爆サイ.comの書き込みを削除するには
近年、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)に代表される電子掲示板が増えています。このような電子掲示板は通常匿名で書き込みができることから、特定の人に対する誹謗中傷が投稿され風評被害を受けることがしばしばあります。
そこで、今回はこのような電子掲示板のうち、特に誹謗中傷が書き込まれやすいといわれる爆サイ.com(以下、爆サイ)における風評被害対策について解説します。
この記事の目次
爆サイに関する解説
爆サイは、「日本最大級のローカルコミュニティ掲示板」と称して運営されている電子掲示板です。2019年11月8日現在の月間PVは約9億となっており、電子掲示板としては5ちゃんねるに次ぐ規模を誇ります。他の掲示板と異なる爆サイ独自の特徴は、掲示板が地域ごとにわかれて設置されている点にあります。具体的には、東北版・関東版・関西版といったように地方ごとに大きくわかれ、その中でさらに市区町村ごとにわかれた掲示板が存在しています。
爆サイは、そのトップページが、上記のように「東北」「関東」「関西」というように地域ごとに分けられており、全国レベルではあまり話題にならないような、地域密着型の企業や店舗などに関する書き込みも多く行われる、というところに特徴があるのです。
爆サイではどのような風評被害があるのか
爆サイは、掲示板が地域ごとに立てられるという特徴を有するが故に、特定の人や店についての誹謗中傷が、その地域と関連付けた形で投稿されることとなります。この結果、当該地域に居住する人が閲覧すればただちに誰に対する誹謗中傷であるかの特定が可能となってしまうのです。
実際に爆サイの掲示板を見てみると、個人名が記載されたスレッドが相当数立ち上げられていることがわかります。誹謗中傷の内容としては多岐にわたるものの、「〇〇は不倫をしている」「△△は犯罪行為をしている」等の書き込みが比較的目立ちます。これらの誹謗中傷を受けた場合、周囲から誤解を受けて不必要な軋轢を生むおそれがあります。
また、例えば就職活動の際に採用担当者が氏名をネット検索して誹謗中傷記事を目にするようなことも想定され、社会活動において不当なマイナス評価を受ける可能性があります。店舗や会社に対する誹謗中傷であれば、事業そのものに対する風評被害もはかり知れません。
利用規約違反で削除請求する方法
爆サイに誹謗中傷が書き込まれた場合、各スレッド内にある削除依頼フォームから削除請求をする方法があります。
もっとも、爆サイでは削除請求を受けたすべての投稿を削除するのではなく、利用規約に違反するもののみを削除しています。爆サイの利用規約では、運営者は利用規約に定める禁止事項に反する投稿について削除の措置を講ずることとされています(利用規約3条2項)。このため、削除を請求する場合には、どの投稿が利用規約のどの条項に違反するのかを特定して行う必要があります。爆サイの利用規約3条1項では、サイト利用上の禁止事項として以下の行為が挙げられています。
1.bakusai.comドメイン以外のURLの記載
bakusai.com 利用規約3条2項
2.各掲示板に指定されたテーマや情報から逸脱した内容の投稿
3.同一内容の多数投稿や無意味な文字の羅列等の行為(マルチスパム投稿)
4.出会いを求める投稿及び援助交際目的の投稿
5.他人の名誉、社会的信用、プライバシー、肖像権、パブリシティ権、著作権その他の知的財産権、その他の権利を侵害する行為(法令で定めたもの及び判例上認められたもの全てを含む)
6.本名、住所、メールアドレス、電話番号の記載(一般に公開されている情報・公人に関してはこの限りではありません)
7.指定された掲示板以外での物品売買行為
8.指定された掲示板以外での求人関連投稿
9.有害なコンピュータプログラムなどにリンクするもの
10.当サイトまたは当サイトに接続しているサーバーもしくはネットワークを妨害したり、混乱させたりすること
11.犯罪予告、自殺への誘引その他他人を威迫・脅迫する旨が看取される内容を含むもの
12.当サイトを利用しての宗教の宣伝を含む宗教的行為、および宗教団体の設立・活動、宗教団体への加入等宗教上の結社に関する行為
13.詐欺、強迫、マルチ商法、ネズミ講もしくはその他の違法取引行為またはかかる取引への勧誘
14.「麻薬及び向精神薬取締法」「銃砲刀剣類所持等取締法」によって所持、取引または取扱が規制される引き及び物質等の所持及び使用への勧誘
15.その他、日本国の法令が禁止する事項
16.上記以外の、管理者が不適切であると判断する行為
根も葉もない噂が書き込まれた場合
「犯罪行為をしている」といった根も葉もない誹謗中傷の書き込みについては、後で説明する名誉毀損の成立要件を満たす場合に利用規約の禁止事項5.に定める名誉権の侵害に該当するとして削除を請求することになります。
私生活上の情報が書き込まれた場合
仮に書き込まれた情報が真実であっても人の私生活にわたる事項であれば、利用規約における禁止事項5.に定めるプライバシー権の侵害にあたるとして削除請求することができます。例えば、不倫関係の書き込みにおいて「ナンバー△△の車でA子と待ち合わせていた」といった情報は、真実であるか否かにかかわらず本来他人に知られたくない私生活上の情報であることからプライバシー権により保護されているとの主張が可能です。プライバシー権の侵害に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
本名が書き込まれている場合
爆サイでは、人の氏名が書き込まれた投稿がしばしばあります。これが本名であれば、利用規約における禁止事項6.に該当するものとして削除請求をすることになります。
違法だとして削除請求する場合の例
誹謗中傷の書き込みは、利用規約違反であると同時に多くの場合違法行為でもあります。違法行為として問題となることが多いのは名誉毀損です。では、どのような場合に名誉毀損が成立するのでしょうか。
名誉毀損は、原則として人の社会的評価を低下させる事実が書き込まれた場合に成立します。ただし、投稿された事実が真実である場合または真実であると信じるべき正当な理由・根拠がある場合には名誉毀損は成立しません。
なお、真実であったとしても投稿の目的に公益性がない場合や事実が公共の利害に関しない場合にはやはり名誉毀損が成立する余地がありますが、争点となることが少ないので割愛します。
以上から、誹謗中傷の書き込みが名誉毀損となるかについては主に、
- 当該事実が社会的評価を低下させるか
- 当該事実が真実であるかまたは真実であると信じるべき正当な理由・根拠があるか
を検討することになります。名誉毀損の成立要件に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
前述のとおり、爆サイでは「不倫をしている」「犯罪を行っている」との書き込みが頻繁にあります。不倫をしていることや犯罪を行っていることは、一般的に人の社会的評価を低下させる事実といえます。そこで、不倫や犯罪を行っているということが全くの虚偽であり真実であると信じるべき正当な理由や根拠も存在しない場合には、誹謗中傷の書き込みについて名誉毀損が成立することになります。
誹謗中傷が違法行為となる場合には、削除依頼フォームから削除請求する方法だけではなく、プロバイダ責任制限法に基づきサイト管理者またはホスティングプロバイダに対し送信防止措置依頼を行うことも可能です。
送信防止措置依頼は、依頼を受けたサイト管理者またはプロバイダが、依頼をした人の権利が侵害されていると信ずるに足る相当な理由があると判断した場合に情報の送信自体を阻止する手続であり、実質的に削除と同じ効果をもたらします。ただし、削除すべきかの判断は依頼を受けたサイト管理者等の裁量に任されているので、必ず削除されると言い切れないところがあります。
なお、送信防止措置依頼書を送付する際に必要となる爆サイの住所や宛先については、Whoisで検索するか、弁護士であれば弁護士用の申告フォームから開示を依頼することになります。
仮処分による削除
以上のように裁判外でサイト管理者等と交渉する方法は、削除に応じてもらえる場合には迅速な解決が可能となります。
一方で削除に応じてもらえなかった場合には、それ以上交渉で解決することは困難となります。裁判外の交渉で解決できないような場合には、強制的に投稿を削除してもらう必要があるため裁判所を通じた仮処分による削除請求を行います。
仮処分は正式な裁判手続とは異なる仮の裁判手続であり、遅くとも1~2か月程度で結論が出ます。仮処分で削除すべしとの結論が出た場合には、サイト管理者は投稿を削除する法的義務を負いますので通常は削除を行ってくれます。
投稿の削除を求める仮処分に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
仮処分による投稿者特定
誹謗中傷の投稿を削除するだけではなく、投稿者に対して損害賠償(慰謝料)請求等をすることがあります。このような場合には投稿者の住所や氏名を特定する必要があるため、発信者情報開示請求を行います。
なお、投稿の削除を行うと発信者情報も削除されてしまうおそれがあるため、投稿者の特定を行う予定がある場合には削除請求を先行して行わないよう気を付ける必要があります。
爆サイの投稿について発信者情報開示請求を行うためには、
- 爆サイの運営主体であるコンテンツサービスプロバイダから投稿者のIPアドレスおよびタイムスタンプを開示してもらう
- IPアドレスとタイムスタンプを手掛かりにWhoisを通じて投稿者が契約しているインターネットサービスプロバイダ(OCN、ソフトバンク等)を割り出した上で、当該プロバイダに対し投稿者の個人情報の開示請求をする
という2段階の手続を行います。2段階目の手続は個人情報という機密性の高い情報に関するものであることから、裁判外の交渉で任意に開示してもらえることはまずありません。1段階目のIPアドレスの開示請求すら慎重な姿勢をみせるプロバイダも多いのです。このため、投稿者の特定に関しては最初から裁判を通じて手続を進める方が迅速に解決できる傾向にあります。
まとめ
このように爆サイは地域ごとのローカル情報を気軽に書き込めるサイトであるが故に、誹謗中傷や風評被害の温床となりやすい面が否めません。
仮処分による投稿の削除請求をする場合や投稿者を特定するため発信者情報開示請求を行う場合には裁判所を通じた手続となることから、弁護士へ依頼をしないと対応が難しいといえます。
そして、ネット上の誹謗中傷や風評被害への対策はITに関する専門的な知識が必要となるため、この分野について経験豊富な弁護士に相談することが重要です。
カテゴリー: 風評被害対策
タグ: 爆サイ風評被害対策:サイト別