ロイヤリティフリーな画像・写真等素材の利用範囲とは
自社でウェブサイトを制作する場合、ネット上の素材などを利用するケースがあると思います。その際、「ロイヤリティフリー」と記載された素材を見かけることもあると思います。 この「ロイヤリティフリー」と記載されている素材について、「ロイヤリティフリー」という呼び方から、ロイヤリティを支払う必要のない素材のことであり、フリー素材と同様の素材であると考える人もいるかもしれません。しかし、ロイヤリティフリーの素材とフリー素材は、同じ「フリー」という用語が用いられていても、同じ素材のことをいうわけではありません。このように、ロイヤリティフリーの素材とフリー素材は名称が似ており、両者の区別が明確でないという人も多いです。そこで、本記事では、まず、ロイヤリティフリーの素材について説明し、次に、ロイヤリティフリーの素材の利用範囲について説明をします。
この記事の目次
ロイヤリティフリーの素材とは
ロイヤリティフリー(royalty-free)とは、事前に当事者間で合意された利用範囲内であれば、追加のロイヤリティを支払うことなく、複数の利用など、利用を継続することができる著作物等のことをいいます。ロイヤリティフリーは、その頭文字をとって、RFと呼ばれることもあります。ロイヤリティフリーといっても、ロイヤリティが全くかからないのではなく、一度ロイヤリティを支払ってしまえば、追加のロイヤリティがかからないという意味ですので注意が必要です。
また、ロイヤリティの利用が継続している場合でも、第三者に素材を利用させたりすることは利用規約により禁止されていることがほとんどですので、利用規約をよく確認する必要があります。
ロイヤリティフリーの素材のメリット
ロイヤリティフリーの素材のメリットとして主に以下の2つが考えられます。
手続の煩雑さが軽減されることが期待できる
素材を複数の目的で利用する場合、その目的毎にライセンスを受けることが原則となります。利用する素材が、ロイヤリティフリーの素材である場合、利用範囲内であれば、その都度ライセンスを受ける必要はありません。そのため、ロイヤリティフリーの素材を利用すると素材利用のための手続の煩雑さが軽減されることが期待できます。
ロイヤリティが安く済む可能性がある
ロイヤリティを一定額支払えば、利用範囲内で、繰り返し素材を使うことができるため、素材を様々な目的で頻繁に利用するのであれば、その都度ライセンスを受けるよりもロイヤリティが安く済む可能性があります。
ロイヤリティフリー素材のデメリット
まず、ロイヤリティフリーの素材のデメリットとしては、ロイヤリティが高くかかってしまう可能性があることが考えられます。ロイヤリティフリーの素材の場合、繰り返し素材が利用されることが想定され、ロイヤリティの金額が決まっています。そのため、一度しか素材を利用しないのであれば、ロイヤリティフリーの素材ではなく、通常の方法でライセンスを取得した方が、ロイヤリティが安い可能性があります。
また、別のデメリットとしては、繰り返し素材の利用ができるかとから、他に利用している人も多く、利用している素材が、他者と同じになってしまうことが考えられます。 その結果、複数のサイトで、同様のロイヤリティフリーの素材が利用されており、自社のHPのオリジナリティを出すことができないという状況が生じることも考えられます。
ロイヤリティフリーの素材の利用範囲について
まず、著作権法第63条では、著作物の利用の許諾について、以下のように規定されています。
(著作物の利用の許諾)
第63条
1.著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。
2.前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる。
ロイヤリティフリーの素材を利用する場合、上記の条文で規定されているように「その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において」利用する必要があります。ロイヤリティフリーの素材の許諾の範囲について、利用規約において、例えば、以下のような種類の規定が定められていることがあります。
私的利用
個人的に利用する場合には、利用規約で定められた範囲で自由に利用することができます。
商用利用
個人的に利用するのではなく、金銭を得る目的でロイヤリティフリーの素材を利用する行為です。自社のウェブサイトにロイヤリティフリーの素材を使用する場合には、利用規約で 商用利用が可能であるか確認をする必要があります。また、商用利用が認められていたとしても、ロイヤリティフリーの素材を印刷した商品の販売を禁止するなど、特定の行為を禁止している場合もあります。
個人利用
これは、ロイヤリティフリーの素材を利用する際の主体の問題となります。個人のみ利用できることとなります。
法人利用
これも、ロイヤリティフリーの素材を利用する主体の問題となります。法人として利用するためには、法人利用が認められている必要があります。素材の利用について、個人のみの利用しか認められていないにもかかわらず、法人が利用してしまうと著作権侵害となる可能性があります。
加工
加工に関する規定もしっかり確認する必要があります。そのまま利用する場合には問題はありませんが、例えば、ロイヤリティフリーの素材の一部を切り出して利用するような場合、加工が認められていないと著作権侵害となる可能性があります。
クレジット表記
ロイヤリティフリーの素材を利用する際には、著作権の所在を示すため、クレジット表記が必要な旨が利用規約で規定されていることもあります。利用規約で、クレジット表記の方法についても規定されていることがありますので、利用規約で規定された方法によりクレジット表記を行う必要があります。
リンクの掲載
利用規約で、ロイヤリティフリーの素材を提供しているサイトへのリンクを掲載することが求められることもあります。リンクの掲載の方法についても、利用規約で規定されている場合ありますので、利用規約を十分に確認する必要があります。
利用規約の確認の必要性
ロイヤリティフリーの素材を提供しているサイトについては、必ずといっていいほど、利用規約が用意されています。そのため、どの範囲まで利用が許諾されているか、どのような行為を行うことができるかなどを利用規約でしっかり確認し、ロイヤリティフリーの素材を利用するようにすることが重要です。あるサイトの利用規約では当然のこととして認められている行為が、他のサイトでは禁止されているということもあります。そのため、ロイヤリティフリーの素材を利用する場合には、利用規約を確認することなく、この行為は大丈夫だろうと考えるのではなく、ロイヤリティフリーの素材を提供しているサイト毎にしっかり利用規約を確認することが重要となります。
まとめ
以上、ネット上の素材などに「ロイヤリティフリー」と書かれている場合の利用範囲について説明をしました。ロイヤリティフリーの素材を利用する場合には、ロイヤリティフリーの素材がどのような素材のことであるかをしっかり理解して、メリット・デメリットを考慮した上で、利用するか否かを決定することが重要となります。 また、ロイヤリティフリーの素材を利用する場合には、安易に、自由に利用しても問題は無いと考えるのではなく、ロイヤリティフリーの素材を提供しているサイト等で掲載されている利用規約をしっかりと確認するようにしましょう。 利用規約で、どのような目的であれば利用することができるのか、どのような行為であれば利用することができるのか等についてしっかり確認をすれば、素材の著作権を侵害してしまうという状況を避けることができます。利用規約については、法律用語が多く使用されておりますので、ロイヤリティフリーの素材の利用範囲について確認をしたいというような場合には、弁護士によるアドバイスを受けるということが望ましいといえます。
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務