VTuberとの契約で注意すべきこととは?契約書に盛り込むべき内容も解説
近年、VTuber市場は急速に成長し、活動形態も多様化しています。VTuberと事務所・企業が契約を結ぶ際には、従来のタレント契約とは異なる特有の考え方が必要です。特にVTuberの場合、モーションキャプチャー技術を用いたキャラクターを介した活動という特性から、商標権や著作権などの知的財産権の取り扱いが重要な課題です。
本記事では、VTuberの主な契約形態である雇用契約、準委任契約、請負契約、タレント専属契約について、それぞれの特徴を解説します。
また、契約時の重要なポイントとして、報酬体系、専属性、費用負担、秘密保持などの基本的な契約条項に加え、キャラクターの権利管理やイメージ保護に関する留意点についても詳しく説明します。
この記事の目次
VTuberとは?
VTuber(バーチャルYouTuber)とは、2Dや3Dのアバターを用いて活動するコンテンツクリエイターのことです。平成28年(2016年)末に「キズナアイ」の活動をきっかけに広まり、平成29年(2017年)頃から急速に注目を集めています。
当初はYouTubeでの活動が主でしたが、現在では他のプラットフォームでも活動するクリエイターもVTuberと呼ぶのが一般的です。モーションキャプチャー技術(人の動きをデジタルデータとして記録してCGキャラクターなどに反映させる)を使用して演者(中の人)の動きをアバターに反映させ、視聴者にはキャラクターが実際に動いているように見せます。
VTuberの急速な普及に伴い、関連する法律問題への理解も重要になってきています。
VTuberをキャスティングする際の契約形態
VTuberが事務所に所属する場合、主な契約形態として雇用契約、準委任契約、請負契約があります。それぞれの契約形態には法律上の特徴や制約があり、VTuberの活動内容や事務所との関係性によって適切な契約形態を選択しなければなりません。
以下では、各契約形態の特徴とVTuber活動における具体的な活用例について説明します。
雇用契約
雇用契約とは、労働者が雇用主の指揮命令下で労働に従事し、雇用主がその対価として賃金の支払いを約束する契約です。雇用契約では労働基準法が適用され、最低賃金規定や労働時間規制などの労働法規の保護を受け、企業は社会保険料負担の義務を負い、使用者による自由な解雇が制限されます。
VTuberの雇用契約では、事務所専属として定期的な配信や動画制作を行う場合や、企業の広報担当として継続的に活動する場合などがあります。契約期間は一般的に3年や5年などの有期雇用契約が多いです。就業規則に基づいて配信スケジュールの管理や活動内容の指示が行われ、報酬は固定給与制や歩合給との併用が一般的となっています。
ただし、VTuber活動では創作性や自由度が求められることから、雇用契約よりも後述する準委任契約等を締結するケースが多いです。
準委任契約
準委任契約とは、業務委託契約の一種で、事実行為を相手方に委託する契約です。委任契約は当事者の一方が法律行為を相手方に委託し、相手方が承諾することで成立する契約です。これに対して、準委任契約は、事実行為を委託する契約です。
後述する請負契約が仕事の完成を目的とするのに対し、準委任契約は業務の遂行過程自体を重視し、結果に対する責任を問う形態ではありません。
VTuberの準委任契約は、業務遂行の結果として視聴者数や収益などの成果を保証するものではありません。あくまでも活動自体の遂行を目的とした契約で、事務所と取り交わす契約として一般的な形態の一つです。報酬の支払いは要件とされていないものの、事務所と取り交わす契約は通常、有償契約として締結されます。
請負契約
請負契約とは、業務委託契約の一種で、当事者の一方がある仕事の完成を約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬の支払いを約束する契約です。VTuberの場合、一時的なPRや単発案件で請負契約が用いられることが多いです。
他の契約形態との大きな違いは、準委任契約が業務の遂行過程を重視するのに対し、請負契約は具体的な仕事の完成とその成果物を重視する点です。雇用契約とは異なり労働法規の適用を受けず、業務の遂行方法については比較的自由度が高くなっています。
「タレント専属契約」とは
タレント専属契約の目的
「タレント専属契約」とは、一般的に、タレントが芸能事務所に所属する際に締結する契約のことをいいます。
「タレント専属契約」は、タレントが所属する芸能事務所のために専属的に芸能活動を行うことを約し、一方で、芸能事務所はタレントの芸能活動を支援することを約し、その内容を明確にするために締結することになります。
タレント専属契約の法的性質
VTuberの契約形態には、雇用契約、準委任契約、請負契約の要素を併せ持つタレント専属契約があります。これは民法に規定のない非典型契約であり、法的性質については以下のような整理ができます。
- 委任と雇用または請負の性質の混合した無名契約とする考え方(東京地判平成 13・7・18)
- 準委任またはこれに類似する無名契約とする考え方(東京地判平成 12・6・13)
このように裁判例は、タレント専属契約の法的性質決定の点において考え方が分かれており、これに応じて、タレント専属契約の終了の要件や契約の解除にやむを得ない事由を必要とするかどうかという点が変わってくることになります。
例えば、VTuberの場合、定期的な配信義務(雇用契約的要素)、特定の企業案件への出演(請負契約的要素)、事務所を通じた活動管理(準委任契約的要素)など、複数の契約形態の性質を含むのが一般的です。
裁判例でも、タレント専属契約の法的性質の考え方が分かれている以上、契約内容を具体的に検討し、個別具体的に判断していくことが必要になります。そのため、VTuberと事務所との契約においても、活動内容や権利関係、報酬体系など、契約書の具体的な条項の内容を事案に応じて明確にしておくことが重要です。
タレント専属契約書において重要な条項
タレント専属契約書には、タレントと事務所の権利義務関係を明確にするための条項を定める必要があります。
特に、芸名等の使用権、活動に伴う費用負担、報酬体系、そして専属性に関する条項は、後のトラブル防止のために慎重に検討しなければなりません。これらの条項は、VTuberの事務所所属契約においても同様に重要な意味を持ちます。
以下では、契約書に盛り込むべき主要な条項とその内容について詳しく解説します。なお、以下の条項例では、「甲」を芸能事務所とし、「乙」をタレント(VTuber)として記載しています。
タレントの名称や芸名の使用に関する条項
芸能事務所は、所属するタレントの活動のマネジメントのために、肖像や芸名を自由に使うことができる契約条項を設けることが多いです。芸能事務所とタレントの関係が良好であれば、タレントに肖像や芸名を自由に使用させても問題ないでしょう。
肖像や芸名の使用は、タレントの独立などによりタレント専属契約が終了した場合に問題となります。タレントの名称や芸名は、もちろんタレントの努力によるものも大きいですが、芸能事務所のマネジメントにより顧客吸引力を獲得するに至ったともいえます。芸能事務所とタレントの話し合いにより、お互いが納得できるような条項とすることが望ましいでしょう。
そこで、タレント専属契約終了後に、タレントが同じ芸名を使い続ける場合に、旧所属芸能事務所の許可を得る必要があるとする条項が記載されることがあります。
第○条(名称等の使用)
1 芸能事務所(以下「甲」という。)または甲の指定する者は、その製作または販売・頒布する製品および販売促進物、その他において販売、広告、宣伝のためにタレント(以下「乙」という。)の氏名、芸名、略称、写真、肖像、筆跡、経歴その他乙に係る一切の事項(以下「名称等」という)を無償で使用することができるものとし、乙はこれに積極的に協力するものとする。また、乙は本契約期間中、甲または甲の指定する者以外の者の製作、販売、頒布する製品、サービス、販売促進物、その他のために乙の名称等の使用を許諾しないものとする。
2 商品化権(乙の名称等を商品に付して使用する権利)の第三者に対する許諾権および使用料を受ける権利は甲に独占的に帰属するものとする。
3 甲または甲の指定する者は、本契約終了後においても、本契約期間中に制作した原盤の利用およびその販売促進物等のために、乙の名称等を無償で自由に使用することができるものとする。
第○条(事前の承認)
乙は、本契約終了後において、名称等の使用することはできないものとする。ただし、名称等の使用について甲の承諾がある場合にはこの限りでない。
タレント活動費用の負担に関する条項
タレント活動を行う場合、レッスン費用、衣装の費用、移動の費用など多くの費用がかかります。これらの費用の負担について契約書に明記されていないと、芸能事務所とタレントのどちらが負担をするかということについてトラブルに発展することがあり得ます。
そこで、タレント専属契約書では、費用負担について明確に規定しておくことが必要になります。
芸能事務所が費用を負担するか、タレントが費用を負担するかは、両当事者の交渉により決定されることになります。芸能事務所が活動費用を負担する場合には、下記のように記載します。
第○条 (費用の負担)
1甲は、本契約に基づいた役務の提供、使用の許諾などに関連する経費(レッスン代、衣装代を含む)を負担する。
2その他の費用は乙の負担とする。
報酬に関する条項
芸能事務所からみれば、どの程度タレントに報酬を与えるのか、一方、タレントにとっては、どの程度報酬がもらえるのかということは大きな関心事です。金銭に関することはトラブルに発展する場合も多く、内容を明確にしておくことが重要です。
報酬に関しては、完全歩合制、定額報酬制、定額報酬プラス歩合制などがあります。タレント専属契約書において一般的な完全歩合制による条項例を以下に記載します。
第○条(タレントに対する報酬)
1 タレント業務に関連し第三者から支払われる一切の金銭(以下「本件売上」という。)は甲に帰属するものとする。乙または乙の管理する口座に本件売上が入金された場合、乙は1週間以内にその全額を甲に対し、甲の指定する口座への振込によって支払うものとする。
2 甲は乙に対し、乙のタレント業務の対価として、別紙で記載された報酬を支払うものとする。
なお、この条項は、当該バーチャルYouTuber・VTuber(タレント)が、クライアントである第三者企業からの依頼を受けて、いわゆるクライアント案件を手がけた場合を想定しています。また、これとは別に、クライアントから受領した金銭を芸能事務所とタレントの間でどのように按分するかについては別途条項や個別契約書などで定める必要があります。クライアント案件用の契約書に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
関連記事:バーチャルYouTuber・VTuberの企業案件契約書の要点
専属性に関する条項
タレント専属契約書においては、専属性に関する条項も非常に重要な条項になります。まず、専属性が認められると、芸能事務所に所属するタレントは、タレント活動を行う場合、所属する芸能事務所を通してしかタレント活動を行うことができなくなり、他の芸能事務所を介してタレント活動を行うことや、タレントが芸能事務所を介さずに芸能活動を行うことができなくなります。
芸能事務所としては、タレントに時間、労力や費用などをかけてマネジメントを行ったにもかかわらず、他の芸能事務所を介した仕事や芸能事務所を介さないタレント活動をタレントに行われてしまうと、芸能事務所としての利益がほとんど見込めないという状況が生じることもありえます。
そこで、芸能事務所としては、専属性に関する条項を記載しておく必要があります。 具体的には、以下のような条項を記載することが考えられます。
第○条(専属性)
乙は、本契約の有効期間中、甲のためにのみ、第○条で規定されるタレント業務を行うものとし、自己のためまたは甲以外の第三者のためにこれをなしてはならないものとする。
専属性に関する条項は、芸能事務所とタレントとの間でトラブルとなることが多い条項ですので、トラブルを未然に防ぐため、芸能事務所はタレントに対し、専属性についての説明を十分行っておく必要があります。
VTuberとの契約書において重要な条項
ここでは、バーチャルYouTuber・VTuberとして使用されるキャラクターの商標権やライセンスに関する条項について説明します。
キャラクターの名称や芸名に関する条項
バーチャルYouTuber・VTuberとして使用されるキャラクターの名称や芸名については、自然人と異なり商標登録ができるという特徴があります。キャラクターの名称や芸名について商標登録がされると、商標権を有している者以外の者が、商標登録がされている区分と同様の区分でキャラクターの名称や芸名を使用することができなくなります。そのため、バーチャルYouTuber・VTuberとして使用されるキャラクターの名称や芸名を商標登録することは必要ですが、次の問題として、商標権の帰属を明確にし、場合によっては、商標のライセンスについての条項を契約書に記載する必要があります。
バーチャルYouTuber・VTuberについては、マネジメント事務所が商標権を有し、その商標権をバーチャルYouTuber・VTuberに対して許諾するという方法が一般的です。商標権のライセンスに関する条項については、いかなる範囲で商標の利用を認めるか、ライセンス料および支払方法はどうするか、いかなる行為が行われたらライセンス契約の解除を認めるかなど検討すべき事項が多岐にわたるため、条項の内容を慎重に精査する必要があります。
キャラクターの画像や動画などの著作権に関する条項
バーチャルYouTuber・VTuberのキャラクターに関する権利として、商標権の他に、著作権があります。著作権は、商標権と異なり、登録等を行う必要はなく、原則として、著作物が作られた時に、その著作物を作り出した者に認められます。
バーチャルYouTuber・VTuberのキャラクターの著作権については、マネジメント会社に帰属している場合と、バーチャルYouTuber・VTuberに帰属している場合が考えられます。著作権がマネジメント会社に帰属している場合には、商標権と同様に、マネジメント会社からバーチャルYouTuber・VTuberに対してライセンスを行うことになります。
一方、著作権がバーチャルYouTuber・VTuberに帰属している場合、マネジメント会社としては、バーチャルYouTuber・VTuberから著作権の譲渡を受けておく必要があります。もし、キャラクターの著作権がバーチャルYouTuber・VTuberに帰属したままであると、バーチャルYouTuber・VTuberが自由にキャラクターを使用できる一方で、マネジメント会社がマネジメントや宣伝・広告などに著作物を使用する場合には許諾がひつようになり、十分なマネジメントをすることができないという状況になりかねません。
キャラクターに「著作権」はあるのか
そもそもキャラクターは著作物として認められるかという点について争いがあります。
判例(最判平成9年7月17日民集51巻6号2714頁)では、マンガにおいて、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有するものとして反復して描かれている登場人物のいわゆるキャラクターは著作物にはあたらないと判断されています。この判例に沿って考えると、キャラクターそのものに著作権は発生しないとも考えられます。そのため、キャラクターの著作権の譲渡を考える場合には、抽象的なキャラクターそのものを譲渡するという内容の契約では不十分であり、具現化された著作物のみが、著作権譲渡の対象物となり得ることとなります。
そこでキャラクターの著作権を有するバーチャルYouTuber・VTuberから、マネジメント事務所がキャラクターに関する一切の著作権の譲渡を受けるためには、契約書において具体的に著作物を特定する必要があります。
具体的には、以下の2つの内容を、著作権の譲渡に関する条項に記載する必要があります。
- 既にイラスト、動画および画像等に描画され著作物として具現化されているものに関する権利の譲渡に関する内容(過去の一切の著作権の譲渡)
- 今後イラスト、動画および画像等に描画され、著作物として作成されるものに関する権利の譲渡に関する内容(将来の一切の著作権の譲渡)
第○条(著作権の譲渡)
乙は、甲に対し、本契約締結日に、乙の著作物「○○」(以下「本著作物」という。)のすべての著作権(複製権、放送権、翻訳権、映画化権、本著作物を原著作物とする二次的著作物についての利用権等並びに著作権法27条および28条に規定する権利を含むがそれらに限られない。以下「本著作権」という。)および乙が本契約に関連し、本契約期間中に作成することとなる乙の著作物の本著作権を甲に譲渡し、甲はこれを譲り受けた。
上記の内容を契約書に記載しておくことにより、契約期間中に、例えばX(旧Twitter)やインスタグラムなどのSNS上で、バーチャルYouTuber・VTuberが公開したイラストなどに関する著作権が、マネジメント事務所に帰属することとなります。
こうした条項を整備しておくことは、当該バーチャルYouTuber・VTuberに関して、売却や事業譲渡が発生し得ることとの関係でも非常に重要です。バーチャルYouTuber・VTuberは、M&Aや事業譲渡の対象となり得る存在です。これらに関しては下記の記事にて詳細に解説しています。
関連記事:バーチャルYouTuber・VTuberの買収・事業譲渡
VTuberが負う善管注意義務の具体化に関する条項
バーチャルYouTuber・VTuberの基本的な義務は、マネジメント会社との契約内容にしたがい、動画の撮影・編集を行い、動画配信を行うこととなります。ただ、バーチャルYouTuber・VTuberは、キャラクターのデザインなども重要ではありますが、動画配信という特性上、キャラクターのイメージが非常に重要な意味を持ちます。
例えば、マネジメント事務所として、子どもをターゲットとした純粋でかわいらしいイメージで育てたいキャラクターであるにも関わらず、 バーチャルYouTuber・VTuberが、子どもに悪影響を与えるような動画を配信したり、SNSでキャラクターイメージを壊すような書き込みなどを行うと、キャラクターの価値が下がってしまいます。そこで、バーチャルYouTuber・VTuberに、キャラクターのイメージを守ってもらう必要があります。
そのため、契約書の中に、バーチャルYouTuber・VTuberは善良な管理者の注意を尽くすべきであり、また、キャラクターのイメージを損なうような一切の行為を禁止する条項を記載することが重要です。
また、キャラクターのイメージは、一度壊されてしまうと、回復が非常に困難です。そこで、バーチャルYouTuber・VTuberが、キャラクターのイメージを破壊するような一切の行為を行うことを防ぐため、バーチャルYouTuber・VTuberがキャラクターのイメージを破壊するような一切の行為を行った場合には、損害賠償義務を負うことおよび損害賠償額の金額を具体的に定めておくことがよいと考えられます。
秘密保持に関する条項
前述のように、バーチャルYouTuber・VTuberにおけるキャラクターについては、キャラクターのイメージが非常に重要です。そのため、キャラクターの声を担当しているのは誰か、モーションを担当しているのは誰かといった情報が秘匿されているケースが多いです。
そのため、一般的な秘密保持義務の条項に加え、下記のような内容を、秘密保持に関する条項に記載する必要があります。下記のような内容を記載することにより、キャラクターに関する情報が視聴者に漏れてしまうことを防止でき、キャラクターのイメージを守ることができます。
第○条(秘密情報)
本契約でいう情報とは、本件業務に関して、文書、口頭および物品のいずれによるものであるかを問わず、甲より乙に対し開示された情報の一切をいい、甲と乙が本契約を締結した事実および乙が本件業務を提供している事実等キャラクターのイメージ形成に関する一切の情報を含むものとする。
企業がVTuberと契約を結ぶ際の留意点
企業がVTuberと契約を結ぶ際は、まず適切な契約書の作成が不可欠です。契約書は弁護士などの専門家を交えて作成し、双方が納得できる内容を明確に定める必要があります。特に個人VTuberを起用する場合は、一方的な条件を押しつけるのは避け、相手との適切なコミュニケーションを通じて信頼関係を構築することが重要です。
契約前の確認事項として、VTuberの本人確認と年齢確認は必須です。VTuberは実名や年齢を公表せずに活動する場合が多いですが、報酬が発生する仕事を依頼する際は、源泉徴収票の送付先となる住所や氏名などを確認しなければなりません。また、未成年者の場合は、保護者の許可を得る必要があります。
業務内容に関しては、報酬体系、業務時間、拘束期間、依頼範囲を明確にする必要があります。具体的な指示や守秘義務の範囲、SNSでの情報発信に関するレギュレーションなども事前に定めておくとよいでしょう。企画の進行に遅れが生じた場合や、予定の変更が必要になった場合の対応についても契約書に記載しておくことが望ましいです。
さらに、トラブル発生時の対応についても明確にしておく必要があります。特に炎上や誹謗中傷への対応方針、企業側のサポート体制等を契約書に明記し、VTuberを適切に保護する体制を整備することが重要です。
以上の対応によって、企業とVTuberが良好なパートナーシップを築くことで企画を成功に導くことが可能となります。
まとめ:VTuber契約における重要ポイントと今後の課題
VTuberの事務所所属契約は、従来のタレント専属契約を基礎としながらも、キャラクターとしての特性を考慮した独自の契約形態が必要になります。
契約書作成において特に重要となるのは、商標権や著作権等の適切な管理です。これには、キャラクターの名称や画像、動画などの権利関係を明確に定め、事務所が適切に管理できる体制を構築することが含まれます。
また、VTuberという存在は、インターネットを主な活動の場とするため、急速な人気の獲得や予期せぬトラブルの発生など、従来のタレント活動とは異なるリスクも考慮しなければなりません。そのため、事前に詳細な契約内容を定めることが、後のトラブル防止に重要な意味を持ちます。
特に重視すべき契約内容は、キャラクターのイメージ保護に関する条項、秘密保持義務、SNSでの情報発信に関するガイドライン、トラブル発生時の対応方針などです。これらの要素を適切に契約書に盛り込めば、VTuberと事務所の双方が安心して活動できる関係性を構築できます。
今後、VTuber業界の更なる発展に伴い契約形態も変化していくと予想されます。そのため、法的な整備と実務上の対応を両立させながら、柔軟な契約関係を構築することが求められています。
当事務所による対策のご案内
モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。昨今、YouTuberやVTuberの間でも、チャンネル運用にあたって、肖像権や著作権、広告規制などリーガルチェックの必要性が急増しております。下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。
モノリス法律事務所の取扱分野:YouTuber・VTuber法務