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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

ドワンゴとFC2の訴訟事例から学ぶ特許権侵害と属地主義の重要性

特許権侵害

現代のグローバルなビジネス環境において、知的財産権の保護は企業の競争力を維持する上で極めて重要です。特に、技術革新が進むIT分野では、特許権の侵害が頻繁に問題となります。企業は、自社の技術やアイデアを適切に保護し、競争優位性を確保するために、特許権の概念やその適用範囲を理解しておく必要があります。

令和7年(2025年)3月3日、最高裁判所はドワンゴとFC2の訴訟において、米国にサーバーを置くFC2による侵害行為に日本の特許権の保護が及ぶという判断を示し注目を集めました。

本記事では、特許権侵害の基本概念、属地主義の原則、そしてドワンゴとFC2の訴訟事例を詳しく解説し、企業がどのように特許権を保護すべきかについて考察します。

特許権侵害とは?

特許権侵害とは?

特許権とは、新しい発明を保護するための独占的な権利であり、特許庁に申請し、審査を通過した発明者や企業に与えられます。特許権者は、一定期間(通常20年間)にわたり、その発明を独占的に使用・販売する権利を持ちます。

特許権侵害の定義

特許権侵害とは、特許権者の許可なく、その特許発明を製造、使用、販売、輸出入などの行為を行うことを指します。侵害が認められた場合、特許権者は損害賠償請求や差止請求を行うことができます。

特許権侵害には、以下のようなケースが考えられます。

  • 技術的範囲の侵害:特許請求の範囲に該当する技術を無断で使用した場合。
  • 均等論による侵害:特許発明と実質的に同じ技術を用いている場合。
  • 間接侵害:特許発明を利用するための部品や素材を提供し、それによって侵害が成立する場合。

特許法における属地主義の意義

属地主義とは、特許権が各国の法律に基づいて付与され、その国の領域内でのみ効力を持つという原則です。例えば、日本で取得した特許は日本国内でのみ有効であり、他国では効力を持ちません。

特許権の属地主義は、ビジネスへ以下の影響を及ぼします。

  • 国ごとの特許取得が必要:グローバルに展開する企業は、各国で個別に特許を取得する必要があります。
  • 特許権の行使が制限される:日本での特許が有効でも、海外での侵害行為には直接対処できません。
  • 国際訴訟のリスク:複数国にまたがるビジネスを行う場合、各国の特許法を理解し、リスク管理を行う必要があります。

ドワンゴとFC2の訴訟事例に見る属地主義の適用

ドワンゴとFC2の訴訟事例に見る属地主義の適用

動画配信サービス「ニコニコ動画」を手がける株式会社ドワンゴの特許を巡り、米FC2が海外サーバー経由で同種サービスを提供した行為が日本の特許権侵害に当たるかが争われた2件の訴訟の判決で、最高裁第2小法廷は令和7年3月3日、「侵害に当たる」とする初判断を示しました。

訴訟の背景

株式会社ドワンゴは、「ニコニコ動画」の運営企業であり、特許技術を活用したコメント表示機能を有しています。一方、FC2は、類似の機能を提供する動画配信プラットフォームを海外サーバーで運営していました。

訴訟の争点

FC2は、米国に設置された動画配信サーバーにおいて、日本国内のユーザーに対してサービスを提供していました。これに対し、ドワンゴは「日本国内でサービスが提供されている以上、日本の特許権が適用される」として訴訟を提起しました。

知財高裁と最高裁の判決

知的財産高等裁判所は判決で以下の判断を示しました。

  • サーバーが海外にあっても、日本国内でサービスが提供されている場合、日本の特許権が適用されると判断。
  • FC2のサービスがドワンゴの特許を侵害していると認定。

令和7年3月3日、最高裁判所はFC2の上告を棄却し、ドワンゴの勝訴が確定しました。

参考:最高裁判所判例集| 令和5(受)2028 特許権侵害差止等請求事件

参考:最高裁判所判例集|令和5(受)14 特許権侵害差止等請求事件

判決が企業活動に及ぼす影響

判決が企業活動に及ぼす影響

属地主義の原則によれば、特許権は各国の法律に基づいて付与されるため、企業は事業展開を行う国ごとに特許を取得し、それぞれの国での権利行使の可能性を慎重に検討する必要があります。

今回のドワンゴとFC2の訴訟事例では、FC2が海外にサーバーを設置していたにもかかわらず、日本国内でのサービス提供が行われている点が重視され、日本の特許権の適用範囲が認められました。この判断は、企業が特許権の保護を受けるためには、単に特許を取得するだけでなく、その特許が適用される国の法的解釈を把握し、ビジネスモデルを構築することの重要性を示しています。

特に、インターネットを介したサービスでは、物理的な拠点だけでなく、ユーザーの居住国やサービス提供の実態も考慮されるため、特許戦略を策定する際には、国際的な視点が不可欠です。企業は、属地主義の枠組みの中で、知的財産の権利を最大限に活用し、競争優位性を確保するための施策を講じることが求められます。

まとめ:知的財産戦略は専門家に相談を

特許権侵害と属地主義の理解は、企業の知的財産戦略の基盤となります。特に、このドワンゴとFC2の訴訟事例は、属地主義の適用範囲が広がりつつあることを示しています。グローバルに事業を展開する企業は、各国の特許法を踏まえた柔軟かつ堅実な対応が求められます。

企業が知的財産を適切に保護し、競争力を維持するためには、特許戦略の重要性を再認識し、リスク管理を徹底することが不可欠です。知的財産戦略については、弁護士等の専門家に相談し、最新の判例などを踏まえたアドバイスを受けることをおすすめします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に豊富な経験を有する法律事務所です。近年、著作権・特許権などをめぐる知的財産権は注目を集めており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所では知的財産に関するソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:各種企業のIT・知財法務

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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