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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

OSSライセンス違反の事例と法的責任|GPL・MITの違反パターンと企業の対策

OSSライセンス違反の事例と法的責任|GPL・MITの違反パターンと企業の対策

無料で手に入るOSSにも、守るべき条件があります。条件を外れて製品に組み込み出荷すると、許諾の範囲を超えた利用として著作権侵害を問われるおそれがあります。

代表的なOSSライセンスにGPL(GNU General Public License)があります。海外では、その条件を守らなかった通信事業者に約80万ユーロの賠償を命じた判決が2024年に出ています。ソースコードの開示を求める訴訟を、著作権者ではなく製品の購入者側が起こした例もあります。

違反の典型パターン、GPLとMITライセンスの事例、企業が負う民事・刑事の責任、発覚時の対応と予防策を、条文と判決の一次資料に基づいてまとめます。

OSSライセンス違反とは

OSSライセンス違反とは、OSSの著作権者が定めた利用条件を守らずに、OSSを複製・改変・頒布(複製物を外部に広く配ること。以下「配布」)することです。その条件が許諾の範囲を画するものであれば、条件を外れた利用は許諾の範囲外の利用として著作権侵害にあたり得ます。

一方、条件の性質によっては、著作権侵害ではなく契約上の義務違反にとどまるという見解もあります。日本ではこの点を正面から判断した裁判例は見当たりません。

OSSライセンスは著作権者による利用許諾

プログラムは著作権法上の著作物です。複製や公衆への譲渡は著作権者だけができる行為で、他人が行うには許諾が要ります。許諾を受けた人が使えるのは、許諾に付いた利用方法と条件の範囲内に限られます。

参考:e-Gov法令検索 著作権法 第10条第1項第9号・第21条・第26条の2・第63条第2項(令和8年6月24日施行版)

そのため、社内のパソコンでOSSを動かすだけなら、多くのライセンスで、ソースコードの提供や著作権表示といったライセンスの条件は問題になりにくいのが実情です。条件が効いてくるのは、OSSを組み込んだ製品やアプリを外部に配布する場面です。組込み機器ならファームウェアの出荷、スマートフォンアプリならストアでの配信がこれにあたります。SaaSは、サーバの中で動かすだけなら原則として配布にあたりません。一方、利用者のブラウザに送るJavaScriptや、オンプレミス版・SDKの提供は配布にあたり得ます。例外はAGPLです。プログラムを改変してネットワーク経由で利用者に使わせる場合にも、ソースコードを受け取る機会を設けるよう求めています(AGPLv3第13条)。

コピーレフト型と非コピーレフト型の違い

OSSライセンスは、改変した成果物にも同じ条件を引き継がせるコピーレフト型と、引き継がせない非コピーレフト型に大きく分かれます。

▼ OSSライセンスの類型と主な義務

類型代表的なライセンスソースコードの提供著作権表示・ライセンス文の保持
強いコピーレフト型GPLv2・GPLv3・AGPLv3配布するGPLのコードに基づく部分全体について必要。範囲はリンクの方法によって争いがある必要
弱いコピーレフト型LGPL・MPLそのライブラリやファイル部分について必要。LGPLの静的リンクでは利用者が再リンクできる対応も要る必要
非コピーレフト型MIT・BSD・Apache License 2.0不要必要

OSSライセンス違反の主なパターン

違反の多くは悪意からではなく、確認漏れから起きます。実務でよく見るのは次の6つです。

▼ OSSライセンス違反の6つのパターン

パターン問題になりやすいライセンス典型的な場面
ソースコードの非開示GPL・LGPLLinuxを載せた機器を出荷し、ソースの入手方法を示さない
ライセンス文書の未同梱ほぼすべて配布用のパッケージを作る際にLICENSEファイルが抜ける
著作権表示・ライセンス表示の削除MIT・BSD・Apacheを含むほぼすべてコードを整形・流用する際に冒頭の表示を消す
ライセンスの誤解・誤用MITなど条件の少ないもの元の表示を残さずに、自社の独自条件だけで配る
ライセンスの不整合GPLv2とApache License 2.0など両立しないライセンスのコードを1つの製品に結合する
依存ライブラリ経由の混入GPL系パッケージ管理ツールで間接的に入ったライブラリを見落とす
OSSライセンス違反の主なパターン

ソースコードの非開示

GPLやLGPLのソフトウェアを、実行形式で配布するときに対応するソースコードを提供しないパターンです。GPLv2はソースコードを添付するか、3年以上有効な書面で提供を申し出ることを求めています。機器のファームウェアやスマートフォンアプリに組み込んだ場合も配布にあたります。

参考:GNU General Public License, version 2 第3条(1991年6月)

ライセンス文書の未同梱

配布物にライセンスの全文や著作権表示を入れていないケースです。GPLだけでなく、MIT、BSD、Apache License 2.0も、ライセンス文や許諾表示を配布物に含めることを求めています。リリース直前にファイル構成を整理するときに抜けやすく、開発スピードを優先した現場ほど起きがちです。

著作権表示・ライセンス表示の削除

元の作者の著作権表示やライセンスの表示を、流用の過程で消したり書き換えたりするパターンです。MITライセンスは、著作権表示と許諾表示をソフトウェアのすべての複製または重要な部分に含めることを条件にしています。条件が1つしかないMITでも、表示を消せば違反になります。

参考:Open Source Initiative「The MIT License」

ライセンスの誤解・誤用

ライセンスの条項を読み違えて使う誤りです。たとえば、MITライセンスのコードを取り込んだ製品を自社のライセンスで配るときに、元の著作権表示と許諾表示を残さないケースがあります。MITのコードを含む成果物を独自の条件で配ること自体は許されていますが、元のコードの権利が自社に移るわけではなく、表示を残す条件は続きます。

ライセンスの不整合

複数のOSSを組み合わせたとき、ライセンスの条件どうしがぶつかって、どちらかに違反してしまうパターンです。GPLを策定したのはフリーソフトウェア財団(FSF)です。FSFは、Apache License 2.0について、GPLv3とは両立する一方、GPLv2とは両立しないと説明しています。特許に関する終了条項など、GPLv2に無い要求を含むためです。結合する前に、組み合わせの可否を確かめる必要があります。

参考:GNUプロジェクト「様々なライセンスとそれらについての解説」

依存ライブラリ経由の混入

パッケージ管理ツールで1つのライブラリを入れると、その裏で数十、数百のライブラリが自動的に取り込まれます。直接選んだライブラリがMITでも、依存先にGPL系が混じっていることがあります。直接使うライブラリだけを確認しても、違反は防げません。ビルドの段階でツールを使って間接的な依存先まで含めたライセンスの一覧を出し、許可していないライセンスが見つかったら法務の確認に回す設定にしておきます。

OSSライセンス違反の事例

OSSライセンス違反が訴訟まで進んだ事例は、主に米国と欧州にあります。日本国内で判決まで至った事例は確認できた範囲では見当たりませんが、取引先の監査やM&Aの際の調査、海外の権利者からの指摘で是正を求められる形で表面化します。

GPL違反の事例1:Linksys製ルーターをめぐるFSFの提訴と和解

2008年12月、FSFは、ネットワーク機器メーカーのCiscoを米国の連邦地裁に提訴しました。子会社Linksysの製品には、FSFが著作権を持つGCCなどのプログラムが組み込まれていました。それなのにGPLが求めるソースコードの提供が十分でなかった、という主張です。

2009年5月に和解が成立し、FSFは訴えを取り下げました。Cisco側は、Linksysにライセンス遵守を監督する責任者を置いてFSFに定期報告することを約束しました。過去の購入者へのGPL上の権利の通知、ソースコードの公開の継続、FSFへの金銭の拠出にも同意しています。賠償金だけでなく、社内体制の整備まで約束させられた点が企業にとっての教訓です。

参考:Software Freedom Law Center「FSF Settles Suit Against Cisco」(2009年5月20日公表)

GPL違反の事例2:Vizioのスマートテレビをめぐる購入者側からの請求

OSSの権利擁護団体Software Freedom Conservancy(SFC)は、2021年10月に米国のテレビメーカーVizioを提訴しました。訴えた先はカリフォルニア州の裁判所です。同社のスマートテレビに組み込まれたGPL・LGPLのソフトウェアについて、ソースコードの提供を求めた訴訟です。

この事件が注目されたのは、SFCが著作権者としてではなく、テレビを買った購入者の立場で訴えた点です。購入者はGPLという契約の当事者ではありません。それでも、その契約から利益を受ける立場(第三受益者)にあるので、ソースコードを請求できる、という組み立てです。Vizioは、本格的な審理に入る前に請求を退けるよう求める申立て(略式判決の申立て)をしましたが、裁判所は2023年12月にこれを退けています。

一方、2025年12月にはVizio側の主張が一部認められました。改変したソフトウェアを入れ直してもテレビが正常に動く状態まで保証する情報を、GPLは求めていないという点です。2026年2月時点で事件は係属中で、最終的な判断は出ていません。

参考:Software Freedom Conservancy「Software Freedom Conservancy v. Vizio」(2026年2月27日更新)

GPL違反の事例3:フランスのOrange社に約80万ユーロの賠償を命じた判決

2024年2月14日、パリ控訴院は、通信事業者Orangeとその子会社に対し、ソフトウェア会社Entr’Ouvertへの支払いを命じました。Entr’Ouvertは認証ライブラリをGPLv2で公開していました。Orange側がフランスの行政ポータルの構築案件で、これをGPLの条件に反して本人確認の基盤に組み込んでいたという事案です。

判決は、GPLv2の第2条、第3条、第4条、第10条への違反と著作者人格権の侵害を理由に、著作権侵害を認めました。命じられた額は合計80万ユーロです。内訳は、経済的な損害50万ユーロ、精神的損害15万ユーロ、侵害者が得た利益15万ユーロで、これとは別に訴訟費用として6万ユーロの支払いも命じています。

この事件には前段があります。2021年、控訴院はいったん契約違反の問題だとして著作権侵害の請求を退けました。2022年10月にフランスの最上級審である破毀院がこれを覆し、審理を差し戻しています。GPLの条件違反を著作権侵害として争えることを、破毀院が認めた形です。ただし、これはフランス法のもとでの判断で、損害額もフランス法の算定によるものです。日本の裁判所が同じ結論をとるとは限りません。

参考:Cour d’appel de Paris, 14 février 2024, RG n° 22/18071(Entr’Ouvert v. Orange)(2024年2月14日公表)

GPL違反の事例4:Ghostscriptをめぐる韓国Hancom社への訴訟

PDFなどを処理するソフトウェアGhostscriptの開発元Artifexは、商用ライセンスとGPLの2つの条件で製品を提供していました。韓国のHancomは、商用ライセンスを買わずにGhostscriptを自社のオフィスソフトに組み込み、ソースコードも公開していませんでした。

Artifexは契約違反と著作権侵害を理由に提訴し、Hancomは署名した契約は無いとして却下を求めました。Hancomは商用ライセンスを取らずに使い、GPLで利用していると公表していました。米カリフォルニア州北部地区連邦地裁は2017年4月25日、この事情から、契約の成立について十分な主張がされているとしてHancom社の却下申立てを退けています。ただし、これは訴訟の初期段階の判断で、GPLが契約として成立すると確定的に認めたものではありません。

参考:Artifex Software, Inc. v. Hancom, Inc., No. 16-cv-06982-JSC(N.D. Cal.)Order re: Motion to Dismiss(2017年4月25日公表)

MITライセンス違反にあたる典型的な事例

MITライセンスは条件が少なく、裁判で争われた事例もほとんど見当たりません。それでも次のような行為は、原文の条件に照らして違反にあたります。

▼ MITライセンス違反にあたる典型的な行為

行為なぜ違反になるか
著作権表示と許諾表示を消して配布するすべての複製または重要な部分に両方の表示を含めることが利用の条件だから
無保証の条項を削る・書き換える許諾表示の一部であり、表示を保持する条件に反するから
表示を残さず、自社の独自ライセンスや別のライセンスだけで公開する元のコードの著作権者と条件が利用者から見えなくなるから

ここまでの事例を一覧にすると次のとおりです。

▼ OSSライセンス違反の主な事例

時期当事者ライセンス争点結果
2008年12月提訴FSF対Cisco(Linksys)GPLソースコードの提供2009年5月和解。遵守責任者の設置・購入者への通知・金銭の拠出
2017年4月決定Artifex対HancomGPLGPLが契約として成立するか却下申立てを退ける(訴訟初期の判断)
2021年10月提訴SFC対VizioGPL・LGPL購入者がソースコードを請求できるか2026年2月時点で係属中
2024年2月判決Entr’Ouvert対OrangeGPLv2条件違反による著作権侵害賠償合計80万ユーロ+訴訟費用6万ユーロ

OSSライセンス違反で企業が負う法的責任

日本法のもとでOSSライセンス違反が問題になると、企業は大きく4つの責任を負う可能性があります。著作権侵害としての差止と損害賠償、ライセンスの終了と契約上の責任、刑事罰、そして取引先や顧客に対する責任です。国内の裁判例が乏しいため、以下は条文と海外の判断を踏まえた見通しとして読んでください。実務では、権利者からの是正の求めに、ソースコードの提供や表示の追加で応じて決着する例が多いとされます。

OSSライセンス違反で企業が負う法的責任

著作権侵害としての差止請求と損害賠償

ライセンスの条件を外れた複製や配布は、著作権者から見れば許諾のない利用です。著作権者は、侵害の停止や予防を求める差止請求ができ、あわせて侵害品の廃棄など必要な措置も求められます。製品の出荷停止や回収につながり得るのが、この差止請求です。

損害賠償は民法709条の不法行為に基づいて請求され、侵害者に故意または過失があることが要件です。差止請求は故意・過失がなくても認められるため、委託先が組み込んだOSSであっても出荷停止を求められる可能性があります。著作権法114条には、侵害した側が得た利益の額を権利者の損害と推定する規定などがあり、権利者が損害額を立証しやすくなっています。

参考:e-Gov法令検索 著作権法 第112条・第114条(令和8年6月24日施行版)

ライセンスの終了と契約違反としての責任

GPLには、違反した場合にライセンスが終了するという定めがあります。GPLv2の第4条は、ライセンスで認められた方法以外で複製や配布をすると、そのライセンスによる権利は自動的に終了すると定めています。終了後の利用は、すべて許諾のない利用として扱われるおそれがあります。

GPLv3の第8条は回復の道を用意しています。違反をやめれば暫定的に権利が回復し、その権利者から初めて違反の通知を受けた場合は、通知の受領から30日以内に是正すれば、その権利者との関係で恒久的に回復します。ただし、回復するのは今後の利用の権利で、それまでの違反について損害賠償を求められる可能性は残ります。権利者が複数いれば権利者ごとに扱いが分かれ、GPLv2のみのコードにはこの回復規定がありません。

参考:GNU General Public License, version 3 第8条(2007年6月29日公表)

Hancom事件のように、GPLを契約と捉えて契約違反の責任を問う構成も海外ではとられています。日本法でGPLを契約とみるかについては、見解が分かれています。利用者との間でライセンス契約が成立するとみる見解と、著作権者が条件付きで権利を行使しないと宣言しているにとどまるとみる見解です。もっとも、GPLv3は受領や実行には承諾を要しないと定めているため(第9条)、ダウンロードして使うだけの段階では契約は成立していないと考える見解が多くみられます。契約の成否が問題になるのは、改変したものを頒布する場面です。国内で判断した裁判例は見当たりません。契約とみる場合は、債務不履行に基づく損害賠償(民法415条)や、ソースコードの提供そのものを求める請求が問題になる可能性があります。

参考:一般財団法人ソフトウェア情報センター「SOFTIC LAW NEWS No.155 GPLv3のソフトウェアについてライセンス契約の成立が問われた事例」(2017年9月)

刑事罰:10年以下の拘禁刑と法人への3億円以下の罰金

著作権侵害には刑事罰もあります。著作権を故意に侵害した者は、10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、又はその両方に処せられることがあります。過失による侵害は処罰の対象ではありません(刑法38条1項)。従業員が会社の業務として侵害した場合は、行為者に加えて法人にも3億円以下の罰金が科され得ます。

この罪は原則として親告罪で、著作権者の告訴がなければ起訴されません。OSSライセンス違反が刑事事件になった国内の例は確認できていませんが、制度の上では刑事罰の対象になり得ることは押さえておく必要があります。権利者から違反を指摘された後も是正せずに配布を続けると、故意を否定しにくくなります。

参考:e-Gov法令検索 著作権法 第119条第1項・第123条第1項・第124条第1項第1号(令和8年6月24日施行版)

委託先や取引先との責任関係

委託先が組み込んだOSSでも、損害賠償では、製品を配布する事業者として確認を怠った過失を問われるおそれがあります。

そのうえで、発注者と委託先の間では契約の問題になります。開発契約が請負なら、納品物が契約の内容に適合しない場合に、発注者は委託先へ請求できる可能性があります。修補などの追完(契約どおりの状態に直させること)、報酬の減額、損害賠償、解除です。ただし、不適合を知った時から1年以内に委託先へ通知しなければ請求できなくなるのが原則で(民法637条)、損害賠償には委託先の帰責事由も要ります。準委任型の契約では善管注意義務違反を問うことになり、契約に責任制限条項があれば請求額はその上限に縛られます。

参考:e-Gov法令検索 民法 第415条・第559条・第562条・第564条・第637条(令和8年6月24日施行版)

OSSライセンス違反によるビジネス上のリスク

訴訟に至らなくても、違反は事業を止めることがあります。

出荷停止や取引先からの信頼低下

違反の是正が終わるまで、製品の出荷やサービスの提供を止めざるを得ない場合があります。組み込み機器であれば、部品の供給先や販売店を含むサプライチェーン全体に影響が広がります。取引先から契約の見直しを求められることもあり、是正にかかる期間がそのまま売上の機会損失になります。

信用・ブランドの毀損

違反の指摘は、SNSや開発者コミュニティで短時間に広がるものです。指摘への返答が遅れたり、説明が事実と食い違ったりすると、批判が長く残ります。OSSコミュニティとの関係が悪化すると、採用や協業にまで影響が及びます。

OSSライセンス違反を防ぐための6つの対策

違反の多くは確認漏れから起きるため、予防の中心は仕組み作りです。技術的な管理と、社内ルールや契約による手当てを組み合わせます。

▼ OSSライセンス違反を防ぐ対策の全体像

対策主な担当いつ行うか
ライセンスの内容を確認する開発部門導入時・出荷前・バージョンアップ時
社内ルールとガバナンス体制を作る法務部門・経営層体制の立ち上げ時と定期的な見直し
エンジニアと法務部門が連携する開発部門・法務部門導入の申請時と出荷前の確認時
管理ツールとSBOM(ソフトウェア部品表)を使う開発部門開発の工程に組み込んで継続的に
教育と啓発を続ける人事・法務部門入社時と定期研修
委託や納品の契約でOSSの扱いを決める法務部門契約の締結時

OSSライセンスの内容を確認する

OSSを導入するときは、ライセンスの種類と、改変物の扱い・再配布の条件を確かめます。確認は導入時の1回では足りません。製品の出荷前やライブラリのバージョンアップ時にも見直してください。プロジェクトの途中でライセンスが変わることもあります。

社内ルールとガバナンス体制を構築する

OSSの利用ポリシーを文書にし、使ってよいライセンス、事前承認が要るライセンス、原則として使わないライセンスを分けておきます。利用時には申請と承認の手順を通し、誰がどのOSSの利用を認めたかを記録に残すことが、後の調査を楽にします。区分はあくまで一例ですが、たとえば次のような分け方が考えられます。MIT・BSD・Apache License 2.0は表示を守る前提で利用可、LGPL・MPLは事前承認とします。GPLは配布する製品に使うなら事前承認、AGPLは外部に提供するサービスでは原則として使わない扱いです。

エンジニアと法務部門が連携する

ライセンスの解釈は、エンジニアだけでも法務だけでも誤ります。自社に法務部門が無い場合は、ソフトウェアと著作権に詳しい外部の弁護士に相談できる窓口を用意しておくと、迷ったときに開発を止めずに済みます。

OSS管理ツールとSBOMを活用する

ソースコードを解析してOSSとライセンスを検出するツールを、開発の工程に組み込みます。あわせて、製品に含まれるソフトウェア部品の一覧であるSBOMを作っておくと、違反の疑いが出たときに影響範囲をすぐに特定できます。経済産業省はSBOM導入の手引を公表しています。

参考:経済産業省「ソフトウェア管理に向けたSBOM(Software Bill of Materials)の導入に関する手引 ver2.0」(令和6年8月29日公表)

教育と啓発を続ける

無料のOSSは自由に使ってよい、という誤解は根強く残っています。経験の浅いエンジニアには実際の事例を交えた研修が効き、生成AIが出力したコードに既存のOSSが紛れ込む可能性も題材になります。

開発委託や納品の契約でOSSの扱いを定める

開発を外部に委託するときは、契約書にOSSの扱いを書いておきます。最低限入れておきたいのは、OSSを使う場合の事前通知と承認、使ったOSSとライセンスの一覧の提出、ライセンスの条件を守っていることの表明保証です。権利者から請求を受けた場合の補償と、その補償を責任制限条項の対象外とすること、不適合の通知期間も定めておきます。契約に定めがなければ、委託先に責任を負わせることが難しくなる場面があります。

OSSライセンス違反が発覚したときの対応

違反は、権利者からの通知書、利用者や開発者からの指摘、社内の監査のいずれかで見つかるのが一般的です。どの経路でも、初動で事実を隠したり慌てて履歴を消したりすると、事態は悪化します。次の4つの手順で進めます。

OSSライセンス違反が発覚したときの対応

影響範囲の調査と記録の保全

まず、問題のOSSがどの製品のどの版に含まれ、どれだけ出荷・配布されたかを特定します。SBOMがあればここで役立ちます。あわせて、導入の経緯や社内のやりとりを保全してください。コードの変更履歴を消したり書き換えたりすることは、隠蔽と受け取られ、交渉でも訴訟でも不利に働きます。

弁護士への相談と回答方針の検討

権利者から通知書や指摘を受けたら、回答を送る前に弁護士に相談してください。初動の回答で違反の事実や範囲を認めると、後の交渉や訴訟で不利な材料として使われることがあります。OSSの権利者は海外にいることも多く、どの国で訴えられるか、どの国の法律が適用されるかで必要な対応が変わります。訴えられた国の法律がそのまま適用されるとは限らず、米国で訴えられれば証拠開示への対応も必要になります。

権利者への回答と是正方針の説明

権利者や指摘した団体への回答は、窓口を一本化し、送る前に弁護士と内容を確認します。最初の回答では、指摘を受け止めて調査中であること、是正の方針と時期の見込みを伝えるにとどめ、事実関係の評価は調査が終わってから示します。GPLv3のコードであれば、通知を受けた日付が是正の期限の起点になるため、正確に記録しておきます。

コードの修正とソースコードの提供による是正

是正の方法は大きく3つあります。配布したプログラムの元になったソースコードの提供、欠けていた著作権表示やライセンス文の追加、問題のOSSの別のものへの置き換えです。どれを選ぶかで製品の仕様や公開範囲が変わるため、開発部門と法務部門が一緒に判断します。是正までの間に製品の提供を続けるかは、弁護士と検討したうえで権利者と協議します。違反を知りながら配布を続けると、故意の侵害と評価されるおそれがあります。

OSSライセンス違反に関するよくある質問

OSSライセンス違反はどうやって発覚するのですか

配布された製品やアプリを、権利擁護団体や開発者が解析して見つけるのが典型です。社内の監査や、M&Aの際の買収前の調査(デューデリジェンス)で見つかることもあります。

GPLのOSSは商用利用できますか

できます。GPLは販売を禁じていません。ただし、GPLのソフトウェアを組み込んだ製品を配布するなら、対応するソースコードの提供など、GPLの条件をすべて守る必要があります。自社のコードと結合して1つのプログラムにした場合は、自社のコードにもGPLが及び、ソースコードの開示を求められることがあります。利用規約などで、GPLが認める以上の制限を受け取った人に課すことも、GPLは認めていません。

社内でだけ使う場合も違反になりますか

社外に配布しない限り、多くのライセンスでソースコードの提供などの義務は生じにくいと考えられます。ただし、改変したプログラムをネットワーク越しに利用させるだけで義務が生じるAGPLのような例外があります。グループ会社や業務委託先に渡す場合が配布にあたるかは、ライセンスと事情によって判断が分かれます。

委託先が組み込んだOSSの違反でも自社が責任を負いますか

権利者との関係では、製品を配布した自社が責任を問われる可能性があります。委託先に負担を求められるかは、委託契約にOSSの扱いと責任分担をどう定めたかによります。

まとめ:OSSライセンス違反は予防の仕組みと専門家の助言で防ぐ

OSSライセンス違反は、その多くがソースコードの出し忘れや表示の消し忘れといった確認漏れから起きます。海外ではソースコードの提供を求める訴訟が続き、2024年には条件違反を著作権侵害と認めて80万ユーロの賠償を命じた判決も出ました。

日本法でも、違反の内容によっては差止や損害賠償を求められる可能性があり、故意の侵害には刑事罰の規定もあります。利用ポリシー、管理ツールとSBOM、委託契約の条項で予防し、指摘を受けたら記録を残したまま早く是正に動くことが、損失を抑える近道です。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT・インターネット・AI分野を中心とする東京都大手町の企業法務系法律事務所です。OSSライセンスについては、利用ポリシーや開発委託契約の作成・レビュー、権利者から指摘を受けた際の調査と交渉、海外の権利者への対応までを扱っています。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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