逆リベンジポルノとは?被害の相談先や予防・対処法について解説
リベンジポルノとは、元配偶者や元恋人の性的な画像や動画をインターネット上に公開したり、不特定多数の人に配布したりする嫌がらせ行為です。リベンジポルノは、主に男性が加害者であるため、女性が加害者の場合を「逆リベンジポルノ」ということがあります。
逆リベンジポルノに遭ってしまったらどうしたら良いのでしょうか。また、逆リベンジポルノの被害に遭わないためには、どのような対策を行ったら良いのでしょうか。
本記事では、逆リベンジポルノの被害に遭ったときの相談先や対処法、被害に遭わないための対策を解説します。
この記事の目次
リベンジポルノと逆リベンジポルノ
リベンジポルノとは、別れた恋人や離婚した配偶者などの性的な画像を復讐のため、無断で公開する嫌がらせで、男性から女性に対して行われるのが典型的なパターンです。一方、逆リベンジポルノとは、女性が男性の性的な画像や動画を公開する嫌がらせを指します。
警察庁の「令和5年におけるストーカー事案への対応状況」によると、リベンジポルノの被害者は女性が84.3%でした。被害者のほとんどが女性であるため、リベンジポルノは主に女性に対する犯罪と認識されています。
こういった背景から、男性側が被害者である場合を逆リベンジポルノと呼びます。なお、逆リベンジポルノは造語で、法的に使われることはありません。
参考:警察庁|令和5年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について
逆リベンジポルノの例
逆リベンジポルノには、どのようなケースがあるのでしょうか。ここでは、具体的な例を解説します。
美人局(つつもたせ)のようなケース
逆リベンジポルノでは、美人局が手段として使われるケースがあります。美人局とは、夫婦や他人同士・友人同士の男女が共謀し、ターゲットの男性と肉体関係を結び、それをいいがかりとして金銭を要求する脅迫行為です。
具体的には、加害者の女性が被害者の男性と肉体関係になった際に、裸体・性行為の画像や動画を記録します。その後、共謀者の男が画像や動画をばらまくと被害者を脅して、金銭を受け取ろうとするのです。
復縁を迫る・腹いせのケース
元カノや元妻による逆リベンジポルノの場合、性的な画像や動画を使って復縁を迫ったり、腹いせのためにデータの公開をしたりするケースがあります。これは、男性が加害者であるケースも多く、男女ともに共通している逆リベンジポルノの主な動機の一つです。
ホストの独占・売掛金の踏み倒しをするケース
女性特有の逆リベンジポルノとして挙げられるのが、ホストに対して性的な画像や動画の公開を迫るケースです。性的な画像や動画をばらまくと脅し、ホストを独占しようとするのです。
また、ホストクラブでの売掛金の回収を避けるために性的な画像や動画を使って脅すケースもあります。
逆リベンジポルノに関連する法律
逆リベンジポルノに関連する法律には、以下の4つが挙げられます。
- リベンジポルノ防止法
- ストーカー規制法
- 刑法
- 児童買春・児童ポルノ禁止法
それぞれの詳細を解説します。
リベンジポルノ防止法
リベンジポルノ防止法は、リベンジポルノによる被害が深刻化し、社会問題となっている状況を受けて平成26年(2014年)に制定された法律です。正式名称を「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」といいます。
リベンジポルノ防止法がつくられた目的は、性的な画像や動画を公開したりばらまいたりするなどの行為により、個人の名誉や私生活の平穏が侵害されるのを防ぐことです。
リベンジポルノ防止法では、私事性的画像の公表や提供を禁止しています。私事性的画像とは、以下のいずれかの姿態が撮影された画像(第三者が閲覧することを認識したうえで、任意に撮影を承諾し、または撮影したものを除く)を指します。
リベンジポルノ法 第2条
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
引用:e-Gov|私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
性的な画像や動画を公表、または公然と陳列(不特定または多くの人が認識できるような状態に置くこと)した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
また、性的な画像や動画を公表することを目的として不特定または多数の者に提供した場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
リベンジポルノ防止法について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:リベンジポルノの法律とは?罰則の内容や対応方法についても解説
ストーカー規制法
逆リベンジポルノの被害に遭った場合、ストーカー規制法に該当するケースもあります。ストーカー規制法とは、同一の者に対してつきまといや面会、交際を要求することなどを規制する法律です。
性的な画像や動画を使い、連絡を取ったり交際を要求したりする場合はストーカー規制法違反に該当する可能性があります。規制される行為に挙げられるのは、以下のとおりです。
- つきまとい、待ち伏せ、うろつくなど
- 面会・交際などを要求する
- 粗野または乱暴な言動をする
- 拒まれたのにもかかわらず連続して電話・ファックス・メールなどを送付する
- 不快・嫌悪な感情を持つようなものを送付する
- 名誉・性的羞恥心を害する
ストーカー規制法に違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
参考:e-Gov|ストーカー行為等の規制等に関する法律
刑法
逆リベンジポルノのなかで金銭やその他の要求がある場合、刑法の恐喝罪や脅迫罪、強要罪に該当する場合があります。また、わいせつ物頒布等罪に問われる可能性もあります。
恐喝罪:人を恐喝して財物を交付させる(刑法第249条)
脅迫罪:生命、身体、自由、名誉または財産に対し、害を加える旨を告知する(刑法第222条)
強要罪:生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害する(刑法第223条)
わいせつ物頒布等罪:わいせつな文書や図面、電磁的記録に係る記録媒体などを頒布、または公然と陳列する(刑法第175条)
それぞれの罰則は、以下のとおりです。
犯罪 | 罰則 |
恐喝罪 | 10年以下の懲役 |
脅迫罪 | 2年以下の懲役、または30万円以下の罰金 |
強要罪 | 3年以下の懲役 |
わいせつ物頒布等罪 | 2年以下の懲役、もしくは250万円以下の罰金もしくは科料(1,000円以上1万円未満の金銭納付を命じられること) |
参考:e-Gov|刑法
児童買春・児童ポルノ禁止法
被害者が18歳未満の場合は、児童買春・児童ポルノ禁止法に該当する可能性があります。違反の対象となるのは、児童ポルノを不特定もしくは多数の者に提供し、または公然と陳列した場合です(児童ポルノ禁止法第7条6項)。
この場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科されます。児童ポルノ禁止法では、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持することも禁止しており、違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます(児童ポルノ禁止法第7条1項)。
また、加害者の女性が未成年の場合、逆リベンジポルノの被害者であると共に、加害者になる恐れもあるため注意しましょう。問われる罪は、「児童買春罪」「淫行罪」です。
児童買春とは、18歳未満の児童に対してお金を払って性交等の行為をすることです。児童買春罪に問われた場合、5年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます(児童ポルノ禁止法第4条)。
参考:e-Gov|児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
淫行とは、18歳未満の児童を誘惑・威迫など、不当な手段により行う性行為や性交類似行為のことです。淫行罪は各自治体が定める条例で規制されており、自治体により罰則は異なります。
逆リベンジポルノの被害に遭わないための予防法とは?
逆リベンジポルノの被害に遭わないための予防法は、大前提として、性的な画像や動画を撮らせないのが基本です。たとえ性的な画像を送ってくれといわれたとしても断りましょう。
女性が相手との関係を終わらせたくない・仕返ししたいという感情を持ってしまうと逆リベンジポルノに発展しやすいです。万が一、性的な画像や動画を撮影されており、別れる状況になった場合、相手とじっくりと話し合い、円満に解決できるように配慮することが大切です。
SNSでの出会い・出会い系サイトなどには、逆リベンジポルノを目的として登録している方がいるケースもあります。怪しいと思った場合は、相手にしないようにしましょう。
逆リベンジポルノ被害の対処法
実際に逆リベンジポルノ被害に遭ってしまったらどのように対処すれば良いのでしょうか。ここでは、具体的な対処方法を解説します。
被害の状況を証拠として保管する
逆リベンジポルノの被害に遭った場合、まずは証拠を集め保管することが大切です。証拠がなければ、被害に遭った事実を証明できないため、相談や訴訟が不可能になる恐れもあるからです。
画像や動画が掲載されたサイトやSNSなどの画面を、スクリーンショットやプリントアウト、デジカメなどで撮影して保管します。あわせて、URLも記録しておきましょう。
動画や画像の削除依頼をする
念入りに証拠を保管したら、被害が拡大しないように削除依頼をします。画像や動画が掲載されているサイトやSNSに、直接、削除請求を行いましょう。
削除請求しても対応してくれない場合には、裁判所へ削除の仮処分申し立てをして削除命令を求めることも可能です。
削除方法を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:急増するリベンジポルノ被害の状況別相談先と対処法について解説
専門家に対応を依頼する
逆リベンジポルノの被害に遭った場合は、警察や弁護士などの専門家に対応をお願いすることも一つの方法です。自分で対処すべく、交渉したり相手の画像を公表して仕返ししたりする手段を考える方もいます。
しかし、このような行為は相手を刺激してしまい、被害が大きくなるどころか、逆に訴えられる恐れもあります。自分で解決しようとせず、速やかに専門家に相談しましょう。
具体的な相談先は、次項で解説しております。
逆リベンジポルノ被害に関する相談先
逆リベンジポルノ被害の相談先には、以下の3つがあります。
- セーファーインターネット協会
- 警察
- 弁護士
セーファーインターネット協会
流出した画像の削除のみをしたい場合には、セーファーインターネット協会に相談しましょう。セーファーインターネット協会とは、違法・有害情報の流通を防止するために設立された団体のことです。
セーファーインターネット協会に依頼すれば、画像や動画の削除を無料で行ってくれます。国内だけでなく、海外のプロバイダに対しても削除依頼の申請が可能です。
一般社団法人セーファーインターネット協会|リベンジポルノの被害にあわれたら
警察
犯人を捕まえたいなら、警察に相談しましょう。近くの警察署ではなく、「サイバー犯罪相談窓口」や「性犯罪被害相談電話窓口」に相談するのがおすすめです。
警察に相談するときには被害を受けた事実のわかる証拠が必要になるため、あらかじめ準備しておきましょう。
警察庁|サイバー事案に関する相談窓口
警察庁|各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「♯8103(ハートさん)」
弁護士
画像の削除を依頼したのにもかかわらず、削除してもらえない場合や、加害者を訴えて損害賠償や慰謝料を請求したい場合は、弁護士に相談しましょう。費用はかかりますが、警察への被害届や告訴状の作成や慰謝料請求などを代理してくれます。
相談する事務所により、得意とする分野は異なります。相談先には、画像削除や損害賠償請求の実績が豊富な事務所を選びましょう。
関連記事:リベンジポルノの法律とは?罰則の内容や対応方法についても解説
まとめ:逆リベンジポルノの被害も弁護士に相談しましょう
逆リベンジポルノ被害に遭ったとしても、家族や会社にばれたくないからという理由で泣き寝入りするケースも少なくありません。逆リベンジポルノの被害に遭わないためには、基本的に、性的な画像や動画を撮らせない・送らないようにすることが大切です。
画像や動画がインターネット上に公開されると、時間が経過しても半永久的に残り続け、就職活動や昇進などで不利になったり家族へ迷惑をかけたりしてしまう恐れがあります。逆リベンジポルノの被害に遭いそう・遭ってしまった場合は、早めに信頼できる相談先にアドバイスを求めましょう。
当事務所による対策のご案内
モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。
モノリス法律事務所の取扱分野:デジタルタトゥー