村で管理されています。

  • 警察:犯罪捜査の資料とするため
  • 検察庁:犯罪捜査の資料や裁判の量刑の資料とするため
  • 市区町村:選挙権・被選挙権の有無を明らかにする犯罪人名簿を作成するため

という目的のため、それぞれ情報を管理しています。

これらが漏洩することは、普通には、考えられません。
個人情報として、厳格に管理されています。当サイトの別記事「弁護士会照会で誹謗中傷の投稿者確定は可能か」で解説した「弁護士法23条2項」に基づいて会社側の弁護士が、解雇を巡る訴訟で争っていた会社員の前科を問い合わせ、京都市中京区長が、照会文書中に照会を必要とする事由としては「中央労働委員会、京都地方裁判所に提出するため」との記載があったにすぎないのに、漫然と照会に応じて前科及び犯罪経歴の全てを報告したことが大きな問題となり、最高裁判所まで争われましたが、プライバシー侵害が認められました(最高裁判所1981年4月14日判決)。

関係者の記憶や断片的な情報

興信所や探偵が当たる先ですが、興信所と探偵は「探偵業法」という法律により、「探偵業務を行う者」として分類され、法律上では同じ分類の職業となりますので、興信所等として解説していきます。
興信所等の場合、個人の氏名から具体的な情報に辿り着かなければいけませんが、それがうまくいくケースは少ないと言えるでしょう。

また、法的な正当性がない場合は、興信所等は調査対象者に通知して調査を行う必要があります。「興信所業者が講ずべき個人情報保護のための措置の特例に関する指針」という警察庁からの通達によって定義されている条件により、興信所等が個人の情報などを調査する場合に、調査対象に通知しなくて良い4つの条件は、

  • 調査対象者が依頼者の配偶者である場合
  • 調査対象者が依頼者の親権に服する子である場合
  • 調査対象者が依頼者の法律行為の相手方(契約・事件などの一方の当事者)である場合
  • 依頼者が犯罪やその他の不正行為による被害を受けていた場合

であり、この4つの条件に当てはまる場合以外は、調査することを対象者に通知する必要があります。漠然とした理由や単なる好奇心で調査を依頼することはできません。

国会図書館などの新聞や雑誌

国会図書館での新聞記事では特定人物の前科情報を調べるのは難しいと言えます。

国会図書館には、現在までの新聞、雑誌等が全てそろっていますし、閲覧することができますが、書籍の著者名で検索することはできても、「事件の関係者」の名前で検索することはできません。

世間を騒がせた事件などで、その事件が起こった年月日がわかっていれば、その日からしばらくの期間の新聞記事を探して逮捕者の氏名が実名報道されているのを見つけることができるかもしれません。
可能性はありますし、逮捕情報は報道されたものであれば必ずあるのですし、実名報道であったなら必ず見つけることができるはずですが、実際問題として、特定人物に逮捕歴や前科があるかどうかを過去の新聞や雑誌から調べるのはほとんど不可能でしょう。

インターネット上

事件に関して新聞やテレビニュースでは実名報道されないという場合でも、ネット上では氏名や会社・学校名が報道されるという場合が多くあります。
一般紙が実名報道をしない場合でもオンラインメディアは実名報道をするというのはよくあることですし、掲示板で氏名、会社・学校名、住所等を特定されて晒され、拡散されるというのは、日常茶飯です。

逮捕歴や前科情報は、いったんネット上に掲載されてしまったら、自然に消去されることはありませんし、実名が残っていると、検索に引っかかって、逮捕歴や前科を知られてしまうことになるのです。

ニュースサイトの場合、大手新聞社のものは、一度掲載した記事を、半年や1年といった一定期間で自動的に削除しています。
あまり古い記事がウェブ検索で簡単に出てしまうことは、やはり問題だからです。
しかし「一次情報」である新聞社等のニュース記事が消えた後も、そのニュースをコピペしたネット掲示板や個人のブログ、SNSなどはネット上に残ったままです。
何もしなければ、いつまでも残ったままとなります。逮捕歴や前科情報の削除は、インターネット上がメインターゲットとなるのは、このためです。

逮捕歴や前科情報の削除請求については、当サイトの別記事を参考にしてください。

新聞データベース

「G-Search」 では企業情報と共に特定個人の逮捕歴や前科情報を入手することが出来てしまいます。

新聞雑誌記事横断検索というサービスがあります。複数社ありますが、どれも元は経済調査のためのものです。

例えば最大手のひとつである「G-Search」(https://db.g-search.or.jp/g_news/RXCN.html)であれば、ある企業と新規に取引をしようとするときに、以下の手順で当該企業の調査を行うことが可能です。トップページで「企業情報をみる」を選択し、

  1. 「企業情報検索」で取引先の状況をチェック→ 帝国データバンクや東京商工リサーチの情報など、所在地や代表者名、従業員数などの基本情報から業績や評点などまで、信用度を測る必須の情報を確認できます。
  2. 「新聞・雑誌記事横断検索」で新聞や雑誌の記事をチェック→ 企業名で新聞・雑誌記事横断検索を検索して、企業のリリースや評判など、新聞に掲載された様々な情報から評判をチェックすることが可能です。
  3. 「人物情報横断検索」で人物情報をチェック→人物情報横断検索で代表者について調査し、人物プロフィール情報だけでなく、関連記事検索でインタビューやその人にまつわる記事等だけを読むこともできます。
  4. 「信用情報横断検索」で信用情報をチェック→ 信用情報横断検索(倒産速報)も念のため確認すれば、取引先が連鎖倒産に巻き込まれる恐れはないか、債権者情報なども検索できます。

という、たいへん便利で有用なビジネスデータベースサービスなのですが、これによって、特定個人の逮捕歴や前科情報を容易に入手することができます。
困ったことなのですが、調査された企業の経営者に逮捕歴や前科があったら、2や3の段階で知られてしまう可能性が高いのです。

実例を挙げて説明します。
ログインし、トップページの「新聞記事をみる」から「新聞・雑誌記事横断検索」に行くと、次の画面になります。

この場合には、企業名ではなく「キーワード」に当法律事務所の代表弁護士である「河瀬季」の名前を入力します。「タイトルと本文に含まれる文字列を検索」を選択し、「日付」は「全期間」のままとし、「検索対象紙誌」は過去約30年の約150紙誌にチェックが入っているので、「全て選択」のままで「検索」をクリックすると、

「検索結果は10件です」と出て、該当する新聞紙名にチェックが入り、件数が出ています。
「一覧表示」をクリックします。

というように、「河瀬季」が新聞等の取材などに応じた記事が検索結果として表示されています。
タイトルをクリックすると、本文記事を読むことができます。
もしあるのなら、逮捕記事等の場合も同様に、検索結果として表示されてしまいます。このようなやり方で新聞雑誌記事横断検索を使えば、容易に逮捕歴や前科の情報が見つかってしまうのです。
しかもこれが、複数アカウントを用いる「法人会員」基本料6000円/年額、1アカウントでの利用なら「クレカ会員」基本料300円/月額で、例えば朝日新聞なら1見出し5円、記事本文100円という安価で、見ることができてしまうのです。

「他にはどういう使い方ができるかなあ…」と思い、3年ほど前に覚せい剤所持で捕まった芸能人Aの事件で、関連して逮捕された人がいたという記憶があったので、Aの名前で検索してみました。

すると、犯罪関連であり全国報道されるので膨大な数の記事が見つかりましたが、その中に関連して逮捕された会社員2人の実名が出た記事がありました。
そこで次にその2人の名前で検索すると、一人は何も見つかりませんでしたが、もう一人は地方紙の「〇〇大学卒業者名簿」に名前があり、年齢からも本人だと思われますが、さらに本事件の4年前にも覚せい剤に絡んで逮捕されていることがわかりました。その後どうなったかわからないのですが、おそらく初犯だったので、執行猶予がついたのでしょう。本事件では2度目の逮捕のようであり、続報は出ていないのですが、実刑判決を受けたかもしれません。

このように企業調査を行っているときや、目的をもって本人氏名検索をする場合ばかりでなく、ある人の記事情報を検索しているときに、別の人の逮捕歴や前科情報が偶然見つかることもあるでしょう。
逮捕歴や前科がある人、特に企業経営者は、新聞データベースの存在を忘れてはなりません。

まとめ

逮捕歴や前科情報の削除は、ネット上の新聞や雑誌の過去記事、掲示板やSNSだけをターゲットにすればいいわけではありません。この記事で解説した新聞雑誌記事横断検索は、一般にはまだあまり知られていませんし、逮捕歴や前科情報の削除を希望している人の中にも存在に気づいていない人が多いのですが、やはり、早急に対処しなければならない対象です。

非常に困る問題ですが、弁護士であれば記事削除を求め、削除させることも可能です。経験豊かな弁護士にご相談ください。当モノリス法律事務所は、新聞雑誌記事横断検索に基づく記事削除にも数多く対応しています。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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