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2013年会社法に基づくインド現地法人設立実務:SPICe+申請ガイド

2013年会社法に基づくインド現地法人設立実務:SPICe+申請ガイド

インドにおいてビジネスを展開するにあたり、最も確実かつ一般的な進出形態は現地法人の設立です。経済成長が著しいインド市場への参入を成功させるためには、現地の厳格な法的要件を正確に把握し、コンプライアンスを遵守した手続きを滞りなく進めることが不可欠です。インド企業省が提供するオンラインポータル「SPICe+」の導入により、会社設立のプロセスは大きくデジタル化され、効率性が向上しました。

本記事では、2013年会社法に基づくインドの会社設立手続きについて、商号の予約、基本定款および通常定款の作成、各種納税番号の一括取得といった実務上の詳細なステップを網羅的に解説します。さらに、日本の法律との重要な違いや、デジタル署名を取得するための事前準備など、実務担当者が直面しやすい課題を取り上げます。2025年から2026年にかけての最新のシステム運用状況や法改正の動向も踏まえ、インドにおけるビジネス展開を検討する上で必須となる法令や制度の情報を詳細に提供します。

2013年会社法に基づくインド会社設立手続きの基本構造

インドにおいて法人を設立しビジネスを展開する際の根本となる法律が2013年会社法です。この法律は、それまでの1956年会社法を数十年ぶりに全面的に改正したものであり、コーポレートガバナンスの強化、少数株主の権利保護、企業の社会的責任の義務化など、現代のグローバルなビジネス環境に適合するための多くの先進的な概念が導入されました。インドの2013年会社法の下では、私的有限責任会社公的有限責任会社など、複数の法人形態が規定されています。日本企業が外資100パーセントの現地子会社をインドに設立する場合、株式の譲渡制限が設けられており、かつ情報公開の義務が公的有限責任会社と比較して少ない私的有限責任会社の形態を選択することが、実務上の標準的なアプローチとなっています。

インド企業省は、2013年会社法に基づく各種手続きのデジタル化を強力に推進しており、企業がより迅速かつ透明性の高い環境で事業を開始できるよう制度の整備を継続的に行っています。2013年会社法の施行以降、かつては膨大な書類作業と長期間の審査を要していたインドにおける会社設立手続きは大幅に合理化されました。しかしながら、法律の枠組み自体は依然として非常に厳格であり、設立手続きの各段階において要求される法定要件を完全に満たすことが求められます。特に外資系企業の場合、会社設立プロセスそのものに加えて、外国為替管理法に基づく資金移動の規制など、複数の法令が交差する点に留意する必要があります。

日本の会社法との重要な違いと居住取締役要件

インドにおける会社設立手続きを深く理解する上で、日本の会社法との制度的な違いを把握することは非常に重要です。日本の会社法では現在、取締役の居住地に関する要件が撤廃されており、日本に居住していない外国人のみで構成される取締役会であっても株式会社を設立し、代表取締役に就任することが認められています。これに対し、インドの2013年会社法は、外国資本の企業に対しても国内における責任の所在を明確にするため、厳格な居住要件を課しています。

インドの2013年会社法第149条第3項は、すべての企業に対して最低1名の居住取締役を選任することを法的な義務として定めています。この規定において求められる居住取締役とは、当該会計年度(4月1日〜3月31日)中に合計182日以上インド国内に滞在する取締役を指します。新設会社の場合、設立日から当該会計年度末日までの残余期間に比例した日数がこの要件として適用されます。この要件を満たさない場合、企業およびその役員に対して重い罰金が科されるため、現地の信頼できる人材を確保するか、あるいは専門機関が提供する居住取締役サービスを利用するなどの対策が会社設立の初期段階で必須となります。

さらに、インドにおける会社設立手続きでは、すべての取締役に取締役識別番号の取得が義務付けられています。日本では役員の就任時に実印と印鑑証明書を用いて本人確認を行いますが、インドではこれに代わるものとして企業省が発行する固有の識別番号が必要となります。この番号は一度取得すれば生涯有効ですが、3年ごとの本人確認情報の更新手続き(DIR-3 KYC Web)が義務付けられており、これを怠ると番号が無効化されるという管理がなされています。

SPICe+を活用したインド会社設立のオンライン手続きプロセス

SPICe+を活用したインド会社設立のオンライン手続きプロセス

現在のインドにおける会社設立手続きの中核を担うのが、インド企業省が運用する統合オンラインポータルである「SPICe+」です。SPICe+は、旧来の申請システムを大幅に進化させた包括的なウェブベースのフォームであり、会社設立に関連する複数の省庁にまたがる複雑な手続きを単一の窓口で完了できるように設計されています。この画期的なシステムの導入により、インドにおけるビジネス環境の円滑化は飛躍的な進展を遂げました。

SPICe+の申請プロセスは、大きくPartAPartBの二つの部分に分かれており、これらを順を追って進めることで法人登記が完了します。さらに、資本金が150万ルピー以下、あるいは株式資本を持たないメンバー数が20名以下の会社設立においては、政府に対する基本的な法人登記手数料が免除されるという優遇措置も設けられています。

商号予約と基本定款および通常定款の作成

SPICe+の最初のステップであるPartAは、設立予定の法人の商号を予約するためのセクションです。インドにおける会社設立では、提案された商号の独自性および既存名称との非類似性が極めて厳格に審査されます。日本の会社法では、同一住所でなければ既存の企業と同じ商号を登記することが比較的容易に認められますが、インドでは全国の企業省データベースと照合され、類似の商号が存在する場合は即座に却下されます。さらに、予約を希望する商号がインドの商標法に抵触していないかどうかも同時に審査されるため、事前に企業省のデータベースや商標登録データベースを用いた綿密な事前調査が欠かせません。

商号の承認が得られた後、SPICe+のPartBに進み、基本定款および通常定款の作成手続きを行います。日本の会社設立においては会社の目的や内部規律をまとめた単一の定款を作成しますが、インドの2013年会社法の下では、これが外部に対する会社の事業目的や権限の範囲を定める基本定款と、会社内部の運営規則や取締役会の権限などを定める通常定款の二つに明確に分かれています。これらの定款は、SPICe+システム内で電子フォームとして提供されており、ウェブ上で直接必要な事業目的や資本構成に関する情報を入力することで作成されます。設立時の発起人および初代取締役は、これらの電子フォームに対して、後述するデジタル署名証明書を用いて電子的に署名を行うことになります。

各種登録番号の一括取得と2025年の最新システム運用

SPICe+システムが実務において画期的である最大の理由は、2013年会社法に基づく法人登記手続きと並行して、事業運営に不可欠な各種の登録番号を一括で取得できる点にあります。SPICe+ PartBと連携して提出されるAGILE-PRO-Sというフォームを通じて、インド所得税局が発行する恒久納税者番号および税控除収集アカウント番号の取得申請が自動的に行われます。これにより、法人が設立された直後から、給与の源泉徴収や法人税申告といった税務関連のコンプライアンス要件を満たすインフラが整います。

さらに、従業員の雇用に伴い必須となる従業員積立基金機構および従業員国家保険公社への事業所登録も同じシステム内で完結します。加えて、事業を行う州によっては州政府が管轄する職業税の登録手続きも包含されており、指定された提携銀行における法人名義の銀行口座開設手続きまでもが同時に申請される仕組みになっています。

2025年から2026年にかけて、インド企業省のポータルサイトはV3と呼ばれる最新システムへと移行し、この手続きの利便性はさらに向上しました。旧システムでは、長大なフォームにすべての情報を入力して送信した後に検証が行われ、複数のエラーが同時に発覚して修正に多大な労力を要する事態が頻発していました。しかし新しいV3システムでは、入力フィールドごとにリアルタイムでビジネスルールのデータ検証が行われるため、入力の不整合やエラーが即座に提示されるようになりました。これにより、差し戻しのリスクが低減し、申請手続きにかかる全体的な時間が大幅に短縮される結果となっています。

デジタル署名の事前準備とインド会社設立に向けた書類認証

SPICe+を通じた高度にデジタル化された会社設立プロセスを円滑に進めるためには、日本側での周到な事前の書類準備と認証手続きが成功の鍵を握ります。インドのオンラインシステムで有効な申請として受け付けられるためには、提出されるすべての書類が厳格な認証手続きを経たものでなければなりません。日本の法人が親会社となってインドに現地法人を設立する場合や、日本に在住する個人がインド法人の取締役や株主に就任する場合、提出する本人確認書類や法人関連書類には、公証人による認証およびアポスティーユの付与が法的に義務付けられています。

アポスティーユとは、外国公文書の認証を不要とする条約に基づく証明制度であり、日本の外務省が対象書類に対して付与する公的な証明のことです。インドと日本はともにこのハーグ条約の加盟国であるため、日本の外務省によってアポスティーユが付与された書類は、インド国内においてもインドの公的機関が発行した書類と同等の真正な公文書として法的な効力を持ちます。この手続きを経ない書類をSPICe+のシステムにアップロードした場合、申請は例外なく即座に却下されるため、実務上最も注意を払うべき初期ステップとなります。

アポスティーユ手続きの要件や手順に関する詳細は、日本国外務省の公式ウェブサイトで確認することができます。

参考:外務省:アポスティーユ(付箋)・認証について

公証とアポスティーユの取得における実務上の留意点

具体的なアポスティーユの取得実務においては、まず日本国内で準備した提出書類の正確な英訳を作成する必要があります。日本語で記載されたパスポートのコピー、運転免許証や住民票などの住所証明書、または親会社の登記簿謄本や取締役会決議書などは、そのままではインド企業省の審査官に受け付けられません。作成した英訳書類と原本をセットにして公証役場に持ち込み、公証人の面前で署名を行い、公証人による認証を受けます。その後、管轄の法務局長の印証を経て、最終的に外務省に提出してアポスティーユを取得するという流れになります。

このプロセスにおいては、パスポートの氏名表記と住所証明書の英訳表記が一言一句完全に一致していることや、証明写真のサイズや背景色がインド側の要求基準を満たしていることなど、細部にわたる厳格な確認が求められます。また、取得したアポスティーユ付きの書類を用いて、前述したデジタル署名証明書の申請を行います。インドにおける各種の電子申請に用いるデジタル署名証明書を発行する認証局も、外資系企業の役員に対しては厳格な本人確認を実施します。アポスティーユ済み書類のスキャンデータをオンラインで提出した後、場合によっては英語でのビデオ通話を通じたリアルタイムの本人確認が行われることもあります。

これらの事前手続きには通常数週間の期間を要することが一般的であり、インドにおける会社設立の全体スケジュールを策定する際には、この日本側での準備期間を十分に考慮して余裕を持たせることが不可欠です。

インド会社設立後の事業開始手続きとコンプライアンス

インド会社設立後の事業開始手続きとコンプライアンス

SPICe+を通じた申請がインド企業省によって承認され、設立許可証および法人識別番号が発行された段階で、法的な実体としての会社設立は完了します。しかし、2013年会社法の下では、設立許可証の取得をもって直ちに自由な事業活動や資金調達を開始できるわけではありません。日本の会社法では、設立登記が完了すればすぐに営業活動を開始し、請求書の発行や資金の借り入れを行うことができますが、インドでは会社設立後に追加の法定手続きが厳格に義務付けられています

その中で最も重要かつ緊急性の高い要件が、2013年会社法第10A条に基づく事業開始宣言の提出です。同条項は、2019年の会社法改正法(Companies (Amendment) Act, 2019)によって正式に成文化された制度であり、マネーロンダリングの防止や、実体のないペーパーカンパニーの乱造を防ぐことを主たる目的としています。会社設立後、企業は基本定款に記載された資本金として引き受けることを約束した全額を、法人の名義で開設されたインド国内の銀行口座に速やかに振り込まなければなりません。この資本金の払い込みが完了した後、取締役は会社設立の日から180日以内に、企業省に対してフォームINC-20Aを用いて事業開始宣言を提出する法的な義務を負います。

出資金の払込と事業開始宣言に関する厳格な規定

日本からインドの設立したばかりの法人口座へ資本金を送金する場合、単なる国際送金では済まされず、インド準備銀行が管轄する外国為替管理法の厳格なガイドラインに従う必要があります。送金を受け取るインドの銀行側では、資金の出所や目的について詳細な審査を行い、適切な海外直接投資の報告手続きが完了して初めて、法人の口座に資金が着金したものとして扱われます。このコンプライアンスチェックには想定以上の時間がかかることが多いため、180日という期限は決して余裕のあるものではありません。

2013年会社法第10A条の規定に基づくこの180日以内の事業開始宣言の提出義務は、極めて厳格に適用されており、違反した場合には企業存続に関わる重大な法的結果をもたらします。期限内にフォームINC-20Aが提出されなかった場合、管轄の会社登記官は当該企業が実質的な事業を営んでいないものとみなし、事前通知を行った上で職権により企業の名称を登記簿から抹消する強力な権限を有しています。

実際に、インド国家会社法審判所のアラハバード支部において2023年に下された、VSKRISHNA INFO PRIVATE LIMITED事件(CP No.22/ALD/2023、NCLT Allahabad Bench)における命令はこの規定の厳格さを如実に示しています。

本件では、申請企業は2021年の設立後、設立から180日以内に提出すべき事業開始宣言(Form INC-20A)を提出せず、その後会社登記官(ROC)から発せられた通知(会社法第248条第1項・第2項に基づく)に対しても、関与専門家との連携不足により返答しませんでした。その結果、ROCは会社法第248条に基づき、当該企業の名称を登録簿から抹消しました。企業はその後、官報への抹消公告を知った時点で、登記回復を求めて国家会社法審判所(NCLT)に申請しました。

審判所は、企業が実際に事業活動を行っていたこと、法人税申告書(ITR-6)を提出していたこと、復活後に全ての法定書類を提出する旨の誓約をしたことなどを考慮し、条件付きで登記回復を認めました。ただし、企業は回復のために相当額の費用負担と追加の法的手続を要することとなりました。

本件は、インドにおいて会社設立後の法定コンプライアンスを期限内に確実に履行することの重要性を示す典型例であり、特に外国企業にとっては設立直後から計画的にForm INC-20Aの準備を進める必要性を強く示唆しています。

インドにおける外資規制と税務コンプライアンスの重要性

インドで会社設立を行い、国境を越えてビジネスを展開する場合、会社法だけでなく税法や外資規制に関する深い理解が求められます。インドに投下した資本から得られる利益を将来的に日本の親会社へ還流させるスキームを構築するにあたり、クロスボーダー取引に関するインドの税務当局の姿勢や過去の判例を知っておくことは有益です。

インドの税務当局は伝統的に外国企業の取引に対して厳格な課税権を主張する傾向があり、その解釈をめぐって過去に多くの重要な司法判断が下されてきました。中でも、2012年1月20日に判決が下されたインド最高裁判所のVodafone International Holdings B.V. v. Union of India事件は、クロスボーダーM&Aとインド国内資産の移転に対する課税権をめぐって争われた世界的に著名な判例です。この事件では、外国企業間で行われたオフショアでの株式譲渡が、実質的にインド国内の通信会社の支配権移転を伴うものであったため、インド税務当局が巨額のキャピタルゲイン課税を主張しました。しかしインド最高裁判所は、この外国企業間の株式譲渡について、それが適法なタックスプランニングの範囲内で行われたものであり、租税回避を主たる目的とした架空の取引でない限り、当時のインド所得税法の下ではインド当局に課税権は存在しないとの歴史的な判断を示しました。

なお、インド政府はこの判決を受けて2012年財政法により所得税法を遡及的に改正し同取引への課税を試みましたが、Vodafone社がオランダ・インド間の二国間投資協定(BIT)に基づく国際仲裁を提起した結果、常設仲裁裁判所はインドの遡及課税をBIT違反と認定しました。最終的にインド政府は2021年の税法改正(Taxation Laws (Amendment) Act, 2021)でこの遡及適用を撤回しています。

この判決に関する詳細な背景や法的論点は、当時の各種法務データベースや裁判記録で確認することができますが、この判例が教訓としているのは、インドにおける外国企業の事業展開や資本構成の設計において、現地の税制を正確に理解し、法的に強固で適切なストラクチャーを事業の初期段階から構築しておくことの極めて高い重要性です。

日印租税条約と配当源泉税率の戦略的適用

インド現地法人が事業を軌道に乗せ、利益を日本の親会社に対して配当として送金する段階になった際、インド国内の税法と日本国との間に締結されている国際的な租税条約の適用関係が直接的に影響を及ぼします。インドの国内税法においては、外国企業に対して支払われる配当にかかる源泉徴収税率は、一般的に20パーセントと高く設定されています。しかし、日本とインドの間には二重課税の回避と脱税の防止を目的とした日印租税条約が締結されており、適切な手続きを経ることでこの税率を大幅に軽減することが可能です。

以下の表は、配当の支払いに関するインド国内税法と日印租税条約に基づく軽減規定の比較を示したものです。

項目インド国内税法に基づく規定日印租税条約に基づく軽減規定
配当にかかる源泉徴収税率20パーセント10パーセント
適用される主な条件一般的な外国企業に対する標準的な税率として適用①配当の受領者がその受益者(beneficial owner)であること(条約第10条第2項)、②日本の税法上の居住者たる法人であること
手続き上の必須要件特になし①PAN(インドの納税者番号)を提供すること、またはPANが利用できない場合には、②所轄の税務署が発行する居住者証明書(Tax Residency Certificate)およびForm 10F(電子申告)を提出すること

この表が示す通り、日印租税条約の適用を適切に受けることにより、親会社が受け取る配当に対するインドでの源泉徴収税率は半減の10パーセントに軽減されます。なお、日印租税条約はBEPS防止措置実施条約(MLI)の適用を受けており、租税優遇の享受を主たる目的とする取引に対しては条約上の優遇措置が否認される可能性があります(主要目的テスト)。配当送金の仕組みを設計する際には、インドの税務専門家との事前確認が不可欠です。

参考:日印租税条約の概要

2013年会社法に基づくインドでの現地法人設立は、単なる行政手続きとしての登記完了にとどまらず、将来の税務メリットを最大化するための国際税務戦略と不可分に結びついています。

2026年における最新のインド法改正動向と制度の簡素化

2026年における最新のインド法改正動向と制度の簡素化

インド政府は、海外からの直接投資を促進し「ビジネスのしやすさ」ランキングを向上させるため、会社法を含む経済関連法規の継続的な見直しとビジネス環境の改善に向けた法改正を進めています。2025年から2026年にかけての大きな動きとして、2026年3月23日に財務大臣Nirmala Sitharaman氏により連邦議会下院(Lok Sabha)に提出されたCorporate Laws (Amendment) Bill, 2026(Bill No. 85 of 2026)が挙げられます。なお同法案は現在合同議会委員会(Joint Parliamentary Committee)に付託されており本稿執筆時点では未成立です。

この法案における最も注目すべき改正の方向性の一つが、コンプライアンス手続き上の軽微な不備に対する罰則の非犯罪化です。従来、書類の提出遅延や軽微な報告義務違反に対しても刑事罰が適用されるリスクが存在し、これが外国企業にとって大きな心理的障壁となっていました。法案では、これらの軽微な違反に対する罰則を刑事罰から民事的な罰金へと移行し、企業の負担を軽減することが提案されています。

さらに、法定コンプライアンス要件が大幅に緩和されるスモールカンパニーの定義についても、重要な変更が盛り込まれています。これまでスモールカンパニーとして分類されるための基準は、払込済資本金が1億ルピー以下、かつ売上高が10億ルピー以下とされていました。しかし2026年の改正案では、この上限が資本金2億ルピー以下、売上高20億ルピー以下へと従来の2倍に引き上げられることが提案されています。これにより、より多くの企業がスモールカンパニーとして分類され、取締役会の開催回数の削減や監査要件の緩和といった制度上の恩恵を享受できるようになり、中堅規模の事業展開を行う企業にとってインド進出のハードルがさらに下がることが期待されています。

まとめ

本記事では、2013年会社法に基づくインド現地法人設立の全体像から、企業省のオンラインポータルであるSPICe+を活用した具体的なデジタル申請手順、さらには設立後に求められる厳格なコンプライアンス要件や税務上の戦略に至るまでを網羅的に解説しました。インドにおける会社設立プロセスは、デジタル統合が進み行政手続きの透明性が飛躍的に向上している一方で、182日以上の滞在実績が求められる居住取締役の確保、日本側での公証とアポスティーユ取得の厳格な手続き、そして設立後180日以内の出資金払込と事業開始宣言の提出など、外資系企業が直面する特有の高いハードルが依然として複数存在します。これらの法定要件を一つでも見落とすと、高額な罰金や法人の職権登記抹消といった事業継続に関わる重大なリスクを招く可能性があります。

モノリス法律事務所は、IT分野やクロスボーダービジネスに関する高度な専門性と、インド現地の有力な法律事務所との強固な提携ネットワークを活かし、現地の最新法令に基づいた会社設立手続きの代行から、居住取締役の選任サポート、さらには設立後の法務・税務コンプライアンスの継続的な支援に至るまで、インドビジネスの成功に向けた包括的なサポートを提供することが可能です。インドという複雑かつダイナミックな市場において、現地の制度対応に不安を感じる場合や、より安全で確実な事業展開を目指す場合は、ぜひ専門家の知見をご活用ください。

モノリス法律事務所は、インド法務に関する調査および情報提供を目的として、現地法律事務所Quest IP Attorneysと非独占的な提携関係(Associate Firm / Correspondent Firm)にあります。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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